とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ドラゴンボール超5:ザマスの来訪

 「未来の第六宇宙へは、私に行かせてくれないだろうか。必ずスーパードラゴンボールを集めて、世界のねじれを元に戻そう。そして私自身のことも、私が自分で始末をつける」

 

 そう言って私達の前に真剣な表情で立っていたのは、緑色の肌の神様だった。

 

 

 

 

 

 ピッコロさんのツッコミにより未来でスーパードラゴンボールを集めるにしても、第七宇宙と第六宇宙両方に散らばる宝玉をそろえるには第六宇宙へ行く手段が必要であると思い出した私達。まぬけである。

 別の宇宙への移動手段を持つのは界王神様クラスの神様達だけなので、そちらを頼る必要がある。そして頼るのは当然界王神様一択。正直界王神様よりビルス様、ウィス様の方が知識量的に頼れそうだけど……下手したら時空が捻じれた要因となっている平行世界の3人が破壊されてしまうという危険性があるため、やはり出来るだけ内密にすませたいというのが本音だ。バレた時が怖いけど、事が全て終わった後ならどうとでもなる。というか、界王神様になんとかしてもらおう。一度毅然とビルス様たちに相対できた界王神様なら出来るさ! あの方はやれば出来る神様だ。期待してる。丸投げともいうけどキニシナイ。

 

 

 しかし話し合いを続けようとした私達の前に、思いがけない来訪者が訪れた。

 ザマスである。

 

 

 

「貴様はザマス!」

「!」

「ッ!」

「ああ、ちょっと待った。この方はこっちの世界のザマスさんだわ」

 

 未来で戦ったばかりの相手だ。当然といえば当然のごとく臨戦態勢をとった平行世界のトランクス、悟空、ベジータであるが……腕の中で眠っていた叶恵が目を覚まして「ザマスおじちゃま!」とはしゃいでおり、それを見たザマスが苦笑しているのでこっちの世界のザマスで間違いないだろう。どうやって元の世界へ戻してやるかを悩んでいるのに、向こうのザマスがあっさりこっちに来られてたまるか。

 

「いやでも、どうしてこっちの話の内容を知ってる風なんですか?」

 

 そうだよ。さっきの発言だと、まるで事情を全部知っているかのようじゃないか。

 

「前に叶恵が帰る時、何か困ったことがあれば連絡するように言っておいたのだ。その子は念話の優れた才能をもっているからな……。おそらくお前たちが困っているのを見て、私に相談しようと思ったのだろう。こちらでの会話を全て送ってきてくれた」

 

 ザマスの言葉に部屋中の視線が一気に叶恵に集まった。しかし本人は注目されてもさして気にすることなく「よきにはからえ」とばかりに満足気に頷いている。

 

 え、念話の才能? え、てかさっきまで寝てたよねこの子? どういうこと!?

 

 私たちが混乱している様子を見かねたのか、まさかのザマスからの説明が入った。

 なんでも叶恵は人間以外の存在に念話で呼びかけるのが得意らしく、それもかなり広範囲……それこそ宇宙まで意思を飛ばせるらしい。ザマスに関しては別宇宙の存在であるため叶恵だけの力では呼びかけるのは不可能だが、ザマス側に念話を受け取る意思があるため例外的に宇宙の壁をも越えられるのだとか。

 

 宇宙と宇宙を行き来できるのは神だけである。そのため意思だけでも飛ばせる叶恵はかなり特殊な存在らしい。

 しかも一時期界王神界という特殊な場所で過ごした影響か、その力が日に日に強くなっているのだというから驚きだ。

 

「え、は? ちょ、ちょっと待って初耳! 初耳なんだけど! ラディッツ知ってた!?」

「し、知るわけないだろう! 叶恵、いつからそんなことが出来るようになったんだ?」

 

 ラディッツが私の腕から叶恵を受け取り抱き上げて目を合わせながら問うと、叶恵はぼんやりと眠たげな目をこすりながら答える。

 

「ん? ん~と……んとね、うまれるまえから~」

「産まれる前!?」

「ん! かなえがはなしかけると、みんなおしゃべりしてくれたの~。ねんねしてるときも、みんなとおはなししてゆのよ!」

 

