救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた理由⑨

「モブキャラ殺したのは誰でしょうね?」

「彼を殺したのは《黒幕》よ。それだけは間違いないわ」

 

 モノクマは白々しく言い放ち、その言葉に霧切が反応する。

 

「しかし、黒幕は本当にこの学園にいるのか?」

「安全な所からモノクマ操作してんじゃねえか?」

「その可能性もありますな」

「こ、ここに居るわけないじゃない……黒幕はきっと、《別の場所》に居るはずよ……」

「いや、それは違うよ。ボクと朝日奈さんが、それをよく知ってるよね?」

 

 霧切や戦刃を除いた全員が半信半疑だったが、苗木の言葉に朝日奈はハッと思い出す。

 

「そうだよ!情報処理室の奥に、《モノクマ操作室》があったんだ!」

「そう。黒幕は、あの部屋の操作パネルでモノクマを操ってたんだよ。その部屋がある以上、黒幕は学園の中に居た……」

「間違いない……か……だとすると、黒幕の正体が『この中の誰か』だという事も、間違いないんだな……」

「な、何を言っているんだ十神くん……」

「この学園に足を踏み入れたのは、死んだ三人を除けば〝78期生である俺たちだけ〟………モノクマはそう言っていたんだろ、苗木?」

「………そうだね」

 

 その言葉に、互いに互いがお互いを疑うように睨みあう。

 

「ならば間違いないな。苗木の両親を殺した男を殺した奴は、この中にいる」

「それは、確かなのか?」

「当然だろ。この学園には《俺達しか》居ないんだからな」

「……いや、それは違うよ」

「………何?」

 

 大神の言葉にふん、と鼻を鳴らしながら十神が答えたが、苗木に否定されあからさまに不機嫌そうな顔をする。

 

「思い出してよ、十神クンにガムテープの指紋を取ってもらった時、二つの指紋が出たよね?」

「それがどうした?」

「そのうち一つの指紋は、〝この中の誰とも一致しなかった〟んだ」

 

 苗木の言葉に、十神は目を見開いて固まる。あの指紋はこの中の誰かのものと思っていたのだろう。

 

「モノクマ。貴様嘘をついたな……! 何が『生徒による殺人』だ!」

「いやいや、ボクは嘘なんてついてないよ?」

「なんだと!」

 

 十神がモノクマを忌々しそうに睨むがモノクマは何処に吹く風。軽く受け流し佇んでいる。

 

「あのさ、皆。……居るよね、一人……ここにいない78期生の生徒が……」

「『江ノ島盾子』の事か? しかし、その者はもう……」

「………誰が言ったの?」

「……何?」

「モノクマは〝本物は何をしているか〟尋ねてきても、『死んだ』とは一言も言ってないよね?」

「………あ!」

「そういうことか………俺達はあの言い回しで、江ノ島盾子は殺されたものだと思い込んでいたんだ……」

「それが目的だったんでしょ? 〝江ノ島さん〟」

「…………………」

 

 苗木の言葉に、モノクマはただ黙り込んでいた。

 

「……あのね、苗木クン。……それだけでボクが江ノ島さんって決めつけるの?」

「ん?」

「確かにボクの正体は『78期生』。そこを突き止めたのは誉めてあげるよ。でもね、だからって江ノ島さんとは限らないんじゃない? 転校生も、予備学科って所から移籍した可能性もあるじゃない! 実際、予備学科から本科の生徒になった先輩もいるんだしね」

「『後から入り込んだ』って、言わないんだね」

「この学園のセキュリティーは完璧だからね。ボクが誘わない限り入れないよ!」

「それって何時から?」

「〝前学園長が死んで〟、ボクが学園長に就任した日から!」

 

 モノクマの言葉に、苗木はふぅん、と呟き再び《78期生緊急面談のDVD》を取り出す。

 

「はにゃ? それがどうかした?」

「モノクマが学園長に就任したのは前学園長が死んだ後なんだよね? なら、当然『このDVDに映ってる人間』に限られる。ここには本物の江ノ島さんも映ってたし、ボク達以外は映ってない。こんな当たり前のこと、もしかしてわざと?」

「……………」

 

 有り得そうだ。

 敗北の絶望を味わうためにわざと失言する。そんな事すら厭わない連中の集まりこそ、超高校級の絶望なんだから。

 

「おかしいなぁ。念のため途中でバグるよう、『ウイルス』入れてたのに……」

「え? そうなの……?」

「ウイルスが起動しなかった……それって幸運?」

「………かもね」

 

 苗木はDVDを見ながらつぶやく。ウイルスなど仕込んでいたのか。用意周到な事だ……。いや、だからこそあんな事が出来たのか。

 

