救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥

 植物庭園の死体。それが苗木の両親を殺した《加害者》でもある。

 死亡時刻は不明だが、アリバイが曖昧なのはおそらく、体育館にずっといた十神とモノクマを分解していた葉隠、解析していた不二咲以外の全員。

 

「死体が植物庭園に移されたのは、夜時間の開始から全員がそろっていた九時までの間でしょうな」

「じゃあ、どうやってその間のアリバイ調べんの?」

「アリバイよりもまず、死体が彼処に置かれた時間を推理すべきだ」

「そもそもあの死体が濡れていたのって、《スプリンクラー》のせいなんだよね?」

「それは──」

「それは違うわ」

「…………」

 

 苗木が言い掛けた瞬間、霧切がその言弾に被せるように反論して、苗木は口を開いた状態で固まる。

 

「あの死体の上半身は消火の際に濡れたけど、下半身は濡れていなかった。これは〝スプリンクラーでは濡れていない〟と言う事よ」

「全部言われた……」

 

 霧切に論破を取られ若干落ち込む苗木。

 まあその証言に全員納得しているようだが……。

 

「スプリンクラーが作動するのは確か、〝朝の七時半〟だったはずですから………」

「七時半以降でしたら……トイレに朝日奈さん、軽食に大和田君、仮眠に石丸君が席を外していますわ」

「つまりアリバイが無いのは、苗木に加えその三人になるわけか……」

「いやいや待ってよ。物置に『ビニールシート』があったんだけどさ、これ被せとけば濡れなくて済むんじゃない?」

「でしょうね。だから逆に言えば、その時間にアリバイを作っておく必要があった人の方が怪しいわ」

「じゃあボクの容疑は──」

「怪しいと言うだけで確信ではないわ。そう推理することを見越しているかもしれないじゃない」

 

 霧切の正論に苗木は黙り込む。

 さすが超高校級の探偵。『ここまで言えばわかるわね?』と丸投げされてた頃より遥かにやりにくい………。

 

「ちょっと待ちなさいよ!そ、そんな事したらビニールシートが〝血〟で汚れるはずじゃない!?」

「あの死体の血が、そもそも『犯人の偽装工作』だとしたら?」

「あり得るね。何せここには輸血用のパックから、殺せば血が手に入る鶏までいるんだし」

「鶏の数が減っていたから、おそらく鶏を殺したのね。それもナイフが目立つように衣服に直接かけて。その証拠に周辺の床には血痕が無かったわ」

「だとすると、〝死因は別にある〟って事になるよね?」

 

 議論というより、これでは苗木と霧切が二人で行う推理だ。だが実際二人の言葉に隙はなく、誰も入り込めない。

 

「おそらく〝頭部を鉄パイプ程度の太さで殴られた〟というこれね。凶器は武道場で見つけたわ。……十神君、説明してあげて」

「あ、ああ……武道場のロッカーに〝血だらけの矢とガムテープ〟が入れてあった。おそらく矢を束ねて太さを調節したんだろう。ちなみに、鍵となる木札は『苗木の部屋』で見つかったぞ?」

「でも苗木君の部屋には鍵がかかっていない。根拠としてはこれも薄いわね」

「なら動機だ。苗木はあの男に両親を殺されている!動機として十分だ!」

「あの男が黒幕側なら、ここにいる誰もが当てはまるじゃない」

「もう少し考えて発言しなよ」

 

 霧切と苗木に呆れた声でそう言われ、十神は頬をピクピク引き攣らせた。

 

「ていうかさ、キミたち『一番の謎』に触れてないよね?」

「一番の謎?」

「植物庭園のクソ野郎……失礼、植物庭園の死体が学園長室にあったってことはさ、今回の真犯人は〝学園長室に出入りできた〟って事になるよね。それって、この中に居るの?」

「「「……………」」」

 

 言われてみれば確かにそうだ。

 それに学園長室前の大量のモノクマが、何時から倒れていたのかすらも不明だ。

 

「だがお前は一度学園長室に入っている。その時に〝隠し通路〟でも見つけて──」

「うぷぷ。隠し通路だって、このかませ眼鏡ったら小説の読み過ぎじゃね?」

「モノクマ、言い過ぎだよ。もう少しオブラートに……ぷぷ」

「……貴様等……」

 