 そ、そういえばこの子は昔から何もないとこぼんやり見てることが多かったし、他の子よりもよく寝る子だな~とは思ってたけど……まさかそんな才能があったとは。

 これはやはりあれか。スーパーサイヤ人ゴッド状態になった後に出産したのと私の超能力と占いの才能部分が極端に受け継がれた結果なのだろうか。戦闘力に関しては龍成やエシャロットと同じくらいだったけど、そっちに特化するとは思わなかった。だって私の超能力も占いも後付けの力だし。

 それにしても、相変わらず私の遺伝子強いな……。子供らほとんど私似だもんな……。

 

 う~ん。まあ、とりあえず我が娘の新事実には驚いたけど、何でもありのこの世界だからあるっちゃあるか。将来的に私やババ様以上の占い師に育ちそうで楽しみですらある。でも今回はな~……まずいよな~……ザマスに連絡しちゃったか~……そうか~……叶恵一回預けて以来界王神様とザマス大好きだもんな~……。あれ? ってことはもしかしてこの会話界王神様にも送ってたりして……。

 

「あの、皆さん。私も先ほどから居るのですが……」

『!?』

「シンおじちゃま!」

「久しぶりですね、叶恵。元気にしていましたか?」

「ん! げんき~」

 

 ざ、ザマスの陰に隠れてて分からなかったけど界王神様いつの間に!? うわ身長差残酷……じゃなくて。ちょっと予想してたけど、案の定叶恵は界王神様にもこちらの会話の内容を送っていたらしい。事情を説明しなくていいのは楽だし元から頼ろうと思っていたわけだけど……問題はザマスだ。

 別世界とはいえラスボスから協力申し込まれちゃったんだけどナニコレ。

 

 当然トランクスを筆頭に、ザマスと戦っていた側からすれば彼を信用出来るはずが無い。というか私的にも界王神様と友達になったことで多少変わったとはいえ、そう簡単に信じられるかっていったら無理だわ。長年生きた者の本質はそう簡単に変わるものでは無い。

 あれだろ? もしうっかり連れて行ったらどうせ裏切ってザマスとザマスとブラックでトリプルポタラフュージョンとかやるんだろ? 今までの経験からいってそれくらい覚悟してても間違いないと思う。そんなん死ぬわ。

 

 まあ、そういうわけで協力は頼めないという旨を伝えるとザマスは「……それも当然か」と苦し気に眉根を寄せながらも納得した。

 

 聞けば彼は神として世界が滅ぶ可能性をはらんだ事象を見逃せない上に、別世界の自分が仕出かした事柄を無視できず今回協力を申し出てくれたようなのだ。もしそれが本心だとすれば、ザマスも変わったものだ。別世界で理想を実現させようという自分を邪魔するためにこの場にいるってことだからな。当初はあれほど自分の理想と正義を信じて疑わなかったのに……。

 ……かといってその言葉を鵜呑みにも出来ないので、やはり一緒に連れて行くことは出来ないが。

 

「ならば、”ザマス”本人として助言だけでもさせてくれ。今の話だけでは情報が少ないが、シン殿から詳しい話を聞いたのでな……。その私が考えていることを想像することくらいは出来る。未来に行った先で再び相対するのなら、少しでも相手の情報を知っていた方が良いだろう」

(ちょ、詳しい事情って何。界王神様どこまで喋ったんスか)

(あ、いえ……! ザマス殿があまりにも真剣だったので、彼に関する事はだいたい……私たちが第10宇宙を訪ねた理由も含めて……その、すみません)

 

 咄嗟にテレパシーしながら界王神様に目配せすると、界王神様がめっちゃキョドりながらとんでもない事言ってきやがった。おい嘘だろ。いくら親☆友とはいえそんなあっさり喋らないでくれよ。今さらっちゃ今更だけど神様連中に関しては私の原作知識バーゲンセールじゃねーか。内容は予言と称してみんなに話した内容とそう変わらないけど気持ち的に、なんかこう……! あれだよ! ちょっともやっとするわ!

