救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編①

「……むにゃむにゃ………もうお腹いっぱいだよ………お腹いっぱいって言ってるだろ!いい加減にしろよ!………はにゃ?夢か……」

 

 苗木はグシグシと目を擦りながら周囲を見渡す。ここは、苗木の部屋ではない……。

 

「ふにゃ……そういえば学園長の個室に泊まったんだっけ」

 

 熱を出して眠っていたせいか、パーカーが汗でベットリしている。

 仕方ないので苗木はパーカーを脱ぎ、代わりにモノクマパーカーに着替えた。

 

「……あれ?そう言えばボク、〝どうやって〟コレ持ってきてたんだろ?」

 

 今にして思えば前回も今回も、プレゼントとしてモノモノマシーンの景品を渡していた時から、自分は何処からともなく景品を取り出していた。

 もしや自分は超高校級の手品師なのだろうか?いや、手品なんてやった記憶はない。

 

「……ま、いっか………そろそろ戻らないと」

 

 背骨をボキボキ鳴らしながら伸びをする。

 体調は快調。酒は百薬の長とはよく言ったものである。

 

 

 

 

 

義父(おとう)さんと義母(おかあ)さんって……確かですか?」

「ああ、苗木のDVDに映っていた」

「今なんか、漢字がおかしかった気が……」

 

 学園長室で見つけた死体に動揺する一同。舞園の問いに、十神と霧切は呆れながらも答えた後、平静を取り戻し死体に近づく。

 目立った外傷は、胸に刺さったナイフと、掌を固定するように二人の手を貫いている鉄の棒。

 

「おろろ?白夜様の匂い追ってたらすんげぇもの見ちゃった!」

「今頃帰ってきたか。ツルハシならいらんぞ」

「鶴橋って、誰…?」

 

 全員が漸く平静を取り戻し始めた瞬間、ジェノサイダー化してる腐川が何も持たずに戻ってきた。

 

「あなた、ひょっとして腐川さんと〝記憶〟を共有してないの?」

「ん?……ああ、アタシと根暗は『知識』とあるモノしか共有出来ないんだよね。だから根暗が日頃溜めてる白夜様との妄想は知らねえけど、白夜様にして欲しくて貯めてる知識は知ってんだよね。さあ、白夜様!アタシを好きなだけ罵って!」

「…………ッチ」

 

 十神は心底鬱陶しそうに舌打ちして学園長室を見て回る。二人の死体は関節の死後硬直が始まり、死後六、七時間は経過していた。

 

「つーかここに居ないの一人だけって事は、植物庭園の【死体】はまーくんなの?くそ、誰かに殺られる前に一回くらいメッタ刺ししときゃ良かった!ま、一度ぶっ刺してんだけどね!」

「──何の話?」

「だから、そこの巨乳スイマーに襲われたアタシが反撃した時まーくんが庇って──」

「そっちじゃないわ。死体って、何のこと?」

「死体っていったら死体だろ!〝植物庭園〟に死体が落ちてたのよ!」

 

 彼女のその発言に、その場の一同が再び固まる。

 そして、十神はチラリと死体を見てから、今度は石丸と大神を見る。

 

「現場の監視を頼みたい。他の奴らはついてこい」

「む?……うむ、任された!」

「承知した…」

 

 十神はすぐさま命令を出し、石丸と大神はその命令を正しいと判断したのか、頷いてその場に残る。そして霧切と十神を先頭に、残りのメンバーが植物庭園に向かいソレを見つけた。見つけて……しまった。

 床に横たわっていたのは、覆面をかぶった人物。その胸に、先ほどの死体と同様ナイフが突き刺さり、両掌は鉄の棒で床に縫いつけられている。

 

「な、何だよこれ!?」

「ま、また死体!?」

「てか、こいつ誰なんだ?」

「覆面被ってるからわかりませんな……」

「ゲラゲラゲラゲラッ!!だから言ったじゃーん!死体が落ちてるって!」

 

 さすが『超高校級の殺人鬼』と言うか、この場においてジェノサイダーだけは陽気に笑う。だからといって皆の心が晴れるわけではないが。

 

「直ぐに調べるぞ。ただし……慎重に慎重を重ねろ、何があるかわからんぞ」

「脈も呼吸も止まっているわ。胸に刺さったナイフのせいで服が赤く染まっている……血は、まだ乾いていないようね」

「……つーかさ、そいつ誰なの?」

「全体的な身体のラインから推測した限り……男性の方のようですが………」

「ゲラゲラゲラゲラ!つーかさぁ!その覆面剥がしちゃえばいーじゃん!」

「おい、待──!」

 

 ジェノサイダーの軽挙を十神が咎める(しゃれではない)が遅く、彼女の手は既に覆面を掴んでいた。そして、次の瞬間……!

 目も眩むような光と耳を劈くような轟音………死体が爆発して、上半身に火が点いた。

 

「……っ!」

 

 急いで霧切が水をかけたが、顔は完全に焼けて誰かわからない。

 

「くそっ、これじゃあ誰なのか……!」

「いや、大神と石丸以外で、ここ居ない人間を考えれば良い」

 

 桑田の言葉を十神が否定し、その場の全員が周囲を見渡す。

 そして気づき、一気に顔を青くした。

 

「そ、そんな!?確かにあの香水の匂いはしてましたけど……でも、苗木君とはそもそも体格が───!」

「落ち着け。俺は『苗木だ』とは一言も言っていないぞ」

 

 特に取り乱した舞園に、十神は落ち着くように促すが、葉隠を含んだ数名が首を傾げる。ここに居ないのは苗木だけのはずなのだが………。

 

「あ、あの十神白夜殿………どー考えてもそれは………」

「貴様等、大神の証言を忘れたか?〝十六人目の高校生〟……俺達はそいつについて何も知らない。《黒幕候補》としかな……」

「黒幕って……!?」

「ありえんだろ!黒幕が黒こげって何の冗談だべ!?」

「で、でもぉ……それならモノクマが動かなくなった理由も、説明できるよね……」

「け、けどよ……黒幕って学園長なんじゃ……」

「だが大神の言葉を聞き、最後の一人の高校生の可能性も考えていたはずだ。モノクマが動かなくなったことを見るにやはり……」

「取りあえず、死体を調べてみましょう……」

 

 霧切はそう言って死体に近づく。そして、死体の近くで何かが光ったのを見つけて観察すると、『鍵』が落ちていた。

 

「何処の鍵だ?」

「………おそらく、生物室、情報処理室、寄宿舎の二階………後はもう意味を為さないけど、学園長室のどれかの鍵でしょうね」

「………ふむ。おい腐川、その鍵で何処が開くか探してこい」

「は!そうだ、腐川ちゃん吹っ飛ばされて──」

「かしこまりました白夜様!」

 

 吹き飛ばされた腐川を思い出し朝日奈が叫ぶが、復活した腐川が霧切の手から鍵を奪っていき、ものすごい速度で居なくなった。元気そうで何よりだ……。

 

「よ、四階の《情報処理室》の鍵が開きました……」

「そうか、良くやったな腐川」

「!?びゃ、白夜様があたしを誉めて!?誉めてくださった!うへ、うへうひひひひ……」

「行くぞ、四階だ………」

 

 悦に浸っている腐川を放置して、一同は情報処理室に向かおうとするが……。

 

「待て。念のためここにも〝見張り〟を置いておくぞ」

「なら、オレに任せろ。兄弟もやってるしな」

「じゃ、もう一人はオレがやるよ」

 

 大和田と桑田が見張りに立候補し、今度こそ一同は四階へと向かった。

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