救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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イキキル(非)日常②

 食堂にはまだ来ている者は居ない。どうやら、苗木達が一番乗りのようだ。

 

「ところで、苗木君……」

「ん、何?」

「えっと、あのですね……自己紹介の続きになっちゃうんですけど。苗木君に確認したいことがあるんです」

「……ボクに?」

 

 これも前回と同じか。チラリと隣を見ると、江ノ島と目が合った。

 別に二人きりでなくとも話すようだ。

 

「苗木君って、ひょっとすると『六中』じゃないですか?……根黒六中の…二組の……」

「そうだね。『六中の恩返し待ち』なんて言われたこともあるよ」

「やっぱり!私も同じ根黒六中だったんです!四組にいたんですけど、知ってます?」

「うん知ってる」

 

 懐かしいやりとりだ。

 中学の頃から有名人の舞園を知らない同中の生徒は居ないだろう。

 

「ところで恩返し待ちって……〝鶴〟のことですよね?」

「鶴?何それ、苗木鶴になんかしたの?」

 

 そして話に入れない江ノ島は、除け者にされたと感じたのか、二人の会話に入り込んでくる。

 

「昔学校に鶴が迷い込んでさ。それを野に返したのがボクなんだ」

「それで鶴の恩返しにちなんで、恩返し待ちって呼ばれてたんです」

「…へえ、昔から優しいんだね」

 

 苗木の過去を話す舞園を、江ノ島は羨ましそうに見つめる。

 苗木はその視線には気づいたが意味には気づけなかった。前回の経験から人の感情を読みとれても、真意までは読みとれないようだ。

 

「そうですよ。苗木君は優しいんです。こんな状況でも、苗木君が居たから元気でいられた」

「………大袈裟だよ」

「そんなことありませんよ………よーし、勇気付けられたお礼に……」

 

 あ、この流れは。

 苗木が前回を思い出し苦笑する中、舞園はその言葉を言い放った。

 

「私は『超高校級の助手』になっちゃお!」

「へ?舞園はアイドルっしょ?」

「今から苗木君の助手です!私も精一杯手伝いますから、一緒にここから出ましょうね!」

「………そうだね」

 

 と、その時だった。

 

「苗木くんと舞園くんと江ノ島くん!君達が一番乗りだったか!」

「まあ、さっき石丸クンが呼びに来てからすぐ向かったしね」

 

 石丸が食堂に入ってきて、先に来ていた苗木達に感心したように笑いかけてくる。それからすぐ石丸に続いて他の面々も食堂に集まってきた。

 

 

 

 話の内容は前回と同じ。霧切が遅刻しているのも前回と同じ。

 廊下や教室の鉄板がビクともしないのも前回と同じのようだ。そういえばあの鉄板、大神さくらの拳に耐えていた。

 何期生かの超高校級の誰かが作った合金なのだろうか?

 

「ボクらは保健室にいたけど、一通りの薬品は揃ってるみたいだったよ。輸血も出来るみたいだね」

「あとの問題は食料ですな」

 

 前回と違って舞園が確認していないため、山田一二三が食料問題を深刻そうに話したとき……。

 

「ダイジョーブ!食料は毎日自動で追加されるからね。安心してください!じゃ、そういうことで……」

 

 唐突に現れたモノクマが食料について説明し、唐突に消えていった。

 その後は前回と同じく遅刻してきた霧切が、希望ヶ峰学園の見取り図を持ってきて、この建物が希望ヶ峰学園の校舎であることを説明。

 葉隠康比呂はなおもこの状況を学園の催しだと思っている発言をした。

 

「それにしても、これで一つわかったことがあったね」

「ですわね」

「あ、あんたら何言ってんの?な、何がわかったっていうのよ…!」

「「逃げ場のない密室に閉じ込められたと言うことが、紛れもない事実だという事が…」」

 

 苗木はセレスティアの台詞、仕草を真似るように被せて喋る。セレスは苗木をチラリとみた後、周囲の反応を見る。皆、ただ黙り込んでいた。

 

「……ま、そんなこと今はどうでも良いからさ、黒幕について話し合おうよ」

「ど、どうでも良いって事たぁねえだろ」

「どうでもいいよ。だって、結局黒幕を暴かなきゃ、また同じ事が起きるかもしれないんだ。《黒の挑戦》みたいにね」

『?』

「──!?」

 

 苗木の言葉に大半の者が首を傾げ、霧切だけがその言葉に過剰な反応を示した。しかし何も思い出せなかったのか、頭を押さえて顔を顰めるだけだった。

 

(……きっかけがあれば思い出せそうだね。それもそっか、彼女の才能は彼女の本質そのものなんだし)

 

 苗木が霧切を見つめていると、石丸が顎に手を当てながら言葉を発した。

 

「つまり、苗木くんは今後このようなことがないように犯人を捕まえようと言うんだな。しかし、犯人がこの学園にいない可能性もあるではないか!」

「………まあね。じゃあどんな犯人なのか考えようか。犯人像が浮かべば対策が練れるかもしれないよ?」

「うむ!賛成だ!」

「でも、話し合いをするには時間が心許ないね」

 

 苗木がチラリと時計をみると、もう間もなく夜時間が迫っていた。別に出歩きが禁止な訳ではないが几帳面な石丸のことだ、就寝時間に起きていれば、まず間違いなく集中できない。

 

「その前に一つ提案があるのですが…」

「それって、〝夜時間に出歩き禁止〟のルールでもつけるの?」

「……………苗木君、人の言葉を取らないでくださいまし」

「ごめんごめん。セレスさんの考えてることがなんとなくわかってさ」

「……ま、いいでしょう。苗木君が言ったように、夜時間に制限を設けるのです。夜になり怯える生活なんて耐えられませんもの」

「所詮口約束だけど、気休めにはなるよね?」

 

 苗木の言葉に無言の肯定をする一同。セレスは満足そうに笑うと、シャワーを浴びに行くと言って食堂の出口に向かった。

 

「ああそうそう。苗木君、わたくしの言葉を遮るのは止めて頂きたいのですが、わたくしの意を理解するところは誉めてあげます。なんならナイトの一人にしてあげましょうか?」

「………考えとくよ」

「そうですか。では……」

 

 そして、その場で今回の会議はお開きとなった。苗木は自分の部屋に戻ると、シャワールームの扉に触れる。

 ガタガタ音を立てるだけで開かない。ここも前回と同じ。

 

「困惑してるかな?特別に開ける方法を教え──」

 

 ガチャ

 

「ん、何か言ったモノクマ?」

「………何でもない……いや、所詮は偶然だ!」

「ドアノブを捻りつつ、上に持ち上げるようにしながらやったら開いたよ?」

「……………」

「何通りか試そうとしたけど一発目で当たるとはね」

「………ツイてるね~、あ~つまんね」

「自室のシャワールームの建て付けが悪かったり、殺し合いに巻き込まれてる時点でツイてないよ」

「それもそっか!」

 

 モノクマはそう言うと、来たときと同じように唐突に消えた。それと同時にチャイムが鳴る。

 

『えー、校内放送でーす。午後10時になりました。ただいまより夜時間になります。間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま~す。ではでは、良い夢を。おやすみなさい…』

 

 今頃石丸が画面に向かって、おやすみなさい!と叫んでいることだろう。苗木も、色々と……本当に色々とあり疲れていたので、ベッドで横になり眠りについた。

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