救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑧

「早朝、苗木誠は普段連れている二人を連れず、一人で化学室に来ていた。ここに、彼の目的の物があるからだ」

「何やってんの、苗木クン?」

「今ナレーションがボクのマイブーム」

「はにゃ?どっかで聞いたような台詞?」

 

 モノクマはそう言いながら、苗木の後に続き化学室の中に入る。苗木は毒薬の入った棚の前に立つと、指を一本立てる。

 

「ど~れ~に~し~よ~か~な~が~く~え~ん~ちょ~う~のいうとおり」

「これにすれば?」

「モノクマには聞いてないよ」

「学園長ってボクなのに!?」

 

 苗木はモノクマを無視して、〝毒薬の瓶〟を一つ取り出す。

 

「お、なになに?使うの?使っちゃうの?」

「えい」

「ぎゃあああ!口の中が粉っぽい!スピーカーが壊れたらどうすんの!?」

 

 毒薬を取った苗木が殺人を実行すると思ったのかモノクマが興奮するが、苗木は瓶をひっくり返し、モノクマの口の中に中身を捨てた。

 どうせ毒の効かないロボットなのだから、飲ませるだけなら校則違反にはならない。

 

「……う~ん。一応中を洗っておくか」

 

 苗木はそう言うとトイレに向かい、瓶の中に残った粉を洗い流す。そしてタオルで念入りに拭くと、再び化学室に戻り、懐から別の瓶を取り出した。

 

「何それ?」

「キャロライナ・リーパーの粉末」

「うわ……」

 

 苗木の答えにモノクマは引いたような声を出す。キャロライナ・リーパー。それはハバネロより遥かに辛い、『世界一辛い唐辛子』だ。ご丁寧に青の食紅を混ぜ紫色に変えている。それを空の瓶の中に入れ、元の棚に戻した。

 

「ねえモノクマ、また賭けをしよう」

「また?今度はどういう賭け?その瓶を使うんだろうけど……」

「この瓶を大神さんが取って飲んだらボクの勝ち。それ以外の瓶を飲んだらキミの勝ち。で、どうかな?」

「……正気?その沢山の瓶の中から、誰がとって誰が飲むか当てるなんて、天文学的な確率だよ?」

「ボクはその天文学的確率で希望ヶ峰学園に入学した幸運だよ?あ、それと報酬は前回と同じで、上階の解放かボクが殺人を行うか……後、追加でボクが勝ったら、大神さんの校則違反を〝三つ〟見逃して」

「三つ?」

「モノクマを襲った件で一つ……後は、これから行うであろう監視カメラの破壊と、せっかく直した学園長室のドアの破壊。この二つも見逃してほしい」

「…………賭けに負けたら、キミは本当に誰か殺すんだね?」

「万が一ボクが負けたらね」

 

 苗木はクククと喉を鳴らし、モノクマもうぷぷぷと笑う。こうして、モノクマと苗木による二回目の賭事が始まった。

 

 

 

 

 

「おはよー。あれ?なんか暗いね。何かあった?」

 

 苗木が食堂に来ると、既に全員が集まっていた。昨夜の一件もあり雰囲気は暗い。もっとも、苗木はそんな場の空気を読んでおきながら、あえて掻き回すように明るい様子を振る舞う。

 

「普段メスを連れてるお前が現れないから死んだと思ったが、生きていたか」

「『かませ』が生きてるのに、ボクが死ぬはずないじゃん」

「だ、そうだぞ桑田」

「オレ!?」

 

 苗木は十神に対して言ったが、十神は何故か桑田にその皮肉を流した。まあ確かに、真っ先に学級裁判で死ぬクロもカマセと言えばカマセだが。

 

「あれ?大神さん来てないね?全く遅刻なんて……」

「あいつが来ていたら、俺の方がここにはいない……」

「ああ、確かに大神さんに一人で対面したら、一方的に殺されるもんね。〝全てにおいて超高校級(笑)〟の十神クンでも」

「………貴様」

 

 苗木にバカにされたことを感じ取り、十神は苛立ったように顔を歪せる。まあ実際に苛立っているのだろうが。

 

「ふん。まあいい……それより、貴様は大神についてどう思う?」

「──凄い筋肉だよね」

「……馬鹿にしてるのか?」

「え、今更気づいたの?」

「……………………」

「……まあ、フェアじゃないよね。一人だけ知ってるとか『ゲームバランス』がおかしくなる。戦え!モンスターズでも、全ての種族の中で必ず一体は同レベルになると洗脳が解けるってハメキャラがいて苦労したよ」

 

 しかも怒りの力とかで、レベルが二倍になるんだよ?と愚痴る苗木。ちなみに、このハメキャラは初代トガミだったりするのだが、あえて言わないでおいた。

 

「ゲームバランスって……そんな馬鹿げた理由で?」

「命がけのゲームだよ?バランスは大事だって。あ、ちなみにボクはバカじゃないからね。少なくとも、テストで葉隠クンと山田クンと桑田クンと朝日奈さんと大和田クンより高い点を取る自信がある」

「飛び火したぁ!?」

「まあ、確かにオレは馬鹿だけどな」

「いやいや、野球さえ出来れば勉強なんて必要なかったんだから仕方ねぇだろ」

「俺は馬鹿じゃねーべ!」

 

 苗木は何時になく毒を吐く。おかげで朝日奈からはものすごい形相で睨まれていた。

 

「まあ大神さんが本当に裏切っていたとしても、だからどうしたって話なんだよね、人の罪は消えない。背負うか放るか……ま、大神さんみたいなのは、自分の罪を馬鹿みたいに死ぬまで背負うんだろうけど」

 

 ゴス!と、朝日奈のビンタ………ではなく、拳が苗木の顔面を捉える。

 

「罪を背負うのが馬鹿みたいってなに……?罪を背負わずヘラヘラしてる方が最低だよ……そんなこと言えるあんたこそ……死ねば良いんだよ!」

「………朝日奈さん、聞こえてないみたいよ。気絶してるもの」

「きゅう……」

 

 朝日奈は苗木に向かって罵るが、霧切が苗木の頬をツンツンつつく。何の反応も示さない彼が気絶したことを霧切が報告すると、朝日奈は呆然とした。

 

「一度ならず二度までも、苗木君の柔らかい頬を!」

「殺す!」

「調子乗ってんじゃねえぞ水泳牛!」

「……三人とも、苗木君が起きた時何言われても知らないわよ?」

「「「………」」」

「段々、この三人の扱い方がわかってきたわね」

 

 霧切の忠告に三人はおとなしくなり、霧切はふぅ、とため息を吐いた。




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