救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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おいでよ動物の国③

 籤引きの翌日。第4支部の職員と名乗る男に連れられ、苗木達は車に揺られる。外から見える景色はやはり緑がない。

 

「一年で、ここまで変わるものなのだな……」

「うん……それだけ、江ノ島ちゃんが恐ろしい存在だって事だよね」

 

 大神と朝日奈は荒れた景色を見ながら、改めてこの世界の現実を噛みしめる。

 同じく外を眺めていた苗木がふと、奇妙な物を見つける。瓦礫の中に隠れて〝何か〟があるのだ。

 普通なら気づかないだろうが、光が反射して苗木だけが気づけた。

 

「ごめん、ちょっと停めて」

「かしこまりました」

 

 苗木の言葉に、運転していた男が丁寧な言葉で応え、車を停車する。

 備え付けのガスマスクを手に取ると、苗木が外に出ようとしている事に気づいたのか、大和田が慌てて声をかける。

 

「おい、苗木……何かあったのか?」

「…んー、ちょっとね」

 

 コロシアイ学園生活により警戒心が上がり、さらには霧切から会得した『観察眼』で見つけた気になるもの。

 〝偶然見つけた〟というのも気になる。仮にも超高校級の幸運である自分が、たまたま反射した光で見つけたのだから。

 

「苗木様。宜しければ、私が護衛として同行致しましょうか?」

「ん?ああ、頼むよ……えっと……『神城さん』」

「はい」

「あ~……おい、オレも行くぞ。数は多い方が良いだろ?」

「大和田クン……うん、じゃあお願い。…大神さんと戦刃さんは、ここで朝日奈さんと車護ってて…」

「うむ」

「わかった……」

 

 2人の返事に苗木は頷き、先程見つけた瓦礫の山へ、神城と大和田を連れて向かった。

 ある程度近づくとやはり違和感を感じる。〝瓦礫の集まり方〟が妙だ。下から大きく、上から小さな瓦礫と積み上げられていた。ご丁寧に大きな瓦礫の間には、小さな瓦礫が敷き詰められている。

 苗木はそんな瓦礫の山にある数少ない隙間から中を覗く。なにやら、『機械』が見える。

 苗木が取りあえず退かせそうな瓦礫を退かしていくと、機械の全貌が見える。それはまるで、希望ヶ峰学園にあった空気清浄機のようだった。

 

「……でもこれ、空気清浄機じゃないよね……」

 

 モノクマの左目のマークが張られた黒い空気清浄機。シュウシュウ音を立て黒っぽい煙を出す機械は、どうみても大気を汚しているようにしか見えない。

 

「えっと……これかな、停止ボタン」

 

 苗木がスイッチを押すと、ブゥンと音を立て機械が止まった。

 どうやら正解だったらしい。

 

「これは………!」

「知ってるの?」

「絶望の技術者が人の住み難い世界にするために作った、《大気汚染装置》です」

 

 神城の説明に、苗木はへぇ、と大気汚染装置を眺める。

 実は苗木はループした際、記憶以外に誰の才能でもない自身のスキルを手に入れていた。いわゆる【共感覚】と言われるそれは、〝絶望の臭いを感じ取る〟と言うものだ。

 確かに大気汚染装置からは絶望の残り香を感じる。だが何か妙だ……何か、とは明言できないが。

 

「………?」

 

 結局モヤモヤを抱えたまま、苗木達は車に戻り、再び走り出した。

 

 

 しばらく進むと見えてきた光景に、苗木達はあんぐり口を開ける。

 

「お、おっきい……」

 

 朝日奈が思わず呟いたように、第4支部と思わしき建物は巨大だった。高さではない、高さもだが、幅が……だ。しかし苗木は直ぐに気づいた。窓が少ない。

 

「……壁?」

「はい。苗木様の仰る通り、あれは壁……厳密には〝塀〟でこざいます」

「塀っ!?あのでっけぇのがか!?」

「はい」

 

 塀、と言うことは『庭』があるのだろうか?

 第14支部で桜が育つように中庭を作ったように、第4支部では薬草が育つように大きめの庭を作っているのかもしれない。

 

「もしや……薬草を育てるためか?」

「はい。まあ、薬草だけではありませんがね」

 

 苗木と同じ結論を出した大神が呟くと、神城はそれを肯定し、次いで補足を述べる。

 

「『動物』も保護されているのですよ。支部長の薬は、動物に効く物もあります。動物園の檻が壊れて野生化した動物達の保護もしているんですよ」

「どの動物が狂犬病の媒介になってるかわからないしね……」

「まあ、それもありますが……支部長は心優しい方ですよ。道端で死にかけている犬に薬をやったこともあるのですから」

「ふーん、尊敬してるの?」

「もちろん。ですが、今は何よりあなたを信奉しておりますよ」

 

 神城はそう言って、苗木に尊敬の眼差しを向ける。

 苗木はふーん、と軽く受け流して外を眺めていると、車は門をくぐり抜けた。

 

「………へぇ」

 

 そして塀の中には〝緑〟が広がっていた。

 第14支部の中庭にも桜や草があるが、これは規模が違う。遠くには動物の影が見える。まるでサファ○パークのようだ。

 大和田が草食動物と目があった瞬間逃げられ、逆に大神と目があった草食動物が近づいてくる。

 

「ここには草食動物が多いんだね」

「ええ、そういう区ですから」

「この動物達にも薬を?」

「病気になれば……」

 

 見渡せば目に付くのはヌー、シマウマ、インパラ、etc.etc.。別の区に肉食獣がいるのも考えると、相当な種類の薬品が必要になりそうだが……。

 

『!』

 

 不意に〝臭い〟を感じた苗木は、鼻をクンクンと動かす。

 臭いの元は、倒れている草食動物……。職員と思われる人間達が車に乗せている。

 

「………厄介ごとの予感がするなぁ」

 

 この場合は臭いだろうか?というか、未来機関の内部がすごいことになってるな。よく潰れない……と、苗木は呆れ半分、関心半分のため息を吐いた。




神城守(しんじょうまもる) 75期生 超高校級の執事 佐藤さんだぞのキャラ
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