とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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8ページ目 ラディッツ襲来!~バタフライエフェクトという現象は死すべき

●月○日続き

 

 雑誌の占い特集の仕事の後帰ったら家の前にラディッツが空から着地しているところだった。見間違えでなければ、この間4歳になった我が愛しの甥っ子悟飯ちゃんを手にぶら下げている。どうやら気絶しているようだ。

 

 …………。ha?

 

 こちらに気づいたラディッツはスカウターをいじるとこちらを向き「ほう、戦闘力500とはなかなか立派じゃないか。お前がカカロットの姉を名乗るサイヤ人だな?」などと言ってきた。ちょ、今500って言った? 私戦闘力5どころか×100で大分制御間違ってんじゃねーか! だからスカウターが無いと不便なんだ!! そら来るわ! 話を聞けば悟空も口を滑らせたようだし……心の準備もなにもあったもんじゃない。

 どうやら悟空の所には行った後のようだ。ってことはその内こいつ追って悟空たちここ来ちゃうんじゃ……。………………。家が破壊される。(確信)

 とりあえずご近所に長髪筋骨隆々黒ブルマ男と知り合いっぽく話してるところを見られたくない。

 ラディッツはまだ何か言っていたが、とりあえず家のドアを開けて中に蹴り入れた。面食らった様子のラディッツが何か騒いでいたが、私はすぐに餃子師範直伝のドドン波(弱)でスカウターを破壊した。よし! これでしばらく私が生きているとベジータに知られないで済む!

 え、何怒ってんの。スカウターの予備くらい宇宙船にあるよね?

 

 正直なんでコイツここ来たんだとイラついていたし、早く追い出したかったので超能力で腹痛を引き起こしてから気絶しない程度の力で顔パンした。パンっていってもグーだけどな? 腹痛で動きを止めたのは実戦の経験は相変わらずブランク長すぎるので確実に当てるためと、動かれて家の家具を壊さないための措置である。ソファーとかテレビこの前買い替えたばっかりのいいやつだし。というか、ラディッツに勝てる程度には戦闘力が上がっているようで安心した。ほっ。

 ひとまず大人しくなったので、少しお話をしてからびしっとある決め台詞を言ってラディッツを家から追い出した。あれ、この格好いい決め台詞誰かが前使っていたような? うーん、漫画か何かのキャラクターだろうか。

 

 ちなみに悟飯ちゃんはここで助けておこうかと迷ったけど、きっと悟空が助けに来るしピッコロさんとの修業フラグを折るわけにもいかずそのまま連れて行かせた。くれぐれも丁寧に扱うように、そして私には会いに来なかったことにしろと言い聞かせて。

 あとせっかくはるばる地球までやってきたのだし、死ぬ前に何か美味いものでも食わせてやるかと昨日収穫した二十日大根と自家製味噌をもたせてやった。うん、閻魔様を困らせないで成仏しろよ!

 

 

 

 

 

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「誰かと思えば、バーダックさんの家のラディッツくんじゃない。大きくなったね」

 

 そう言ってオレを上から見下ろしたのは、戦闘力500から繰り出したとは思えない重い拳で俺を殴った女だった。鋭い吊り目を面白そうな笑みで細め、三日月形に口を歪める。今まで隠していたであろうサイヤ人の尻尾が床に倒れた俺の視線の先でゆらゆらと揺れていた。

 俺の事を知っているのか。そう思った瞬間、ぞわりとした悪寒とともに幼いころの記憶が呼び起こされる。

 

『ねえねえ、一緒に遊んであげようか!』

 

「……ハーベスト、王女……!?」

「あら、思い出してくれたの? 嬉しいよ」

 

 そう言ってほほ笑むのは生き残りの中でも別格の超エリートとされるサイヤ人の王子、ベジータの実姉であるハーベスト王女。今の今まで忘れていたが、まさか生きていたとは……! 「あの」ベジータと並び抜きつ競うほどの戦闘力を誇っていた正真正銘のスーパーエリートだ。実戦にけして出ないことでも有名だったが、思慮深い性格からフリーザ様の覚えもめでたいと当時注目を集めていた。

 俺が小さいころ、一度だけ話しかけられたことがある。あの時、子供だったこともあり感受性が高かったのだろう……スカウターもないのに大きな戦闘力を感じ取ったオレは、彼女がひどく恐ろしい生き物に見えたものだ。

 そしてそれは、今もだ。

 500だと? まさか! ハーベスト王女がそんな戦闘力なわけないだろう!

