救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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イキキル(非)日常⑤

 苗木が模擬刀の金箔を取りながら使いやすくしていると、モノクマが突然現れる。

 

「ヤッホー苗木クン、何してんの?」

「金箔取ってんの。金箔は本物だから、集めて出た後売るつもり」

「ほほう、これはまさしく金た──」

「あ」

 

 苗木が鞘の金箔を取っている手を滑らせ、鞘から抜けた模擬刀の柄がモノクマの口に入る。

 モノクマはジタバタ暴れて、柄を引っこ抜いた。

 

「何するのさ!」

「キミが下品な発言しようとしたから、ボクの才能である幸運が発動したんじゃないかな?」

「学園長への暴力は校則違反だよ!」

「はあ?」

 

 モノクマは爪を立て叫ぶが、苗木は一つ上の幸運の先輩のように、冷めた目でモノクマを見下ろす。

 

「話聞いてなかった?ボクの意図しない事故なんだ。だから、ボクは悪くない」

「ぬぐぐ……」

 

 苗木の言葉は正論なので、悔しげな声を出し唸るモノクマ。

 

「ちぇ!もういいよ、お休み!」

 

 モノクマはイライラしながらどこかに消えた。苗木は金箔を取り終えてから、欠伸を一つして眠りについた。

 

 

 朝になり部屋のカメラを見つめる苗木。

 普段はなるべく脱衣場などカメラの死角になる場所で過ごすが、部屋に入るときなどはやはりカメラに映るし、部屋の中では常に監視されてるのだ。

 いっそ、シャワー室で眠ろうか?

 

「……いや、やめた方がいいか」

 

 現状間違いなく警戒されてるんだ。

 狙われるのは勘弁願いたい。

 と、その時来客のインターホンが鳴り響く。

 

「グッモニーンッだぞ、苗木くん!」

「おはよう石丸クン」

「では、おじゃまするぞ!」

「ちょ、まっ!」

 

 苗木は机の上に置いておいた脱出スイッチを、慌ててシーツの下に放り込む。

 

「ど、どうしたの石丸クン?」

「いくら荒波に揉まれようとも、両足をしっかりと着けていれば倒れる事はない……君もそう思うだろ?」

「……えっと、1人で荒波に耐えられないなら、支え合うために親睦を深めようって事?」

「その通りだ!流石だな、苗木くん!」

 

 前回の記憶がなければ、まず解読できない言い回しだがな。

 

「そして、今日をその記念すべき最初の日にするのだッ!だから、すぐに食堂に集まってくれたまえ!」

「…………わかったよ」

「では、僕はこれで失礼するぞ!他の皆にも知らせて回らねばならないのでな!」

 

 ホント、人の話を聞かない奴だ。

 苗木は金箔を剥がした模擬刀を腰にさし、コキコキ首を鳴らしてから食堂に向かった。

 

 

 

 食堂に集まり交わした会話は前回と全く同じ。

 セレスと江ノ島が言い争いになったり、黒幕の正体が『ジェノサイダー翔』なんじゃないかと見当違いな推理を不二咲がし、朝日奈が〝助けが来る〟という希望的観測をする。

 

(……─希望的観測、か。良い響きだな……)

 

 現状黒幕について話すことは無意味と知っている苗木が、1人で考え事をしていると。

 

「…アハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 と、モノクマが高笑いと共にやってきた。

 

「おはようモノクマ。蜂蜜いる?」

「うほほ!マジですか!」

 

 苗木は蜂蜜の入った小瓶を渡すと、モノクマは片手を瓶に突っ込んで舐め始めた。無駄に多機能だなこのヌイグルミロボット。

 

「ああ~、うまい!……さて、オマエラ。〝警察〟にはどんな役割があるか知ってる?」

「犯罪者を捕まえる」

「そうじゃなくてさあ。アニメとか特撮でだよ」

「引き立て役。必ず遅れてやってくるヒーローが来るまで市民を必死に守ってるのに、悪役の強さを引き立てることしか出来ないことに命を懸けてる割に評価されない損な役回り」

「うんうん。苗木クンたらわかってるじゃな~い!」

 

 モノクマは小瓶をひっくり返し飲み切ると苗木に返す。

 微妙に蜂蜜が残っている。

 

「…ていうかさぁ、そんなに出たいなら、殺しちゃえばいじゃーん!」

「ふざけるな!そんなことにはさせない!」

「あらん?人の死に関しては熱くなるんだね、苗木クンたら」

「……………」

 

 自分でも熱くなりすぎたかと、苗木は内心舌打ちする。

 

「アッハッハッハ!!」

「笑うトコ?」

「徹底した芝居っぷりに感心してるんよ」

「…アンタ、まだ言ってんの?」

 

