「スゴくない!?なんだかんだで、私ってお手柄じゃない!?」
脱衣場から出た朝日奈がルンルンと鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌ではしゃぐと……
「タッタラタタッター!朝日奈の活躍により、彼女のレベルが上がった!で……何がお手柄?」
と、モノクマが現れた。
この学園の秘密を暴けるかもしれない作業を行っているアルターエゴの近くで現れたため、全員がビクッと身体を震わせる。
「オマエラ、ずいぶん上機嫌じゃん。何か良いことでもあったん!?」
「別になんでもないよ」
「…内緒話?卑怯だぞ、独占取材を要求する!」
「却下、却下、超却下!!」
モノクマがしつこく聞いてこようとするが、山田が全力で拒否する。
「だ、大体…あんたに関係ないでしょ!」
「関係って…あの関係?」
「どういう…関係よ…?」
「いやらしい!関係だって!」
「あんたが先に言ったんじゃん!!」
朝日奈はモノクマに噛みつかんばかりに喚くが、モノクマは朝日奈の怒気を受け流す。
「わたくし達は、久し振りに大きなお風呂で羽を伸ばそうと相談し合っていただけですわ…」
「…へ?」
「ですが困った事に、お風呂は男女別に分かれていませんでしたので…男女のどちらが先に入るか、じゃんけんで決める事になったのです」
「私は苗木君と一緒でも良いんですけどね」
「あたしも苗木なら別に……」
「そこで朝日奈さんが勝って、それで喜んでいただけですわ」
舞園と江ノ島の言葉を完全に無視して、セレスはモノクマに嘘を述べる。急に名を呼ばれた朝日奈は一瞬、え?と不思議そうな顔をしたが、すぐにセレスの意図に気づいた。
「そ、そうそう…!そうなんだって!!という訳だからさ…ほらほら!男子は食堂にでも戻ってて!私達はこれから、ゆっーくりお風呂に入るんだから!!」
「……ふーん、ところで苗木クン」
「ん?」
「美術倉庫でさ、ボクの〝持ち物〟盗んだでしょ?」
「拾ったんだ。だから、あれはもうボクのだよ」
モノクマの問いに、苗木はハンと馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「なんて奴だ!返せ!どうせ苗木クンが持ってても意味ないでしょ!」
「意味があるかはボクが決める」
「むぐぐぐ……」
「もう!何時まで居るの!ほらほら、女子が入るからいったいった!」
苗木とモノクマが睨み合っていると、朝日奈が苗木達を押し出した。
「そうだね、じゃあ食堂で待ってよっか」
「明日は一番風呂をとるべー!」
「ちょーっと待った!…おかしくない?それって絶対おかしいよね?」
モノクマの問いにギクリと固まる男子達。
だが、後に続いたのは予想外の言葉だった。
「だってさ、これって『覗き』のチャンスじゃん!!そんな大チャンスを逃そうっての!?」
「「──!?」」
「いや、何衝撃受けたような顔してんの二人とも?」
モノクマの発言に桑田・山田の二人が漫画などで雷が落ちる表現がなされそうな顔をする。そんな二人に、苗木は呆れた顔を向ける。
「素直に、ボクの言う事を聞いておいた方がいいと思うよ…こんなチャンスは、そうそうありませんぞ!『男のロマン』って奴ですよ…!」
「男の……ロマン……!」
モノクマの甘言に、桑田がプルプル震える。
「待ちたまえ!そのような行為認め──」
「わりぃ、石丸!」
「うぐ!?」
当然風紀に厳しい石丸が咎めるが、桑田によって気絶させられた。野球で鍛えられた肩から放たれる肘鉄は石丸の意識を奪うのには十分だったようだ。
「兄弟!?桑田、テメェ……そんなに覗きたいのか?」
「馬鹿やろう!」
「!?」
「大和田、オメー……それでも男か!?」
「ああん!?」
「女が、入ってるんだぞ!それを覗かず何が男だ!これは、『男の覚悟』を試す試練だ!」
「男の……覚悟だと?」
桑田の熱弁に、大和田が揺れる。
いや、揺れるなよ何やってんだお前。
「悪いことだってのは分かってる。けど、そこに女が居るんだ!男なら行かなきゃダメだろ!」
「…………っち、分かったよ。オレも行く」
「行くの!?」
大和田の参戦に、苗木は目を見開いて驚いた。
そういえば大和田は女子に告白する際、緊張から怒鳴ってしまい連戦連敗。つまり彼女居ない歴=年齢だ。興味もあるのだろう。
「………不二咲クンは、いいの?」
「うん。ボク、女の子の裸には興味ないから」
「健全な男の子としてそれはどうかと思うけど」
「お?つまり苗木も興味あんだな!」
苗木の呟きを聞いた桑田が我が意を得たりとばかりに、苗木の肩をつかむ。
「興味はあるけど、覗く意味が……」
あまり無いんだよなぁ。
今現在一番のプロポーションを持つ朝日奈の成長した裸体を何度も見た記憶のある苗木からしたら、一々覗く価値もない。
「枯れてんな苗木……」
「あの、苗木クンも女の子の裸に興味あるの?」
「そりゃ、まあ……」
「……そ、そっかぁ……」
「どうしたの不二咲クン?」
苗木はシュンとする不二咲を不思議そうに見る。
その後、不二咲と気絶した石丸と共に食堂で男子の帰りを待っていると、ボロボロの男子達と怒った様子の女子達が入ってきた。
「あら、苗木君達は来なかったのですね」
「まあね」
「全くもう!こいつらにも見習ってほしいよ!」
「「す、すまねえ……」」
「わるかったべ」
「ごめんなさい……」
朝日奈にジロリと睨まれ畏縮する四人。何でも、作戦会議をしているうちに女子達が上がって鉢合わせしたらしい。
前回、苗木は普通に覗けたが……これは人が多い故起きた悲劇なのか、幸運がその場に居なかったから起きた不運なのか……。
「──にょほほ。これもまた青春!」
と、そこへホクホク顔のモノクマが現れる。
「ふふん。青春を楽しんでいる皆にプレゼントを用意したよ」
「プレゼント?」
「おやおやおやぉ?気になっちゃう?うぷぷ、だったら体育館に行ってみなよ。そこにプレゼントを置いといたからさ…迷わず行けよ、行けばわかるさ!!」
モノクマはそう言って姿を消した。