「さてと……まず何から話そっか?」
「そうね……なら、〝どんな記憶を失ったか〟について話し合いましょう」
苗木の言葉に霧切が提案してくる。
確かに彼女の言うとおりだ。まず、この学園の記憶を奪われている事がわかっているのだから、わかっている事から議論するべきだ。
「集合写真の撮影や……面談の記憶、という事は………わ、わかった!きっと……《入学試験の記憶》よ……ッ!!」
「シーン……」
腐川の言葉に、江ノ島は何時の間にかモノクマを抱いて何も答えない。
「いやいや簡単でしょ。ここに映ってるのはどう見ても一年分の記憶………なら、最低でもボク達は一年共に過ごしたことになる………なら奪われた記憶は、『学園生活の記憶全て』だ」
「うぷぷ。大正解!流石だねぇ苗木クン………散々、ボクの邪魔をしただけはあるよ」
「………ああ、だからあんな《動機》を用意できたんだ」
「「「「……?」」」」
苗木の言葉に江ノ島以外の全員が首を傾げ、江ノ島は興味深そうに苗木を見つめる。その目には期待、怒り……様々な感情が見て取れる。ここで明かされてしまうのも良し、明かされず落胆してしまうのも良しと考えているのだろう。
「人間関係、思い出、欲望、イレギュラーだけど裏切り………ありきたりな動機だけど、誰がどう動くか、一年も過ごしてたら直ぐに〝予想できた〟んじゃない?」
「……予想できた?……それ、あなたも同じですよね?……散々私の邪魔をして……まあ、おかげで絶望できましたが……」
コロコロキャラを変える江ノ島。まるで数人が話しているような錯覚を受けるが、実際話しているのは苗木と江ノ島だけだった。
「もちろん、苗木が言った4つの動機だけが世界に蔓延る動機ではないわ……」
「怨恨、私怨、恐怖、嫌悪、愛情、気まぐれ、主義、正義、救済………確かに上げればキリがないね。……人をコロシアイに走らせるモノは」
「そう!無数に存在するそれは、世界に絶望をもたらす……私様は、それを『絶望の種』と呼ぶわ!」
「絶望の種…?」
江ノ島の言葉を霧切が復唱する。
「種、ねえ………苗床は人間だとして、養分は?」
「絶望の種が何で育つか知りたい?なら、教えてあげましょう!それは希望よ。希望があるからこそ絶望が育つの!表と裏、だけど紙一重、それが希望と絶望なのよ!」
「ん?なら〝希望〟も絶望で育つの?」
「……それは、考えたことがなかったです……難しい質問ですね……私、絶望以外興味ないので……」
「……いつまで、くだらない会話をしている」
江ノ島と苗木の会話に、イライラしたように十神が割って入ってくる。
「俺達の記憶……学園生活が抜けてるのはわかった。だが、それだけではないだろう!何を隠している!」
「い、いや待て!まずそれって本当なのか!?」
「本当だと思うよ。はい、これ追加の証拠……」
苗木はまだ認めようとしない葉隠に、『葉隠康比呂』と名前が書かれた《ノート》を渡す。半信半疑で中身を確認した葉隠だったが、次第に顔が青くなってゆく。
「こ、これ俺の字だ!間違いねえべ!じゃ、じゃあ本当なのか!?」
「だから苗木の言葉に正解って言ったろう?その話は後にしてくれ……で、隠し事だったっけ?大したことじゃないよ。強いて言うなら、記憶を奪うことで『希望』を与えてやっただけ……ま、〝絶望に喰われる為の希望〟だけどね」
「ど、どうして記憶を奪うと……希望を与えた事になるの?」
「つーか……そもそも希望なんて与えられてねーぞ……」
江ノ島の希望を与えたという言葉に混乱する一同。彼等からしたら、江ノ島に与えられたのは絶望だけだと思っているのだろう。
「……『ここから出たい』」
「…ん?」
「ここから出たい。そう思うことが希望なんじゃないかな?最低でも一年は失われている記憶の中で、何かが……人類史上最大最悪の絶望的事件と言われる何かが起きて……ボクらは〝自らここに立てこもった〟。それなら、希望ヶ峰学園シェルター化も辻褄が合う……」
