三階の散策の結果、娯楽室、美術室、物理室。
そこで発見した事を各々報告する。
「ほら、見てくれ!オレ美術室で絵を描いてみたぜ!」
「…………ピカソ?」
桑田が取り出した絵はまるで、ピカソのようなよく分からないごちゃごちゃした人が描かれていた。
「舞園ちゃんだ!」
「………は?」
自信満々に答えた桑田に、舞園が冷ややかな視線を向ける。
苗木は絵をまじまじと眺めるが、どうみても舞園には見えない。
「………桑田クン、何で舞園さんに目が三つあるの?」
「あん?…何言ってんだ、これはボタンだよ」
「舞園さんの制服にボタンなんてないけど?」
「………あれ?」
にしても下手すぎる。いや、別の意味では上手いんだが。
「あ、そういえばこんなカメラを見つけたよ」
「これ僕のじゃねーかっ!」
苗木がカメラを見せると、山田がスライディングで横からカメラを奪い取る。
「って、うわ。すっげえ汚れてるんですが……もうイラネーヨ」
「じゃあボクがもらうね、そのうち役に立つかもしれないし」
苗木はセレスが預かると言い出す前に所有権を手に入れておく。
外に出たいセレスだが、第三の動機が無い以上、今はまだデジカメに固執することはないだろう。
「ところで朝日奈さん……」
「ん?」
「朝日奈さんは腹痛で寝てたんだよね?」
「う、うん……そうだけど……」
「朝日奈さんって、嘘つくと〝右足の踵〟を上げる癖あるの知ってた?」
「え?……あ!?」
苗木の発言に、朝日奈は自分の右足を見て慌てて下ろす。
「……ふつう、嘘の癖を言って確認させるものですが、よく分かりましたね」
と、セレスが感心したように言ってきた。
実際苗木はここにいる全員の嘘をついた時の癖を知っているのだが、それは別に言う必要もないだろう。
「では朝日奈さん、話してくれます?」
「……実は、昨日見ちゃったんだよね」
「見た?」
「………『女の子のユーレイ』」
「ユーレイって………あの幽霊の事!?」
「は、はは……冗談だろ?」
朝日奈の言葉に山田と桑田が顔を青くするが、朝日奈自身も顔を青くして、一向に否定しない。
「我は信じよう」
「ボクも信じるよ。だから、教えてくれない?その話……」
「さくらちゃん……苗木…………あのね、昨日の夜の事なんだけど、なんだか…寝付けなくってさ。お腹すいてドーナツでも食べようかと思って、倉庫のドーナツ漁りに部屋を出た直後に変な音が聞こえて……音が聞こえたお風呂場に行って……半開きになってたロッカーの扉を開けたら……」
「…………」
「…………」
苗木がチラリと桑田達を見るとガクガク震えていた。こういう話は苦手なのか?意外だな……。
「青白い光に包まれた人影がボウッと……すぐに尻餅ついて逃げちゃったけど、あれは女の子だったよ」
「きゃあああああああああああッ!!」
「あ、あ、ありえねーって…!ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、幽霊なんて!」
「見間違いに決まってるべ!証拠がねえ!」
「…幽霊なんて、非現実的すぎますわ。何かの見間違いに決まってます。大抵の場合がそうであるように、あなたの心理状態が見せた幻影でしょう…」
「じゃあ、確かめればいいんじゃない?……って、〝不二咲クン〟は何か知ってるみたいだけど」
「え!?」
不二咲は急に話を振られ、ビクッと肩を竦ませる。
ちょうど出て行こうとしていた体勢から、恐る恐る振り返った。
「あ!そういえばあの女の子、不二咲に似てたかも!」
「え?じゃあ実は不二咲千尋殿は、すでに幽霊!」
「いやいやありえねーって!幽霊見たから不二咲がすでに死んでるなんざ……全部こじつけだろうが!」
「その通りだ!不二咲くんは生きている!その推理は間違っているぞ!」
「……あ、あの……えっと……」
苗木はオロオロする不二咲に近づいてゆき、ドン!と壁に手を突き追い込む。ビクッと身体を震わせる不二咲に、苗木は笑顔を近づけ問いかけた。
「知ってることを話してくれるかな?」
「……あ、う……うん……わかったよぉ……」
不二咲は顔を赤くして、モジモジと頷いた。
「じゃ、じゃあ……脱衣場までついてきてくれる?」
「OK。行こっか皆」
苗木が笑顔で言うと、食堂にいた全員も不二咲の後に続いて歩き出した。
そして脱衣場に集まった一同の前で、不二咲はロッカーの扉を開ける。
「………パソコン?」
恐る恐る覗き込んだ朝日奈は、中にあった物を見て首を傾げる。
そこに置かれているのは、図書室にあった壊れたノートパソコンだった。
「ボクはこれを直して、あるプログラムを入れたんだ」
不二咲はそう言ってパソコンのスリープモードを解除する。
複数のアイコンが浮かび、左端にあるアイコンをクリックすると──
『来てくれたんだね、ご主人タマ!』
ディスプレイいっぱいに、不二咲の顔が映し出された。
「あれ?…何これ?」
「これは……『アルターエゴ』だよ」
「アルターエゴ……〝別人格〟という意味ですわね。創作の分野などで、意図的に異なる人格を演出する為に作られたものを指す場合が多い…」
「うん。名前の由来はそれだよ……人工知能プログラム・アルターエゴ。ここに置いておいたんだ」
「ふーむ。それにしても、『ご主人タマ』ですか…そうですか、これはこれは……萌えますな」
「──ボクの子に近づかないでね、山田クン」
山田がウンウンと頷いていると、不二咲がイイ笑顔で凄む。もともと小心者の山田はひぃ!と悲鳴を上げ、苗木の後ろに隠れた。
「ボクはこの子に、パソコンのハードディスクにあったファイルの解析を頼んだんだ。これがビックリするくらい厳重でさ………どれくらい進んだ?」
カタカタと音を立てながら、不二咲はキーボードを弄る。
『うーん。もう少しかかりそうかな……』
「じゃあ引き続きお願い。黒幕にも気をつけてね」
『任せて。ウェブカメラに怪しい人が映ったら叫ぶから大丈夫だよ』
「……じゃあ、ボクの部屋のドアを開けとこっか、どうせ鍵もかけてないんだし」
と、苗木が立候補すると、霧切も手を挙げる。
「私も同じようにさせてもらうわ」
「………ボクが信用できない?」
「ええ、まだ出来ないわ」
「