救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編②

「では、探索を始めよう!」

 

 何時もの様に石丸が切り出し、探索が始まる。今回、苗木は一人で行動していた。

 

「そう言えば、希望ヶ峰学園って全部で何年何組あるんだっけ?」

 

 苗木は『5ーC』と言う立て札を見ながら呟く。最初の一年は、よく学園内を見ていなかった。周りに圧倒されてそんな余裕も無かったから。

 二年目は別段教室に入る理由もなく、図書室などしか行っていない。

 

「ま、いっか。今更……」

 

 苗木が教室の中に入ると、人間の血と脂と涙と唾液と硝煙など全て含めて、死と絶望の匂いと形容するような腐臭が立ちこめてきた。

 壁には銃痕や切り傷、そして一面に広がる血。床には人型の白線。

 

「……お前も来たか」

「十神クン……」

「これまた凄惨な場所だな。一体何があったのか……」

「これが《人類史上最大最悪の絶望的事件》って奴じゃない?ほら、希望ヶ峰学園の生徒なら、類い希なる才能の持ち主達が一気に死んだわけだし」

「惜しい!」

 

 十神の疑問に苗木が適当な推理を言うと、モノクマが現れ否定する。知ってるけどね、と苗木は内心思いながらモノクマに振り向くと、モノクマはゴソゴソと何かを探していた。

 

「あったあった!《希望ヶ峰学園至上最大最悪の事件》のDVD~………はい、苗木クン」

「くれるの?」

「肝心な部分は編集しといたから、ボクにとっては安心だからね。でも、見せるときは気をつけなよ?その辺は無修正だから、グロ映画で耐性つけたつもりの奴でも吐くかもね。うぷぷぷ!」

 

 モノクマはそう言うと居なくなった。言いたいことはそれだけだったようだ。

 

「これ、どうする?」

「後で見ればいい。参加を自由にして途中退席もありにしてな。お前が持っていろ………」

 

 苗木は十神の言葉に了解し、DVDを懐にしまい、次の場所に向かう。

 

 

「あ。やあ大神さん、霧切さん」

 

 武道場に来ると、大神と霧切が居た。

 

「苗木か……」

「ここ、武道場?」

「そのようだな」

 

 苗木はロッカーの木札を差し入れして遊んだ後、桜の木に目を向ける。室内なのに満開なのは、確か『色葉田田田』とかいう超高校級の植物学者が品種改良した桜だったからか。

 

「なかなか風情があるわね……」

「そうかな?」

「私は海外の暮らしが長かったから、こういう日本的な風景が新鮮なの…」

「ほう。ならばここから出れたら、我が日本の桜の名所を案内してやろう」

「意外ね。大神さん、そういうのを知っているの?」

「我の名はこの花から来ている。毎年、道場の皆と見に行ったものだ……」

 

 大神はふっ、と懐かしそうに笑った。桜、今も果たして外に残っているのだろうか?

 不覚にも、桜の木の下に生きた人間を埋めているモノクマヘッド達を想像してしまった。

 

 

 

 そして次は植物庭園。

 壁や天井にペンキで青空が描かれている。制御パネルを見てみると前回と変わらなかった。

 

「苗木っち、気をつけるベ。植物に気を許すと人間狩りが始まるベ!」

「だからねーってんなの」

 

 葉隠の言動に桑田は呆れたように言う。それにしても、相変わらずデカい花だな、モノクマフラワー。

 苗木はモノクマフラワーを見上げながら、無性に何かを花の中に入れたくなってきた。と、その時。

 

「おい、妙なもん見つけたぞ」

「うむ。不思議でならない」

 

 大和田と石丸が、ツルハシを持ってやってきた。

 

「ほら、ここに『暮威慈畏大亜紋土』って彫り込まれてんだろ?」

「まことに不思議だ。兄弟には覚えがないし、兄弟のチームでも希望ヶ峰学園に入った者は居ないそうだが」

 

 まあ、覚えがないのではなく〝覚えてない〟が正しいのだが。

 苗木はツルハシをしばらく見つめた後、植物庭園を後にする。少し確かめたいことがあったのだ。なるべく誰にも知られたくない内容の………。

 

 

 

 

 苗木がやってきたのはナマモノと書かれた扉、《生物室》。

 前回、この扉は開かなかった。予想としては、この生物室に中に『あるもの』があったからだと予想している。そして予想が正しければ、今回は何もないはず。果たして……

 

「………鍵がかかってる」

「苗木クンなら開けるための鍵を持ってるけどね」

 

 苗木の呟きに答えたのは唐突に現れたモノクマ。もちろん、苗木は全く驚いている様子はない。

 

「ねえモノクマ、ここが閉まってる理由って、ここに見せたくない何かがあるの?それとも理由なく閉めてるの?」

「うぷぷぷ。さあねー、想像してみたら?」

「…………」

 

 モノクマは答える気が無いらしく、さっさと行ってしまった。

 生物室、前回この中は見ていないが、何かがある予感がしていた。懐から鍵を取り出し開けようとした時…。

 

「おーい!皆、一通り探索が終わっただろう?食堂に集合だ!」

「………ッチ」

 

 石丸の声が聞こえ、さすがに現れなければ不審がられるかと諦め鍵をしまい、食堂に向かって歩き出した。途中、舞園や江ノ島達と出会う。

 

「苗木君。何か見つかりました?」

「出口は相変わらず無いみたい。それと、気になる教室を見つけた」

「……ああ、あの血だらけの。何があったんでしょうね?」

「ロクな事じゃないのは確かだよね……」

 

 何となくだが想像できている。

 苗木が人伝に聞いただけの話。希望ヶ峰学園至上最大最悪の事件が起こったのは希望ヶ峰学園内の話。つまりあそこの教室が、事件の始まりの場所なのだろう。

 

「…………ん?」

「どうしました?」

「……いや、あそこ……モノクマの奴、何で扉が直ってるのに学園長室の前に集まってるんだろ?」

 

 苗木が四階に差し掛かると何やら音楽が聞こえ、学園長室に続く通路の陰から覗くと、モノクマ達が例のダンスを踊っていた。

 いつか見た光景と違うのは扉が壊れているかいないかだけ。あと、音楽の音量がヤケにうるさい。 

 

「苗木君。そろそろ行かないと、石丸君に文句言われちゃいますよ?」

「ああ、うん。そうだね………」

 

 オートで動いているとはいえモノクマはモノクマ。ああしてたむろされた時点で学園長室には近づけないのだから、気にしておくだけで済ませておこう。




活動報告の返信じゃんじゃんお待ちしております。後、超高校級の切望である作者にも投票されてたことに驚きを隠せない((((゜д゜;))))
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