「はい。その通りです。では正解したご褒美に、『この映像』をご覧いただきましょう」
江ノ島がメガネをクイッと上げながら手元のリモコンを操作する。
「これが、あなた方が出たい出たいと喚いていた『外の世界』です」
そしてモニターに映された映像は、とてつもなく異様な光景だった。モノクマのマスクを被った大勢の人間が強盗や破壊活動を行い、世界遺産の自由の女神やスフィンクスなどの顔がモノクマに代わり、巨大なモノクマが跋扈していた。
「切り替わりが激しいよ。もっとゆっくり流せないの?」
「仕方ありませんね。ではこちらを……」
苗木が愚痴ると、今度はモノクママスクと黒スーツの連中がコロシアイをしている光景が映された。
「現時刻実際に行われている映像です。これが外の世界の現状……《人類史上最大最悪の絶望的事件》です」
「ん、んなもん信じられっか!」
苗木が黒スーツの中に混じりモノクママスク達を殺してやり遂げた顔をしている某番長のような髪型の男を観察していると桑田が叫ぶ。
「……これは、質の悪い冗談では済まぬぞ!」
「あれ?信じないんだ……?」
「当たり前ですぞ!こんな、こんな光景……漫画の世界だけにしていただきたい!」
「確かに、記憶を消されているのでは無かったとは言えませんが、あったとも言えませんわ……」
「……誰も覚えてねえんだからな」
「………ジェノサイダーは?………彼女、腐川さんとは〝記憶を共有してない〟んでしょ?」
「なるほどね。記憶を共有していないなら、片方の人格が忘れている事でも、もう片方の人格が覚えている可能性があるわね」
苗木と霧切の言葉に、全員が腐川を見つめる。
「と言うわけで、はい胡椒」
「…ハックション!パンパカパーン!実は家庭的な殺人鬼でーす!!」
「単刀直入に、俺の質問だけに答えろ」
苗木が投げた胡椒によってジェノサイダー翔と入れわかった腐川に、十神が命令口調で問いかけると、ジェノサイダーが俺の、という部分に反応する。
「あの映像は、人類史上最大最悪の絶望的事件とやらなのか?」
「へむ!?『あの映像』って!?」
「あそこのモニターで…流れている映像です…」
「アンタ!誰よ!?」
「あ、《黒幕》ですけど…」
「あ、はじめまして!」
「あ、こちらこそ…」
「いいから早くモニター見ろって!」
マイペースなジェノサイダーに葉隠が叫ぶと、漸くジェノサイダーがモニターに目を向ける。
「ああ、確かにこりゃ《人類史上最大最悪の絶望的事件》ですね……あの事件のせいよね。世界が『こんな風』になっちゃったの……」
「こんな風…って?」
「こんな風に〝終わった〟……だろ!」
「終わっ……た…?」
「く、詳しく話せ…!知っている事を全て話すんだ!」
「ラジャーよ、ダーリン!えー、人類史上最大最悪の絶望的事件が起きたのは、今から一年前の事でした!あれは…殺人鬼も真っ青な事件……あれは人災と言うよりは……もはや、『天災』と言って良いレベルの事件なのです!まさしく、人類史上最大最悪の絶望的事件…その結果、世界はあっと言う間に…〝あんな風〟になってしまいました。以上です」
ジェノサイダーの説明にもなっていない説明に、当然のように周りは混乱する。
「具体的にはアタシも知らないの!リアルタイムで見てたのは根暗の方なんで、あっちに聞いてもらった方が……」
「あいつに聞いてもわからんから、わざわざお前に聞いたんだ!」
「悲劇!白夜様の期待に応えられなかった!これって悲劇だわ!」
「まあまあジェノサイダー、何が起きたのかはこの際問題じゃないよ。世界は終わった。それがわかったんだ……だからさ、次に進もう。世界は終わってた、なら〝ボクら〟はどうする?」
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