救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた理由⑫

「それじゃあ、〝どっちが殺されるか〟決めて終わりにしよっか!」

「どうやって終わらせる?」

「もちろん、《投票》だよーっ!だって、そういうルールでしょ?ちなみにね、今回は最後の投票なので、投票のルール自体も〝変更〟することにしたんだー!」

 

 最後の、というかまだ二回目の学級裁判の投票だが?とは思ったが、そもそも原因が自分なので強くは言えない。

 

「希望であるオマエ、絶望であるボク。そのどちらが『おしおき』されるべきかを、投票で選んでもらいます。そこで、〝1票でも〟希望のおしおきを望む投票があれば、ボクの勝ちとみなして、希望側のおしおきを行いまーす!」

「い、1票でもって…!?」

「あぁ、安心して。もちろん、ボクは投票には参加しないから」

「それにしても、あなたに有利すぎません?」

「別にいいじゃん。死ぬのは『苗木クン』だけなんだもん」

 

 江ノ島のその言葉に全員がバッ!と振り向き、苗木はふぅん、と呟いて目を細める。

 

「趣味が悪いね。『ボクの死』を次の動機にするつもり?」

 

 苗木は舞園達を見ながらそう呟く。

 彼女達は、苗木が死ねば今度こそ誰かを殺すだろう。いや、目の前で江ノ島に告白したからどうだろう?

 まあ、どっちにしろ投票という手段で苗木を殺せば、そいつは理性のタガがはずれる。外に出るという目的以外で、疑わしいからと言う理由で殺しに走るかもしれない。

 

「苗木クンが何のこと言ってるかさっぱりわかんなーい!つまり、皆さんに与えられた選択肢は2つ…誰か1人でも《希望のおしおき》を望む人がいれば、〝苗木クンだけが〟過酷なおしおきを受け、他の皆はこの学園で仲良く暮らせる。だが、もし全員満場一致で《私様のおしおき》を望めば、あなた達にはここから〝出て行ってもらう〟わよ。確実に出て行ってもらいます。そして、外の世界で無様に死んでもらいます。つまり『苗木』を犠牲にすりゃ、オメェらは生き残れんだよ!」

 

 苗木はその事に別に恐怖を覚えず、周囲を見回す。

 苗木はともかく、他の面々は絶望に浸食されかけている。当然か、普通の人間は苗木達と違い理由無き絶望も希望も持てない。そして、今は絶望するに足りる理由はある。

 

「それに、霧切さんもさ、『お父さん』を裏切れないでしょ?」

「…え?」

「だって、オマエラに生き延びてもらう事だけが、学園長の願いだったんだよ?だからこそ、この学園の中に閉じ込めてまで、オマエラを保護しようとしたんじゃん!死んだお父さんの願いぐらい叶えてあげなよ……うぷぷぷぷ……」

「………………」

「ねぇねぇ、誰が絶望すると思う?誰の絶望が、苗木クンを殺すと思う?」

「………誰も、絶望なんかしない………皆、絶望に負けたりしないよ」

 

 苗木の言葉に、江ノ島は顔では無表情ながら、なかなか絶望してくれない苗木に絶望して興奮しているのが目を見ればわかる。

 

「でも……そこにいる『むくろ姉さん』は、元々こちら側の人間ですよ……?」

「キミは死んだ方が、より絶望できるんだろ?なら、お姉さんを信じなよ。何より、ボクは〝皆を信じてる〟からね」

 

 それは今も昔も変わらぬ、偽り無き苗木の本心だ。人を疑うこの環境の中で、人の殺しを邪魔する中でも変わる事なく、『仲間』を信じ続ける苗木の本音だ。

 

「お、俺の占いだと、やっぱ……ここから出ない方が…………」

 

 と、葉隠が絞り出すように弱々しく呟く。

 

「うぉぉぉおおおおっ!!でも、生きる事って、〝前に進むこと〟だよな?辛くても…怖くても…前に進む事だよな…?そのために目は前についてんだろ?俺はまだ生きたいべ!次の扉を開きたいべ!新しい何かが待ってるはずだって!だから…だから…やっぱ〝ここから出たい〟べ!もう占いなんてどうでもいい!俺は俺の直感を信じることにしたんだ!」

 

 葉隠は叫びながら、人の内臓を売ろうとする屑とは思えないまっすぐな言葉をはいた。

 

「…確かに、外には絶望が、困難が待っているのだろう。……だが、強さは〝困難に立ち向かう〟事でしか掴めん!ならば、我はあえて茨の道を進もう!!我は恐れぬ、退かぬ…絶望にも屈せぬ!………それに、外には再びまみえる〝約束〟をしている者もいるのでな」

 

 大神はそう言ってふっと笑う。ものすごい男前の笑みだ。いや、女だけど。

 

「……さくらちゃん……そう、だよね……〝逃げてばかりは居られない〟よね!苗木は、何考えてるかたまに解んないし、何で江ノ島ちゃんみたいな人好きになって、しかも殺すなんて正直理解不能だけど、私達を何度も助けてくれたんだもん!苗木を殺して生きるぐらいなら……私はもう、決めた!〝ここから出る〟!」

 

 朝日奈は前の苗木だったら心にグサグサ刺さるであろう言葉をはく。今の苗木も軽く傷ついた。

 

「……わたくしが集めてきたお金は全部無駄、ですか。……外の世界も、既に滅びている……〝おもしろい〟じゃありませんか。それに見方を変えれば、これも立派なギャンブルですわ。負ければ死が待つゲームなど、何度も経験しています……しかも滅んだ世界なら、わたくしが〝自分の国〟を作って城を構えても、誰にも文句を言われないじゃありませんか」

