救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑩

「江ノ島さ~ん」

「……呼んだ?」

 

 苗木が二階で江ノ島の名を呼ぶと、唐突に江ノ島が現れる。

 

「うん、呼んだ呼んだ」

「………♪」

 

 苗木が直ぐにやってきた江ノ島の頭を撫でてやると、江ノ島は嬉しそうな顔をする。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、サバイバルに役立つ本教えてくれない?」

「え?うん……いいよ……」

 

 江ノ島は苗木の頼みに頷き、図書室で適当な本を見繕ってくれる。

 

「ありがと。……じゃ、戻ろっか?」

 

 苗木は本を抱えて江ノ島と共に歩き、思い出したように立ち止まる。

 

「ちょっと持ってて。トイレ行ってくる」

 

 苗木は江ノ島に本を渡しトイレの中に入る。

 これで多少不自然だがトイレの前に護衛をおけた。後ろから殴られるのは勘弁願う。

 

「……資料はなくなってるか」

 

 まあ別に興味ないから良いんだけど。

 苗木はアルターエゴにケーブルを繋ぐ。

 

《それじゃあ任せたよ》

『うん!頑張るよ』

 

 苗木がそれを聞きカメラ付近を撫でると、アルターエゴは意味を察したのか嬉しそうに笑った。

 

「お待たせ江ノ島さん」

「ううん。待ってないよ……」

 

 と、その時………

 

「がああああッ!?がは、ごほ!ごほげほ!」

 

 叫び声が聞こえ続けて、ドサッと何かが床に倒れるような音が聞こえた。江ノ島と苗木は顔を見合わせ、音が聞こえた三階へと向かう。

 

「さくらちゃん!開けて!開けてよ!」

 

 三階に着くと、娯楽室の前で叫びながらドアを叩く朝日奈が居た。

 

「やれ!江ノ島さん!」

「え?でも鍵がかかってる部屋のドア壊すのは──」

「頭を撫でて上げる」

「えい!」

 

 江ノ島は勢いそのままにドアを蹴りつける。が、扉の向こうに椅子があったのか、予想外の手応えに一瞬だけバランスを崩すも、直ぐに立て直した。

 

「よくできました」

「えへへ………」

「ま、そもそも娯楽室に鍵なんてないから壊したって問題ないんだけどね……」

 

 蹴られた衝撃で外れかかったドアを退け、椅子をズラすと、苗木は娯楽室の中を覗く。そこには倒れている大神と、床に散らばった紫の粉があった。

 

「………死んでる………」

「え?」

 

 苗木は大神に触れそう呟くと、朝日奈が青ざめてよろけた。

 

「さくらちゃん……死んじゃったの?」

「?……あの、苗木く──」

「息臭い黙れ」

「え!?」

 

 江ノ島が戸惑うように何かを言いかけたが、苗木が黙らせる。朝日奈は皆を呼んで来なきゃ、とふらふら娯楽室から出て行った。

 

「ねえ苗木君。大神さん……」

「うん、生きてるね。倒れた時テーブルの角に頭ぶつけて気絶してるみたい」

「………だよね」

「江ノ島さんから見た感想は?」

「えっと……放っておいても大丈夫かな」

 

 素が出てきている江ノ島の返答を聞き、苗木は床に散らばった『紫の粉』を指でこすり付着させる。よくよく見れば、青と赤の粉が混ざっているようだ。

 

「はい、江ノ島さんあ~ん」

「あ、あ~ん?……────ッ!?み、水!」

 

 何の疑いもなく苗木の指を舐めた瞬間、江ノ島は口を押さえてどこかに駆けて行った。

 

「モ~ノ~ク~マ?」

「は~い。ちぇ、苗木クンの勝ちだね。はいこれ、モノクマメダル」

「おお、どうもどうも」

 

 モノクマからモノクマメダルを受け取ると、苗木はそれをパーカーのポケットに入れる。後でまたモノモノマシーンを使おう。と、考えた時……。

 

「連れて……来たよ……」

「おわッ!!お、オーガ!?」

「あらぁ…こりゃ死んじゃってますね」

「そうか…大神さくらが殺されたのか」

「ま、マジかよ……」

「くっ!なんと言うことだ!」

「ひいー!ナンマイダナンマイダ!」

「あ、あの大神が死んだのッ!?」

「そんな……!」

「あら?江ノ島さんも居るとのことでしたが……?」

「ひろいへにあっは……」

「……………大神さん、〝生きてる〟わよ」

 

 皆が大神を死んだと決めつける中、霧切が大神の首筋に触れ脈を確認し、その事を告げると場の空気が凍る。

 次に霧切は床の粉を舐め───

 

「ッ!?」

 

 口元を押さえる。苗木がモノモノマシーンの景品の一つであるミネラルウォーターを渡すと、霧切は涙目になりながら飲み干した。

 

「あ、ありがとう……これは唐辛子ね……わざわざ食紅を混ぜて色を変えて……こんなことをするのは1人だけよ」

「それはいったい──」

「『あなた』に決まってるじゃない、苗木君」

「そうです。ボクが毒薬の入った瓶の中身を、キャロライナ・リーパーに変えました」

「………えげつないわね」

 

 苗木の自白に、霧切は顔を青くして引いていた。そりゃそうだ、世界一辛い唐辛子を飲ませるのだから。

 

「だってこうでもしないと、大神さん責任感じて自殺した挙げ句、皆のせいだー!って怒った朝日奈さんが、偽の証拠を用意して〝道連れ計画〟を立てそうだったから」

「なに?その毒薬に偽装した唐辛子とやらは、誰かが殺人を行おうとした結果ではなく、大神が『自殺』しようとした結果そこに散らばっているというのか!?」

 

 十神が信じられないと言うように叫ぶ。そういやこいつは、人が自殺するなんて考えを起こさないんだっけ。

 

「そうです。大神さんは自殺しようとして、結局失敗してるのです!それにしても、覚悟を決めた自殺がこんなギャグで終わるなんて、絶望的だよね~」

「…………ッチ、つまらん」

「はにゃ?」

「おい朝日奈。お前はこの現状を見て、苗木の言うように〝偽の証拠〟を用意しようとしたのか?」

「え?あ………うん」

「まさか……このゲームの根本を否定する馬鹿が居るとはな。ああ、本当に馬鹿らしい」

「……十神、オメーまだそんなこと……」

「こんな馬鹿のいるゲームなど、馬鹿らし過ぎて出来やしない」

「………え?」

 

 ふん、と鼻を鳴らして、十神は娯楽室から去っていった。

 

「……意外。正直十神クンは外に出るまで、警戒する必要があると思ったのに……」

「あのかませ眼鏡のせいで、ボクが本物の遺書を出す暇もないよ。ああ、やだやだ……」

「あ、じゃあその遺書、ボクにちょうだい?筆跡確認する時に使うから」

「どうぞどうぞ」




活動報告に来た返信は58。もっとこいもっとこい!
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