とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ドラゴンボール超1:IF世界からの来訪者

 魔人ブウとの戦いから早くも数年が経った。

 

 相変わらず日々は忙しく、子育てだのビルス様だの第六宇宙との格闘技大会だの……あれ、終わらないな? あと十数年もすれば還暦だっていうのに色々事件が終わらないな!? とか思いながらも、毎日それなりに平和で楽しく過ごしている。

 

 そういえばビルス様は居るし、フリーザ様は復活するし、第六宇宙との格闘技大会はあるしで、もし私が知るドラゴンボールの物語で言う「超」の世界ならこの後に未来トランクス編が来るはず。……だが、これに関してはまったく心配する必要が無くなってしまったのだ。以前未来の魔人ブウについて相談しに来たトランクスと空龍とブロリー(こいつはあるものをパラガスに押し付けようと来ただけだが)に再度注意を促し、もし悟空に似た変な奴が現れたらすぐに知らせるようにと念押ししておいたがこの世界でそれは無駄な心配に終わった。実に嬉しい無駄である。

 

 

 

 何故かと言えば、これが界王神様のおかげだったりする。

 

 

 

 時間は少し遡り、悟空とベジータがビルス様のもとで修行するようになってからしばらく後。ナメック星のドラゴンボールで元の2人に分かれた界王神様とキビトさんが家に来た。どうやら界王神界で生まれた叶恵の事が気になっていたらしく、元の姿に戻ったのを機に顔を見にきたとのこと。

 4歳になった叶恵は驚くべきことに赤ん坊のころに会ったきりの上に以前とは姿の違う界王神様を覚えていた。やはり少し浮世離れしたところのある子だと思ったが、とりあえず元気に育ってくれればいいのでその辺は特に気にしていない。出会いがしらに「シンおじちゃま!」と呼ばれた界王神様は最初面食らっていたが、その後叶恵を抱いてあやしている姿は嬉しそうで妙に様になっていた。……神様だから子供が出来るかは知らないけど、もし父親になったら絶対子煩悩だなあの人。

 で、ついでだからとこの時相談したのだ。どうせビルス様には知られているしと、自分でも驚くほどあっさり原作知識だの私の魂の身元だの説明してから「別の宇宙の界王神の気を持った者が暴れる未来があるんですけど、今から何か対策出来ませんかね?」と。

 ウイス様やビルス様と違って「な、なんだってー!?」といった感じのいいリアクションで驚いてくれた界王神様とキビトさんだったが(老界王神様はビルス様たちと同じ程度の反応だった)、話の内容は真剣に受け止めてくれた。たかだか人間一人の戯言をちゃんと受け止めてくれるんだから、良い神様達である。

 

 そして多分原作よりも前倒して第10宇宙の件の界王神……正確には界王神見習いのザマスに会いに行くこととなったのだ。

 

 私の覚えている知識が大分ぼやけている上に、多分超は途中までしか物語を見ていなかった。だからザマスの気を持つ悟空ブラック……未来トランクスたちの世界をめちゃくちゃにするその男が、ザマスの仲間であること以外はどういう関係か詳しくは知らない。だけど未来と過去のダブルセルだのパラレルワールドだのと、わりと何でもありなこの世界である。ドラゴンボールという反則技もまかり通り、スーパードラゴンボールなんていう上位互換の代物まで出てきたのだ。分からないことは多いが、とりあえずザマス本人が元凶だろう。未来ザマスと過去ザマスでどっちかが悟空に変身していても驚かんぞ。

 そういうわけで、相談した流れで早々にザマス本人の様子を見てどうにか対処できないかと界王神様に協力をお願いしたわけだ。

 

 で、私はキビトさんの陰に隠れて出来るだけ空気になりつつ、見学という名の観察。界王神様は「界王神とはいえ、私はまだ若輩の身。ゴワス様のような経験豊富な別の宇宙の界王神を見習えと、ご先祖様に怒られてしまいまして……。よければお話を聞かせていただけないでしょうか」といったふうに、第10宇宙へ来る口実を作ってくれた。そして話を聞く過程でザマスの話題に持って行ってくれた界王神様マジ有能。

