苗木は、第2支部の遣いである柊投花という女性が運転する車に乗り込む。
「リムジンなんて初めて乗りました!」
「普通乗る機会無いからね」
テンションの上がっている佐々苗の横で、苗木は備え付けのワインを飲む。既に足下には数本のワインの空瓶がある。苗木が飲み終わると、左に座った佐々苗が新しくワインを注ぐ。
「………少年、酒の飲みすぎは良くない」
「少しぐらいなら薬になるよ」
「少年の『少し』とは一体どの程度なのか………」
花美が呆れる中、建築物が密集した……街が見えてきた。
「わお」
「第6支部は戦闘部隊だからね。守るべき人を集めているんだ」
「第14支部は広報活動だから集める必要がなくて、第4支部は集めすぎると感染症になったときの為に困るから、支部を人里と離しているんですよ」
「ふーん………にしても、全支部の支部長が集結か……」
「『派閥』でも作るんですか?」
苗木がポツリと呟き、佐々苗がニシシと笑いながら苗木の顔を覗き込むと、苗木の新しく移植した青い瞳に見つめられる。
「ヒッ!?」
「?どうしたの?」
「……え、あ……あれ?」
苗木の左目と目があった瞬間、〝言い知れぬ感覚〟を感じて後ずさりした佐々苗だったが、何故自分でも怯えたのかわからず首を傾げていた。
「どうした?少年の顔に虫でもついていたか?」
「い、いえ……」
と、その時車が止まり扉が開く。
「皆様、着きました。足下にお気をつけて」
柊がそう言って降りるように促す。苗木達は車から降りると、トランクの中に引きこもっていた聖原を出して通路を歩く。
時折すれ違う職員達が苗木達を見ると会釈して去っていく。
「……ネイルアーティスト、円盤投げ、棋士……うーん、手品師?あ、ヨーヨー……」
「さっきから何をしてるんです?」
「《才能当て》……で、結果は?」
「今のところ、全問正解です」
柊はパチパチと拍手する。佐々苗や花美も感心したように苗木を見る。
「15人……27人、55人、11人……」
「聖原クンは何してるの?」
「殺してきた人数を……」
「結果は?」
「知りませんよそんなの……」
柊は呆れたように言う。むしろ知ってたら怖い情報だ。
「……………」
「………ッ!?」
再び第6支部の職員とすれ違った瞬間、〝左目〟に激痛が走り、苗木は思わずうずくまった。
「な、苗木先輩!?」
「少年!?」
「どうしました?」
「先生?」
3人が慌てて駆け寄って来る中、苗木は先程の職員に振り返るが、何処にもいなかった。
「………さっきの職員、何の才能持ちですか?」
「彼はただの下っ端ですが?」
「………………ふぅん」
柊の答えに、苗木は左目を押さえながら右目を細める。
「あの、気分が優れないなら」
「大丈夫大丈夫。心配しないで」
柊が心配そうに言ってきたが、苗木は片手を振り立ち上がると、再び歩き出した。
「そーいえばさ、ボクらみたいにバカ正直に信用できる相手を連れてきたのって、何人居るんですか?」
「…………アナタ方を含めて、7人です」
「ま、あんな事の後じゃ誰も信用できませんよね。強制にしてくれれば色んな才能持ちをみれたのに」
「…………」
実際信用できる者と言っても、今回潜んでいた絶望の残党は副支部長、つまり支部長に最も信頼されていたはずの者だ。連れてくる方が少ないだろう。
「この部屋です」
柊がそう言って扉を開けると、長丸のテーブルを囲んだ連中が一斉に苗木を見る。
「あ、苗木君じゃーん。テレビで見たまんま……でもないか、片目色違うし。あ、お菓子食べる?おいしーよ」
第8支部支部長・安藤流流歌はそう言って、苗木に『飴』を渡してくる。
「…………」
「すいません。貰い物なんであげられません」
「良いことを言う。流流歌からもらった物だ、味わって食え」
第9支部支部長・十六夜惣之助は、苗木の飴を羨ましげに見ながら気にしないようにするためか顔を逸らした。だが、時折苗木の飴をチラチラ見てくる。
「へえ……スカウトに行ったときとは別人じゃないの。……あ、俺のこと覚えてる?」
第3支部支部長・黄桜公一は、酒瓶片手に苗木に手を振ってきた。
「はじめまして苗木誠さん。お会いできて光栄です」
第12支部支部長・グレート・ゴズは、牛の覆面をつけたまま挨拶をした。あれは、良いのだろうか?
