とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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★ドラゴンボール超4:世界がピンチ!?未来と世界を救え!

「な、なあベジータ。オラ、目が変になっちまったんかなぁ」

「ならば俺もだ。頭がどうかしちまったみたいだぜ」

「は、ははは……」

 

 現在平行世界からやってきた悟空とベジータは、目の前の光景が信じられないのか珍しく意見を同じくしている。トランクスにいたっては乾いた笑いを浮かべて逃避するように虚空を見つめているが……よほど目の前の現実を受け入れにくいのだろう。気持ちは分かるが。

 

 

 

 

 

「ドラゴンボールを探すと聞いてな! 何があったかは知らんが、協力しよう。ちょうど今日はオフなんだ。ところで何故悟空とベジータが2人居るんだ?」

 

 と、ギニュー隊長。

 

 

「なんだ、また面白い事になっているな。話を聞いてもいいかね?」

 

 と、平行世界組の反応を面白がってか、これみよがしにでかい羽をばっさばっさ動かしながらニヤニヤ笑うセル。

 

 

「限定スイーツ買って来たわよん。で、これっていったいどんな状況?」

 

 と、私とブルマと一緒にお茶する予定だったブウ子。

 

 

 

 

 

 順番にフリーザ編の中ボス、セル編のボス、ブウ編のボスですね本当にありがとうございます。

 こうして驚く人間が居てくれると、改めてこの世界の異常さに気づかされる。……そうだよな、お前らの世界じゃこいつら普通に死んで地獄に落ちてるんだよな。おかしいよな、こんな我がもの顔で馴染んでるの。

 

 私は偶然妙なタイミングで集まってしまった旧ボス勢に驚く3人に、とりあえずこちらでの彼らの立ち位置を説明することにした。それが2つの世界線を知る私の義務であろう。……いや、この場に限って私以外にも二人ほど原作とこの世界を知る奴らが居るけど。しかし当のボス本人どもなので、説明させるわけにもいかない。

 セルとブウ子の奴、事情を知らないながらも2人居る悟空とベジータを見て大方予想がついたんだろう。それぞれニヤニヤ笑ってて腹立つ。察しがいいのは結構だが、面白がってんじゃねーよ。

 

「えーと……、そっちの世界にも居て知ってるかもしれないけど紹介する。まずギニュー隊長とジースくんはフリーザ様の部下だったけど、今は地球で新生ギニュー特戦隊を組んで正義のヒーローとして活躍中。人造人間セルは色々あって精霊セルになって今はコナッツ星で神様をしてる。で、そこのピンクの子は分かりやすく言えば悪ブウかな。前に私を吸収した時の影響で女の子になっちゃったんだけど、今は法外な値段を請求する医者兼有名スイーツブロガーとして活動中。で、ついでに言うと私とブルマのお茶友達。ここまでで質問は?」

「余計にややこしくなったわ!!」

「だよな」

 

 プリンスベジータ(さっきためしに聞いてみたらサイヤ人の王子だって言ってた)が額に青筋を浮かべて叫ぶが、どれも事実なんだから仕方がない。それぞれの事情をいちいち説明していたらきりがないので大きく端折ったが、まあ聞いた方とすれば意味が分からないだろうな。私だっていまだにどうしてこうなったのか疑問に感じているのだ。事情を知らない人間が混乱するのは当たり前である。

 

 

 そこで遠慮がちな声がそっと会話に入ってきた。……さっきセルと一緒にやってきた悟飯ちゃんだ。

 

「え、ええと……何だか場を混乱させてしまったみたいですみません。あ、トランクスさんお久しぶりです」

「お、お久しぶりです」

「おっ! こっちの悟飯は修業さぼってねぇみてーだな!」

 

 困惑する3人の様子を見て、セルを連れて来てしまったことに罪悪感を感じたのだろう。先ほどまでセルと戦っていたらしい悟飯ちゃんが、少しよれた胴着姿でばつが悪そうに謝罪した。いや、別に悟飯ちゃんが謝る事じゃないよ。悟空とベジータの気がそれぞれ2人分になったら気にならないわけないだろうし。

 悟飯ちゃんは律儀にトランクスに挨拶して、トランクスもそれに応えるが正確には初対面である。ややこしい。

 そしてその微妙な空気の中でも悟空は相変わらずマイペースで、嬉しそうに悟飯ちゃんを見ていた。ああ……そっちの悟飯ちゃんは修業あんまりしてないのか。まあ本当だったらこっちの悟飯ちゃんも研究に没頭したいだろうから、セルさえいなければ同じようになっていたんだろうけど。