 

 セレスはそう言ってニッコリ笑った。どうやらまだ夢は諦めてないようだ。

 

「………外の世界は絶望、ですか。アイドルももう居ないんでしょうね………で?それがどうしました?居ないなら〝作ればいい〟。また、私がアイドルとして活動して、少しずつでも増やせばいい!私は〝夢〟を捨てたつもりはありません!」

 

 舞園の目にはここ暫くみなかった、確かな『情熱』が宿っている。これまで苗木は自分に依存させることで心の均衡を保たせてきたが、この様子ならもう平気だろう。まあ、好意が消える訳ではないが……。

 

「……オレはよ、しょーじき世界が滅んだとかよく理解できねえよ。……でもな、苗木のおかげでわかったんだ。オレは〝野球が好き〟なんだって……だからよ、野球がぜってーできねえここより、何時か出来るかも知れない〝外〟に出る!もー決めたことだからな、絶対に変えねーぞアポ!」

 

 桑田は拳を握りながら叫び、大事なところで噛んだ。彼らしいと言えば彼らしい……。

 

「……チームを守る。兄貴との男の約束だ……世界がこの様子じゃ、守れなかったのかもな……だがよ、兄貴とは別の約束もあるんだ……〝どんな時も挫けるな〟って……こんな事で、蹴躓いてる暇はねーんだ。オレは〝外〟に出る。んでもって、チームの生き残りを集めて、もう一度チームを復活させる!」

 

 大和田は大声で宣言する。秘密を隠すために人を殺しそうになったあの時の弱さは、もうどこにも見えない。

 

「……僕の夢は、自分の力で総理大臣まで上り詰め、〝努力が結ばれる国を作る〟ことだ………こんな、力が支配力となる世界など、風紀が乱れきった世界など断じて認めん!ゆえに〝外〟に出て、暴力に溺れた軟弱者達に説教してやる!」

 

 石丸は力強く言い放つ。彼は彼の正義をどこまでも貫くつもりだろう。

 

「ゲラゲラゲラゲラッ!アタシ的には〝どっちでもよし〟!単純に、楽しそうな方を選びまーす!実はこう見えてさ、根暗と同じく昔から〝学校が嫌い〟なんだよね!いやいや…どう見えてだっつーの!!ゲラゲラゲラゲラッ!!あ、だけど…白夜様が来るのは最低条件だから!」

 

 ジェノサイダーは愉快そうに笑い、最後に十神を付け足す。まあ、何時も通りだ。

 

「……拙者は……僕は……〝諦めませんぞ〟!全ての始まりにして終わりなる者!山田一二三!〝外の世界〟に出て、希望を届ける漫画を描いてみせる!」

 

 山田は自分の漫画を書くという夢を叶えるために、ここから出ることを決意する。

 

「……どうした?……まさか、お前如きが俺を励まそうなどと、考えているじゃないだろうな……フン、バカバカしい……俺は最初から、絶望なんぞに屈するつもりはない……だが、勘違いするなよ。お前がどうなろうと知った事ではない。俺は、ただ自分の言葉を守るだけだ。〝黒幕を殺す〟という言葉をな……それに、我が十神家は滅んでなどいない……まだ、この俺が残っている。ならば俺の力で十神家を〝再建させる〟までだ。今まで以上の存在としてな!」

 

 殺しの『実行』は苗木、お前に譲ってやる。十神はそう言って顔を逸らした。

 

「………外の世界は、きっと怖いことも辛いことも沢山あるんだろうね………でも、でも〝逃げない〟よ!逃げてちゃ、変わらない!弱いだけの自分は〝嫌なんだ〟!」

 

 不二咲は力強く宣言する。弱さを克服すると。そんな彼を弱いという者はここにはいない。

 

「……えっと……あの、ごめん……私、やっぱりよくわかんないや。盾子ちゃんを絶望させたいけど、死んで欲しくないって気持ちもやっぱりある……でも、ここから出て皆を幸せにすれば、盾子ちゃんは絶望する、よね?………後ね、皆が幸せな姿を想像すると、なんだか〝胸がポカポカする〟んだ………だから、私は盾子ちゃんを絶望させるために………皆のために、盾子ちゃんを〝裏切る〟よ……」

 

 戦刃は……まあ、彼女らしいと言えば彼女らしい言葉で、妹との決別の言葉を口にした。

 

「……私は、父の事を何も知らない……だから、父の想いなんて私にはわからない……でも、きっと……私の父親なら、少なくとも血の繋がった父親なら……苗木君を見捨てて、ここに残れなんて……〝そんな事言うはずがない〟。どうしてかはわからないけど、それだけは確信できるわ……何も知らないからって、何もわからない訳じゃないって事なのかしら……これって、ひょっとして……いえ、何でもないわ。それにね、苗木君……あなたは幸運や不運なんかで、この学園に来たんじゃないと思うの。あなたがこの学園に来たのは、もっと別の理由があったのよ……超高校級の絶望を打ち破ろうとするあなたは、江ノ島盾子にさえ希望と称されるあなたは……最後まで諦めずに絶望に立ち向かおうとするあなたは……《超高校級の希望》、そう呼べるんじゃないかしら?」




次話投稿と同時に超高校級を締め切らせてもらいます。
後、出来れば再投稿した後は消してください。オリキャラ以外のコメントも……。
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