 

 そして結果は…………まあ分かっちゃいたけど黒ですよねと。だいぶこじらせてますよねと。

 思想がもうなんつーか……。色々端折ってライトな言い方をすると「なんで争いばっかする馬鹿な人間見守んなきゃいけねーんだよ!! 人間とかいう害虫居ない方が宇宙のためだろ!」って感じで……。ああ、これは闇落ちルートですわと。しかもあいつ、自分の話題になって質問されたから渋々答えてたけど……絶対自分の考えが正しいって思ってるんだろうなって雰囲気がバシバシ伝わって来た。だいぶオブラートに包んだ物言いだったけど、多分色々フラストレーションが溜まっていたのだろう。途中から妙に饒舌になっていたし。

 

 さて、これをどうしたもんか。そんな風に頭を痛めていたのだけど、なんとここで界王神様がザマスに熱く反論したのである。

 

 

 

「ザマス殿、それは違います。たしかに人は同じ過ちを繰り返しますが……あなたはその一点ばかりに気を取られ過ぎてはいませんか? 彼らが争うのにも理由がある。その理由は様々で、一概にどれもが正しいとはいえません。ですが、争い、傷つき、助け合い、愛し合い、育んで……彼らは同じことを繰り返すようでいて、どこかで成長しているのです。長い生をうけた我々が大局的な見方で彼らを愚かだと決めつけてしまうのは、あまりにも早計だ」

 

「もしあまりにもみかねた行いをするのなら、「無くなればいい」なんて考えずに、ちょっと支えてやればよいのです。こう言っては「見守るだけ」という界王神の役割に反してしまうかもしれませんが、しかし「育む」こともまた我らの役目。我々は彼らの親なのですから……ちょっと子供のおいたを叱ったり、良き方向へ導く手助けくらいは許されるのでは?」

 

「私は今まで見守る対象としてですが、どこか人間を下に見ていた。ですが、私はついこの間その人間に助けられたのです。時には神をも驚かせる人間という存在は、面白くはありませんか。そして彼らを創造し、見守る立場にある自分の仕事を私は誇りに思います。あなたはどんな思いを抱いて界王神にならんと研鑽していらっしゃるのですか? 失礼ですが、今のあなたの考えはただ自分の理想を押し付けているだけのように見受けられる。あなたが素晴らしい方だと分かるだけに惜しく思ってしまう……。ゴワス様よりも若輩の身から言われるのは気に入らないかもしれませんが、私も界王神です。その考え方は受け入れられない」

 

 

 

 などなど。

 

 途中からいい子ぶって物静かだったザマスが激昂して、そのまま界王神様との熱い討論会が勃発した。私、キビトさん、ゴワス様は途中から完全に蚊帳の外である。

 そして何故か途中で「空梨さん、ぶしつけなお願いで申し訳ないのですが、しばらくの間叶恵を私たちにあずからせていただけませんか!?」とか界王神様が言い出した。何事かと思えば人間を遠くから見るだけで身近に接したことが無いザマスに、命の素晴らしさとそれを育む難しさを身をもって味わい自分が見守る存在について知ってほしいのだという。なんでもブウの件と、初めて近くで命の産まれる瞬間を体験した界王神様はそれに随分感銘をうけたのだという。だから頑固なザマスにも、それに似た経験をしてほしいと……そんなかんじらしい。

 なんでそうなったしと思いつつも、抱っこしていた叶恵にシンおじちゃまのとこに行く? と聞けば「うむ」と鷹揚に頷かれた。……この子はエシャロットとは違った意味でふんぞり返っているな。そしてそれが妙に様になる子だ。

 

