救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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閑話④

「ランキングが思ったより集まったから、もう少し引き延ばすことになったらしいよ」

 

 苗木は浴衣を着ながら、モノクマに話しかける。

 

「へえ、じゃあ今日は何すんの?」

「夏も終わりが近づいてきたし、ちょっと遅いけど《夏祭り》……」

 

 

 

 

 夏祭り。

 それは、希望ヶ峰学園の予備学科と本科の蟠りがほんの一時消える催し!皆が飲み、食い、踊る!そこに差別は存在しない!

 

「ま、原作じゃどうなのか知らないけど」

 

 と、浴衣姿の江ノ島はアイスピックでたこ焼きを突き刺しあむ、と食べる。

 どいつもこいつも間抜けな顔だ。ああ、平穏で平凡で絶望的。何か予想外のことでも起きないだろうか……。

 

「やあ、江ノ島さん。奇遇だね……」

 

 起きた。

 不意に声をかけられ振り向くと、モノクマのお面を付けた苗木が居た。

 

「苗木が話しかけてくるなんて予想外」

「うん?別に珍しくもないでしょ、同じクラスなんだから」

「他のクラスメートは誘わないの?」

「江ノ島さんこそ、戦刃さんは?」

「知らなーい、その辺で射的やってんじゃない?」

 

 苗木が周囲を見渡すと、遠くの方で人だかりが出来ていた。そこは射的の屋台だ。おそらく彼処にいるのだろう。

 

「………なら、二人で回らない?」

「……ふ~ん。いいよ。おもしろそうだし……」

 

 苗木の誘いに、江ノ島は笑みを浮かべ、祭りを回ることにした。

 

「あれ?彼処の綿飴、大和田クンじゃない?」

「ほんとだ。あの髪型なんだから、焼きトウモロコシやってりゃ良いのに」

「あはは。言えてるね……それにしても、毎回祭りの度に思うんだ」

「ん?」

 

 苗木は綿飴を友達割引で2つ購入し、片方を江ノ島に渡し、片方を食べる。

 

「食べれば嫌でもわかるけど、綿飴って砂糖を溶かして糸状に伸ばして綿っぽくしてるだけでしょ?つまり、これを溶かして元の大きさに戻せば精々ザラメ数個分。それに三百円。綿飴機を動かす電気代を考慮しても、あの店は酷いぼったくりだ」

「ああ、確かに絶望的にぼったくりだよね……」

 

 江ノ島も苗木の意見に同意した。それに賛成だと何処からか聞こえた気がする。

 

「日向くん、頑張れ!」

「まかせろ!」

「ふぁ、眠い~」

 

 そのまま移動していると、両手に花の予備学科の先輩がいた。

 

「双子かな?」

「番外編だからって、作者が両方出してんでしょ」

「メタい発言はよしなって」

 

 江ノ島の言い様に苗木は呆れたように笑う。と、不意に何かに気づいた苗木は、江ノ島の手を掴み、屋台の隙間を通り林に隠れる。

 

「急にどうしたの?悪いけど、あたし貞操は大事にしてるんだよね」

「別にそういう事じゃないよ……あれ……」

「おかしいな~。苗木お兄ちゃんの匂……姿が見えた気がしたんだけどにゃ~?」

 

 苗木が指差した先にいたのは、カラフルな髪の五人組。年はおそらく、小学生ぐらいだろう。

 

「今度はあっち捜してみるのじゃ~」

「「「「おー!」」」」

「そして〝おごってもらう〟のじゃ~!」

「「「「おぉぉおおお!」」」」

「………あいつら」

 

 その小学生達を、苗木は呆れた目で見送った。

 彼らがいなくなったのを確認すると、再び屋台を見て回る。

 

「………ねえ苗木、何であたし誘ったの?」

「だって番外編じゃないと、江ノ島さんとデート出来ないもの」

 

 チョコバナナを食べながら、江ノ島はふーん、と呟く。と、その時空が明るく光り、数秒遅れて爆音が響いた。

 

「………花火」

「………これ、明滅を利用した『洗脳』だよ」

「へえ、確か超高校級の花火師が製作してたはずだけど、くだらないことするね………ん?ボクたち、何で平気なの?」

「綺麗だと思っても、それに執着する価値観がないんでしょ。あたしもアンタも……あたしは今、花より団子」

 

 江ノ島はそう言って、チョコバナナの二口目を食べる。

 

「ボクも花火より、江ノ島さんの方が綺麗だと思うしね」

「あはは!アンタ本当にあたしのこと大好きね!」

「そりゃね。この世界全てを敵に回しても、愛してるって言えるよ」

「…………苗木」

「ん?」

「あげる」

 

 呼び掛けられ振り向いた苗木の口の中に、チョコバナナが差し込まれる。江ノ島を見るとニヤニヤ笑っていた。

 

「そんなにあたしが好きならさ。ちゃんとあたしを『絶望』させてよ?」

「うん。任せてよ。キミを殺して、キミの創った絶望的世界も元に戻す。キミのやったことを全て、水の泡に変えるから……」

「うぷぷ。あの世からその光景が見れたらほんと、絶望的だねぇ」

 

 と、二人はそれこそ青春の一ページのような、互いに意識している男女の会話のように話す。異常な会話でありながら通常な雰囲気に、誰もがその異常に気づけない。

 

「時に江ノ島さん。食べかけを人に押しつけるのは良くないと思うよ」

「うわ、絶望的な対応」

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