救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた理由②

「───やめ、離れろって!………夢か。変な夢見たな……まったく、こまるやモナカちゃんに抱きつかれる夢なんて、どうかしてるよ」

 

 自分には妹萌とロリコン属性など無いはずなのに。

 

「………いや、彼女も一応妹だし、妹萌はあるのか?」

 

 などと真面目に考え込む苗木だったが、直ぐに飽きて現状の把握に移ることにした。そこは不快な悪臭が立ち込める薄暗い空間。

 そして地面には〝大量のゴミの山〟

 

「ふむふむなるほどなるほど。つまりここはあれか、地下のゴミ捨て場……」

 

 何か使えそうな物がないかと、苗木は適当にゴミ山を漁り始めた。

 

「あ、これは魔法使いモノクマ!?こっちにはイケてるモノクマまで……っと、このムキムキなモノクマは……キモイな。ていうか、ボクたちもそりゃあ、マトモなのは作れなかったよ?でも捨てるなんてあんまりじゃないか……」

 

 と、愛着があるように言いながらも、《モノクマスペア達》を破壊していく苗木。すると………

 

「!お、あったあった……」

 

 『塔和グループ』のマークが刻まれた〝チップ〟を見つけた。

 苗木の記憶が確かなら、あらゆる電化製品に使える万能アイテムだとか……。

 

「これに不二咲クンのプログラム付け足せば、そりゃあモノクマもあんな複雑な動きができるよなぁ。さて、ひとまず使えそうな家電でも探───」

 

 と、そこで苗木は固まった。

 嘗て周りに超高校級のパシリなどと言われていただけあり、様々な同輩先輩教員の手伝いしてきた。もちろん、機械の製作や修理をよくしている先輩の手伝いもした。だが、それは道具を渡すぐらいで……。

 

「………直せないじゃん………そういや、モノクマスペアを作る時も、ある程度できてた奴にパーツを加工して嵌め込むだけだったな……まあゼロから作れる才能持ってる人いないからね、ボクも含めて………」

 

 と、その時、苗木は漸く視界の違和感に気づいた。『左側』がよく見えないのだ。左目を触ろうとすると何かに触れ奥がジクジクと痛む。

 精神的ショックにより、後天的な無痛症になりかけている苗木が痛いと感じるのだ。常人ならのたうち回っていただろう。

 

「……鉛筆?」

 

 手に当たった何かを引き抜くと、涙と血が混じってできたヌルリとした液体が糸を引く。

 苗木はプレゼントの中にあった《新品サラシ》を包帯代わりに巻き、保健室や科学室でとっておいた『止血剤』を飲んだ。

 

「取り敢えず、モノモノマシーンの景品で何とかしていくしかないか……」

 

 苗木は《スモールライト》(マッチ箱サイズの小さな懐中電灯)を使い周囲を探索していると、扉にたどり着く。

 

「鍵がかかってる………でもボクにはこれがある。そう、『マスター…………あれ?」

 

 扉に鍵がかかっていたが、苗木は得意げな顔でポケットに手を突っ込み、固まる。無いのだ、マスターキーが……。

 

「あ、そう言えば脱衣場のロッカーに置いてきてた………」

 

 

 

 その頃地上では。

 

「取り敢えず、戦刃さんは常に大神さんと行動してくれるかしら?」

「うん……わかった……」

「それと、苗木君の『救出』に向かうわ」

「ちょ、霧切ちゃん!カメラカメラ!」

 

 霧切の発言に、朝日奈が慌ててカメラを指差し口元に人差し指を立てるが、霧切はふぅ、とため息を吐くだけだった。

 

「平気よ。校則には、クロを助けちゃダメなんて書かれてないわ」

「だが、どうする?どうやって苗木のいる場所まで………」

「《トラッシュルーム》から地下に行くわ」

「しかし、出口はどうするのだ?そうだ、戦刃くん。何か知らないか?」

「……地下には、トラッシュルームに繋がる『梯子』があったと思う」

「決まりね……」

 

 霧切のその言葉に反対する者は居なかった。戦刃は殺されかけている時点で、黒幕とは切れていると判断されているからだ。

 

「じゃあ、私が行きますね!」

「いや、ここは霧切。お前が行け」

「ちょ!?何を勝手に決めてるんですか、かませ眼鏡!」

「…………この書類も、マスターキーも、託されたのは霧切でお前じゃない。『苗木の意志』を尊重しただけだ」

 

 苗木の意志、という言葉に舞園も押し黙る。

 舞園は苗木の特別になろうとは思わない。傍に居たいだけだ。だが、だからこそ信頼されているのが他の人間だというのは、少し気に入らない……が、苗木が無事に戻ってくるならどうでもいい。

 

「わかりました。苗木君を頼みましたよ、霧切さん」

「ええ、必ず連れ戻してみせるわ……」

 

 霧切はそう言ってプロフィールを集め、自室に置いていこうとした時……。

 

「……?」

 

 プロフィールの間に挟まっていたのだろう。〝小さな紙〟が落ちる。

 霧切はその紙を拾い……

 

「!?」

 

 目を見開いて固まった。

 

「ど…どうして……?」

「?どうした霧切……」

「………何でもないわ………少し、苗木君に聞きたいことが増えただけ」

 

 

 

 

 78期生のプロフィールを部屋に置いてきた霧切は、トラッシュルームの床の扉の鍵を開けておき、そして、地下に向かって迷わず飛び込んだ。

 

 

 

「───ッ!」

 

 ドサ!と大きな音を立て落ちたが、怪我をしていないことを確認すると立ち上がる。周囲はゴミだらけで、だからこそクッションになったのだろう。で、あるならば苗木も同じように助かっている筈……。

 

「……?何かしら、この匂い……」

 

 霧切が苗木を探すために歩き出そうとした時、不意に悪臭とは別のにおいを感じ取った。やけに強い、まるで香水の中身をぶちまけて消臭剤代わりに使ったかのようだ。

 

「……………」

 

 霧切はその匂いを頼りに歩き始める。

 暫く歩くと、ぼんやりと明かりが見えてきた。

 

「よっし!やっと倒した……いや~、さすが四天王最後の一体。強敵だったなぁ……むぐむぐ……にしても、使えるテレビとゲーム機とカセット、ついでにバッテリーまで見つけられるなんてツイてたなぁ」

「…………………」

 

 そこにはビニールシートを敷き、その上にぬいぐるみやクッションを敷き詰め、さらにその上に寝転がり油芋と虹色の乾パン、華麗な王子さまを食べる【苗木】の姿が……。

 

「……………」

「ん?あ、霧切さんやっほ~………どうしたの?」

「何でもないわ……」

「イヤでもなんか怒って……」

「ナン・デモ・ナイ!」

「ああ!まだセーブしてないのにぃぃ!?」

 

 霧切がバッテリーからコードを全て拭き抜くと、テレビの画面が真っ暗になり、苗木は悲痛な叫びを上げた。

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