 葉隠の言葉に江ノ島が呆れたように言う。当然だろう。苗木という怪我人が出たのに、まだ芝居だと思っているのだから。

 

「つーか何の用だぁ!?連続殺人鬼さんよぉ!」

「…レンゾクサツジンキー?変な名前!ドイツ人?」

「オメェの正体はわかってんだよ…!」

「無視無視…」

「無視すんな、コラァ!!」

「はいはい、それでは話を戻して…」

 

 大和田の怒声を無視して、モノクマが話を続ける。

 

「学園生活が開始して数日経った訳ですが、まだ、誰かを殺すような奴が現れないよね!オマエラ、ゆとり世代の割にガッツあるんだね…でも、ボク的にはちょっと退屈ですぅ~!」

「何を言われようとボクは誰も殺さないし、誰も殺させない……!」

「あ、わかった!ピコーン、閃いたのだ!場所も人も環境も、ミステリー要素は揃ってるのに、どうして殺人が起きないかと思ったら……そっか、足りないものが1つあったね!」

「足りないものってなんだ?」

「…ずばりど──」

「《動機》だね」

「…ショボーン」

 

 苗木が台詞を被せると、モノクマは落ち込んで何故かあった小石を蹴った。

 

「まあ、と言うわけで皆さんの動機を作りました!ボクって働き者のクマだよね~♪冬眠の心配なんてしないね」

「動機だぁ……?どういう意味だッ!!」

「ところでさ、オマエラに見せたい物があるんだ!」

「話変えんな、コラァァ!」

「オマエラに見せたいのは、ちょっとした映像だよ…あ、違うよ。18禁とかアブノーマルとかじゃないよ!ホントに、そういうのじゃないんだからッ!!『学園の外の映像』なんだってば!」

 

 その発言に、周囲の全員の目つきが変わる。

 特にセレスと舞園の目つきがヤバい。

 

「学園内のある場所に行けば、その映像が見られるよ!」

「……だったら、すぐに確認してみましょう。でも、その前に聞かせてもらえる?あなたは何者なの?どうしてこんな事をするの?あなたは私達に何をさせたいの?」

 

 モノクマの言葉に霧切が真っ先に応え、そして問い詰めるような視線をモノクマに向ける。

 

「ボクがオマエラに…させたい事?……あぁ、それはね──」

 

──絶望…それだけだよ……──

 

 ゾクリと、苗木の背に冷や汗が流れる。

 モノクマを通し、絶望的に絶望を与えたくて溜まらないと言いたげな笑みを浮かべる彼女の姿を幻視する。

 

「後の事が知りたければ、オマエラが自分達の手で突き止めるんだね。この学園に潜む謎、知りたければ好きにして。ボクは止めないよ」

 

 そう言えば、彼女は結局、ただの絶望の一人なのだろうか?それともこの悪寒は、彼女が真の………

 

「……まあいっか」

「あ、苗木君。一人は危ないですよ」

 

 苗木が食堂から出て行こうとすると、舞園も慌ててついてくる。

 

 

「あの、苗木君。ある場所がどこかわかるんですか?」

 

 迷わず歩く苗木に、舞園が不思議そうな顔で尋ねてくる。

 

「まあね、映像が見られる場所なんて限られてるよ」

「………あ、そうか!視聴覚室!」

「そういうこと………」

 

 苗木が視聴覚室の扉を開けると、各々の名前が書かれたDVDが入っているダンボール箱を見つける。

 

「私、皆を呼んできますね!」

 

 すぐに、舞園は食堂に向かって走り出した。

 一方で、苗木は模擬刀の柄を掴み引き抜く。

 

「いよっ……と!」

 

 ズガン!と音を立て、模擬刀がモニターにめり込んだ。モニターに足をかけ模擬刀を引き抜き、次のモニターを破壊しようとすると……。

 

「とう!」

 

 ベキ!

 

 モノクマが飛び出して、模擬刀に叩かれる。

 

「何やってんのさ苗木クン!これ以上やったらお仕置きだよ!」

「………ちぇ」

 

 苗木は模擬刀を鞘に収めて視聴覚室から出る。丁度、他の皆が来たところだった。

 

「………あなたはもう見たの?」

「見てないよ。だって、動機として用意された映像だよ?本物の確信もないのに見て、自分の中に殺意を造りたくないもん」

 

 霧切の問いに、苗木は目をそらしながら答える。

 霧切は1つだけ破壊されたモニターと苗木を見比べて、しかし何も言わずに見送った。苗木は苗木で購買部に潜んで、舞園が来るのを待つことにした。

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