 

 

 

 しかしそんな挙動不審な私たちをよそに、ザマスは淡々と語る。

 

「私は確かに、その平行世界の私がおこなっているような事をしてもおかしくない思想を持っている。「争いを繰り返す愚かな人間など居ない方が世界のためでは無いか」という考えだ」

「ッ、そんな勝手な理由で……! たしかに人間は争うこともある! けど、互いを思いやり愛し合う心だって持っているんだ! なのに……!」

 

 トランクスが激昂し、拳を血が出るくらいまで握り締めた。別人と分かったからこそ殴るの我慢してるんだろうな……。

 やっと取り戻した平和な世界と母を奪われた別世界の甥っ子の苦しみは想像することしか出来ないけど、きっと別人とはいえ仇が目の前で自分勝手な理想を語ればその怒りは計り知れないものとなっているはず。今理性を保っているだけでもかなりの忍耐力だ。

 

 

 そんな怒りを抑えるトランクスに何を思ったのかザマスが近づき、それに対して身構えたトランクスだったが次の行動に怒りは戸惑いへと変わった。ザマスがトランクスの頭に手のひらでそっとふれたのだ。

 これにまず初めにプリンスベジータが動こうとしたが、彼が界王神様や叶恵の前で何か仕出かすとも思えなかったのでその肩を掴んで止めた。プリンスベジータは私に何か言おうとしたけど、反対側の肩をキングベジータに掴まれてどちらに何を言おうか迷った末にとりあえず見守ることにしたようだ。…………正直弟ベジータがプリンスベジータを止めるとは思わなかったけど、とりあえず何だこの絵面。弟弟姉……この場合も3姉弟って言葉は適応されるのかな? いやでもプリンスベジータは私の弟じゃなかったわ。もう何度目になるか分からないけどこう同じ顔した人間が居るとややこしくて頭痛い。

 

「!? 何を……ッ」

「………………直接産んだわけでは無いが、界王神とは創造神。すなわち、宇宙に生きとし生けるものは皆子供だ。だというのに、私の行きつく先の理想の本質が子殺しとはな。しかも私が継ぐべき第10宇宙ではなく、別の界王神の領分に踏み込んでの暴挙……愚かな」

「な……」

 

 ザマスの手が慈しむようにトランクスの頭を撫でた。私たちはといえば、「え、これどういう状況?」「いや分かんないけど喋っちゃいけない雰囲気だよな」みたいな視線を交わして口を挟めずに見守っている。

 彼はふいに目を閉じてから、うっすら開いたその灰色の眼でトランクスを憐憫のこもった視線で見つめた。

 

「母を殺されたか。…………なるほど、お前の世界の有様は酷いものだな。なんと悲しい光景か。時間を超えることは大罪だが、罪を罪とも知らぬなら……救済を願い過去を訪れるのも無理はない」

「お前、まさか記憶を……」

「…………今でも人間を愚かしいと、そう考える心が無いとはいえない。しかし、私は近しい目線で共に考えてくれる稀有なる友を得られた。だからこそ私の考えはあまりにも軽率であったと気づけたのだ。だが平行世界の私にはそんな相手が居なかったのだろう。……ブラックといったか? 私と共に行動する孫悟空に似た者というのは」

 

 そう言って確認するように見られたので頷けば、ザマスは考え込むように顎に手をあてる。やっと頭から手を離されたトランクスはよほど居心地が悪かったのだろう。ほっと大きなため息をついていた。まあそりゃお前、別人とはいえ敵に優しく頭撫でられたら気味悪いよな。

 

「人を亡ぼす。言うは簡単だが、宇宙には界王神以外にも様々な神がいる。そして計画を実行する上で、最も危惧すべき神は破壊神だろうな。……実行するにはあまりにも障害が大きい。どうやってそれらを退けたのかは知らないが、ともかくそんな大きすぎる目標を達成するために私が求める協力者となると……私に近しい、もしくは「同じ」考えを持つ者だ。理想は「私がもう一人」いれば好ましい」

「もう一人のザマス……?」

「クククッ、なるほど。さすが、ご本人様のアドヴァイスは参考になる。私にも覚えがあるぞ。自分の思考ほど読みやすいものはないものなぁ」

 

 セルが茶化すように言うと、若干機嫌を損ねたらしいザマスが眉根を寄せるがその言葉に対して否定はしなかった。

 

