救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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閑話①

「……小学校、ですか?」

 

 ある日学園長室で、霧切仁から聞かされた依頼の内容に、苗木は首を傾げた。

 

「ああ。少しの期間で良い、頼まれてくれないか?」

「……えっと、何でボクが?」

「いや、実は《超小学生級》という、超高校級候補を集めたクラスを作ったのだが、仮にも才能を持つ者達だ。普通の教師では手に負えなくてね」

「他の先生は?」

「断られてしまったよ。今は自分のクラスで手一杯だと。まあ、超小学生級に対抗する才能を持つ者もいなくはないが、我が強いからね、苗木君は我が強くなくて、超高校級に囲まれても平然と過ごしていける運以外一般人、適任だと思ってね」

「狛枝先輩も幸運ですけど?」

「………想像してみたまえ」

 

 苗木は、仁に言われた通り、狛枝凪斗が教鞭を振るう姿を想像する。

 

『良いかい?君らは卵とはいえ超高校級候補だ。この世の希望なんだ。ああ、そんな君たちの教育係に任命されるなんて、ボクはなんて幸運なんだろう。こんなゴミクズみたいな才能に救われるなんて。

 ああ、ごめん。ボクばっかり話し込んじゃって。ボクみたいな凡人が君たちに教えられる事なんてないし、自習でいいよ』

 

「それに彼は、色々と問題のある生徒だから」

「……わかりました。ボクに出来ることなら、頑張ります!」

 

 

 

 

 と、張り切って言い切ってしまったが、果たして……。

 そもそも苗木は年下の扱いなど知らない。妹はいるが、そこまで年は離れていないし。

 

「うぷぷ。苗木、何か悩み事?」

「あ、江ノ島さん」

 

 聞こえてきた声に振り返ると、江ノ島盾子が片手を振って話しかけてきた。

 

「悩み事って言うか………子供って、どうやって育てるのかなぁ……って」

「避妊しないからそうなるんだよ」

「違うからね!?」

 

 

 

 

 そして苗木は、江ノ島と別れて小学校に向かう。

 高校生が珍しいのか、児童達がチラチラ見てくるのに落ち着かないが、話しかけられることなく目的のクラスに着いた。

 

「おじゃましまーす」

 

 ガラ

 

「あ、靴ひもが」

 

 ヒュン!

 

「ん?」

 

 扉を開けた時、靴ひもが解けているのに気づいた苗木がしゃがみ込み結び直そうとすると、頭の上で何かが通過する音が聞こえた。

 顔を上げて見れば、〝木槌〟がユラユラ揺れていた。ちょうど、苗木のデコ付近に。

 

「おっしい、ハズした!ちゃんと作れよな蛇太郎!」

「ご、ごめん。ボクちんが作るの下手だったから………」

「いや待て………皆、先生じゃないぞ?」

「あらあら本当ですわ。これまたキャワイイお兄さんですね」

「ホントだ~。女の子みたいな顔してるのじゃ~」

 

 聞こえてきた声に顔を向けると、カラフルな髪の色の5人が、興味深そうにこちらを見ていた。

 

「あ、えっと………今日から少しの間、キミたちの面倒を見ることになった苗木誠です。えっと……よろしくね?」

「面倒?授業を見る担任ということですか?」

「ううん。ただ話して、日常生活を見て、学園長に報告するだけだよ」

「お、やりぃ!授業が無くなるのか!」

「は、話す?ごめんなさい……ボクちんみたいな奴とは話したくないよね……無視してくれて良いです」

「……優しくしてくれなければ誰でも良いです。見るからにそっち方面も私より疎そうですし」

「わ~い!モナカの仕事が楽になるのじゃ~♪」

 

 と、これが苗木と超小学生級との出会い。

 ほんの僅かな間の、平穏な日常。

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