とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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9ページ サイヤ人襲来まであと1年!~二十日大根と過ごす日常

Ф月◎日

 

 

 

 昨日は大変だった。悟空は死ぬし、ラディッツは生き残るし。

 ……。改めて文面に書き起こすと酷いな。

 

 いっそ私がラディッツを殺して無理やり原作に沿わせようとも思った。でも思わず連れて帰って来てしまったラディッツを見て、せっかく生存したんだしどうせならリユースした方が良いのではないかと思いとどまった。

 いや嘘、正直怖気づいただけである。

 惑星ベジータ時代でさえ人を殺すことをしなかったのに、今さらこの緩み切った軟弱な精神で出来るはずがない。いやだって気持ち悪いし死体の処理困るし……あ、それは気弾で塵にすればいいのか。でもなぁ~、なんかなー。勝手に死ぬの見る分にはいいんだけど自分でやるのは嫌だなー。ここは他力本願に、こいつ連れてこないでピッコロさんにとどめを刺してもらうのが正解だったか。我ながらクズの思考である。

 でもあのレベルの偶然を引き起こし生き残ったとなると、本来居ない私がいるようにこの世界ではラディッツの生存は必然だった可能性もある。現時点では私の方が強いことがはっきりしているので、しばらく生かして様子を見るのも手か。

 

 それと小さい頃のこの子を覚えているってのもためらう理由かもしれない。

 あの弱虫ラディッツと呼ばれて涙目だった子がこんなに大きく育って……いかん、悟飯ちゃんが生まれてから段々と親戚のおばちゃん思考がしみついている。

 

 

 

 

 そういえば上記のようにごちゃごちゃ考えていると、ブルマからいったいどういうことかと電話がかかってきた。そ、そういえば前の天下一武道会でケータイ番号は交換してたんだっけ……。

 

 この電話で私は自ら墓穴にダイブすることになる。

 

 とりあえず私は原作でラディッツが言ったであろう2人のサイヤ人のことと、おそらくそいつらが1年後には地球にやってくるだろうことを伝えた。まだ時間もそんなに経っていなかったし、おそらくピッコロさんもまだその場にいるはず。これできっと悟飯ちゃんの修業フラグは確実だろう。ちなみにドラゴンボールの情報に関しては、その電話で「悟空はそれまでに何でも願いを叶えてくれる不思議な球、ドラゴンボールで生き返らせるよね。あの死者をも蘇らせる奇跡の球で!」みたいなことも話しておいた。なんでこんな説明セリフかって? ラディッツのスカウター越しに通信を聞いてるであろうベジータとナッパに情報をリークするために仕方なくである。でないと奴ら、ラディッツの仇を取るためだけに地球に来てくれる気がしない。

 

 私に関しての言い訳は。

・すごく強い気を感じて驚いて、占いで居場所を特定して駆けつけたら戦いが始まっていた。

・悟空が死にかけ敵が復活した事態に、思わず飛び出したら思いがけないパワーが出た。(悟飯ちゃんの例があったので説得力はあると信じる

・敵を倒せたはいいが、怪我人や悟飯ちゃんのそばに置いてあったら危ないと思いとりあえず遠ざけた。←イマココ

 という説明で済ませた。

 

 感情をたっぷり込めて女優張りに頑張って説明したし。

 少しでも疑問を感じたり、納得していなさそうな反応があった時など「私がもっと早く力を出せていれば、悟空は……!」とか「チチさんになんて説明すれば……」とか悟飯ちゃんは無事か、あんな小さい子が怪我して頑張ったのに直前まで勇気が出ずに助けるのが遅れた私は……! みたいな情に訴える迫真の演技を挟みなんとか乗り切った。ちなみにその時の私の背中は冷や汗でびっしょりである。

 

 サイヤ人に関しては、昔記憶喪失だったが途中で思い出して知っていたことにした。どうして今まで言わなかったかと聞かれた時は、母星はもう消滅しているし地球の生活には必要ないと思ったからだと答える。下手に記憶喪失設定を引っ張ってここでまた嘘をつくと、どんどん嘘を上塗りして自分の首を絞めそうだったからね……ある程度真実を混ぜないとね……。我ながら詐欺師感がすごい。

 

 途中でブルマから電話を奪ったピッコロさんの声が電話越しに聞こえてびびった。ピッコロさんは耳がいいから今までの会話も聞こえていたんだろうけど……ピッコロさん鋭いからな。私の同情心に訴える演技も見抜かれていそうで怖い。耳元でピッコロさんボイスが聞こえることとの二重でドキドキした。冷や汗の量がすごかった。少し痩せたかもしれない。

 

 まずラディッツはどうしたのか、殺したのかと聞かれた。ここで私の脳みそが瞬間的にフル回転する。いらん方向に。

 そして気づけば「問題ない、私は占いババ様の一番弟子、最近魂に関する修業を行っていた。その応用で、ラディッツが気絶しているうちに奴の魂とそのへんの動物霊の魂を入れ替えておいた。奴もまさか魂だけの状態では何もできない、今の奴の本体はただの犬だ」と説明していた。…………。いや、できねーよ! 何処のシャーマンだよそれ。何でそんな嘘ついた?

 しばらく沈黙したピッコロさんは、まず信じることを前提にしなければ話が進まないと思ったのか「ではなぜ殺さない」と話を続けてきた。それに対しては「かなり無茶な試みだったが、サイヤ人の肉体が手に入ったから利用しない手はない。中身の犬をしつけて1年後のサイヤ人対策にする」と答えた。すごい、嘘は自分の首を絞めるとさっき思ったばかりなのにどんどん嘘を重ねる私凄い。もう自分の口を縫ってしまいたい。黙れ、黙るんだ私の口……!

