苗木は火傷でズキズキ痛む手を、応急処置にもならないが潤しておこうと舐めているなか、モノクマは何事も無かったかのように話を再開する。
「思わぬアクシデントで苗木クンが傷つきましたが…苗木クンに免じて特別に警告だけにしましょう、今後は気をつけてね。校則を破る者を発見した場合は、グレートな体罰を発動させちゃうからね!」
モノクマは額に血管を浮かび上がらせ、爪を立てながらそう叫ぶ。
「そ、そんな無茶苦茶だよ!」
「モノクマ、保健室使いたいんだけど?」
「え?もう、仕方ないなあ。開放しとくよ……」
モノクマはそう言って体育館から出て行った。保健室を開けに行ったのだろう。
苗木が辺りを見回すと皆が皆、疑いと敵意のこもった視線を全員に向けていた。まあそれもそうだろう。この中の誰かが、自分のことを殺そうとするかもしれない状況なのだ。
でもそんなの、苗木には関係ないことだ。
「この中に治療できる人居ない?火傷、そろそろ無視できないくらい痛みを発してきたんだけど」
「そ、そんな!あの……ごめんなさい、私はちょっと」
「私も、普通の怪我なら応急処置ぐらいできるけど……えっと、ツバつけとけば治るかな?」
苗木の問いに、舞園と朝日奈葵が反応したが、2人は出来ないらしい。
他の面々も他人と関わらないために無視するか、治療できないのか申し訳なさそうな顔をするだけだった。ただ一人桑田怜恩は、女子に囲まれてる苗木を睨んでいたが。
「……仕方ないわね──」
「んじゃ、私がやってあげるよ」
そして霧切がやれやれと肩をすくめ、江ノ島盾子がしかたないなぁ、と言いたげに苗木に近づく。
「……えっと……」
「……お願いするわ」
「りょーかい……行くよ苗木」
霧切と江ノ島が数秒見つめ合い、霧切が苗木をチラリと見てから引き下がった。江ノ島はうんうんと頷くと苗木の左手を掴み歩き出した。
「ほい、お終い。ま、跡は残んないっしょ。よかったね」
「良かったね苗木!でも江ノ島ちゃん手慣れてるね」
「そりゃあね。自分の怪我は自分で治さないと、戦場で置いてけぼりじゃん?」
「戦場って、軍人みたいなこと言うんですね……」
舞園は冗談だと思って笑っているが、苗木は呆れた顔で江ノ島を見る。こいつは自分の正体を隠す気はあるのだろうか?
まあ、前回の苗木も気づけなかったのだが。
「ありがとね江ノ島さん。お礼に、ボクに出来ることなら何でも頼んでよ」
「……ん?今何でもって……あ、いや。うん、じゃあ私のことを殺さないでね?それだけで良いから」
「………うん。わかった。江ノ島さんを殺さないし、誰にも殺させない」
苗木はそう言って笑う。
殺させないという言葉に、江ノ島はポカンと苗木を見つめ、それからクスリと笑った。
「なにそれ、苗木が私を守るって、頼りなくね?」
「そうかな?」
「……………」
「どうしたの舞園ちゃん?」
苗木も江ノ島と同じように笑っているのを、舞園が羨ましそうに見ていると………
「………えい」
苗木は何を思ったのか、冷蔵庫から輸血パックを取り出し放り投げる。
「青春してま───うわぁぁぁ!真っ赤っか!?」
それはビヨーンと飛び出してきたモノクマに当たり破裂して、モノクマを紅く染めた。
「何をするのさ!」
「いや、そろそろモノクマが来るかと思って、当たってくれないかな~て投げたら運良く当たってさ」
「あんまりだよ!せっかくイイモノを持ってきてあげたのにさ!やっぱあげない!」
「は?」
「でも謝るなら考えてあげても──」
「は?」
「……いや、だから」
「は?」
「………はい、電子生徒手帳です」
「ん。はい、江ノ島さんと舞園さん、それと朝日奈さんも…」
苗木は、落ち込むモノクマから電子生徒手帳を受け取ると、3人にも配る。全員に行き渡ると、示し合わせたかのように全員の電子生徒手帳を起動した。
そして苗木の電子生徒手帳には、苗木誠という文字が浮かぶ。
「完全防水で水に沈めても壊れない優れもの!耐久性も抜群で10トンくらいの重さなら平気だよ!詳しい校則もここに書いてあるから確認してね」
「はいはい……」
苗木は早速校則を確認する。まあ、内容は前回と変わらないのだろうが。
《1》生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。
共同生活の期限はありません。
《2》夜10時から朝7時までを〝夜時間〟とします。
夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。
《3》就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。
他の部屋での故意での就寝は居眠りとみなし罰します。
《4》希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。
特に行動に制限は課せられません。
《5》学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。
監視カメラの破壊を禁じます。
《6》仲間の誰かを殺したクロは〝卒業〟となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
《7》なお、校則は順次増えていく場合があります。
やはり前回と同じだ。前回と違うのは、コレをもらったタイミングと場所だろう。
そして前回同様、舞園が挙手をし恐る恐る尋ねる。
「校則の6番の項目なんですけど、これってどういう意味だと思いますか?」
「殺すとこを見つかるなって事でしょ?それと卒業する前に発覚したらアウトかな」
「何で?」
「例えば大神さんや大和田クン、この二人なら何も考えずに殴り殺せるよね?」
「そんなことしないよ!」
「例え話だから落ち着いて……モノクマはそれが面白くないんじゃないかな?武器を使ったサバイバルじゃなくて、頭を使ったサバイバルが見たいんだよ」
「性格悪!」
「……えっとさ、モノクマの性格が悪いのと校則もわかった事だし、そろそろ学園内を探索してみようよ!」
「……そうだね。幾つかの班に別れて探そうか。一人で動くのは危ないし」
朝日奈の言葉に苗木が肯定すると、朝日奈は立ち上がり保健室の出口に向かう。
「私は大神ちゃんと回ってみるね?あの子の傍なら安心だもん!」
「………確かに」
安全だろうな。彼女と朝日奈が前回のように親友になれば。
「それじゃ江ノ島さんも行こうか」
「へ?私?」
「殺させないって約束したしね。舞園さんはどうする?」
「お二人と一緒に行きます!」
「そっか、じゃあ………」
「君たち!連絡事項だ!」
行こうか。と言う前に、保健室の扉が開いて、石丸が入ってきた。
「調査の結果を報告し合うことになった!食堂に集まりたまえ!」
「………うい~ッス」
「うん。わかったよ」
「わかりました」
「うむ!おや?朝日奈くんが居ないようだな。よし!僕は朝日奈くんに声をかけてから向かおう!」
石丸はそう言うと、朝日奈を探しに保健室から出て行った。
「…………じゃあ、ボクたちも行こうか?」
「おっけー」
「はい!」