救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常③

「………何者、ねえ………ボクの事を警戒する必要なんて無いと思うけど」

「それをこれから確かめるのよ」

 

 霧切の返しに、それもそうかと納得する苗木。

 苗木本人としては彼女と仲良くしたいのだが、それは彼女の性質もあり難しいだろう。

 

「あなたは最初から───」

「タンマ」

「……何?」

「場所を変えよう。ここはカメラがある」

「………そうね」

 

 苗木の提案に、霧切は頷くと歩き出す。苗木もベッドから降りて、霧切の後に続く。

 そしてたどり着いたその場所に、苗木は固まる。

 

「どうしたの苗木君?」

「……何でそこ?」

「トイレには監視カメラがないもの。かと言って、あなたを女子トイレに入れるわけにはいかないでしょ?」

 

 と、男子トイレの前で真顔で答える霧切。

 いや、間違ってはない。間違ってはないのだが………。

 

「脱衣場とかでも良いんじゃ?」

「…………………生意気よ」

「ええ!?」

 

 何が!?

 前回も二年間の記憶でも何度か言われた台詞だが、相変わらず唐突すぎて生意気扱いされる理由がわからない。

 

「いいから行きましょう」

「はいはい……」

「返事は一回」

「は~い」

「伸ばさない」

「……………」

 

 お母さんか霧切さんは。

 口に出したら絶対に怒られるようなことを考えて、口に出さないようにしたが頬を抓られた。

 

「何か失礼なこと考えなかったかしら?」

「いひゃいいひゃい」

 

 しかし、どっちにしろ怒られた。

 教訓。女の勘を舐めてかかるな。

 

 

 

 

「それじゃあ、教えてもらえるかしら?」

 

 脱衣場に移動して、霧切は再度尋ねてくる。立ち位置は出口側。逃がす気は皆無のようだ。

 

「うん。ボクの名前は苗木誠。これといって特出した趣味も才能もない。好きなアイドルグループを聞かれれば真っ先に人気ナンバーワンのアイドルグループと答える、自他共に認める平凡な男子高校生。コンプレックスは童顔で小さいこと。

 抽選で選ばれた超高校級の〝幸運〟で、家族構成は両親妹を合わせた四人家族。妹の名前はこまるって言うんだけど仲は……まあ普通かな。昔はお兄ちゃんお兄ちゃんってよく後をついてきたんだけど、中学に入ってからは漫画についてやアニメ、アイドルについて話す時以外は話さなくなったかな」

「………それは、一般的に仲のいい兄妹だと思うけど」

「ああ、でも本当にかわいくてね。大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるって言ったときは不穏だったけど、今頃彼氏の1人ぐらいは出来てるんじゃ──」

「あなたの妹自慢は良いから、あなたについて話して」

「もう話したよ?」

 

 苗木が話を逸らそうとしていると思ったのか霧切が睨むように言うが、苗木は笑顔で自分のプロフィールで話は終わりだと言わんばかりに笑みを見せる。

 

「言い方を変えましょう。……まず最初に、あなたが玄関ホールで自分から自己紹介せず、自己紹介されていない相手の名前を知っていた理由は何?」

「自分からしなかったのは………ボクって、人見知りなんだよね」

「……どうしましょう、説得力が全くないわ」

「名前を知ってるのは、超高校級は基本的にネットで調べられるから。後は、名前で呼んでるところを見たからだね」

「…………………私の才能は、ネットに載ってるのかしら?」

「……ネットには載ってないね」

「……………」

 

 矛盾はない。

 指摘できる矛盾はないが、だからといって納得できるかは別だ。どうせなら、自分の才能を思い出してくれたら良いのだが。

 

「次に、あの時大和田君が掴んでたモノクマを、あなたは真っ先に奪って投げていたわね。あれは何故かしら?」

「ピーピー音が鳴ってたら、誰だって爆弾だと思うけど…」

「………江ノ島さんを助けた時、あなたは何で槍が来るとわかったの?」

「江ノ島さんがモノクマを踏んだ時、ボクは爆発すると思って止めようとしただけだよ?その際転んだおかげで助かった。ほら、ボクって超高校級の幸運だし」

「モノクマが動機のDVDを用意した時、あなたは何故モニターを破壊したの?」

「わざわざ動機として用意された映像だよ?それを見て、誰か人を殺そうとする人が現れたら困るじゃないか」

「…………最後に訊くわ。あなたは黒幕の手先?それとも黒幕自身なの?あるいは、私達の味方なのかしら?」

 

 霧切の目は嘘偽りは許さないと言わんばかりに、かつて何度も見たことのある視線を苗木に向けてきた。苗木は頬をポリポリ掻き、答えに迷う。

 味方とは聞こえが良いが……苗木は多くの仲間を、処刑と言う手段で殺してしまっている。

 目の前の彼女も、信じきれず見殺しにした………。

 

「苗木君?どうしたのかしら………?」

「………え?あ、ごめん。ちょっと嫌な事を思い出して」

 

 無意識に胸元の布を握り締めていた苗木に、霧切が怪訝そうに、しかしどこか心配そうに見つめてくる。

 

「……私、何か聞いちゃいけないことを聞いてしまったかしら?」

 

 ああ、本当に……人のこと言えないお人好しというか……。

 

「……大丈夫だよ。敵か味方か……だよね?」

「ええ」

「……ボクが何と言っても、どの道疑わしいでしょ?」

「…………そうね」

「だから勝手なことを言うね」

「………………」

 

 霧切は苗木の言葉に、しかし顔を顰めたりはしなかった。

 返答を疑うが話せなど、自分がどれだけ身勝手なことを言っているのか自覚しているのだろう。

 

「ボクは、霧切さんを信じるよ」

「………え?」

「霧切さんがボクのことをどれだけ疑っても、敵視しても、信じた結果死ぬことになっても、ボクは君を疑わないし、裏切らない。利用してくれても構わないよ」

「……あなた、何を言っているかわかってるの?そんなこと信じられるとでも──」

「言ったでしょ?どれだけ疑っても、敵視しても……構わない。ボクが勝手にそうしたいだけだから」

 

 そう言って、苗木は微笑む。

 このやり直しで何度も浮かべた本心を隠すための笑みではなく、本心からの笑みを………。

 

「………そう」

 

 霧切は短く呟くと、脱衣場から出て行った。

 苗木も暫くその場にとどまった後、自室に戻るために歩き出した。

 

「あ、苗木君。ここに居たんですね」

「………舞園さん?」

「部屋に行ったら居なかったので、心配したんですよ?」

 

 苗木が部屋に向かっていると舞園に出会う。舞園は叱るような口調で言う。それほど心配してくれたのだろう。だが待ってほしい。今、何時だと思っている。夜中の一時だ。

 

「……まさか、毎日こんな時間からボクの部屋に?」

「はい!」

「…………………」

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