救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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閑話②

 苗木が小学生達に懐かれるのは早かった。

 元々人当たりがよく、本当の意味で優しく、理不尽な期待はせず、誉めてくれて、気味悪がらず、どんな生まれも気にしない。

 彼等の中で大きくなりすぎて、失った時に大きな穴をあけた。

 

 

「……え?終わり?」

「ああ、急にすまないな」

 

 学園長室で、超小学生級達の教員係は終わりだと告げられ、苗木は思わず固まる。

 彼等との時間は、思いの外楽しかったのだが。

 

「……わかりました。何時からですか?」

「………今日だ」

「じゃあ、最後の授業に──」

「違う、そうじゃない……もう、〝終わり〟なんだ」

 

 霧切仁のその言葉に、苗木はようやく察した。

 今日で終わりなのではなく、今日から終わり。もう、行くなと言われていることを。

 

「悪いとは思っている。だが、《パレード》が激化してきてね」

「………予備学科生達の暴動……ですか」

「そうだ。特に彼等は苗木君達を、自分たちと同じく才能を持ってないくせに本科に通っている奴……と認識しているからね」

「……実際、ボクには何の才能もありませんよ」

「いや、君の『幸運』は僕らが保護すべき希望なんだ。わかってくれ…」

「………はい」

 

 霧切仁の頼みに、苗木はしぶしぶ頷いた。

 せめて、お別れの挨拶ぐらいしたかったなと思いながら………。

 

 

 

「ほら早くしろよ!」

「ま、待ってよ大門くん!」

 

 先頭を走る大門と、それを追いかけるクラスメート達。

 苗木が来てから見るようになった光景だ。彼らは、苗木に早く会いたくて走っている。

 

「いっちばーん!………あれ?苗木の奴来てねえぞ?」

「はぁはぁ………ほ、本当だね」

「遅刻でしょうか?」

「珍しいな……」

「じゃ、久し振りに罠を仕掛けるのじゃ~!」

 

 普段なら生徒達より早く来ている苗木だが、その日は何故か来ていなかった。不思議に思いながらもどうせ来てないならと、彼が初めて来た時と同じ罠を仕掛ける。

 しばらくしてドアが開き──

 

「くぶ!?」

「おっしゃあ!」

「………おい待て、苗木さんじゃないぞ?」

 

 見事に引っかかり大門が喜びの声を上げるが、新月が入ってきた男が苗木より高身長の別人だと気づく。

 

「…っぐ、クソガキどもめ」

「………苗木お兄さんは?」

「もう来ない。今日からオレがお前等の担任だ。甘やかされると思うなよ……」

 

 

 

 

 その日の放課後、五人はまだ帰らず教室で話していた。

 

「………苗木、何で来ないんだよ」

「ぼ、ボクちん達のこと、嫌いになっちゃったのかな?」

「んなことあるわけねえだろ!」

「あの人に限ってそれはないだろ……それに、何も言わずに来なくなったのも不自然だ」

「……来ないんじゃなくて、〝来れない〟のかも」

「「「「……………!」」」」

 

 モナカの推測に、全員がモナカを見て固まる。

 

「……どうして大人達はモナカ達に酷いことするんだろ?やっと会えた大切な人からも引き離して……」

「……お、オレっちが悪いから……だから、苗木も……」

「期待に、応えられなかったから?苗木さんと会わせることで、何か変化を期待して、それが出来なかったから……」

「ぼ、ボクちんのせいなんだよ……やっぱり………」

「酷いこと……やさしい……やさしいのだけは……」

 

 顔を青くして震える4人を見て、モナカは呟く。奪われた怒りを晴らすための、ただの八つ当たりの言弾を……

 

「こんな世界から、バイバイしたいよね?」

 

 

 

──うぷぷ──

 

 

 

「…ッ!?」

 

 パキーンと音を立て、苗木は持っていた物を落として割ってしまう。

 

「苗木君、大丈夫ですか!?」

「あ、うん……あぁ、割れちゃってる」

「それは…〝バッチ〟ですか?」

「うん。……《希望の戦士の証》なんだって」

 

 苗木はそう言いながら、割れてしまった超小学生級達とお揃いのバッチを眺めた。

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