救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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 今回オマケもつけています。


疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編③

「それでは報告会だ。と言っても、まず最初には〝あの教室〟が出てくるだろうが……」

 

 石丸の言葉に全員が表情を強ばらせる。見たのだろう、あの血と脂の臭いが立ち込める教室を……。

 

「な、なんじゃそら!」

 

 葉隠は見てなかったらしい。

 

「匂いもまるで戦場みたいだったよね」

「江ノ島ちゃん、そんな匂い知ってんの?」

「え?あ、や……そんな感じなのかなぁって……」

 

 そう言えば朝日奈はあの教室を見たのか。前回は見ていなかった筈だが、生き残りが多いから探索するルートが変わったのだろうか?

 というか何正体バラしかけてるんだこの残念は。

 

「後はくれ……くれ………〝くれよんだいもん〟の字が彫られたツルハシがあったことだね」

「おいなんだ、くれよんだいもんって。『暮威慈畏大亜紋土』だ!」

「ああそうそれそれ……」

 

 大和田の言葉にまた首を傾げることになる一同。

 本来あるはずのない物がある。いや、モノクマが用意したと言えばそれまでなのだが。あのモノクマが動揺させるためだけに、そんな見つからない可能性もある小さな証拠を残すとは思えない。

 

「他にはでっかい花のある植物庭園があったね。まあ、壁や天井に青空が描かれてるだけだから、〝大きめの文字〟を書いても誰にも気づかれないからね、葉隠クン?」

「な、何言ってんだ苗木っち!俺がんなこと考えるわけねえって……!」

「「「……………」」」

 

 葉隠は明らかに考えていたらしく、全員が冷めた視線を葉隠に向ける。

 

「後は武道場だね。と言っても、ここは満開の〝桜〟があったって事以外は特に変わった物は無かったけど」

「桜!?では僕、擬人化の題材に──」

「桜の擬人化なら名前として持ってる人をモデルにすれば?」

 

 苗木がそう言って大神を指すと、山田が血涙でも流しかねない形相で睨んできた。大方、想像していたキャラの服装を大神に着せた姿を思い描いてしまったのだろう。

 

「後は開かない《生物室》だね。B級映画なんかじゃキメラが居たりするけど………あるいは拷問の末不死身になった男が封じられてるとか、あるいは幽霊だったり──」

「お、おっそろしいこと言ってんじゃねえよ!」

「だいたい、何が不死身だ。そんなものあるわけがないだろう」

「いやいや、ここは希望ヶ峰学園だよ?不死身の実験ぐらいあってもおかしくないって。それに人間の肉体は神秘に満ちているんだ。成長が止まったり、一生植物状態って言われても復活したり。まさしく『希望の宝箱』だね」

 

 話の趣旨がだいぶズレるなか、苗木はカメラを見ながら希望という単語をあえて大きめの声で言う。

 別にこの程度で彼女が不機嫌になる筈もないが、ちょっとしたいたずら心で彼女を弄りたくなったのだ。

 

「いやでも、不死身になる拷問ってなんだべ?」

「失血死しないように輸血しながら、足の先からゆっくり少しずつ切っていく。ショック死したらAEDで復活させるを繰り返す。もしくは、全身に先の尖っていない螺子を螺子込むとか」

「………確かに不死身になっちまいそうだべ」

「不死身の人間なんて居るわけないじゃん、馬鹿じゃないの?」

「オメーが言ったんだろ!」

「……うまく話を逸らしているみたいだけど、彼処には何があるのかしら?」

 

 と、葉隠を諫めながら霧切が話しかけてきた。

 さすがに彼女を誤魔化すのは無理のようだ。

 

「あくまで想像だけどね………多分『死体』」

「なぜそういう想像に至ったのかしら?」

「黒幕の性格的にナマモノとイキモノとセイブツをかけてると思うんだよね。で、死体って元セイブツでありイキモノであり、ナマモノじゃん?ま、正確には〝死体を保管する場所〟って想像だけどね……」

「……いや、黒幕の性格を考えれば確かにありそうだな……」

 

 苗木の推測に十神も納得する。生物室は覗いたことが無いので、こればかりは本心だ。もっとも、確信に近い憶測であるが。

 