 

 コナッツ星の神になったセルであるが、己をさらに磨くためか、単純に悟飯ちゃんの成長が楽しみになったのか……時々こうして地球にやってきては悟飯ちゃんと手合わせしていくのだ。時々というものの、その頻度は日に日に高くなっている。

 なんでもコナッツ星の住民はみな真面目なので、これといったトラブルも無く神様業は思ったより暇らしい。ちょっと前にコナッツ星に奇妙な植物を植えたどこぞの宇宙人を追い払ったらしいが、「弱すぎて倒す気にもならなかった。どうせならもっと強くなってから再挑戦しに来てほしいから、わざと見逃したくらいだ。成長性はありそうだったからな」とつまらなさそうにぼやいていた。……妙にその見逃した宇宙人が気になる所ではあるが、とりあえず暇らしい。

 タピオン達のおかげなのか、それとも単純に人生経験を積んだからか……昔に比べてかなり丸い性格にはなったが、来るたびに付き合わされる悟飯ちゃんはたまったものではないだろう。セルは事あるごとに「こんなものじゃないだろう」「もっと強くなって私を楽しませたまえ」「娘に格好悪い姿を見せてもいいのか?」……などと悟飯ちゃんをせっついては戦いを楽しんでいる。おかげでスーパーサイヤ人ブルーにこそなれないが、悟飯ちゃんは悟空たちにも引けを取らないだけの強さを保っていた。もともと潜在能力は飛びぬけて高いのだし、その強さは修業さえしていれば当然といえば当然である。

 たちが悪い事にセルは素晴らしく頭がいいので、戦いの後で研究にとって非常に有意義な意見を聞けるので悟飯ちゃんとしても無下にできないのが痛い所なのだとか。……まあ、とりあえず悟飯ちゃんは頑張れ。

 

 つい悟飯ちゃんに同情の視線を向けていると、ダブル悟空が悟飯ちゃんについての会話で盛り上がっていた。

 

「そっちの悟飯は修業してねぇのか?」

「ああ、学者の仕事が忙しいらしくてなぁ。この間からまたちょっと鍛え直してるみてーだけど、こっちの悟飯にはまだまだ及ばなさそうだ」

「へぇ~。でも、こっちの悟飯も時々セルが来ねぇと多分そんな感じだったと思うぞ」

「そっかぁ……。よし、帰れたら久しぶりに悟飯と修行すっか! へへっ、こっちの悟飯見てたらもったいなくなってきちまった。今の状態を見ただけでも相当やるってのは分かる。ちゃんと鍛えれば悟飯はやっぱり強ぇんだな!」

「おう、悟飯は強ぇぞ! 今度ビルス様んとこにも一緒に連れてこうと思ってんだ!」

「そうなんか? オラんとこの悟飯も負けてらんねぇな……! よし、オラも帰れたら悟飯も連れてっていいかビルス様にきいてみっか!」

 

 悟空同士で違和感なく会話してるのに逆に違和感しか感じない。というか、双方の悟飯ちゃんのあずかり知らぬところでハードな修行フラグが立ってるんだけど。おい、こっちの悟飯ちゃん顔引きつらせてんぞ。仕事も勉強も忙しいんだから、あんまりお前らの修業に巻き込むなよ。

 

 

 

 ……とりあえず落ち着くのを待ってもますます収拾がつかなくなるだけなので、まずドラゴンボールをちゃっちゃと集めることにした。

 

 で、ドラゴンボール探しの方なのだが、積極的に協力してくれた新生ギニュー特戦隊のおかげで思いのほか早く終わってしまった。生き生きと表情豊かに活動するサイバイマンにプリンスベジータが非常に複雑そうな表情をしていたのが印象的である。それを見ていた我が弟キングベジータがちょっとそわそわしていたのが少し面白かった。おい、さっきちょっと喧嘩腰になったからって話しかけるのをためらわなくていいんだぞ。自分相手なんだし話しかけてみろよ。指さして笑ってやるから。

 

 ちなみにセルとブウ子は茶菓子と紅茶をたしなみながら優雅に過ごし何もしなかった。一緒になってテレビのバラエティ番組に辛口のツッコミをしているのを見て、ブウ子はともかくセルお前もう帰れよと思った。