「私は先日の格闘試合でスーパードラゴンボールの事を知った。そして神の気すら人の身に宿しつつも、そこで満足せずに更に先へ進もうとする戦士として最高の資質を持った孫悟空という存在も。……もし平行世界の私が何らかのきっかけで同じようにこの2つの事を知ったなら、それらを利用し、神の罰を執行するため強い体を求めてもおかしくはない。そして神にも時間を超える術はある。それを使って、二人の私が同時に存在する状態を作り上げたのなら……」

「え、いまいちよく分からないんだけどさ……。聞いた感じ、ブラックの正体はザマスってことでいいのか?」

「そうなるわね。実際にこの世界にだって、未来のトランクスと今のトランクスが同時に存在してるんだもの……。理屈的にもありえなくないし、別世界とはいえ本人の考えだし信憑性高いわよ。それにもう一人自分が居たらって気分だけならちょっと理解も出来るしね。わたしも忙しい時とか私がもう一人いたらな~って思う事あるもん」

 

 クリリンくんが核心をつく疑問を口にすると、ブルマがそれを「ありえる可能性」として肯定した。もしそれが本当だとするなら、セルの時とちょっと状況が似てる。つーか、予想はしてたけどザマス=ブラック説が濃厚になって来た。というかほぼ確定だろうな。

 

「実際に私のような例もあるしな」

「それな」

 

 似てるとか思ってたら本人が自分で言ったわ。いや本当にな……最終的に1体になったけどもともとこいつら2体いたんだよな……。今でこそこんな呑気にしてるけど当時どれだけこいつに苦しめられたか。

 タピオン達とブウの時の協力に免じて普段は言わないでいるが、私は今でもナッパと私の両腕両脚ポッキーの件忘れてないぞこのセミ野郎。そろそろ詫びに菓子折りの一つも持ってこいよ。高いやつ。

 

「ああ、そういえば……」

「フンッ。今思い出しても忌々しいぜ。言っておくが、俺は今でも貴様を認めたつもりは無いぞ。随分煮え湯を飲まされたからな。……一緒に修行してやっている悟飯の気が知れん」

「ピッコロさん、僕だって喜んで一緒に修行してるわけじゃないんですよ? というか、修業じゃないです。一方的に押しかけられてるだけで」

「む……、そうだったな。すまん」

 

 悟飯ちゃんは本当にお疲れ様な。というか、ピッコロさん的には可愛い弟子をとられたような気分もあって若干セルに嫉妬してる? ……賢く格好いい上にちょっと可愛い所もあるとかピッコロさんマジパーフェクトだな流石ピッコロさん。彼に対する私の評価は今現在も進行形でうなぎ登りである。

 とまあ、そんな話は置いておいて。

 

「じゃあブラックの正体はザマスってことでいいかな。まあそれが分かったからって、倒しちゃうわけだから関係ないけど」

 

 そう言ってまとめると、ちょっとザマスが落ち込んだ。あ、いやゴメン。わざわざ解説してくれたのに関係無いは言い過ぎた。でもザマスとブラックを倒すための戦力が十分に揃っている現状で今私たちに必要なのは、ブラックの正体よりも未来でスーパードラゴンボールを手に入れるための手段なのだ。

 そしてそのことを私が言う前に代弁してくれたのはブウ子である。ブウ子は界王神様の肩に腕を絡めると猫なで声で言った。

 

「で、事情が分かってるならやることは分かってるわよね? か・い・お・う・し・ん・さ・ま☆ わたしたちを未来の第六宇宙まで連れてって! きゃはん☆」

 

 それに対して界王神様は全身に鳥肌を浮かべてブウ子の腕から逃れると「し、しかたがないですね! 言っておきますが、時間の移動は禁忌です! 罪なのです! 今回の件は例外として、解決したら二度とタイムマシンなど使ってはなりませんよ!」と言って未来の世界への同行を了承してくれた。ちなみにそれに対して、界王神様に次いでいつの間にか部屋の隅の方で控えていたキビトさんが「いいのですか界王神様!?」と泡吹いてた。しかしザマスは連れて行けないし、ビルス様には出来れば言いたくない。結局頼れる神様は界王神様しかいないのだし、観念してもらおう。安心してくれ、界王神様が傷つかないための肉壁ならいっぱいいるから。

