救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑥

「平和って素晴らしい」

 

 石田(笑)の誕生もなく、何時ものように舞園と江ノ島の相手をして大和田や石丸と話して平穏な一日を過ごした苗木は、不意に無表情になり考える。

 アルターエゴに執着するのは一人で済んだ。とはいえ、結局利用できることに変わりはない。

 

「………ま、その前にセレスさんをどうにかすればいっか」

 

 

 

 

 次の日、苗木は脱衣場に来ていた。

 

「はぁはぁ………」

「……なぁにをしてるのかな、山田クン?」

「ひい!?」

 

 苗木の問いかけに、荒い息遣いでロッカーを覗き込んでた山田がビクリッと身を震わせ恐る恐る振り返る。

 

「な、なぁんだ、苗木誠殿でしたか……脅かさないでください、てっきり霧切響子殿かと──」

「な・に・を・してるのかにゃ~この豚は」

「………も、もしかして怒ってます?」

「…舞園さん、江ノ島さん。皆を呼んできて」

「はい」

「うぃー……」

 

 苗木の指示に、舞園と江ノ島はその場から去っていった。

 

「ねえ山田クン?肉を削ぎ落としていく拷問法は知ってる?」

「な、何故突然そのような話を?」

「オタクってさ、太ってる人多いよね?太ってるとオタクになりやすいのかなぁ?なら、今すぐ痩せさせてあげようか?」

「ご、誤解ですぞ苗木誠殿。オタクは必然的に外に出るより、動かずアニメや漫画を見る時間が多いのであって……太ってるからオタクになるのではなく、オタクになったら太るので──」

「うん。別にそう言う意図で言ったんじゃないのはわかってる?」

「あわ、あわわわ………」

 

 苗木はニッコリと中性的でかわいらしいとご近所に評判だった顔で笑みを作る。優しげなその笑みとは裏腹に、山田の顔はみるみる青くなっていった。

 

「呼ばれて来たけど……山田君、また貴方なの?」

「ひいーー!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

「………苗木君、何をしたの?」

「こういう事は二度としないようにって、叱っただけだよ?」

 

 全力の謝罪をする山田を見て、霧切は若干引いた顔で苗木を見るが、苗木はどこに吹く風、素知らぬ顔でやってきた霧切達を出迎えた。

 

「……山田君。私は昨日脱衣場で、アルターエゴを勝手に使わないように言ったはずよ」

「そ、それは…えっーと…彼女と話しているのが…その…思いのほか楽しくて…そ、それで、つい……」

「と、とりあえずストップ!まさかとは思うけど、山田っち……〝惚れた〟とか言わねーよな?」

「ハハハ…魔界の冷酷殺人マシーンと言われた僕ですよ?その僕が惚れたなんて…そんな……え、ウソ……じゃあ、これって『恋』!?」

 

 山田はハッとした顔になり、不二咲の方を勢いよく振り返る。その鬼気迫った表情に、不二咲はヒッ!と短い悲鳴を上げた。

 

「お義母さん!娘さんを僕にください!」

「いやだ!山田クンにボクの半身であり息子であるアルターエゴは渡せない!いろんな意味で!」

 

 ついでに山田、お義父さんだと思うぞ。不二咲はその見た目でも男だから。

 

「……はあ、とにかく山田君。もうこんな事はしないでね。皆も、長居すると感づかれるかもしれないわ、行きましょう」

「忠告だけで大丈夫なのか?」

「策は考えてある……大丈夫よ……」

 

 すごすごと引き返していく山田を見送った後、苗木達も部屋へと帰っていった。

 

 

 

 視点は変わりセレスティア・ルーデンベルク。

 彼女は常に、この学園で送る生活を受け入れるよう、皆に言いつけてきた。

 そう、衣食住も保証されたこの環境において、彼女は文句などあるはずもない………

 

「訳ねーだろうがぁぁぁぁぁ!」

 

 唐突に叫ぶセレス。そこに人が居たり、或いは誰かに聞かれたりしたら、監禁生活にとうとう精神がやられたのかと思うところだが、生憎そこは彼女の部屋で防音もしっかりしているため、彼女の怒声が誰かに聞かれることはない。

 100億円……その金があれば、長年の夢を叶えられる。それを手に入れここから出るためなら人だって殺そう。

 

「……問題は、誰をどう使うか……ですわね」

 

 一番操り易そうなのは山田。

 自分でも勝てそうな相手は苗木と不二咲。しかし不二咲は常に石丸や大和田がそばにいる。となればやはり苗木?

 舞園や江ノ島なら匂いで気づきそうだが、匂いならまだ誤魔化せる。

 

「少々危険な賭けですが、これに懸けてみますか……幸い、彼は山田君から恐れられているようですし」

 

 命を賭けた勝負は何度もやった。直接手を下すか下さないかの違いでしかない。

 

 

 

 

 始まったか。

 苗木は脱衣場に集まった面々を見回しながらそう思った。

 アルターエゴが居なくなった。見知らぬ人間や山田が近づいたら悲鳴を上げるよう言ってたにも関わらずだ。

 

「簡単だ、黒幕や山田以外でここにいる誰かが犯人なんだ」

「だろうね……例えば、黒幕の《内通者》とか…」

 

 十神の推理を肯定するように苗木が呟くと一瞬、大神の肩が揺れる。本当に一瞬で、最初から大神だけを見ていた苗木以外は気づいてない。

 

「……え?」

「この中に黒幕側の人間…つまりは、黒幕の内通者がいて…そいつがアルターエゴを奪った。そうは考えられないか?」

「…………」

「前から思っていたんだ。俺達の中には内通者がいるんじゃないかとな…このゲームをスムーズに進める為に、黒幕が潜ませた内通者が…」

「ボクはいろんな人にその可能性を疑われてるけどね」

「当然だ。お前はただ運で選ばれた凡人のくせに有能すぎる」

「苗木君を疑っているんですか!?」

「苗木が内通者なわけないじゃん」

「十神ぃ……いくら何でも聞き逃せねーぞ」

「その通りだ!苗木くんが殺し合いをさせたいモノクマの内通者ならあの時──」

「い、石丸クン!それ以上はダメだよぉ……」

「……む」

 

 十神の疑念に何名かが反論したが、十神は興味なさそうに聞き流す。

 

「相手が何者であれ、この場で壊してないって事は壊す気はなかったって考えようよ」

 

 とその時、夜時間を知らせる放送が全員の耳に入る。

 仕方なく、捜索は明日からということで各々が部屋に戻った。

 

 

 

 

 セレスは順調に行っているとほくそ笑む。

 後は山田をうまく拐かして………。

 

「やあセレスさん。こんな時間に、夜時間の出歩きを禁止した本人がどこにいくの?」

「………苗木……君……!?」

 

 扉を開け最初に顔を合わせたのは目的の山田ではなく、笑顔で声をかけてきた苗木だった。

 

「な、何かご用ですの?」

「……セレスさん、ボクと『ゲーム』しない?……モノクマに道具を用意してもらったしさ」

 

 苗木はそう言って裏に白と黒の半々で色を塗られ、黒の部分にモノクマの左目のマークが描かれたトランプのデッキを二組見せる。

 

「お断りしますわ。わたくしは小腹が空いたので倉庫に向かおうとしていただけですの」

「あ、ごめん。負けるのが怖かった?」

「上等だよこのチビがぁぁぁぁ!」

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