視聴覚室に来た苗木達は早速、モノクマから渡されたDVDをセットする。
モノクママークのカウントダウンの後、14人の少年少女が映された。
「……これって、彼らが殺されたという事かしら?」
「あるいは、俺達のようにコロシアイをさせられたのかもしれんぞ。それも、俺たちと違って『ルール無用』のな……」
と、映像の中に新たな三人が加わる。と言っても内二人はモザイクがかかっておりどんな姿をしているのかわからないが、残った〝髪の異様に長い男〟を見て、苗木が固まる。
「……苗木君?」
「ああ、うん。………彼、殺し合いになったら傷一つなく生き残りそうだなって」
苗木が呟く中、モニターに映った映像はドンドン進んでいく。
『おい、お前等!あんなモノを送り付けて、脅しのつもりか!?』
『あ、あの映像本物なの?』
『こんな夜中に有り得な~い』
『な、なんで僕たちが』
『うんうん!』
集められた少年少女達は、集められた理由は知らなくともやる気ではないらしい。というか、話からして脅しの材料となる映像を見せられて集められたようだから、やる気だったらむしろおかしい。
『生徒会の皆さん。今からあなた達には、《殺し合い》をしてもらいます』
「あ、懐かしい台詞」
映像の中でモザイクがかかった人物の変声機越しのような声を聞き、苗木がポツリと呟く中、全員が映像に気を取られていた。
そして謎の人物の宣告に一人の少女が反応する。とはいえ、そこまで焦った様子がないことから、悪ふざけに付き合わされたと思っているのだろう。
『はぁ?何言ってんのよあんた、頭おかしいんじゃないの』
『呑まれるな。我々生徒会がここで動揺したら、こいつらの思うつぼだ』
と、生徒会長らしき男が叫ぶが、おそらく少女はその言葉を途中しか聞けなかったろう。何故か?死んだから……。
頭を銃弾で撃ち抜かれて。
「ひいいぃぃぃいいいい!?………あらん?皆して面白い映像みてるじゃないのー!」
「……何故付いてきたんだこいつは…………おい、学園の何処かにある俺の眼鏡のスペアを探してこい。見つけられたらくれてやる」
「うほ!良い条件!んじゃ、行ってきまーす!」
気絶しジェノサイダーへと変わった腐川に、十神は呆れてため息を吐くと命令を飛ばす。報酬がお気に召したのか、彼女はあっという間に去ってった。
「まあ、スペアなど何処にも無いがな……」
そして、再び映像に視線を向ける。
『あなたたちの選べる選択肢は二つ。私の言う通りに殺し合うか、私に殺されるか』
『どうもー■■■■■ちゃんでーす!優柔不断なあんたたちの為に、いいモノ持ってきたよー』
教卓の人物が淡々と説明する中、別のモザイクが脳天気な様子で台車に乗ったアタッシュケースを持ってくる。
『そ、それは』
『今のあんたらに一番必要な物だよーん』
アタッシュケースの中の一つには、『○○の秘密』と書かれた、恐らく生徒会メンバーの秘密が収められたと思われるビデオテープが入っていた。これは第二の動機と同じ、知られたくない過去が載っているのだろうか?
