救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑤

 翌日の朝食の集まり。

 珍しく十神も来ている。

 

「おい苗木。お前はコーヒーを淹れられるか?」

「え?…うん、大抵のことは一通り出来るよ…」

 

 何せ超高校級に囲まれて生活していたのだから。とくに西洋かぶれと金持ちが、どうせ大した才能が無いなら役立つ技能を身につけろと色々やらせてきたので、超高校級とまではいかなくとも、どこぞの食で競う学校を卒業できる程度の実力ならある。

 

「なら淹れてこい」

「わたくしには、ロイヤルミルクティーをお願いしますわ」

「はいはい……」

 

 苗木は厨房に入り昨日と同じ茶葉を使い、コーヒーはコピ・ルアックを作った。

 

「……やはり美味しいですわね」

「この部分だけは評価してやる」

 

 十神はどの世界線でも上から目線のようだ。仲良くなるのは苦労しそうである。

 

「しかし惜しいな」

「ああ?何言ってやがんだ?」

「これほどの腕を持ちながら、俺が〝勝者〟になる以上これから先は無いのだから」

「そ、それって『人を殺す』って事か?」

 

 十神の言葉に桑田が顔を青くしながら訊くが、十神はコーヒーを飲み答えない。

 

「おいオメェ、ガチで誰か殺す気じゃねえだろうなあ!?」

「それがどうした?」

「ふざけんじゃねえぞ!」

「ふざけてはいないさ。馴れ合うつもりがないだけだ」

「テメェ!」

「ひ!?」

 

 大和田がバン!と机を叩いて立ち上がると、その音に驚いた不二咲がビクッと竦む。

 

「ちょっと大和田!不二咲ちゃん脅かさないでよ!」

「な!?お、オレは別にそんなつもりは……」

「ほれみろ、馴れ合いに適さないのはお前も同じだろ?」

 

 十神はそう言って立ち上がると、食堂から出て行く。大和田は何も言えず見送った。

 不二咲は、まだ縮こまって震えている。

 

「ああ、怯えちゃって。大和田怖かったもんね」

「オレのせいかよ!?」

「あんたのせいでしょ……」

「ご、ごめんね………ボクが臆病だから」

 

 涙目で震えながら謝る不二咲。

 保護欲を刺激されるが、その正体は………まあいいや。

 

「悪かったよ。もう怒鳴らねえ。『男の約束』だ……」

「男の……約束?」

 

 男の約束。

 良い響きだな。と、苗木は大和田達を観察する。大和田の今を形作った兄が残した言葉、必ず守るべき男の約束。

 

「平和だねぇ」

「そうですね」

「ここまで平和だと暇が生まれる。身体でも鍛えようかな?」

「あ、ならあたしが手伝ってあげよっか?」

「いえいえ私が……」

「待ちたまえ!トレーニング器具があるのは更衣室だが、女子は男子更衣室に入れない!ここはボクが──」

「「は?」」

「………失礼した!」

 

 逃げたな。

 そそくさと去っていく石丸の背を見ながら、苗木は心の中で呟く。しかし責めることは出来ない。

 だって、苗木も怖いもん。

 

「じゃあ身体作りは舞園さん。戦闘技術は江ノ島さんにお任せするよ」

「はい!」

「うん!」

「……なら、私は護身術でも教えてあげようかしら?」

 

 苗木の承認に嬉しそうな顔をする2人に加え、霧切が現れる。

 

「……霧切さん?私達の苗木君に何か用ですか?」

「近くで彼を観察したいのよ。信用にたる人物かどうか……」

「はあ?疑ってんなら近づかなきゃ良いじゃん」

「それを決めるのは苗木君よ………」

「「「………苗木(君)!………あれ?」」」

 

 3人は睨みあった後、苗木に向かって振り向くが、彼の姿はどこにも無かった。

 

 

 

 その頃、苗木は。

 

「…っと、苗木なかなか上手いじゃん」

「休み時間、友達につき合わされたから…ね…とと…」

 

 体育館で、桑田とキャッチボールをしていた。

 

「へえ、その友達って奴は教えるのがうまいんだな」

「そうでもないよ。『グッと握ってホイって投げる』とか、よくわかんないこと言ってたし」

「……ん?わかりやすくねえか?」

 

 そりゃ、そう言ったのは君自身だからね………。と、誰かと自分の記憶の齟齬を感じ、少し胸が苦しくなる。

 

「それに全力出しても、これくらいだし………ね!」

 

 バン!と音を立て、桑田のグローブにボールが収まる。

 

「ああ、確かに遅えな。ウチのチームの平均速度だ。あいつら、何で素人でも投げられる程度の速さしか投げられないか………ね!」

 

 ズバン!と派手な音が響き、苗木の手からグローブが吹き飛ぶ。

 苗木が全力で投げた為、桑田も本気で投げたらしい。リハビリも兼ねて久しぶりのキャッチボールをした苗木には、当然取りきれる筈もない。

 

「わりぃ苗木!大丈夫か?」

「……な、何とか……手は痺れるけど」

「……苗木、オメーさぁ……舞園ちゃんと仲良いよな」

「え?……うん…まあ……」

 

 突然何だ?

 仲を取り持ってくれとでも言うのだろうか……。

 

「わりぃんだけどさ、今度話させてくんね?」

「……え?」

「いやなんか、舞園ちゃんに避けられてるみたいでさ……って、多分俺が軽い気持ちでミュージシャンになりたいとか言ったせいなんだろうけど」

「……………」

「オレさ、なんか野球好きみてーだわ……軽い気持ちでやってる奴いたら、たぶんぜってえブチ切れる。だから超高校級なんかになれたのかもな……それでよ、舞園ちゃんもたぶん怒ってると思うんだ。だから、謝りたいから話の場を作ってくれねえか?」

「…………うん。わかった」

 

 苗木はグローブをつけ直し、キャッチボールを再開する。

 

 

 

 その頃………。

 

「そういえば霧切さん。何であなたから苗木君の匂いがするんですか?」

「あなたに教える必要はないわ」

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