「支部長は君のファンなんだよ。ま、ボクもだけどね」
第12支部副支部長・神島光留はそう言って、苗木に笑いかけた。
「……ッチ」
第6支部支部長・逆蔵十三は、苗木を見てツマラナさそうに舌打ちした。
「あ、あの……第13支部の支部長は?」
第6支部副支部長・斉藤竜は、本来なら第13支部支部長が座るべきはずの席に座っている男に話しかける。
「ミーの所の支部長なら、『ノーセーブでRPGクリアする縛りプレイで忙しいから無理だ……』と言っておりました……」
第13支部副支部長・大文字ユウはそう説明して、はぁ、とため息をはきながら頭を抱えた。
「……あそこは、相変わらずね」
第4支部支部長・忌村静子も呆れたように言う。
「そうですね」
第4支部新副支部長・神城守もそれに同意した。
「そういえば私、第13支部の支部長に会ったことないのよね。どんな人なの?」
第5支部支部長・雪染ちさはふと首を傾げる。
「まともに仕事しない奴のことなど知る必要ない。全く、誰がアイツを支部長にしたんだ?」
第2支部支部長・宗方京介は吐き捨てるように言った。
その後ろに、第2支部副支部長・柊投花が立つ。
「ワシじゃよ」
第1支部支部長にして未来機関トップの天願和夫が、宗方の言葉に答えた。
「あの子はいい子ではある。この前もワシと共に、ダンボールを被って徘徊すれば見つからない確率について話し合った」
第1支部職員・日本尊は、うんうんと頷きながらどうでも良いことを言った。
「手を触れば多少は縁だね」
第11支部支部長・万代大作は、よくわからない諺を使った。
『強制召集じゃありまちぇんからね』
第7支部支部長・月光ヶ原美彩は、車椅子につけられたディスプレイに映るうさぎのキャラクターに喋らせていた。
「………………」
第10支部支部長・御手洗亮太は、無言で苗木を見ていたが目が合うとすぐ逸らした。
「ふむ。どうやら私が最後のようだね。ああ、この子は佐々苗七希だ。仲良くしてやってくれ」
第14支部支部長・花美桜下と超高校級の希望・苗木誠は、空いていた席に座り、その後ろに佐々苗七希と、聖原拓実が立つ。
「では全員そろったところで、会議を始めよう」
天願の一言で、支部長会談は始まった。
超高校級の武道家(73期生)神島光留(かしまみつる)
直接的な戦闘では戦刃や大神をしのぐ実力者。絶望を力でねじ伏せても絶望は消えないと思っているため苗木と戦刃の放送を聞いてから苗木のファン。
超高校級の優等生(78期生)斉藤竜(さいとうりゅう)
元苗木のクラスメート。評議会が自分の発言力をあげようと入れただけのため実際はそこまで優れた才能は持っていない。クラスメートに圧倒され一週間で自主退学している。
超高校級の翻訳家(70期生)大文字ユウ(だいもんじゆう)
ゲームばかりしている支部長の代わりに会議に出ることが多い。実質的に第13支部を取り仕切っている。
超高校級の軍人(15期生)日本尊(ひのもとみこと)
元フェンリル所属、80歳の高年とは思えぬ強さを誇る。ダンボールに隠れて移動すれば見つからないと本気で思ってる。