 

 

 そして集めたドラゴンボールで早速神龍を呼び出したはいいが、やはり神でさえ認識できない平行世界という特殊な場所とのねじれについては神龍もお手上げらしい。正しく「神の力を超えた」事象ということなのだろう。……そんな事象を引き起こすタイムマシンを発明をしたブルマやっぱりすげぇな。ある意味神を超えたぞ。

 しかしタイトルアイテムの意地なのか、神龍は物凄く頑張ってくれたようだ。平行世界の悟空たちを元の世界へ帰すことや、彼らとすれ違った空龍たちが何処へ行ったのかを知ることは出来なかったが……今この場から平行世界の悟空たちが未来へ戻った場合、こちらとあちら、どちらの未来へたどり着くのかだけは何とか導き出してくれたのだ。そしてその結果だが……。

 

「平行世界の方の未来へ戻るわけか……。これ、完全に空間が捻じれちゃってるんじゃない?」

「っていうと?」

「平行世界のトランクスたちが単にこっちのトランクスたちと入れ替わっただけじゃなくて、世界の在り方まで絡まってるってことよ」

 

 ブルマの言葉に全員が首をかしげると、ブルマは出したままだったホワイトボードに上に二つ、下に二つ、計4つの丸を書いた。そして上下2つずつを青と赤で色分けして、同じ色同士を直線で結ぶ。

 

「いい? 今、私たちが認識しているパラレルワールドは4つあるわ。ひとつは現在、もう一つは平行世界の現在。さらにそれぞれの未来世界で計4つ。歴史を変えたことで平行世界になったから、直接続く未来ではなくなってしまったけど……。それでも、それぞれタイムマシンで行き来できるつながった世界だったのよ。それが……」

 

 ブルマは青と青、赤と赤で結ばれていた線を消して、今度は青と赤で結び直した。すると4つの丸は隣り合っていたので、それぞれの色で結ばれていた時は平行だった線が別の色と結ばれたことで交差する。

 

「今、こうなっているってわけよ。未来の世界ごと入れ替わったんだわ」

「ううん……?」

「だからね、もし私が平行世界のトランクスたちとは別にタイムマシンを作ったとしても、行き先は一緒なの。つまりたどり着く先は空龍やブロリーが存在する未来世界じゃなくて悟空ブラックが居る平行世界の未来の方だってこと」

「え、じゃあ個人だけが事故で入れ替わったんじゃなくてマジで世界ごと絡まっちゃったってこと?」

「乱暴な推測だけど、神龍の言葉を信じるならそうなるわね」

「……それ、素人目に見てもヤバい感じするんだけど実際どうよ?」

「ヤバい、ヤバいわよぉ! もしかしたら、それが原因で世界が滅んだっておかしくないわ!」

「はあああああ!?」

 

 嫌な予感がして恐る恐る聞いてみれば、とんでもない答えが返ってきてビビる。

 なんでもそれぞれのタイムマシンとそこに乗っていた人間は現在世界が交わる特異点となっているのだとか。彼らの存在が、そのまま世界ごと引っ張ってねじれを生んでいる……。空間やものには、ある程度「元に戻ろう」とする力があるらしい。もし捻じれた状態のまま、そのもとに戻ろうとする力が働いたら……その反動で、世界ごと消滅してもおかしくない、とのこと。

 

「もちろん最悪の場合を想定したにすぎない仮定の話だけど……」

「そんな! じゃあ、俺たちの存在が世界を亡ぼしてしまうかもしれないんですか!?」

「……可能性は0じゃないわね」

 

 ブルマの言葉にトランクスは打ちひしがれたように膝をついた。そんな彼の背中を小さなトランクスが気遣うように「げ、元気出せよ」と叩くが、あんまりにもあんまりな話を聞いてそう簡単に元気が出るはずもない。私もなんと声をかけていいか分からなかった。

 

 しかし、そんな重い空気の中で軽い調子の声が響く。ブウ子だ。

 

「要するに、そうなる前にその子たちが元の世界に戻れれば何も問題ないんでしょー? だったら、ここはやっぱりスーパードラゴンボールじゃないかしら。やろうと思えば別宇宙の星を別の宇宙に移動したり出来るくらいだから、「元の世界に戻してください」くらい叶えてくれるんじゃない? 平行世界ってものが観測された今の状態なら無理ではないと思うわぁ」