 口元を押さえて笑うモノクマと、腹を押さえて笑いを堪える苗木を見て、十神の額に青筋が浮かぶ。

 

「あのねぇ、学園長室にはボクの大事な《マスターキー》やら78期生のプロフィールがあるの!そんな大切なところに隠し通路なんて作るわけないでしょうが!」

「モノクマわざとだろ」

「はにゃ?」

「〝マスターキー〟……だと?おい苗木、どういうことだ説明しろ!」

「ッチ」

 

 このタイミングでわざわざ学園長室の中にあった物を話したという事は、よほどモノクマは苗木を犯人に仕立て上げたいようだ。

 

「そうそう、ボクが苗木クンに盗まれたのはね、〝この学園全ての鍵を開けられる便利アイテム〟なのだ!あ、ごめん嘘。情報処理室は開けられないよ」

「《学園長室》は開けられるんだな?」

「もちのろん!」

 

 モノクマの返事に忌々しそうに舌打ちをした苗木に、十神が鋭い視線を向けてくる。

 隠してたのが裏目に出た。いや、隠してなくても十神に指摘されていたか。

 

「なるほどな。解けたぞ……これが事件の全貌だ」

「……………」

 

 十神は得意気に苗木を指差し、己の推理を語り始めた。

 

「昨日夜時間の後、モノクマの動きが止まっていた。おそらく全ての、学園長室の前にいたモノクマもだ。それに気づいた真犯人は更なる情報を求めて学園長室に入り、そこで見たんだろう。〝両親の死体〟と《16人目の高校生》を………頭に血が上り殺してしまった真犯人は慌てたはずだ。このままではクロとなり処刑されてしまう。だから他人のアリバイを崩すためにクーラーを付け死後硬直を狂わせ、時間を見計らい両親を殺した犯人の死体に覆面を付け、植物庭園に移動させて固定、ビニールシートを被せスプリンクラーの作動後、偽の死因としてナイフを刺し鶏の血をかけた。

 そして殺害時刻を悟られなくした真犯人は、俺達と合流しようと探索している間に爆弾を見つけ、死体の身元を隠すために利用した。後は何食わぬ顔をして俺達と合流した……そうだろう、【苗木】?」

「………〝死体の身元〟を隠す必要あるの?とか、学園長室の中の犯人とやらが〝鍵をかけ忘れた〟だけじゃ?とか、あと〝血だらけの矢〟はどうしたの?とか、色々突っ込みたいところはあるけど取り敢えず筋は通ってる………かなぁ?───でもボクは【クロ】じゃないんだよね」

「あり得ん。学園長室に向かう意味があるのは、鍵を持っているお前だけだ」

「じゃ訊くけど、鍵を開け閉めできるのはボクだけ?黒幕だってそうだよ?」

「これは『生徒による殺人』が起きた時に開廷される学級裁判だぞ」

「じゃあ黒幕が【生徒】なんじゃない?」

 

 苗木が放ったその言弾に、モノクマと江ノ島が僅かに肩を震わせる。

 

「なんだ、まさか『17人目の高校生』とでも言う気か?まったく馬鹿馬鹿しい……」

「馬鹿馬鹿しい?でもさ、本来16人目の高校生は───」

「は~いそこまで、《時間切れ》です!」

「え?このタイミングで?」

 

 苗木が何かを言う前に、モノクマが突如学級裁判を打ち切る。

 タイミングがタイミングな為、苗木以外もモノクマの行動を不信がる。

 

「まだ解けてない謎があるわ。十神君の推理にも矛盾が──」

「うるさいなぁ!終わりといったら終わりなの!!だから苗木クン、これ以上余計なこと言わないでね!」

「どういうつもり?こんな中途半端な裁判、それこそアナタの言う視聴者が納得するはず──!」

「霧切さんと苗木クンが仲良くあんなことして遅れたせいで時間が押してんの!と言うわけで、そろそろ『投票タイム』と行きましょうか!オマエラ、お手元のスイッチで《投票》してくださーい!さて、投票の結果クロとなるのは誰なのか!その答えは正解なのか不正解なのか!?」

「………………」

「さぁ、どうなんだー!?」

 

 モニターにスロットマシンが現れ動き始める。そして揃ったのは、【苗木】の絵。それが正解だと言うようにスロットから大量のメダルが溢れ出た。




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