 

 そして本当にラディッツの中身が犬になったのか確認するから連れてこいって言われた。

 了承し、電話を切ると私の顔は何処か晴れ晴れとした笑みをたたえていた。心境?「もうどうにでもな~れ」以外あるはずがないだろう。ちちんぷいぷいって言ったら全て丸く収まらないだろうか。無理だろうか。ワンモアミラクル。

 

 

 そして気絶したラディッツを叩き起こし「君は今から犬だ。ワンとしかしゃべってはいけない。いいね?」と言い聞かせた。

 ちなみにスカウターの通信機能だけは先に切っておいたが、戦闘力数値化の機能はそのままである。私は気を全開にしてラディッツに必死に言い聞かせた。私の誠意が伝わったのか、ラディッツ君は素直に頷いてくれてとても嬉しい。

 そして表情は硬かったものの、ピッコロさんの前で「わ、わんわん!」と迫真の演技を見せてくれた彼に敬礼。ちなみに面白がったブルマに「へぇ~! 本当に中身犬になってるんだ!」と尻尾をつかまれてへなへなになっていた。お前な……、むき出しの弱点を鍛えないからそういうことになるんだよ。

 

 そうして無理やり納得させることに成功して、内心汗をぬぐった私。しかし、そこにピッコロさんの追撃が迫る!

 

「貴様もこのガキのように潜在能力が凄まじいようだ。その犬を使って、1年後に戦えるように鍛えておけ」

「え。あ、はい」

 

 もう色々考えて絞り出す余裕は私にはありませんでしたが何か。

 

 悟飯ちゃんは予定通りピッコロさんに修業につれていかれ、旦那が死に子供がさらわれたと聞かされることになるチチさんはクリリンに全部任せた。詳しく説明頼む。あとでフォローはする。

 

 

 

 大丈夫だ。1年の間に雲隠れすれば問題ない。大丈夫だ。

 

 ババ様の所での修業にさらに熱を入れることを誓った。

 

 

 

 

 

 

 

■月▲日

 

 

 殺すどころかもう完全に面倒を見なくてはならなくなったラディッツを、まず少しでも逆らうそぶりを見せたら腹痛を引き起こし「サイヤ人のビチグソ野郎」の称号を与えてやろうかと脅す作業から始めた。ふっ。腹痛で便意を催させそれを脅しに使う。PPキャンディを使ってそれを成した偉大なる先駆者であるブルマさんを参考にしたそれの効果は凄いぜ。屈辱にまみれた顔で「……わかった」と答えたラディッツに、脅した本人ながら同情した。

 

 あとラディッツに一応惑星ベジータ消滅の真実を教えておいた。そして最後まで抗った戦士バーダックの事も。それを聞くとラディッツは「親父……」とつぶやきしばらく一人で何やら考えていたようだ。

 

 とりあえず今のフリーザ軍に従っている現状に、疑問と不満を持たせることには成功しただろうか。それとサイヤ人の今までの所業と地球をこのまま襲わないのかは別問題だけど、そこはうまく話をすりかえて余計な部分は例の脅し(ビチグソ)でねじ伏せた。ボクもう疲れたよパトラッシュ。

 

 

 

 

×月∴日

 

 

 鍛えろと言われたものの、普段の修業は行っているからラディッツと出来ることなんて組手しかない。それに普段の生活をおろそかにすることも出来ないし、はてどうしたものかと困り果てた。というか、雲隠れを前提にしているのに修行する私って真面目だよな!

 ので、私が朝畑作業をする時に一緒に連れてきて広大な畑の草取りを私がババ様の所で修業を終えるまで作業させ、その後一緒に修業をしてから(一度加減を間違えて重力で殺しそうになった)夜は私が勤めるバイト先にしかたがなく置くことにした。

 

 いやだって、さすがに野放しは出来ない。畑に居る時は絶対に危害を加えるなと言い聞かせたので手を出せないチチさんに監視を頼めるからいいけど、さすがにそれが無い夜自由にさせておくのも不安だし。

 バイト先の皆には「重いもの運ばせ機、もしくは高いとこから物取る機だと思ってくれ。接客は絶対にさせちゃ駄目ね。話しかけてもいいけど愛想のよい返事は期待しないでね」と言っておいた。一度「空梨さんの彼氏っすかwwよかったっすねww」と聞かれたけど私は答えずそいつのバイトのシフトと私のシフトを用事があるからと店長に頼んで変えてもらった。彼女とデートすると言っていた日にびっちりシフト入れてもらったけど何か? 言っておくが私が理想とするのは私を甘やかしてくれる包容力があって頼れる優しい年上のナイスガイだ覚えておけ。

 

 メディア関係の仕事に連れていくときは「ボディーガードです」で言い訳すればいいから楽だなぁ……。ガタイがいいから黒スーツが似合う。見た目どこに出しても恥ずかしくない893だが。

 ちなみにラディッツの服装だが、当然あの絶望的にダサいプロテクターは封印した。改めて思うが、何故せめてベジータタイプの服じゃないのか。服屋にぶちこんで適当に見繕ってくれと頼んだら店員に予想以上に買わされてとんだ出費である。髪の毛も私と同じレベルで暴れているので一つに結ばせた。じゃないと飲食店で動き回らせられないあのもっさり頭。

 

 

 不本意ながら、ラディッツと始まった共同生活はこんな感じである。

 

 ベジータたちが来るまであと5か月。未だあの世への逃亡は出来そうにない。

 

 

 

 

 

 

 


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