「なるほど。観測されていない世界に干渉するのは不可能でも、今現在こうして別世界の人間が目の前にいる状態ならすでに「ある」と認識された世界だからな。規格外のドラゴンボールなら、それくらい叶えてくれるだろう」

 

 同意したのはセルで、まさかこの2人から意見が出てくるとは思わず絶句する。お前ら……さっきまで最近はやりの若手芸人に見どころがあるかないかで言い争っていたくせに……。

 

「でもスーパードラゴンボールを使うにしても、こっちのスーパードラゴンボールはしばらく使えないのよ?」

「だったら未来の世界のを使えば?」

「あ、なるほど」

 

 ブウ子のあっさりした提案に、同じくあっさり納得するブルマ。え、ちょっと待って。なんかこの流れだと……。

 

 

「そうね! 困った時のドラゴンボール頼りだわ! こうなったら問題の早期解決のために、トランクスたちのためにも未来のスーパードラゴンボールを手に入れて願いを叶えてもらうしかない!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよブルマさん! 今未来へ行くと、悟空ブラックとザマスがいる平行世界の未来に行っちゃうんでしょ? そしたら、その、悟空ブラックとザマスが邪魔してきてドラゴンボールを探すどころじゃないんじゃ?」

「問題無いわよ。ついでだし、その悟空ブラックってやつも倒しちゃえばいいんだわ!」

「え、えっと、母さん? 悟空ブラックはそう簡単には……」

 

 トランクスがおろおろと勢いずいたブルマに話しかけるが、それについては私も良い案だと思ったので援護した。

 

「それがいいかもね。トランクス、この場を見回してみて? 悟空×2、ベジータ×2、アルティメット悟飯ちゃん、この間スーパーサイヤ人3まで行けるようになったラディッツ……サイヤ人の面子だけ見てもこの充実っぷり。勝てる勝てる」

「え、いやでもタイムマシンの定員が……」

「ブルマ、タイムマシンもう一個作れる?」

「う~ん、そうねぇ……。もう一個は無理だけど、実物があるからそれをベースに乗り込むスペースを拡大することなら多分可能よ」

「でもザマスは不死身で……」

「ブウ子、あとで何かおごるからちょっと未来まで行ってこない?」

「ああ、もしかしてザマスちゃん食べちゃってもいいの? だったら行く行く! やっぱり戦わなくなったとはいえ、弱いままだと心もとないのよ~。ザマスちゃん吸収出来たらキュートでビューティーなわたしにパワフルさと神性まで加わって無敵じゃない? いやんっ、わたしったらマーベラス!」

「よしっ、不死身ザマスはブウ子が引き受けてくれるってさ。これで問題ない」

「え、あの、その……えええ……?」

 

 トランクスが困惑している。けど、こっちとしても世界が滅ぶかもなんて聞かされて焦っているのだ。少しでも可能性があるのなら、それに賭けよう。

 

 

 

「決まりね! あ、ちなみに空梨あんたも行くのよ。宇宙は広いし、私のドラゴンレーダーとあんたの占いで二手に分かれて探しましょ。バッチリスーパードラゴンボールを見つけてね!」

「えっ」

 

 

 

 

 

「……未来で第六宇宙に行くための方法はどうするつもりだ」

 

 

 

 

 ぼそっとつぶやかれたピッコロさんの意見に、わいわいと「世界と未来を救っちゃおうぜ!」という雰囲気になり始めた空気が固まった。

 

 ……どうやら、まだまだ問題は山積みらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




難産。書きたいことはたくさんあるのにまとめ切るのが難しい……!さくっと進めたいのに色々問題が多すぎてもうね……orz

ちなみに主人公、超の知識は途中までなので未来のスーパードラゴンボールが破壊されていることを知りません。




しんぷるシンプルさんから素晴らしいイメージイラストを頂きました!ひゃっほい!


【挿絵表示】
主人公一家の集合絵です。見た時嬉しさのあまり涙出るかと……!子供たちのイメージもぴったりで、ちゃんと母親してる主人公やみんなカメラ目線の中一人だけ父親らしく家族を見守ってる視線のラディッツとか(ちなみに2人ともちゃんと結婚指輪してます)細かいところまで描いていただいて物凄く幸せ。しかも中華服とか!デザインや色合いがまた美しいです。
しんぷるシンプルさん、この度は素敵なイラストを頂き本当にありがとうございました!

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