 まあ神様のところだし、界王神様も居るし大丈夫だろうと……そのまま預けて帰った。もちろん子供をもしかしたらボス化する輩のところに預けるのは心配だったけど、もしこれで未来が変わるならと賭けに出たのだ。

 

 そして一週間後。

 

 若干頬がこけた界王神様とザマスの姿を目の当たりにすることになった。

 ど、どうやら思った以上に苦労したみたいだな……。まあ、普通にしてたらこの人たちは子育てなんてする機会無いだろうしね。それよりもっとでっかい宇宙っていう子供を抱えてるわけだけど。

 

 そしてザマスは、初めて会った時よりどこかスッキリした顔だった。

 

「いい経験をさせてもらった。私は自分の考えが全て間違っているとは思わない……だが、たしかに少々考えが偏っていたことは認めよう。こんな小さな命の世話を焼くのにも苦労するのだ。宇宙を担うには、まだ私は未熟ということだろうな」

「いえ、ザマス殿は立派ですよ。なにしろ生まれながらではなく、界王から界王神候補に選出されたのですから。未熟と言うなら私でしょう……。他の界王神が死んだことで、一番未熟だったというのに思いがけず界王神としての役割を背負った身です」

「ふっ、お互い未熟者同士というわけですか……。しかし、謙虚を装っていながらどこか自分は完璧だと思っていた私と、自分の未完成さを認めるあなたとでは違う。……出会えてよかった。あなたは私の驕りに釘を刺してくれたのです。あなたのような界王神が居るのなら、私もめげずに宇宙を、人間を見守りましょう」

 

 と、だいたいこんな会話をした後お互い硬く握手を交わしていた。どうやら界王神見習いと未熟な界王神という事で友情が芽生えたようだ。その様子に「おや?」と思っていたのだが、その後もザマスと交流を続けることにしたらしい界王神様いわく「この世界では、その悟空ブラックとやらは現れないかもしれませんよ」とのこと。思った以上に仲良くなっててビビったが、その後行われた第六宇宙との格闘試合にも界王神様がザマスを誘って見に来たもんだから驚いた。

 試合を見て再び「このように神に肉薄する力を持った人間が居るのか? やはり人間は危険な存在では……」とか言い出したザマスに慄くものの、そこは親友(マジでそんな感じだ)界王神様が「これが彼らの研鑽の結果ですよ。凄いでしょう? 人の成長というものは。それに危険に思うなら、ザマス殿ももっと強くなればいい。また同じような大会が開かれたら、その時に参戦されたらよろしいでしょう。私は戦いが苦手なので、神としての威厳を取り戻す役目はあなたにお譲りします。期待していますね」と茶化して納めてくれた。それにザマスが「違いない」と苦笑して、そこからは純粋に大会を楽しんでいるように見えた。ザマスは天才的な強さを認められて界王神候補になった身だ。多分、純粋に試合に興味がわいたのだろう。あと「おめえさも良かったらどうだ?」と、チチさんにお弁当をすすめられて戸惑っている姿はちょっと可愛かったと思う。

 

 ザマスと界王神様……立場的に仕方が無いのかもしれないけど、お互い友達居なさそうだったもんな。

 自分と似た立場で、同じような悩みを経験する相手。そしてそれを相談できる相手が出来たというのは、きっとお二方にとって良い事だったのだろう。

 

 

 

 こんなわけで、もしザマス本人の意思により悟空ブラック編が始まるのなら……多分、この世界ではもう心配ないんじゃなかろうか。界王神様と話すザマスも楽しそうだったし、考え方がいきすぎちゃっただけでもともと悪人では無いのだ。将来はどうなるか知らないが、おそらく早々に人類を滅ぼそうとすることはあるまい。

 

 もしザマスの意思に反して外的要因からブラック編が始まり、未来からSOSが来たらその時はその時で対処するしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、私は……私たちは、思いがけない事象によって悟空ブラック編に関わる事となる。

 

 

