救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑥

「苗木君が〝消えた〟?」

 

 朝食のため食堂に集まった一同は、舞園達が切り出した言葉に困惑していた。

 

「はい……苗木君の部屋に行ったんですけど、蛻の殻で……」

「……ふむ。では朝食が終わった後捜索に──」

「苗木クンの話してた?」

 

 と、その時突然モノクマが現れる。苗木が居ないので全員がギョッとする。

 

「何をしにきたのかしら?」

「苗木クンの話してたよね?苗木クンどこにいんの?」

「貴様も知らんのか?」

「はっ!?誰かがボクを呼んでいる!仕方ないなぁの○太くんは……」

 

 モノクマは十神の問いに、突然訳の分からない言動で濁して去ってった。

 

「……苗木クン、どこに行っちゃったんだろぉ?」

「早く探した方が良くねえか?」

「不二咲くんと兄弟の意見には賛成だが……どこを探す?モノクマも見つけられんのだぞ?」

「………舞園さん。あなた、苗木君の『匂い』を追えるのよね?」

 

 石丸の言葉に皆が黙り込む中、霧切が出来れば訊きたくない質問をすると、全員の呆れたような視線が舞園に向く。

 

「普段ならともかく、苗木君は最近《香水》をしてて………」

「香水?これかしら?」

「ん?それオレも貰ったぞ」

「僕もだ」

「ぼ、ボクもぉ…」

「そういえばもらいましたな」

 

 霧切がテーブルの上に香水の瓶をおくと、次々に様々な人物が香水をテーブルの上に置く。

 

「どうやら、最初から撒くつもりだったようだな。……これで、手がかりが完全になくなったわけだ……」

「単純に考えてカメラの無い所なんでしょうけど、それだけじゃね……」

 

 再び黙り込む一同。はぁ、と十神はため息を吐いた。

 

「どうせ手がかりがないんだ。取りあえず〝2日〟だ。それ以上行方がわからなかったら本格的に探すぞ」

「2日?……1日ではないのですか?」

「あいつのことだ。1日だけならまだ慌てる必要もないだろう……」

「……なら、今日は解散?」

「そうだな……」

 

 

 十神は視聴覚室に来ていた。目的の物は、苗木の名が書かれた『動機のDVD』。

 苗木誠と言う人物は、怪しすぎる。十神家の事情を知る者は、実を言うと一般にそこそこ居る。追放された元十神一族が誰かに聞かせたりするのだ。

 苗木誠の両親のどちらかが、元十神一族の者がいる会社に勤めていてもおかしくはない。だが、その事を抜いても怪しすぎる。

 

「……………これは普通か」

 

 DVDに、何か映ってなければ或いはと思ったが、内容は十神と同じようなモノ。十神の場合は家族ではなく、信用におけるとある人物だったが……。

 苗木の場合、『両親と妹』だった。

 

「ふむ……」

 

 本人に関わりがある動機は二つだけで、その内一つはもう既に聞いている。

 結局手がかりは無しだ。

 

「あら、苗木君を探す必要が無いと言っておきながら、手がかり探し?」

「…そういうお前も同じ用件だろう?だが残念だったな。このDVDには大した手がかりはない」

「………そう……ところで十神君。アナタから見て、『苗木君』はどんな存在かしら?」

「訳の分からん奴だ……人を信じているのかいないのか分からんし、本音と嘘のどちらを話しているのかもわからん。アイツは黒幕を殺すなどと言っていたが、今では黒幕の命を単純に終わらせるという素直な意味とも思えん」

「………謎だらけ………〝探偵〟としては興味深い存在なのだけど」

「なんだ、お前探偵だったのか………そういえば聞いたことあるな、表に出ない探偵の一族………名は確か、霧切」

 

 十神が思い出したように言うが、霧切は特に何の反応も見せなかった。十神家なら自分たち一族について知っていても不思議ではないと思ったのだろう。しかし何故だろう?この男、探偵だと言わなければ絶対に気づかなかったと確信できる。

 

 

 

 

 さて、十神は夜時間が近づいてきた時間に、体育館に来ていた。

 モノクマから苗木が見つかったか聞くためだ。

 

「おい、貴様に聞きたいことがある………おい……?」

 

 十神が呼びかけるが何の応答もしないモノクマ。不審に思いモノクマに触れ、十神はすぐさま他の生徒たちを呼びに行った。

 

 

 

「モノクマが動かなくなった?」

 

 十神が集めた理由を話すと、霧切はモノクマを軽く押す。モノクマはあっさりと倒れた。

 確かに動かなくなっている。

 

「こいつを解体するぞ…モノクマの構造を知るチャンスだ……それと……」

 

 十神は工具セットを葉隠に渡し、不二咲に向かって歩く。

 

「お前はモノクマのプログラムを解析しろ」

 

 そして、不二咲にノートパソコンを渡す。何時だったか苗木が言ったモノモノマシーンに興味が湧き、メダルを一枚もらいやった結果の景品だ。まさかこんな形で役に立つとは思わなかったが……。

 モノクマはかなり複雑で、分解には時間がかかり結局朝になってしまった。朝日奈と大神が食事を取りに行き、葉隠が分解を進めていくと爆弾が見つかった。

 不二咲もプログラムの解析を始め、しかしそれほどのことをしても黒幕から何の接触もない……。

 

「……さらな──」

「もう少し、攻勢をかけてみましょう」

「………………」

 

 十神が顎に手を当て提案を出そうとするが、霧切に先に言われ数秒固まる。

 

「黒ま──」

「黒幕の正体を突き止める為に《学園長室》に向かうのだな!よし、行くぞ皆!」

「…………………」

 

 

 

 

 学園長室前に着くと大量のモノクマが倒れていた。

 オートなのだから黒幕が居なくなっても動いている筈だが、まるで誘われているようだ。とは言え、進まないことには始まらない。

 

「〝鍵〟は開いてんのか?」

「……大和田の言うことにも一理あるな。腐川、ツルハシを取ってこい。その間に開くかどうか調べる」

「あ、あの……せめて鍵がかかってるか確認してからでも良いんじゃ──」

「さっさと行け、時間がもったいない」

「は、はい!」

 

 そんなに腐川が近くにいるのが嫌なのかと、霧切は呆れながら学園長室のドアノブを手をかける。

 

「……開いてるわね」

「腐川は無駄足になったか。まあ、どうでも良いがな……」

 

 そして、学園長室の扉を開け一同が見た物は………………【死体】。

 

「………へ?」

「な、なな、なぁ!?」

「ぬわぁんだこれわー!?」

「ま、マジかよ……!」

「むう……」

「う、うそでしょ!?」

「ひっ!」

「ぶひー!?」 

「……人が、死んで……」

「…生徒、ではなさそうですわね」

「…………」

「じょ、冗談だべ……なんで、こんな……」

 

 学園長室の中に居たのは……いや、あったのは二人の男女の死体。どちらも三十代後半といったところか。白と黒のナイフで胸を一突きされ、手を握りあった状態で、鉄の棒が二人の掌を離れることがないように固定している。

 

「……こ、この男の人、ひょっとして学園長?」

「──違うわ」

「……見覚えがあるな、この二人は……」

 

 十神は死体を見つめながら呟き、そして目を見開く。

 

「思い出した。………こいつ等は、苗木の【両親】だ」




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