花見、というのは久し振りだ。
去年はシェルターの中に居たため一年ぶりだろう。満開……とは言わないが、大きさも大きさなので花の量は多い。
「それじゃあ、第14支部副支部長の観能示恵さんから、開会の言葉」
司会者の女性がマイクを片手に台本を読み上げる。どうやら観能は《副支部長》だったようだ。この支部は広告活動だし、普通は支部長じゃないのかと思ったが、あの性格では……。
「えー、本日はお日柄も良く……って、相変わらず赤い空だけど……」
見上げればビルに囲まれた四角く、赤い空が覗いている。
現状、どんな天気が晴れなのかわからない。まああの火事の煙のような雲が多ければ、取り敢えず曇りなのだろう。
それにしても、赤い空というのは落ち着かない。一年前、苗木達が最後に見た空はまだ青かったはずだ。
「──と、長々話しましたが」
意識を空から地上に戻すと、ちょうど観能の開会の挨拶が終わったようだ。
元々苗木は長い話は好きではない。意図せず聞き逃せてラッキーだった。
「今日は無礼講やー!どうせこんな世界、法律もくそもない!飲んで、食って、楽しめー!」
「「「おぉぉぉぉぉ!」」」
「お、おー!」
周りのテンションが上がる中、戦刃が突然の咆哮に警戒してナイフを取り出しそうになり、慌てて周りに乗っかった。苗木と聖原、十神や霧切や大神さくらは別に叫んでいない。あと、花美も苦笑していた。
「いやー、ひさしぶりの酒だべ!ほらほらみんなも、飲むべ飲むべ!」
「待ちたまえ葉隠くん!僕らはまだ未成年だ!」
「記憶失ってんだろ?だったらもー成人してんべ」
「オメーは二年前から成人してんだろうが!」
葉隠康比呂は早速酒を飲もうとして石丸清多夏に止められていた。が、屁理屈を言って酒を飲もうとする。
「君はともかく、僕達はまだ18だ。高校生なんだ。君もクラスメートなら〝校則〟に従いたまえ!」
「いや、オレらの学校もう潰れてんだろ」
「それに、お酒は二十歳、というのは日本の法律。世界には16で飲酒が出来る地域が数多くありますわ」
「む、い、いやしかし……」
大和田とセレスティアの反論に口ごもる石丸。法律で禁止されているとも、校則違反とも言えぬ現状。健康を阻害すると言ったところで、セレス辺りに少量なら平気ですわと論破されるのが目に見えている。
「まあまあイッシー。先輩から出された酒を飲まないのは〝礼儀〟に反しないの?」
「そ、それは………ええい!では、一杯だけです!」
観能の煽りに石丸は覚悟を決め、一杯だけ酒を飲み───ぶっ倒れた。
「兄弟ぃぃぃ!?」
「酒弱っ!?」
「………う……」
「お、おい石丸!大丈夫か!?ほら、水だ……」
桑田が慌てて水を持ってくるのと同時に、石丸がカッ!と目を覚ます。気のせいか髪が白くなり変なオーラが出てる。
「うおっしゃあぁぁぁぁ!」
「うお!?ど、どーした石丸?」
「石丸ぅ?…何処のドイツだそりゃ!」
「いや、石丸清多夏殿といったら、貴方しかいないでしょう」
「俺は俺だあぁぁぁぁ!」
「兄弟が壊れた!?」
石丸は酔うとあんな性格になるらしい。『怒り酒』という奴だろう。戦刃はごくごく飲んでいた。海外で酒を飲んだ経験があるのかもしれない。
「やあ戦刃君。少年も、楽しんでるかな?」
「花美さん……」
「ふふ。どうせなら青空の下で行いたかったがね」
確かにこんな赤い空では風情がない。
「にゃえぎく~ん!」
「舞園さん?……酒臭!?飲み会に無理矢理付き合わされた時のお父さんと同じ臭いがする!」
「よってましぇんよ~、アイドルですから!」
「苗木君から離れて……」
「む~、じゃましにゃいりぇくだひゃい!」
ヒュン!と苗木に引っ付いていた舞園の手がかすみ、キィン!と金属音が響く。見ると、サバイバルナイフを持った戦刃と、包丁を持った舞園が睨み合ってた。
「…………」
苗木はその場から離れることにした。その際周りを見ると、やはり戦刃はあまり受け入れられていないらしく、ナイフを振るう戦刃に不信感のこもった眼差しを向ける者が数多くいた。
「舞園さん、酔ってるわね……」
「あ、霧切さん……酔ってなさそうだね」
「祖父に酒に酔いすぎないよう訓練されてたのよ。酔って間違えた推理したなんていい恥曝しだもの」
「ふーん……」
「一番舞園!歌います!」
と、何時の間にか戦刃との戦闘を終えた舞園がマイクを片手に歌い始める。酔っても超高校級、場は大盛り上がり。桑田が何時の間にか法被を着てオタゲイを披露している。
「………そういえば、綺麗に咲く桜の下には『死体』が埋まってる、なんて噂があったね」
「死体?埋められているなら事故死じゃないわね。外傷は?」
「凶器は?」
「いつ?」
「死体発見時の状況は?」
「いやだから噂だってば……職業病患わせないでよ」
何となく呟いた言葉に、二名の探偵が思いの外反応して呆れる苗木。
「苗木く~ん!デュエットしましょー!」
と、そこで一曲目を歌い終わった舞園が、苗木に向かって手を振ってきた。苗木に視線が集中し、仕方なく舞園の下まで歩く。
「それじゃ、デュエットいきまーす!」
「苗木君、歌うまいのね……」
歌い終え戻ってきた苗木に、霧切が素直な感想を言ってくれた。
「ボクって、友人を持つ度に観察してるんだけど、そうすると『相手の特技』を何時の間にか覚えてるんだよね」
「………苗木君って、実は意外とチートキャラなんじゃ……」
「ん?何の話ですかー?……ふにゃ!?」
と、佐々苗が苗木達の下に駆け寄ったとき、足元の何かに躓いて転ぶ。
「いたた、なんですかも~……ひっ!?」
「ん?」
佐々苗は自分が何に躓いたのか確認して、息を呑んで固まる。
苗木も佐々苗の足元にあったモノを見る。間違いなく、【人の腕】だった。
使用スキル『美声』