 呑気にブルマとお茶する約束をしていた私は、まだそのことを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として現れ、せっかく復興しかけていた世界を滅茶苦茶にし……母の命をも奪った悟空ブラック。その男を倒すために過去から来てくれた自身の父親であるベジータと悟空と共に、トランクスは再び「過去」への時間航行に身を投じていた。

 

 まず悟空ブラックと戦ったのはベジータだ。……初めこそ神の領域まで達し、スーパーサイヤ人ブルーとなったベジータの勝利に思われた。だが、悟空ブラックもまた新たな力を手に入れていたのだ。スーパーサイヤ人ロゼ……まがまがしい薄紅色の光をまとったその姿こそ、悟空ブラックの新たな姿である。そして、更に過去で悟空ブラックと同じ気を持つ神として注意していた第10宇宙の界王神見習いザマスまでもが姿を現した。しかもその身は不死と化しており、スーパーサイヤ人ブルーとなったベジータと悟空、そしてトランクスの3人をもってしても倒すことが出来なかったのだ。

 

 ついにはひん死となった3人……それを逃がしてくれたのは、マイだった。彼女はタイムマシンに3人だけを乗せ、トランクスたちを過去へと逃がした。

 二度と置いていきたくなかった……。一度は死んだものと思い、再会できて本当に嬉しかったのだ。だというのに、彼女はまたトランクスだけを逃がそうとする。「あんたは絶対に生き残らなきゃいけないんだ。この世界のためにね」と笑って自分たちを見送った顔が頭から離れない。

 

 トランクスは時空移動するタイムマシンの中、ガラスに爪を立てて慟哭する。また、守れないのかと……折れまいと、けして諦めまいと誓った心に暗雲がかかる。何故こうも世界は残酷なのかと、嘆かずにはいられない。

 

 しかしそうして嘆いている時だった。ふと、何かを感じて顔をあげる。

 

「え……」

 

 自分達しかいるはずのない、時間を遡る流れ……その中に、まるで幻影のように何かが現れた。そして自分のタイムマシンと並行するように飛ぶそれは段々と輪郭をあらわにしていき、はっきりと視認出来るまでになるとトランクスはその正体に驚愕する。

 

「俺?」

 

 現れたのは、あるはずのないもう一機のタイムマシン。そしてその中には、自分とうり二つの人間と……見知らぬ2人の男が同乗していた。

 

(ぶつかる!?)

 

 そして二機のタイムマシンは引き寄せられるように近づき、すわぶつかるかに思われた。だが予想した衝撃はなく、しかし何か分厚い空気の層でもすり抜けるような……何とも言えない奇妙な感覚がトランクスを襲う。

 

 

 

 

(お前は、誰だ?)

 

 

 

 眩暈に似た感覚を覚え、トランクスはそのまま気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『トランクス! トランクス!?』

 

 誰か自分を呼ぶ声が聞こえる。その声に導かれるように、トランクスの意識は浮上していった。そしてうっすらと目を開けると、見知らぬ女性が自分をのぞき込んでいる。くせのある黒髪を三つ編みにしていて、吊り目がちな目元がマイを思い出させて胸が苦しくなった。

 

「トランクス! 何があった!? っていうか、なんでベジータと悟空まで一緒にタイムマシン乗ってるの!?」

 

 必死な様子の女性はまるで自分を知っているかのように話しかける。誰かと勘違いしているのかとも思ったが、それにしてははっきりとトランクスの名前を呼んでいた。

 

 トランクスはなんとか動きの鈍い頭を回転させ、乾いた喉から声を絞り出した。

 

 

 

 

 

「あなたは……誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





《超の未来トランクス編の最後を視聴》

しばらく放心

「書かねば」(ガタッ ←イマココ


映画とか後日談とか第六宇宙とか色々すっとばしてすみませんorz
とりあえず一話だけこっそり投稿。色々ややこしくなりそうだけど終わらせられたらいいなぁ……(願望

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