「そう言えば五階の話ではありませんが、またモノクマさん達がたくさん踊ってましたね。《学園長室》の前で」

「ほう?五階ばかりに気を取られて気づかなかったがそうなのか……とはいえ、二度も扉を破壊されたなら、当然三度目を警戒するだろう。不思議なことでもない」

「………あるいは、誰かが学園長室の鍵を持っていて、それに警戒している可能性もあるわね」

「校則があるわけだしな。校則をつけた後にも壊されたかと言って、不自然と言うほどでもないが、やはり〝何かある〟のではと思ってしまうな」

 

 何かある、か……。

 確かに気になる。前回の霧切は慌てて戦刃のプロフィールだけを取っていたが、苗木は78期生全てのプロフィール、つまり本物の江ノ島盾子のプロフィールもすでに苗木の手の中、今更何を気にしているのだろう?

 物事を深く考え込もうとすると、決まって脳内に文字が浮かんでは消えていく。彼女は何を隠している?

 

『し』『ん』『う』『か』『ょ』『り』『け』

 

 【り■■■ん】

 

「──あ、あたしは〝これ〟を見つけました」

 

 いざ浮かんだ文字を組み込もうとしていると、腐川の声に現実に引き戻された。

 腐川が机の上に置いたのは『ナイフ』だ。苗木が持っているのとは少し違うが……。

 

「モノモノマシーンの景品を誰かが捨てたのかな?」

「あんなモノをやっているのはお前ぐらいだろう。それにわざわざ今日開いた五階に置くわけがない。というか、その言い方だと景品として持っているのか……」

 

 十神は呆れたようにため息を吐き、だがちょうど良いかと呟いてナイフを手に取ると刃を持ち、持ち手を苗木に向ける。

 

「お前が持っていろ。刃物の管理には慣れているのだろう?」

 

 前回と同じく苗木が預かることになってしまった。まあ、今回は深夜部屋にやってくる舞園も居るし、前回のように寝込みを襲われることはないだろう。

 

「では、そろそろDVDを見るとするか。苗木……」

「これだよね」

 

 苗木はそう言って懐から、モノクマから渡されたDVDを取り出す。

 

「モノクマ曰く、〝あの教室〟で何が起こったかがこのDVDに記録されているらしい。事件の名は《希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件》だそうだ。見に来るかは自由だし途中退席も認める。最初から見る気のある奴だけついてこい」

 

 あの教室、という単語で想像したのか、桑田と山田と不二咲と朝日奈は食堂に残った。

 後のメンバーは視聴覚室に向かった。




 ちょっとした暇つぶし。


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 押さない


 マンションの一室、ベランダに続く窓は外から鉄格子が嵌められ、中の者は決して外に出られない部屋に閉じこめられた少女はカレンダーを確認する。

「……そろそろかなぁ」

 半年前を境に切るのをやめた髪は既に肩まで伸び、少女を前よりよっぽど女らしく見せていた。元々、顔立ちも整っている方だし体型も同世代の女子がうらやむ立派なモノを持っている少女だ。半年前とはだいぶ印象が違う。
 いや、違うのは印象だけではなく少女の本質もか……。

「はあ、結果が分かり切ってんのにやるなんて絶望的~……あ、でも待てよ?もしかしたらまだ生きてるかも……なんて、下手な希望持ってもより深く絶望するだけか」

 はぁ、と気だるげな様子の少女が半年前から何となく続けている筋トレとストレッチをしていると扉のドアノブを捻る音が聞こえてきた。
 少女は時計を確認する……。

「って、覚えてないんだけどね~。はあ、二代目とか周りが勝手に言ってるだけとはいえ崇められてた存在のくせに私って本当絶望的に無能だよね~……とと、そろそろ行かないと」

 少女は椅子を引きずりながら玄関を目指す。ちょうど、扉が爪で引き裂かれ、そして破られた。

「えい……」

 ゴシャ!と音を立て、扉の向こうからやってきた左半身は邪悪な、右半身は愛らしいクマのような何かに椅子の足が突き刺さる。
 白黒のクマはズン!と音を立て床に倒れた。

「はい終わり~………さあて、どうしよっか?このままここで死ぬのもそれはそれでありな気がするけど、だって生きる意味あまりないしね~」

 少女は倒れたクマをまたぎ廊下にでる。しばらくするとボン!と爆音が聞こえた。

「前回と同じ火の海かぁ。勘弁してよ私は別に絶望してるだけで絶望したいわけじゃないんだから」

 と、そこまで呟いた時炎の中から先程と同じ白黒のクマが現れる。武器はない。ここで死ぬのは……まあ、あの子供たちに対して、というかあの嘘車椅子の少女に対しての嫌がらせにはなるかな、と考え死を受け入れ初めた少女。

