希望ヶ峰学園を飛び出し早一週間。現在、78期生達は……。
「絶望しろぉぉぉ!」
「死ね!死んで江ノ島盾子と同じ絶望をぉぉお!」
「こそcf『■↑》ま》」
モノクママスク達に追いかけられていた。
バイクに乗りながら叫び、中には訳の分からない言葉を吐く者までいる。
「うおお!?──だ、大丈夫何だろうな!?」
「うん。バイクに乗りながらじゃ、踏ん張れないし……銃弾にも耐えられる車には傷一つ付かない…よ」
なるべく窓から離れるために真ん中で縮こまっている桑田怜恩に、戦刃むくろは安心させるように言う。
苗木誠は窓を開けるとゴミを投げつける。ゴミに当たったモノクママスクの一人はバランスを崩し速度が緩み、後ろのバイクと激突しスリップする。そのまた後ろのモノクママスクは、ぶつかる前にブレーキをかけようとしたようだが、前輪のブレーキをかけそこない、後輪だけが回ったままバイク本体が回転して、さらに後ろのバイクを巻き込んでいく。
「反対……も?」
反対側の窓からもゴミを投げようとするが、その前にモノクママスクの額が赤く染まり倒れた。
「……銃弾」
それを見た戦刃がポツリと呟く。
「……アルターエゴ!バイクから離れて!」
『え?……う、うん!』
苗木の叫びと同時に、アルターエゴがハンドルを回しモノクママスク達から離れる。当然すぐ追い付こうとしたモノクママスク達だったが……。
「ぐえ!」
「ぎゃあ!」
「■㈲℡!!」
銃弾の雨に撃たれ次々地面に倒れてゆき、それに巻き込まれ転んだ者が玉突きのように次の標的となり死んでゆく。
人の命など紙切れ同然に失われていく。そんな、絶望的な光景だった。
「はい、アルターエゴ。止まって……」
「い、いいのかよ?オレ達も撃たれんじゃ……?」
「それより、何故お前が当然のように仕切っている……」
大和田紋土は不安そうに、十神白夜は余りにも自然と命令を下す苗木に若干不機嫌そうに言葉を吐く。が、アルターエゴはまだ生まれたばかりのプログラム。とりあえず、最初に出された命令に従い停車した。
そして、キャンピングバスを囲むように数台の黒塗りの車が停まった。
「誰か出てきたぞ」
「……おじいちゃん?」
「ああ、間違いなく爺だな」
そして、一台の車から髪の逆立った〝老人〟が降りてきた。バスにある程度近付くと立ち止まり、窓から眺める桑田達を見つめる。外に出るのを待っているのだろう。
「じゃ、行ってきます」
「な、苗木君!?危ないですよ……!」
バスを降りて外に出ようとする苗木を、舞園さやかが慌てて止める。助けてもらったとはいえ、相手は銃器を持った相手だ。防弾使用のバスから出たらあっさり蜂の巣にされるだろう。
「でもそれは、向こうに敵意があったらの話だよ……そこまで心配なら……戦刃さん、ついてきてくれる?」
「…………うん」
戦刃はコクリと頷いて、苗木の後に続いた。
「ふむ。なかなか肝が据わっておるの……まあ、それは生放送で視た通りか……」
老人は苗木を眺め顎に手を添え呟く。何時襲いかかってきても対処できるように戦刃は警戒するが、向こうに全く隙がない。
「ワシは天願和夫……未来機関の会長じゃ。よろしくの。……超高校級の希望、苗木誠君……」
「未来機関?……ああ、絶望と戦ってる」
「そうじゃ。今日来たのは他でもない。君らを保護する為じゃ………もっとも、必要なかったかもしれんが」
『天願』と名乗った老人はチラリとキャンピングバスを見る。絶望が集団で押し寄せてくると言うことは、近くに人が住める環境があるということ。このバスなら十分たどり着けただろう。
「いえ、お気持ちは嬉しいですよ」
「そう言ってもらえると助かるの……すまんな、遅くなって。まずは希望ヶ峰学園に向かったのじゃが……」
当然内部には誰もおらず、周辺を探してみても、車で移動していた苗木達は思ったより進んでいた。故に二日もかかったのだろう。
「構いませ───」
「ッ!?」
苗木が言い終わるより早く、戦刃が後ろに跳んだ。同時に赤く燃える日本刀が、先程まで戦刃が立っていた地面を焼き切った。
「宗方君!やめろ!」
「止めないでください。絶望は、殲滅する!」
「…………!」
『宗方』と呼ばれたあの時モニターに映っていた男が突然現れ、戦刃に襲いかかる。戦刃もナイフで応戦しようとしたが溶けた。向こうの刀はよほど特殊な合金で出来ているのだろう。
「……ッ!」
接近戦は不利と判断した戦刃は何処に隠し持っていたのか、拳銃を取り出し発砲する。
三点バースト。二発は外れ一発は宗方の頬をかする。一瞬出来た隙に、戦刃は懐に侵入し掌底を打ち込んだ。
「……人間って飛べるんだ」
と、思わず苗木が呟くぐらい、宗方は吹き飛ばされた。
天願がはぁと頭を抱え、宗方を諭そうとした時……
「動くんじゃねえ!動くとコイツの命はねえぞ!」
「ん?………ボク?」
別の叫び声が聞こえる。苗木がふと後ろに振り向けば、ガラの悪そうな〝男〟が苗木にナイフを向けていた。そして一瞬で肩をつかまれ、ナイフを喉元に添えられる。
「──苗木君っ!?………ッチ!」
「はん、最初っからそうしてりゃ良いんだよ……」
戦刃が拳銃を捨てたのを見て、男は鼻を鳴らす。
「逆蔵君!何をしておる!?」
「黙れ天願。俺に命令していいのは宗方だけだ……宗方、さっさとやっちまえ!」
苗木はふむ、と顎に手を当て考える。そして、その間に宗方は起き上がり、戦刃に斬りかかろうとしていた。苗木は──
「─そこまで」
パンっと手を叩き笑顔で言い放つ。その場違いな声色に一同の動きが停まった。
「……それ以上やるなら、ボクも黙ってないよ?」
「は?ツイてるだけのお前に何が出来んだ?」
「未来機関の保護を〝断る〟」
「あぁ?………お前、自分の立場わかってんのか?それはお前等が泣いて頼むもんだろうが」
『逆蔵』と呼ばれていたマッチョマンの言葉に、苗木はやれやれと肩を竦めた。そして、宗方を見る。
「ねえどうする?こっちの脳筋はともかく、アナタならわかるよね?今ここでボクに保護を断られるのと、戦刃さんを見逃すの……どっちのデメリットが高いか」
「………………」
宗方は数秒苗木を見た後、刀の柄を押す。すると刀の発熱が止まった。
「…苗木誠を離せ、逆蔵」
「え!?け、けどよ……いや、わかった……」
逆蔵が渋々苗木を離すと、戦刃が心配そうに駆け寄ってくる。
「今は、戦刃むくろを見逃してやる。だが、その条件を出したからには保護されてもらうぞ」
「もちろん。………今はね?」
「……生中継で何度も思ったことだが、お前は性格が悪いな」