救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑨

「苗木君!?その包帯は!?だ、誰にやられたんですか!?」

 

 朝になり、苗木にハウスを命じられていた舞園がやってきて、苗木の首に巻かれた包帯を見て絶叫する。

 

「何でもないよ。気にしないで」

「で、でも……」

「これは命令」

「………はい」

 

 苗木の命令に大人しく従う舞園。そして、次にやってきたのは江ノ島。

 

「おーす、苗木。って、何その包帯!?」

「…………………」

 

 

 

 昨晩、苗木達は男子更衣室でお互いの秘密を話し合った。

 大和田も憑き物が落ちたような顔で自身の過去と後悔を話し、不二咲も秘密を話し、石丸も過去の失敗を話した。

 苗木だけは、何が晒されるのかわからないため話せなかったが。

 

「しかし不二咲、オレの事を強ぇとか言ってたが、オメェも十分強いと思うぜ」

「そ、そうかなぁ……?」

「うむ。不二咲くんは強い心の持ち主だ!」

「違いねえ!」

「な、苗木クンもかっこよかったよぉ……」

「確かにな、苗木くんは正直言ってしまえば兄弟より遥かに弱い。しかし立ち向かえる勇気を持った男だ!」

「おう、男の中の男だな兄弟!」

「………照れ臭いよ」

 

 大和田達の称賛に照れ臭そうに笑う苗木。

 照れ臭そうにというか照れ臭いのだが。

 

「とりあえず、ボクから提案があるんだ」

「ふむ?」

「現状、秘密をバラされて困りそうなのは十神クンとセレスさん、後は腐川さんだと思うんだ」

「確かにあの三人は秘密の公開に否定的だったな。それで、どうする?」

「ボクらで明日の夜、モノクマによる公開まで動向を見張るって言うのはどう?」

「………ふむ。では僕は大神くんにも声をかけておこう。数は多い方がいいだろう?」

「そうだね……」

 

 

 

 というわけで、朝食を終えた苗木は、図書室に来ていた。

 ルアック・コーヒーを淹れたら滞在の許可があっさり下りた。

 

「………苗木」

「はい?」

 

 十神はパタンと読んでいた本を閉じ、知っただけで命を狙われる第二次世界大戦の裏側を記した書物を読んでいた苗木に呼び掛ける。

 

「苗木、お前は何者だ?」

「その質問は二人目だね。ボクのプロフィールでも話せばいい?」

「………モノクマは、黒幕は確実にお前を特別視している。お前と黒幕はどういった関係だ?これは、お前と黒幕が手を組んで作ったゲームなんじゃないか?お前は黒幕の内通者じゃないのか?」

「質問は一つにしてほしいな。ボクと黒幕の関係?あいにく仲間でもなんでもない。黒幕がボクを特別視しているのは、ボクが江ノ島さんの公開処刑を邪魔したからじゃないかな?」

「奴は邪魔ばかり、と言っていた。あれ以外にもあるんじゃないのか?」

「十神クンは、ボクを随分と疑ってるんだね?」

 

 苗木がケラケラ笑うと、十神は忌々しげに顔を顰める。

 

「当然だ。今回の動機、お前には〝デメリット〟が少なすぎる」

「?」

「俺を含め、お前以外全員が封筒で弱味を渡されている。だが、お前は白紙。例えば誰かがお前を殺したとしても、お前は封筒を奪われても秘密を知られることがない」 

「逆に他の皆は死んだ後もバラされる可能性があるって?」

「そうだ」

 

 まあ言われてみれば確かにそうだ。

 大和田も不二咲も、死後や学級裁判の後秘密をバラされていた。だが苗木はその可能性が少ない。

 

「でもボクと黒幕は繋がってないんだよね。敢えて言うなら、ボクだけが黒幕に明確な『殺意』を持ってることかな」

「………殺意、だと?」

「黒幕の人間性を殺すんじゃなく、文字通り息の根を止めるって意味」

「お前は、黒幕が何者か知っているのか?」

「何者か知らなくても、殺し合いをさせようとしてくる相手に殺意を抱くのは普通だと思うけど?」

「…………苗木、コーヒーがなくなった。新しいのを淹れてこい」

「………了解」

 

 

 

 

『えー、オマエラ。体育館に集まってください!恥ずかしい思い出と知られたくない過去の暴露会だよ~。うぷぷぷ』

 

 夜時間の近くに流れた放送を聞き、苗木は書庫の奥に眠っていた『希望育成計画』というタイトルの資料を閉じ立ち上がる。視界の端では、コーヒーを飲み終えた十神が立ち上がっていた。

 

 

 

 

「うぷぷぷ。よく集まったね。それじゃあ言うよ?言っちゃうよ?今ならまだ間に合うよ?」

「さっさと始めろ」

 

 体育館に集まった生徒達を見てモノクマが念を押すが、十神が催促するので落ち込みながら始めることにした。

 

「それじゃ最初は朝日奈さん。なんと、朝日奈さんは中学一年の頃、体重が〝1ヶ月で1キロ〟も増えたんだ!」

「うう~!」

 

 朝日奈はモノクマの暴露に顔を赤くして唸るが、多分それは太ったと言うより一部が膨らんだだけの気がする。

 

「石丸クン!ラブレターが来て断ったが〝実は間違いで入ってた〟だけだった!」

「く!」

「江ノ島さん!ジャムを12歳まで〝薬莢づまり〟だと思ってた」

「…恥ずかしい」

「どういう女子だべ」

「大神さん!その昔、〝虎の赤ちゃん〟を猫だと思って育ててた!」

「むぅ……」

「え?」

「大和田クン……うぷぷ。自分のお兄さんを〝殺した〟!」

「……ッチ」

「それは『事故』だ!」

「よせ兄弟、オレが殺したようなもんだ……」

「霧切さん!手にグロい〝火傷〟の跡がある」

「……………」

「桑田クン!小学四年生まで〝夜トイレに行けなかった〟!」

「うぐぐ……」

「セレスさん!〝五人前の巨大餃子を30分で完食〟!好きだねえ」

「うるせえビチクソがぁぁぁ!」

「十神クン!人魂騒ぎを起こして正体が〝蛍〟だった!ぷぷ!」

「………ふん」

「葉隠クン!〝存在自体が恥〟!」

「あれま!」

「腐川さん!二重人格のもう一つは〝ジェノサイダー翔〟!」

「ひぎぃ!」

「「「なっ!?」」」

「不二咲クン!〝男〟のクセに女の格好をしている」

「「「ええええええ!?」」」

「あ、あれ?あたしのこともう良いの?」

「舞園さん!中学時代ぬいぐるみに〝マコト君〟という名前を付けてかわいがってた!」

「別に恥ずかしくありませんけど?」

「あ、そう………山田クン!三次元に恋したと思ったら〝ニューハーフ〟だった」

「もう三次元など信じるものかぁぁぁ!」

 

 皆いろんな過去があるらしい。

 というか仮にも連続殺人鬼の正体がわかったのに、不二咲の性別の方が重要視されてるって……。

 

「それじゃあ最後に苗木クン。うぷぷ……なんと!苗木クンは今!部屋に《脱出スイッチ》を置いているのです!」

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