救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編②

「それでは報告会だ!」

 

 食堂に集まり何時もの報告会をする一同。苗木がチラリと霧切を見るとぷいと目を逸らされた。

 まあ仕方ないか……。

 

「今回も窓には鉄板が打ち付けられてたな。オレや大神で試したが、やっぱビクともしねえ」

「相変わらずってことね……」

「残念だが四階からも脱出は出来ないようだな……ふむ、他には?」

「化学室にいろんなサプリや栄養剤が置かれてたよ!……でも毒薬もあったみたい……」

 

 朝日奈が毒があることに落ち込んでいる。黒幕が用意した殺人道具を見てしまったのだから当然か。

 しかし、黒幕の用意した……か。

 苗木はチラリと瓶を眺める。記憶力をあげるとは書かれているが、思い出す薬とは書かれていない。彼女のことだ、思い出す道具は一つくらい用意していることだろう。そしてそれは、既に苗木が持っている。

 これは、飲んだ時点から先のことを覚えることは出来ても、過去を思い出す効果はない。

 大方誰かが脱出スイッチを使った後にこの薬を発見し、記憶の復活を期待して誰かに飲ませた後の絶望でも見るために置いておいたのだろう。

 記憶力……仮に学級裁判が行われたらやはり多くのことを覚えておいた方がいい。後で飲んでおくか。

 

「後は音楽室とかあったね。ストレス溜まったら舞園さんの歌でも聴く?」

「それはいいな!いっそ、『カラオケ大会』でもしよう!」

 

 石丸が大声で苗木に同意し、しかし苗木は顔を青くして朝日奈を見る。

 最初の一年、世界がまだ平穏で退屈な毎日だった頃にクラス全員で行ったカラオケでの彼女の歌を、某ガキ大将のような歌を思い出したのだ。

 

「うんうん!それいいね!」

「…………」

 

 しかも彼女は乗り気だし。

 それにしても………

 

「……退屈、ね……」

 

 なんとなしにこの言葉が出てしまうとは。

 平穏を誰より望んでいる自分が、平和な時代を退屈などと好意的でない解釈をするなど、人は変われば変わるものだ。

 

「そういえば、モノクマが学園長室前で踊っていたな。確か鍵が壊されたとか……おい苗木、お前何か知らないか?」

「調べるのは自由だからね、鍵を壊すなって校則もないもの。ま、今知ってる以上の情報は得られなかったよ?」

 

 嘘ではない。苗木と皆では知っている情報に差異があるだけだ。

 

「なんだつまらん。ま、大方お前がまともに探せなかったのだろう。でなければモノクマがあそこまで入るのを拒むとは思えん。あるいは、苗木が俺達に嘘を付いているか」

「苗木が嘘、何で?」

「まあ、明らかに内通者が行う行為でないな。だが自分だけが知る情報を使い誰にもバレぬように殺す作戦を練れるかもしれん」

「苗木がんなことするかよ!」

「そうだぞ!苗木くんは殺人などしない!」

「会って数日のお前等にそんなことが分かるのか?俺は内通者より、そいつの方を危険視しているぞ」

 

 やっぱり容赦ないな………と、苗木は苦笑する。

 それも仕方ないことだとは納得しているが、現状の十神に危険人物扱いはされたくはない。

 

「そういえば《情報処理室》の鍵が開かなかったよね。彼処、何があるんだろ?」

「…さあ?」

「ついでにそこの鍵も壊しておけば良かったものを……何なら、今からやるか?」

「…ん~、それは無理っぽいね」

 

 電子生徒手帳が震えた直後、苗木がそう呟いた。見てみれば、〝鍵のかかったドアの破壊禁止〟が校則に追加されていた。

 

「もっと早く追加してれば良かったよ」

「うわ!でたぁぁ!」

 

 突然のモノクマの登場に山田が叫び、全員がモノクマを見る。モノクマはどうやら落ち込んでいるようだ。

 

「苗木クン、ボクの部屋から盗んだものを今すぐ返しなさい。先生、怒ってないから(怒)!」

「ボクは校則に従い自由に調べてただけですよ?これだって、調べるうちに手に入れた戦利品。だからボクは返さないし、ボクは悪くない」

「むぐぐぐ……」

「あ、そうだモノクマ。〝この写真〟について知らない?」

「んむ?ああ!やっぱり苗木クンが持ってたんだね!?」

 

 苗木が机に2枚の写真を置くと、モノクマが苗木の背をよじ登り机の写真を見て叫ぶ。鬱陶しい。

 

「これはね~……まあ、合成ではないよ」

「おい待てよ、オレらはんな写真撮った覚えねえぞ」

「覚えてないのとやってないのは別なんだよね~。モロコシヘッドには難しかった?」

「ああぁぁぁぁ!?」

「落ち着け兄弟!モノクマに手を出してはいかん!」

「………チィ」

「そうそう、そこのホモ眉毛の言う通り」

「モノクマ……重い、さっさとどけ『バカデブス』」

「バカ…デブ…ブス……揃ってる」

 

 苗木の毒舌に江ノ島が指を立て感心したように言う。朝日奈も本当だー!と目を輝かせた。

 

「苗木クンたら悪口を心得てるね~。でも、ボクはその程度の悪口で怒るほど、心の狭いクマじゃないんだよね~」

「お前何だか、動物園の檻にいたらパンダ見れなかった客が〝妥協して見そうな見た目〟してるよな(笑)」

「「「………?」」」

「……いや、それどうなんだべ?」

 

 苗木の言葉に全員が首を傾げ葉隠も呆れたように言うと、モノクマがプルプル震える。どうせ笑っているのだろうと誰もが思ったが………。

 

「な、なな、なななな、な、何でそこまで……的確にクマを傷つける台詞が言えるんだよオマエはぁぁぁ!──言う事欠いてまさかの『妥協』だと!?妥協して見に来られる動物なんて価値があるわけねぇだろ!ボクが園から出て行くレベルで必要ない存在だってのか!こんな侮辱を受けたのは初めてだよ!」

「めちゃくちゃブチぎれてらっしゃるでござる!?」

「こういう時は……良いねその被害妄想(絶望)、まさしく理解不能(絶望)だ、と言えばいいのかな?……まあいいや。──ところで皆、〝混浴〟しない?」

「………そうだな、そうしよう」

「…そろそろ頃合いだものね?」

「え?え?」

「……不二咲クン」

「へ?」

 

 苗木の提案に、全員が不二咲を見て苗木が言いたかったことを理解する。苗木はモノクマを剥がしてから行くから先に行っててと言うと、全員が居なくなった後モノクマを見る。

 

「……『あの中』に知られたら困る情報はあるの?」

「あれはボクからのプレゼントだからね。ボクの不利になることは無いよ」

「……だと思った」

 

 苗木はモノクマを背中から下ろして脱衣場に向かった。

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