『他にも、金に家族に秘密に私怨にちょめちょめ。いろんな意味で激重、ダメ押しの《動機》の塊。これ、どうしちゃおうか?』
ガラガラと音を立て、教卓の上に置かれていた鞄から大量の凶器が出てくる。
日本刀、銃、クナイや手裏剣、果てはチェーンソーまで選り取り見取り。
『なんなのコレ』
『落ち着くんだ!殺し合いなんて馬鹿げてる。僕らは希望ヶ峰学園の生徒会だ!』
『そうだよ、私たちは仲間ジャン。仲間同士で殺し合う必要なんてないよ』
と、生徒会長の言葉に生徒会の一面が同意する中、眼鏡をかけた一人の少女はジッと秘密のビデオテープを眺めていた。
「殺し合い、か。実際起きるのか?数週間経っている俺たちはまだ1人も死んでないのというのに」
「人に人を殺させる方法なんて簡単だよ。『罪悪感』を消せばいい。夢があるから、知られたくない過去があるから、欲しいモノがあるから、何時自分を殺しに来るかわからないから。そんな、罪悪感が薄くなる動機を用意して、後は誰かが誰かを殺せば簡単……」
と、画面の中で小柄な生徒が、先程の眼鏡の女子に背後から刀で貫かれていた。
『何を、何をしているんだ!?』
『お母さんが……お母さんがね、お母さんが、母さんが母さんが母さんが………』
母を呼びながら刀を振るう少女。手から落ちた写真はカメラからではよく見えないが、母親の写真なのだろう。
「……こいつも自分を殺しに来るかもしれない。そういう正当な理由が出来た殺意は、止まらない」
苗木の言葉を証明するように、画面が目まぐるしく変わり、次々人が人を殺す映像が映る。大丈夫だと宥めながら怯える少女を刺す大男。その大男に死体を投げ付けられ倒れ首を絞められるが、少女の死体からナイフを抜き大男の首を刺し、殺した後もナイフを何度も刺す男。
スコップを持ち追いかけてくる少女を槍で貫き、お前のことが好きだったと叫ぶ男は、カップルだろうか?その後心中しようとしている男女の男を貫き、先程殺した少女から奪ったスコップで槍を打ちつけ、倒れた男の下敷きになった女にも槍を突き刺す。
自分は好きな人を嫌々殺したのに、互いに愛する者同士で殺し合おうとした二人が許せなかったのだろう。が、その一線を越えてしまえば残るのは後悔。狂ったように笑う男の後ろに、先程の眼鏡の少女がチェーンソーを持って近づいていく。
『だっ、だっ、だずげでええええええっ!』
『わ、私だだだって……死にたくなないい…仕方ないじゃない……』
『悪くない悪くなない俺は、悪くないいい!』
『やだ、やめ……助け──!』
その光景を一言で表すなら、『絶望』。
それ以上に相応しい言葉は見つからないだろう。何時の間にかその場に残っていたのは苗木と十神、霧切と大神。誰一人として……訂正、苗木以外に平静を保っている者は居ない。
全員が顔を青くする中、苗木が見つめているのは〝長髪で赤眼の男〟。彼はいまだに何もせず、誰にもされていない。
そういえば希望ヶ峰学園のスレに、印象に残らず、そこにいても気づけないという諜報員向きの才能を持った生徒が居ると書かれていたが………。
と、再び画面が切り替わり、眼鏡の男子が映る。
『やった、生き残った。ざまあみろ……うひゃひゃひゃひゃ……うえ!』
狂ったように笑った少年は、そこで漸く〝長髪の男〟に気づき慌てて銃を向ける。
『な、何だお前……』
『アナタでは僕は殺せません』
銃を持っている相手に臆することなく、淡々と告げる男。眼鏡の少年も異様な気配を察したのか銃を下ろし……チェーンソーに火を入れる。
『うわあぁぁぁあ!』
『……………』
大ぶりのチェーンソーを躱した長髪の男は、そのまま眼鏡の少年の腹に掌底を叩き込んだ。
眼鏡の少年は壁まで吹き飛び、窓ガラスを割り倒れていく。そして眼鏡の少年にとって不運なことに、床で跳ねたチェーンソーがちょうど倒れた先の首あたりにあった。
『っひ──!?いぎゃあぁぁぁああああいいいああああ!!』
柔らかな果肉をミキサーにかけるような水っぽくグロテスクな音と叫び声が響く中、長髪の男は静かに教室から去ろうとする。が、不意に立ち止まり振り向いた刹那、発砲音と共に〝弾丸〟が男の頬を掠める。
銃を撃ったのは、首と胴体が別れた先程の眼鏡の少年。
男は頬の血を拭った後カメラを見る。苗木達ではない、リアルタイムでこの映像を見ていたであろう誰かに何かを問いただすように。
そこで映像が途切れスタッフロールが流れる。その中に、『カムクライズル』と言う文字を見つけ、苗木は目を細めた。
「うっぷっぷ!苗木クン予想はずしてやんの!」
「かすり傷だからノーカンで」
「かすり傷でも傷は傷だよ!」
と、突然やって来たモノクマに、苗木は何時ものように冷静に話しかける。
「ところでモノクマ。なんでBGMが『翼をください』なの?」
「その頃エヴァン○リオンにハマっててね~………ありゃ?自分の歌が聴かれるのが恥ずかしかったのか居なくなっとる……」
ランキングはまだまだ受け付けますよ~