救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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桜の下には希望が埋まっている⑨

 守衛室には、監視カメラの映像が記録されているとのこと。

 とは言え、倉庫の入り口は一つだが中庭の入り口は8つ。これら全ての、夜11時から朝6時の7時間を見なければならない。

 

「早送りしても時間が掛かるわね。最初から『当たり』を引ければ良いんだけど……」

「そんな『幸運』、持ち合わせていないな……」

 

 と、2人は〝苗木〟を見る。普通に全員で見ればいいのでは?と思ったが、信用できる人間しかいないと思っていた支部内で殺人が起きている以上、誰も信用できないとのこと。

 

「だが、少年にはれっきとしたアリバイがある。戦刃君や聖原君もそうだが、余所の支部の隊員や戦刃君が捜査するのを快く思わない者が多くてね」

「それでボクですか……じゃあ、取り敢えず倉庫の映像から……」

 

 そう言って苗木は映像を確認する。飛ばしすぎると見逃すので三倍速で……。

 そして、その映像だけで6人居た。

 

「じゃあ次は、中庭の入り口だけど……あれ、六つ?」

「いや、その……すまない」

 

 苗木の疑問に花美は済まなそうな顔をした。まあ、元々探偵業をしていて才能も超高校級の死体愛好家(ネクロマニア)が設計したのだ。建築業の者が建てたから強度はいいだろうが、カメラの位置や間取りには穴があったりするのだろう。

 

「……これ、犯人映ってたら本当に幸運だよね」

 

 苗木が呆れながらモニターを見つめる。めんどい、正直かなり面倒くさい。犯人が映ってない可能性の方が高いのに何故わざわざ確認を。

 

「安心してくれ。私達も出来ることは手伝う」

「……………」

『苗木君、大丈夫ぅ?』

 

 と、その時何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。辺りを見回すと、ディスプレイの一つに『不二咲千尋の顔』が映っていた。いや、不二咲ではない。不二咲でもあるのだが……。

 

「……アルターエゴ?」

『えへへ、こっちに引っ越してたんだぁ』

「丁度よかった。映像を処理してくれない?人が通ったところを映して欲しいんだ」

『うん!任せて!』

 

 アルターエゴは早速作業を始めたのか、ものすごい早さで映像が切り替わっていく。三分もしない内に映像が止まり、アルターエゴの満面の笑みがディスプレイに映し出された。

 

『昨日の夜11時から6時の間に中庭に通ったのは、カメラに映る限りだと〝この2人〟だけだよ』

 

 アルターエゴがそう言って映したのは2人の男。片方は今回の被害者だ。

 時間を確認していることから呼び出されたのだろう。

 その男が出てくる所を捕らえるカメラはなかった。時間は12時。

 

「……で、もう1人は……かなり不審だね…」

 

 その人物は一度中庭に入った後慌てて逃げ出し、そしてまた戻ってきた。その手には〝何か〟持っている。

 ズームアップすると、画像が粗くて見えない。

 

『ここもボクに任せて!』

 

 アルターエゴが叫ぶと画像の粗が徐々に減っていく。男の手元にあったのは、《例のナイフ》だ。

 

「間違いないわね。死体偽装は、この人の仕業よ」

「………カメラを使えれば、犯人捜すのこんなに簡単なんだね」

「……そうね」

「これ、調査する必要あったのかな?」

「あるさ。言い逃れできない証拠を見つけられただろ?」

 

 まあ、まだ真犯人が分かっていないのだが。

 

「……眠い」

「苗木君?大丈夫……?」

 

 苗木は唐突に眠気を訴えると、霧切は慌てて駆け寄る。徹夜でTRPGとやらをしていたのだ。寝不足なのだろう。

 

「この男には、私から話を通しておく。少年は休みたまえ」

「……………は~い」

 

 

 

 

 

 苗木は部屋に戻り、ベッドに寝転がると目をつぶり眠りに───つかなかった。

 

「聖原ク~ン」

「呼びましたか先生」

 