「それじゃあモノクマ、推理を纏めよっか………」

「……………」

「あれ?何も言わないの?」

「ビビってる……だけだよ……」

「ビビる? ビビるって何…? 怯えや恐怖、それは希望があるからこそ抱く感情……『絶望』しかないボクには無縁の感情だよ」

「ふうん。なら、クライマックスと行こうか……まず、この学園で目覚めた直後出会った《超高校級のギャル・江ノ島盾子》は、入れ替わっていた『戦刃さん』だったんだ。そして、江ノ島盾子を容疑者から完全に消すために処刑しようとした。

 まあ、ボクのせいで失敗しちゃったんだけどね………その後なんやかんやで殺人が起きなくなってしまった現状を焦った黒幕は、外部から人を呼ぶことにした。その際ボクに容疑を被せる為に動機、つまりボクの両親をその男に殺させた………けど、ボクを犯人にするためには、ボクが殺す動機を持つ彼を殺す必要があったんだ。そのために矢を束ねて作った鈍器で彼を殺害し、遺体を植物庭園に運んだんだ。その際あえてアリバイを特定できなくすることでわざと捜査を混乱させた。

 この学園で殺した後に殺人を隠すのは、他の皆を殺そうとしているのと同義だからね。投票させる忌避感を減らそうとしたのかな?

 そして、それを仕組んだのは《黒幕》……【本物の江ノ島盾子】なんだ……あ、そういえばさっきの転校生だの移籍だの、それって居もしない犯人に投票させるための嘘? まあそれは置いといて、以上が〝事件の全貌〟だよ」

 

 苗木の言葉に、モノクマは何の反応もせず黙り込む。

 苗木を除いた全員がモノクマに対して様々な言葉を言うが、モノクマは一切反応しない。

 

「うぷ……うぷぷ………クライマックス推理で終了。そんな風に思っちゃった? 違うよー! まだ続くんだよー!」

 

 と、何処からともなくスモークが現れモノクマを包む。そして、スモークが晴れると……。

 そこには……【絶望】が居た。

 街を歩けば10人に10人が振り返るような美少女で、そのくせ纏う気配は異様の一言。悪意のない邪気……罪悪感はもちろん、罪を犯すことに対する興奮も感じさせない。息をするように邪悪をまき散らす、そんな気配。

 だから、その気配を前に苗木は笑った。誰にも気づかれず、懐かしい〝彼女〟との邂逅に一人微笑んだ。

 

「待っていたわ! 私様は待っていたのよ! あなた達のような人間が現れる事をね! 私様の配下になるなら、世界の半分をあなた達に差し上げましょう。すでに、不動産権利書も用意してるわよ!地位と名誉と私様の手料理も付けてあげるわ!」

「……手料理か……」

「ごめんごめん、今のはジョークなんだよ。なんだか久しぶりの人前だからさ、どういうキャラだったか自分でも忘れちゃって……それにしても、やっと解放されたよ。毎日毎日、来る日も来る日も、モノクマを演じ続けるなんて……絶望的に飽きっぽいアタシにとっては、苦行を通り越して、自殺行為だからさ」

「え? 大丈夫なの……?」

「心配してくれてどうもありがとう。まあ、こうして生きている以上は平気さ……」

「……んー、んぐ……む~」

「ん?どうかした……ああ、そういや……もう取っていいよ。どうせ、ここから先は知られても特に困んないしさ」

 

 江ノ島の言葉に、戦刃はギャグボールを取る。ネトっと唾液が糸を引き、桑田と山田が思わず凝視していた。

 

「えっと……その……久しぶり、だね」

「ああ、久しぶりだね………うん。ひゃははは! 裏切っといてよく普通に挨拶できんな! どんだけ残念な姉だよオメーは!」

「…え、あ……うぅ…ご、ごめんなさい……」

「まあいーか!それより自己紹介と行こうぜ! そう!オレこそ《超高校級の絶望》!──────【江ノ島盾子】ちゃーん!」

 

 飽きっぽい彼女は自分のキャラさえ飽き、キャラを変えながら話す。

 その異様な雰囲気に、皆が飲まれ始めた……。

 

「まあ、でも……《黒幕》がわかったところでどうでもいいよ」

「どーでもよくねえべ!」

「いいえ。確かにどうでも良いことです。何故なら今から最後の学級裁判らしく、この学園の『秘密』を解かなくてはならないのです。例え私の正体が幽霊だろうとロボットだろうと傲慢小娘だろうと、この学園の『謎』を解かない限り、あなた達の勝ちにはなりません」

「なら、解くよ。……解いて、ボク等が勝つ……」

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