 

「な、なぜカカロットと地球に。しかも姉とは……!?」

「少し訳ありでね。まあ、いろいろあったんだよ。惑星ベジータが消滅する前に君の弟と同じ宇宙船に乗ったおかげで助かった。この星に来てからは、同じ育て親に世話になって姉弟として育ってきた」

 

 ところで。話していたハーベスト王女はそういって声のトーンを変える。

 

 

 

「消えろ。ぶっとばされん内にな」

 

 

 

 俺がこれ以上彼女に質問することは出来ない。それだけは分かった。だがすでに俺はぶっとばされているんだが……いや言うまい。

 

 その後、カカロットの子供をくれぐれも傷つけないこと、自分の所に来たことを絶対にカカロットに言わないことだけ念入りに言い聞かせられて家の中から帰された。理由は分からない。

 そしてなぜか青々とした葉っぱのついた赤くて丸い小さな果実……だろうか? ともかく何かの植物の束が入った袋と茶色いものが入った容器を渡された。よかったら食べると良いと言われたので食べ物だろう。毒ではないというように一つかじって見せられたが、よく水分を含んでいて瑞々しい様子がうかがえる。なかなか美味そうだ。

 俺はそれを受け取り、自分はここに来なかったと言い聞かせるとカカロットのガキを連れて宇宙船のある荒野へと飛び立った。

 

 カカロットの勧誘を邪魔する様子もなかったが……。いったい何だったのだ。

 とにかく腹ごしらえをして、スカウターも新しいものをつけて気を取り直そう。

 

 

 

=============■□□

 

 

 

 

 

●月○日 更に続き

 

 

 あの後、やっぱり悟飯ちゃんが心配になってこっそりラディッツの後をつけた。

 

 そして始まるラディッツVS悟空とピッコロさん。この時点ではやはりラディッツの方が圧倒的に強い……! この2人が共闘しても敵わないなんて、この時点では破格の強さではなかろうか。とか思って見ていたら、あ、尻尾つかまれた。あ、弱った。あ、命乞いした。だからお前はラディッツなんだよ! そして悟空も放すのかよ! ほら見たことか騙された! 

 一人実況しながら戦いを見守っていると、ラディッツが父を助けるために感情を高めてパワーアップした悟飯ちゃんにふっとばされた。ラディッツも追い詰められているのか、私との約束も忘れて悟飯ちゃんを殺そうとする。あ、テメこのやろ。するとそれを阻止しようと悟空がラディッツを羽交い絞める。そして、決まったーぁぁぁぁぁ!! ピッコロさんの魔貫光殺砲だぁぁぁ!! 生で見るのは初めてだけど、やっぱりピッコロさんの魔貫光殺砲は最高に格好いいぜ!! 弟ががっつり貫通されてるの見ながら盛り上がってる場合じゃないけど!

 

 

 しかしこの後、私は目を疑った。

 

 ラディッツが、倒れたと思ったらすぐに起き上がったのだ。しかも傷が治っている!? どういうことだ!

 

 

 今まで比較的原作通り進んできたはず。それがどうしてこうなった? 原作と違うところ……それはラディッツが私の所に来たこと以外考えられない。けど私は傷が治るものなんて渡した覚えないよ!? って、傷が、治る?

 

 結果だけ書いておこう。

 ラディッツに渡したラディッシュの葉っぱに昨日絡んでいた仙豆の蔓からこぼれた実が一粒混じっていたらしい。そしてそれを食べた時、奥歯に豆を詰まらせたラディッシュ、じゃなくてラディッツ。それが魔貫光殺砲で貫かれたときはずれて飲み込んだ。そして瞬時に復活したのだ。

 何て酷いバタフライエフェクトだよ!!!! 無理、あるだろ。もう一度言う。無理、あるだろ。もう一度、言う。無理あるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 悟空がとんだ無駄死にだよ!!

 

 死に瀕してから復活したラディッツの戦闘力は上がり、再び絶体絶命の状態へと追い込まれたピッコロさん。しかも飛行機でブルマたちまで追ってきて、悟空はあと少しで死ぬ。いったいどうなっちゃうの!?

 

 ってところで私が責任をもってラディッツを殴り倒しましたよ。ええ。

 

 

 そしてどうしていいか分からなくて、ラディッツを持ったまま逃げるように帰ってきてしまった。

 

 

 

 どうしよう。

 助けて神様。

 

 

 




神様「(神は困惑している)」

先話にて一行だけ出てきただけで感想がラディッツに埋め尽くされたことに全俺が嫉妬。けど、作者だって、作者だって不憫な扱いのラディッツが好きなんだ・・・!だけどごめん。悟空は本当にごめん。真面目に土下座する。

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