救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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イキキル(非)日常①

 苗木は火傷でズキズキ痛む手を、応急処置にもならないが潤しておこうと舐めているなか、モノクマは何事も無かったかのように話を再開する。

 

「思わぬアクシデントで苗木クンが傷つきましたが…苗木クンに免じて特別に警告だけにしましょう、今後は気をつけてね。校則を破る者を発見した場合は、グレートな体罰を発動させちゃうからね!」

 

 モノクマは額に血管を浮かび上がらせ、爪を立てながらそう叫ぶ。

 

「そ、そんな無茶苦茶だよ!」

「モノクマ、保健室使いたいんだけど?」

「え?もう、仕方ないなあ。開放しとくよ……」

 

 モノクマはそう言って体育館から出て行った。保健室を開けに行ったのだろう。

 苗木が辺りを見回すと皆が皆、疑いと敵意のこもった視線を全員に向けていた。まあそれもそうだろう。この中の誰かが、自分のことを殺そうとするかもしれない状況なのだ。

 でもそんなの、苗木には関係ないことだ。

 

「この中に治療できる人居ない?火傷、そろそろ無視できないくらい痛みを発してきたんだけど」

「そ、そんな!あの……ごめんなさい、私はちょっと」

「私も、普通の怪我なら応急処置ぐらいできるけど……えっと、ツバつけとけば治るかな?」

 

 苗木の問いに、舞園と朝日奈葵が反応したが、2人は出来ないらしい。

 他の面々も他人と関わらないために無視するか、治療できないのか申し訳なさそうな顔をするだけだった。ただ一人桑田怜恩は、女子に囲まれてる苗木を睨んでいたが。

 

「……仕方ないわね──」

「んじゃ、私がやってあげるよ」

 

 そして霧切がやれやれと肩をすくめ、江ノ島盾子がしかたないなぁ、と言いたげに苗木に近づく。

 

「……えっと……」

「……お願いするわ」

「りょーかい……行くよ苗木」

 

 霧切と江ノ島が数秒見つめ合い、霧切が苗木をチラリと見てから引き下がった。江ノ島はうんうんと頷くと苗木の左手を掴み歩き出した。

 

 

 

 

「ほい、お終い。ま、跡は残んないっしょ。よかったね」

「良かったね苗木!でも江ノ島ちゃん手慣れてるね」

「そりゃあね。自分の怪我は自分で治さないと、戦場で置いてけぼりじゃん?」

「戦場って、軍人みたいなこと言うんですね……」

 

 舞園は冗談だと思って笑っているが、苗木は呆れた顔で江ノ島を見る。こいつは自分の正体を隠す気はあるのだろうか?

 まあ、前回の苗木も気づけなかったのだが。

 

「ありがとね江ノ島さん。お礼に、ボクに出来ることなら何でも頼んでよ」

「……ん?今何でもって……あ、いや。うん、じゃあ私のことを殺さないでね?それだけで良いから」

「………うん。わかった。江ノ島さんを殺さないし、誰にも殺させない」

 

 苗木はそう言って笑う。

 殺させないという言葉に、江ノ島はポカンと苗木を見つめ、それからクスリと笑った。

 

「なにそれ、苗木が私を守るって、頼りなくね?」

「そうかな?」

「……………」

「どうしたの舞園ちゃん?」

 

 苗木も江ノ島と同じように笑っているのを、舞園が羨ましそうに見ていると………

 

「………えい」

 

 苗木は何を思ったのか、冷蔵庫から輸血パックを取り出し放り投げる。

 

「青春してま───うわぁぁぁ!真っ赤っか!?」

 

 それはビヨーンと飛び出してきたモノクマに当たり破裂して、モノクマを紅く染めた。

 

「何をするのさ!」

「いや、そろそろモノクマが来るかと思って、当たってくれないかな~て投げたら運良く当たってさ」

「あんまりだよ!せっかくイイモノを持ってきてあげたのにさ!やっぱあげない!」

「は?」

「でも謝るなら考えてあげても──」

「は?」

「……いや、だから」

「は?」

「………はい、電子生徒手帳です」

「ん。はい、江ノ島さんと舞園さん、それと朝日奈さんも…」

 

 苗木は、落ち込むモノクマから電子生徒手帳を受け取ると、3人にも配る。全員に行き渡ると、示し合わせたかのように全員の電子生徒手帳を起動した。

 そして苗木の電子生徒手帳には、苗木誠という文字が浮かぶ。

 

「完全防水で水に沈めても壊れない優れもの!耐久性も抜群で10トンくらいの重さなら平気だよ!詳しい校則もここに書いてあるから確認してね」

「はいはい……」

 

 苗木は早速校則を確認する。まあ、内容は前回と変わらないのだろうが。

 

《1》生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。

   共同生活の期限はありません。

 

《2》夜10時から朝7時までを〝夜時間〟とします。

   夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

 

《3》就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。

   他の部屋での故意での就寝は居眠りとみなし罰します。

 

《4》希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。

   特に行動に制限は課せられません。

 

《5》学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。

   監視カメラの破壊を禁じます。

 

《6》仲間の誰かを殺したクロは〝卒業〟となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

《7》なお、校則は順次増えていく場合があります。

 

 やはり前回と同じだ。前回と違うのは、コレをもらったタイミングと場所だろう。

 そして前回同様、舞園が挙手をし恐る恐る尋ねる。

 

「校則の6番の項目なんですけど、これってどういう意味だと思いますか?」

「殺すとこを見つかるなって事でしょ?それと卒業する前に発覚したらアウトかな」

「何で?」

「例えば大神さんや大和田クン、この二人なら何も考えずに殴り殺せるよね?」

「そんなことしないよ!」

「例え話だから落ち着いて……モノクマはそれが面白くないんじゃないかな?武器を使ったサバイバルじゃなくて、頭を使ったサバイバルが見たいんだよ」

「性格悪!」

「……えっとさ、モノクマの性格が悪いのと校則もわかった事だし、そろそろ学園内を探索してみようよ!」

「……そうだね。幾つかの班に別れて探そうか。一人で動くのは危ないし」

 

 朝日奈の言葉に苗木が肯定すると、朝日奈は立ち上がり保健室の出口に向かう。

 

「私は大神ちゃんと回ってみるね?あの子の傍なら安心だもん!」

「………確かに」

 

 安全だろうな。彼女と朝日奈が前回のように親友になれば。

 

「それじゃ江ノ島さんも行こうか」

「へ?私?」

「殺させないって約束したしね。舞園さんはどうする?」

「お二人と一緒に行きます!」

「そっか、じゃあ………」

「君たち!連絡事項だ!」

 

 行こうか。と言う前に、保健室の扉が開いて、石丸が入ってきた。

 

「調査の結果を報告し合うことになった!食堂に集まりたまえ!」

「………うい~ッス」

「うん。わかったよ」

「わかりました」

「うむ!おや?朝日奈くんが居ないようだな。よし!僕は朝日奈くんに声をかけてから向かおう!」

 

 石丸はそう言うと、朝日奈を探しに保健室から出て行った。

 

「…………じゃあ、ボクたちも行こうか?」

「おっけー」

「はい!」

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