救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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桜の下には希望が埋まっている⑤

 その昔、一人の少女が人買いに売られ命からがら逃げ出した。

 両親に売られたため帰れるはずもなく、野垂れ死ぬのを受け入れかけていた時、〝桜の木〟を見つけた。それはとても美しく、少女を魅了し勇気づけた。

 そして魅了されたのは少女だけでなく、地元の大名もだ。元々心優しいことで有名な大名は少女の話を聞き人買い達を捕らえた後、少女に桜を見つけた功績として金を与えた。

 少女には商人の才能があったらしく、数年と経たぬ内に沢山の財を手に入れ、その金で自分を守ってくれた桜の木の近くに祠を建て祀ったそうだ。

 やがて少女は成人し、花のように美しい事から花美姫と呼ばれるようになり、大名と結婚した。

 それが《花美一族》の始まりらしい。

 

「商才があったとはいえ幼い少女一人、当然多くの苦労をしたと聞きます。それでも、折れそうになる度にこの桜を見に来たのだとか……」

「……へえ……その子にとって、この桜は希望だったんですね」

「ええ…でも、数ヶ月前まで枯れそうだったんです。ですが私の孫……桜下が、空気清浄機を取り付けたビルで囲むことにして、お陰でこうして少しとはいえ花が咲くほど回復しました」

「……ふぅん」

 

 このビルの配置にそんな意味があったのか。だが、元々寿命が来てるのだろう。よくよく見れば朽ちかけている枝がある。

 

「……ん?あれ……花美さんが〝孫〟って……?」

「ああ、私は『桜下の祖母』ですよ。二代前の当主でもあります……桜下の先代、私の息子は絶望的事件の時に……」

 

 死んだのか。超高校級とはいえまだ若い花美桜下が当主となり、しかも支部長か……この壊れかけた世界ではかなりの重圧だろう。今度、酒でもつき合ってみるか?駄目だ、苗木はまだ未成年だ。

 

「いや、こんな世界なら法律とか関係ないかな?」

「ところで、その荷物………何か用事でもあったの?」

「あ、そうだ……じゃあ、えっと……?」

「桜。…花美桜だよ」

「では桜さん、また今度」

 

 苗木は頭を下げ、桜と別れて部屋へと向かった。

 桜は苗木の背を見つめる。この絶望的世界で、希望の象徴となった存在……。

 彼女は苗木がここに来たのは必然だと思っている。希望の桜の下に、希望の象徴……これはきっと天命だろう。

 ──枯らすわけにはいかない。

 しかし自分は植物に詳しくない……だが、昔〝ある方法〟を使い一生の中で一番綺麗な桜を咲かせたことがある。その方法をまた使えばいい………。

 

 

 

 

 苗木がビルの中に戻ると、戦刃と聖原が喧嘩──刃物を使った、ぶっちゃけ殺し合いをしていた。

 苗木の横を聖原の斬撃が掠めてゆき、髪が数本落ちる。

 

「…………ねぇ」

『!?』

 

 苗木が苛立った声を出すと、二人はビクッと固まった。苗木は、緑の隻眼に2人を映しながら微笑む。

 幾つもの戦場を渡り歩いてきた戦刃と、押され気味だったとはいえ彼女と渡り合っていた聖原が、一般人であるはずの苗木に恐怖していた。

 

「少し、頭冷やそうか?」

「「す、すいませんでした……」」

 

 

 

「ごめんねー。今ミネラルウォーターしかなくて」

 

 苗木は紙コップにミネラルウォーターを注ぎ、聖原と戦刃に渡す。

 戦刃はコクコクと飲み、聖原は一気に飲み干した。

 

「で?二人はなんで喧嘩してたの?」

「この女が先に手を出してきました」

「こいつ……人を殺したことがある、怪しい……」

 

 戦刃はそう言って聖原を睨む。ようするに、苗木を見つめる人殺し経験のある男をたまたま目撃し、『暗殺者』か何かと思い攻撃したのだろう。

 

「うん。戦刃さんが悪い」

「!?」

 

 苗木に叱られショックを受けた顔をする戦刃。だが誰がどう考えても、怪しいと言うだけでマジで殺しにかかった戦刃が悪いだろう。

 しょんぼり落ち込んだむくろの頭を撫でながら、苗木は聖原に謝罪する。聖原は気にしなくて良いと笑った。

 

「代わりに、江ノ島盾子の殺した方法を──」

「しつこいな……じゃあ、そうだね……『ヒント』をあげよう」

「──!」

 

 苗木の言葉に、聖原のアンテナが揺れる。

 

「え、教えちゃうの?……盾子ちゃんが本当は……」

「──はい黙れ」

「むぐ………最近、苗木君が冷たい気がする」

 

 苗木はポ○キーを戦刃に咥えさせ黙らせる。苗木からもらったポ○キーを栗鼠のようにカリカリ食べながら、戦刃は文句を言った。

 

「ボクがやった方法は……名付けるとするなら【存在殺人】、と言ったところかな」

「存在殺人?……それは……超強盗殺人みたいなものですか?あ、超強盗殺人っていうのは、その人に関するデータを全て消し去る……」

「いやいや、全世界に放送された超高校級の絶望のデータを消すなんて無理でしょ」

「……えっとね………あむ」

 

 戦刃はポ○キーを食べ終え何かを言おうとするが、苗木が今度はクッキーを食わせる。戦刃はサクサクとまた栗鼠のように食べ始めた。

 

「これ以上は教えない。後は自分で考えなよ………ところでキミって、〝第6支部所属〟なんだっけ?戦刃さんの話では、人を殺したことがあるようだけど……どんなとこ?」

「暴動の鎮圧、凶悪犯罪の調査……まあ、『武力集団の集まり』ですね。──支部長はホモ野郎です」

「……ああ、逆蔵さんか……ちなみに、〝ここ〟はどんな支部なの?」

「それは──」

「『広告活動』さ!」

 

 聖原が答えを言う前に扉が勢いよく開かれ、誰かが入ってきた。そう言えば鍵を掛け忘れてた。

 

「誰だ!?」

 

 戦刃がナイフを取り出し構えるが突然の乱入者、〝女性〟は臆した様子もない。

 

「希望ヶ峰学園第74期生、元超高校級のプロデューサー『観能(かんの)示恵(しえ)』!今や世界一の有名人、苗木誠に会うためただいま見参!」

 

 また妙な人が来た、と苗木はそんな風に『観能』と名乗った女性を見つめた。




観能示恵 焔勅さんのキャラ

14支部は広告活動してるんだからこういうキャラがいなきゃね
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