救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編③

『みんな、来てくれたんだね!このノートパソコンに元からあった《学園のファイル》が、やっと開けるようになったんだよ!』

 

 苗木も到着し、不二咲がロッカーを開け中のアルターエゴを起動すると、不二咲達に気づいたアルターエゴが笑顔で話しかけてくる。

 

『待たせちゃって、ごめんね』

「ううん。よく頑張ったよ、アルターエゴ」

『えへへ……』

 

 主人による不二咲に誉められたことが嬉しいのか、アルターエゴはどこか照れくさそうに笑う。

 そして、不二咲が判明した事実について尋ねる。

 

『じゃあ、解析したファイルから抽出した情報を僕なりに纏めて話していくね。調べてみたところ、この学園ではある計画が進行中だったみたいなんだ。〝希望ヶ峰学園に高校生達を隔離し、共同生活を送らせる〟…そんな計画がね』

 

 ざわっと全員の顔つきが大なり小なり変わる。

 まあその計画は進行中どころか完了しているのだが。それともこういうのは、隔離した共同生活が終わるまで進行中と言うことだろうか?

 

『しかもその共同生活も、ただの共同生活じゃなくって……隔離される高校生達は、場合によっては、学校内で一生を過ごさなければならないって…』

 

 そして未来に繋ぐ希望のために、超高校級同士で子孫を残すようにも言われていたな。

 

「同じだ…我らの置かれた状況と…」

『とんでもない計画だよね…しかもね、そんな計画を立てたのは他でもない、〝希望ヶ峰学園の事務局〟だったらしいんだよ』

「え…?ちょっと待って!じゃあ、私達が閉じ込められてるのって…犯罪組織とか、異常者の仕業じゃなくて…」

「希望ヶ峰学園自体が仕組んだ事……ということですわ」

「でも、それっておかしくありません?運動系や文系はともかく、私や江ノ島さんみたいに〝メディア〟によって左右される才能の隔離なんて……」

 

 それはそうだ。一般に出てこないアイドルを応援する奴が居るはず無い。居たとしたらどうやって応援するんだ。

 

「……続きを話せ」

 

 十神が言うと、不二咲は再びキーボードを操作し続きを促す。

 

『でね、そんな計画が立てられた原因は、一年前に起きたある事件にあるらしいんだ。その事件については……こんな風に書いてあったよ……《人類史上最大最悪の絶望的事件》、だって』

 

 絶望した者が誰かを絶望させて連鎖的に広がり、世界を呑み込む戦争に発展した事件。

 主義も宗教も領地も、何を主張するでも何を奪うでもなく殺すために殺す、畜生にも劣る絶望的な光景。

 思い出すだけで胸くそ悪い。

 

「人類史上最大最悪の絶望的事件……?」

「なんだべ、その大げさな名前の事件は……!」

「一年前だと?……そんな話聞いたこともないが」

『その一年前の人類史上最大最悪の絶望的事件って、かなり悲惨な事件だったみたいだよ。だってその事件のせいで…希望ヶ峰学園は教育機関としての機能を失って、閉鎖に追い込まれたらしいんだ』

「なるほどね…繋がってきたわ…つまり、今から一年前に、人類史上最大最悪の絶望的事件と呼ばれる事件が起き…その事件のせいで、希望ヶ峰学園は閉鎖に追い込まれた」

「そしてその学園を舞台に持ち上がった計画が、そこに俺達を隔離して一生の共同生活を送らせるという計画なわけか」

 

 霧切と十神は納得がいったというような反応をしていたが、他の面々は困惑していた。

 

「でもさ、どうして希望ヶ峰学園の事務局は、私達を閉じ込めるような計画を立てたのかな?」

「それに、人類史上最大最悪の絶望的事件とは、一体どのような事件なのだ?」

 

 不二咲はすぐにそれらの質問をキーボードに打ち込んでいく。だが、帰ってきた答えは………。

 

『ごめん…それ以上の事はわからないんだ…これ以上の情報は、もうここにもないみたいで……役立たずで、ごめんね……』

 

 わからない。それが答えだった。

 それ以上のヒントはここには用意されていない。

 

『あ、待って!それと、もう一つ大事な事がわかったんだ…とても大事な事……多分、〝黒幕〟の事だよ…』

「黒幕ですと!?さすがは僕の天使!」

『黒幕の正体まではわからなかった…でもね、手掛かりなら見つけたよ。僕達を隔離する計画を立てた希望ヶ峰学園事務局、その事務局の責任者が、希望ヶ峰学園の学園長だったんだ。つまり、すべてを仕組んだ黒幕は、その〝学園長〟って可能性が高いんだ。ちなみに、その学園長は三十代後半の男性で…今もこの学園内にいる可能性が高いみたいだよ』

「学園長が、この学園の中に!?」

 

 アルターエゴの報告に、霧切が滅多に見せないほどの動揺を見せた。そう言えば学園長はどこに行ったのだろう?

 相手は絶望なのだ。殺した後骨を犬に配ってる可能性もあるし、あるいはこの学園の何処かに残している可能性もある。せっかく鍵を手に入れたのだから、その内探してみるか。

 

「私が……捜す………学園長は…私が必ず捜してみせる…必ずよ……」

「ど、どうしたの、霧切ちゃん?」

「…………私が見つけないといけない……そんな気がするの…」

 

 そして、それ以上の情報を得られることはなかった。

 

「それにしても、希望ヶ峰学園事務局ってのは何を企んでるんだ?なんで、オレらに殺し合いなんかさせてんだ!?」

「一年前の事件が全ての元凶とか言ってけどよー、誰か知ってる奴いるか?」

「人類史上最大最悪の絶望的事件、だよね?」

「………モノクマってさ、本当に希望ヶ峰学園の事務局が操ってるのかな?」

 

 苗木が呟くと、全員の視線が苗木に集まる。

 

「これは推測なんだけどさ。人類史上最大最悪の絶望的事件が希望ヶ峰学園を閉鎖に追い込むほどの事件なら、普通ニュースになるよね?でも知らないなら隠蔽されたのかも。まあどっちにしろそれほど希望ヶ峰学園にとって大打撃なら、それをなんとか持ち直そうと無理やり集めたのがボクらだとしようか。これだと、殺し合いをさせる意味がないよね?〝蠱毒〟じゃないんだし、生き残った生徒が全員分の才能を持ってる訳じゃないんだから」

「……孤独?」

「蠱毒……さ、皿の入った坪に毒虫を大量に入れ殺し合わせる邪法よ。最後残った毒虫が、一番強い毒を持っているってことになるのよ……」

「これってさあ、希望ヶ峰学園を閉鎖に追い込んだ何者かが、希望ヶ峰学園に入る予定だったボク達を狙って、それを守るために立てた計画をその何者かに利用されたんじゃない?」

 

 我ながらよくもまあ、こんなにポンポンと嘘が出てくるものだと感激する。

 学園長の人となりを知っている苗木からしたら、学園長を疑ってほしくないのだ。

 

「……ふむ。どのみち現状では分からないことだらけだ。──よし!放っておこう!」

 

 いいのかそれで風紀委員ェ……。

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