 苗木が名を呼ぶとベッドの下から聖原が現れる。その手には何やら、『手紙』が握られていた。

 

「見つかった?」

「被害者の部屋からキチンと………別に、俺は犯人分かってるんですけど」

「殺し愛だっけ?でもボクは、それの的中率を知らないし…………」

 

 苗木は手紙から指紋を取り、聖原に取らせてきた別の指紋と照合する。完全に〝一致した〟。

 

「……よし、じゃあ行こっか。ボクが許可出すまで何もしちゃだめだよ?」

「…………はい」

 

 

 

 

 深夜1時。

 中庭の桜の前に1人の老人がいた。花美桜だ。

 

「お待たせしました、桜さん」

 

 桜の木を見上げていた彼女に、苗木は話しかけた。

 

「なんのつもり?こんな時間に呼び出して……」

 

 桜は責めるように苗木に手紙を突きつける。彼女は苗木に手紙で呼び出されたのだ。

 

「用はすぐ済みますよ……じゃ、言いますね?──犯人は【アナタ】だ」

「………何の事かしら?」

「今回の生き埋め殺人の犯人ですよ。あなたは、『この手紙』で被害者を呼び出し眠らせ、縄で縛って埋めた。……被害者の部屋から見つかったこの手紙の指紋とアナタの指紋が〝一致〟しました。それに、アナタの部屋から睡眠薬が見つかりました」

 

 苗木が証拠の写真を見せると、桜の顔が強ばる。

 

「動機はこの桜か?……桜の木は、『死体』を養分にすると綺麗に咲くと言うからな……」

 

 ぬっと聖原が現れる。彼の言葉を聞き、桜はにぃ、と気味の悪い笑みを浮かべた。

 

「えぇ、その通りです………この桜を枯らせるわけにはいかない。当然でしょう?この桜は、特別なのです!我らに幸運を授ける……だから、私は『真』を捧げた!」

「……何だって?……お前、埋めたのか……花美さんの妹を…アンタの孫を!」

「あの子は足りない子でしたからね。せめて役に立ってもらいました。希望のために……」

 

 苗木は桜の言葉を聞き、はぁ~と長いため息を吐き頭を抱える。

 苗木とて希望のために人を殺した。この先もきっと、数え切れない数を殺すことになるかもしれないと覚悟している。

 だがこんな殺人は絶対にしない。崇められるだけで何もしない信仰の対象のために、人を殺すなどゴメンだ。

 

「こんな桜、いっそ伐った方が良いのかもね」

「──ッ!!」

 

 苗木の言葉に、桜が目をギョロリと見開く。ガリガリシワシワの老婆が目を見開くとかなり怖い。

 

「……あぁ……ああ、そうだ……次はあなた達を『肥料』にしよう……!希望のあなたなら、きっと良い肥料になる!」

「……じゃあ聖原クン、やっちゃえ……」

 

 苗木が合図した瞬間、聖原の腕が霞む。

 

「あんたの殺人は10点だ。妄想の為の殺しなど……そして教えてやる。《生き埋め殺人》っていうのは……」

 

 ゾバっ!とまるで地面が爆発したように桜の足下の土が吹き飛ぶ。桜は突然できた穴に落ちてゆき、慌てて駆け上がろうと地上を見上げて固まった。

 あまりにも深すぎる。

 

「バイバイ♡」

「……まっ───!」

 

 桜が慌てて叫ぶが、重力に従った土が待つはずもなく、きれいに穴に落ちていく。

 

「超生き埋め殺人……」

「おー、もはや手品の域すら越えてんね……どうやって一気に掘ったの?」

「やってみます?先生ならきっと直ぐに覚えられますよ……」

「いやいい……ま、桜さんもこの桜の養分になれたんだし、本望でしょ」

「あ、桜の根が届かない所まで埋めときました」

「グッジョブ!」

 

 苗木は聖原の言葉に親指を立てた。そして自分の部屋に戻ろうとした時、カランと音を立て苗木の背に何かが落ちてくる。

 

「……幼女の骨だ!」

「何で分かるの聖原クン……?」

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