救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編④

 苗木達がアルターエゴの報告を聞き終え脱衣場の外に出ると、何故かドキドキしているモノクマに出くわした。

 

「胸がドキドキ…ドキドキ…」

「どうしたのモノクマ、発情期?」

「怒りで、胸が、怒気怒気してんの!」

「誰だよモノクマ怒らせたの……ん?何で皆ボクを見るの?」

 

 苗木が怒っているらしいモノクマを見て全員を責めるように見ると、似たような視線で全員から見返された。

 

「今回は苗木クンは関係ないよ。それに、オマエラだけで淫らな混浴を楽しんだ事にも、苗木クンの悪口の才能にも嫉妬はすれど、怒ってはいません……ワクワク、ワクワク…怒りで頭が沸く沸くしてんの!」

「頭が沸いてる?前からじゃないか」

「ムカー!脳内メモにインプットしとけよ。ボクは、やられたらやり返す子なんだよ。メニワ・メオ…ハニワ・ハオ…」

 

 モノクマはそう言い残して何処かに消えた。

 

「目には目を、歯には歯を……ねぇ……ボクの部屋の鍵でも壊すのかな?」

「やっぱり怒らせてる自覚あったんだ……」

 

 苗木の呟きに、朝日奈は呆れたように言った。

 苗木のは悪意無き暴言ではなく、悪意ありきの暴言だ。人を苛つかせている事など自覚している。まあ、彼女に堪えているかは知らないが。

 

「でもま、妥協してたら希望はもちろん絶望も出来ないし、怒らせるのは十分か」

 

 とその時、夜時間の放送が流れた。

 

 

 

 

 苗木は自室で眠ろうと横になってると、扉の向こうから誰かが来た気配を感じる。

 敵意や殺意は感じないが……。苗木はナイフを取ると、そっと扉の前に立ちドアノブに手をかけた。

 

「………随分なご挨拶ね」

「…霧切さん…」

「………二人でお風呂に入らない?」

 

 扉を開けた向こうにいたのは霧切だった。彼女は苗木のナイフを見た後ついて来るように促す。風呂と言うのは、カメラの無い場所に来いと言う事だろう。

 

「そういえばお風呂に入ってなかったし、どうせなら本当に入ろっか?」

「…え?」

「なんてね」

「………別に構わないわ」

「え?マジで?」

 

 

 

 そして浴場。

 湯船に浸かりながら、苗木は何故こんな事になっているのか考える。いやまあ、十中八九どころか十割で苗木の責任なのだが……。

 

「……随分と生傷があるのね」

「いく……江ノ島さんに鍛えてもらってるんだけど、手加減してくれなくてね」

 

 本当に残念な女だ。苗木が普通の感性の持ち主なら好きにはなれない相手だろう。まあ、苗木はそれぐらいで嫌ったりはしないが。

 

「……そう……」

「……ところで何、この状況?」

「?背中を流しているのよ。お祖父様が『友人と入った時は背中を流してやれ』って」

「………たぶんそれ、同性前提なんだろうけど」

 

 というかこれ、学園長にバレたら半殺しにされそうなんだけどな。比喩ではなくマジで。

 

「………それで、何を聞きたいの?」

「……『私の才能』と《学園長》について」

「霧切さんの才能はネットに載ってないし、学園長は熊だって事しか──」

「ネットには載ってなくても、〝あなた〟なら知っているんじゃないかしら?それに、私が聞きたいのはモノクマではなく……そうね、モノクマを学園長とするなら『前学園長』についてよ」

 

 逃げ道がなくなった。いや、嘘を付くという手段もあるのだが……と、その時ヒタリと、霧切の腕が首に回され肌が触れあう。

 

「人は嘘を付くとき、それぞれのクセを出しやすい。あなたが朝日奈さんに使っていた手よね?」

「……ああ、うん……まあ」

 

 濡れてるせいで張り付くような感覚に加え、お湯でほんの少し火照った身体に苗木はドキマギ………しない。

 というか霧切の裸も何度か見ている。別につきあっていたわけではない。例えば風邪を引いた彼女のお見舞いに部屋や保健室に行った時、汗を拭く彼女と出くわし、例えばプールの更衣室が苗木が通りかかった時に壊れて、例えば大浴場で女子使用中の札を立てかけ忘れて、逆に苗木が忘れて入ってきた彼女と出くわして………。

 そんな苗木だからこそ平静を保ち、昔指摘された自分の嘘を付く時のクセを思い出す。

 

「ねぇ、知ってる苗木君?〝動悸や呼吸〟なんかは誤魔化せないのよ?」

「……………」

「それじゃあ、知ってることを話してちょうだい。聞くことだけでも良いから」

「……霧切さんの才能は【探偵】………超高校級の探偵だよ」

「……探偵……そう。おかげで思い出したわ。あなたがいつか言っていた《黒の挑戦》。私が探偵として何度か挑戦したアレね。あなたも経験あるの?」

「とある探偵のせいでね」

「そう。一般人を巻き込むなんて、探偵の風上にも置けないわね」

 

 うわぉ、そうなのか。そりゃ良いこと聞いた。是非とも霧切の爪の垢を煎じてその探偵にも飲ましてやりたいものだ。いやダメだ、時間が経てば同じになる。

 

「前学園長は?」

「『霧切仁』………霧切さんのお父さんだよ。霧切さんはこの人に──」

「絶縁の言葉を言いに希望ヶ峰学園に来たんでしょ?……ありがとう……だいぶ思い出せたわ」

「…そっか」

「……あなたは、どうしてそれだけ知っているの?」

「………黒幕だから、とか?」

「……少しぐらい、私に本当の事を話してくれても良いじゃない」

 

 と、霧切が呟いた時、苗木は悪寒を感じ大浴場の入り口の方に振り向く。

 そこには鬼がいた。包丁を持った鬼が………。

 

「……ナニを……しているんですか二人とも……?」

「……ま、舞園さん、落ち着いて」

「いやですね。落ち着いてますよ~。で、ナニをしているんですか風呂場で抱き合って……ナニをしてたんですか?すでにし終わったんですか?」

「……別に、彼に少し話を聞いただけよ。他意はないし、あなたは仮に、苗木君と私がそういう関係になったら困るのかしら?」

「……それは……苗木君が私にもかまってくれるなら別に……」

 

 霧切はそう、と呟くと舞園の横を通り過ぎる。通り過ぎた後、安堵の溜息をこっそり吐いていることから、霧切も怖かったのだろう。

 

「なら、今からせいぜいかまってもらいなさい」

「……霧切さん、アナタひょっとして良い人ですか!?そうしますね!」

 

 舞園はそう言うと大浴場に入ってきて扉を閉め、さらに鍵を閉める。曇りガラスの向こうでは、霧切が着替えて出て行く姿がぼんやり映った。

 

「それじゃあ苗木君……霧切さんの匂いが取れるまでたっぷりじっくり……」

「…………お、お手柔らかに」

「保証しかねます♪」

 

 舞園はとてもかわいらしい満面の笑みでそう言った。

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