『ぐへへへへ!』

 クマが笑い、少女に迫った瞬間拳大の石がクマの左目に当たった。

「……え?」

 石?はて、石だと?
 一瞬、前回格好良く登場しといてすぐ後に捕まったかませ眼鏡率いる未来機関(笑)が助けにきたのかと思ったがなら石など使う必要はない。
 振り返るとそこには少女がいた。年は、自分より上。前回良い友達になれた眼鏡の少女と同じ年だろう。

「………誰?」
「え?あ!私!?」

 左目に眼帯、赤い髪が特徴の少女は慌てたように周囲を見回し自分に言われた言葉だと漸く悟る。
 なんか、抜けたところが兄を彷彿させる。

「凉子……音無凉子だよ。えっと、大丈夫だった?」
「ええ、まあ。大丈夫ってのが気分的な意味なら怖くも何とも………あの、何か?」
「………………」

 少女がふと違和感に気づき赤毛の少女を見るとものすごい目で凝視されていた。何だろう、この飢えた肉食獣のような目は。

「結婚してください!」
「無理です嫌ですごめんなさい、死んでください」





 登場キャラクター

 主要キャラ

 苗木こまる。
 押した世界から戻ってきたこまる。前回、未来機関の副会長という主人公っぽい脇役(こまるの評価)に殺され気づいたら半年前に戻っていた。
 絶望していてあらゆる事にやる気が起きないが凉子と言うイレギュラーに出会い少しだけ希望にすがってみる決断をするがそれでも絶望より。
 毒舌家。

「十神さん助けたいんでしょ~。良いよ~、手伝ったげる。あたしと冬子ちゃんは友達だもんね~(棒)」


 音無凉子
 自称記憶喪失の美少女。左目の眼帯の下には邪竜が封じられているとかいないとか(本人談)。
 ある条件を満たした者に老若男女問わず惚れるという厄介な性質を持つ。現在こまるに求婚中。本人曰く15秒先を予測する分析力がある。

「私が私に告げている!これは運命だよ!」


 腐川冬子
 希望ヶ峰所属と、こまるが知る記憶とは別の組織に所属している以外は前回と変わらぬ少女。
 馴れ馴れしいこまるに不信感を抱きながらも友達と言われて満更でもない。

「音無とか言ったっけ?あんた、何処かで見たような気がするのよね~……」


 朝日奈悠太
 爆死する未来を免れた少年。こまるに淡い恋心を抱いているが完全なる一方通行。

「俺に出来ることなら何でも言ってくれ!やれることはやるから!」 



モノクマ仮面団

 モノクマ仮面
 モノクマの仮面(マスクではない)を被りモノクマパーカーを着込んだ謎の男。
 ボス戦が終わる度に配下が増えている。手助けをしてくれたり毒舌を吐いてきたり敵か味方か不明。こまるにベタ惚れの凉子を見て本当に哀れで愛しい存在だと形容する。基本こまる以外に興味を持たない音無が唯一興味を持つ存在。その正体は謎に包まれている。

 モノクマレッド
 大門戦後、モノクマ仮面と行動をともにしている謎の少年。得意科目は体育とのこと。
 従来のモノクマと違い左半分は赤、目の形はダンベルの仮面をつけている。。

 モノクマイエロー
 煙戦後、モノクマ仮面と行動をともにしている謎の少年。得意科目は図工とのこと。
 従来のモノクマと違い左半分は黄色、目の形はスパナの仮面をつけている。

 モノクマピンク
 空木戦後、モノクマ仮面と行動をともにしている謎の少女。得意科目(?)は学芸会とのこと。
 従来のモノクマと違い左半分はピンク、目の形はハートの仮面をつけている。

 モノクマブルー
 新月戦後、モノクマ仮面と行動をともにしている謎の少年。
 従来のモノクマと違い左半分は青、目の形は月の仮面をつけている。


 以上、液体を纏ったシカバネさんのリクエストにあった嘘予告でした…………本当になるかどうかは読者の反応次第。
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