 

 

 

 …………それにしても神様二人の様子を見るに、さっきまで最悪の想像だった「世界が捻じれたままだと世界が滅ぶ」説が現実味をおびてきたな。神様の視点から見ても、現状は禁忌を破ってでも強行して解決しないとまずい事態ってことだ。

 

 本当にこの世界ときたら、次から次へと問題が絶えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、とにかくブラックの正体は分かったし、元の世界に帰れる目途も立ったっちゅーことだな! なあブルマ、タイムマシンの燃料はどれくれぇで作れるんだ?」

 

 平行世界の悟空が今までのごちゃごちゃを実にシンプルにまとめると、パンっと拳を手のひらに打ち付けて気合いを入れてからブルマに問いかけた。

 

「そうねぇ……。タイムマシン本体の改造もしないといけないし、少なくとも1日以上はかかるわね。多く見積もって三日から一週間かしら」

「もっと早くできんのか」

「無茶言わないでよ。いくら最長老様に才能の限界をとっぱらってもらったスーパーブルマさんでも、タイムマシンを開発したのは未来の私。今の私はタイムマシンの理論すら思いついてないんだから、そう簡単にはいかないわ。出来るだけ急ぐから、それまでアンタたちはこの世界で休んでいけば? あ、部屋はいくらでも余ってるから自由に使ってちょうだい」

 

 そうブルマに言われ、プリンスベジータは物凄く複雑そうな顔をした。まあ本来なら自分の家だからな。

 

「お! ってことはまだ時間があんだな! なあオラ! オラといっちょ手合わせしてくんねーか?」

「オラもそれを言おうと思ってた!」

「元気だなあいつら……」

 

 未来へ行くまでに時間があると知るなり、悟空が早速平行世界の自分と戦う約束をとりつけていた。ぶれない奴である。

 

「フンッ、なるほどな。別人とはいえ、いつかのポトフ星と違って本物の俺自身と戦えるというわけか。面白い。おい、貴様。ついてこい。平行世界の俺の力をこの俺が直々に確かめてやる」

「チッ、俺とはいえ俺に偉そうに命令するんじゃあない。……だが、その提案は面白い。未来で今度こそ奴らを倒してやるつもりだが、その前のウォーミングアップだ。せいぜい役にたってもらおうか」

「減らず口を」

 

 とかいってベジータはベジータで戦うために喧嘩しながら何処かへ行ってしまった。

 

 楽しそうだなお前ら。おっさん二人の図太いメンタルと違ってトランクスは急転する事態についていけないで憔悴しきってるぞ。そんな彼に水を持ってきてあげたチビトランクスマジ天使。

 そしてトランクスを元気づけようとしてくれたのか、ギニュー隊長が「元気が出るポーズだ!」と言って新生特戦隊でスペシャルファイティングポーズをきめている光景が最高にシュールだった。常識人枠のクリリンくんとピッコロさん、ラディッツが追加で彼を気遣ってくれたのが救いか。

 

 

 

 そんな感じで、とりあえずはブルマがタイムマシンを改造して燃料を作るまでは解散という雰囲気になった。未来へ行くメンバーを決めたりもろもろ話し合うことはあるんだろうけど、中心人物が2人……いや4人? ええい面倒くさい! とにかく悟空たちとベジータ達が何処かに行ってしまったからな。トランクスも休ませた方がいいし、話し合いは少し落ち着いてからでも良いだろう。

 

 界王神様達も一度界王神界へ帰ることになった。しかしザマスの方であるが、帰る前に驚くべき言葉を残していった。

 

 

 

「私は、やはり界王神たる器ではないのだろう。いつ私の中の燻る感情が弾けて、あのような悲しい光景を作るのか分からない。それを考えると、正直自分を恐ろしく感じる。……私は界王神見習いを辞退するつもりだ」

 

 それに対して一番驚いたのは界王神様だ。「な、そんな!? ザマス殿、考え直してください。それはあまりにも早計過ぎる。あなたは素晴らしい界王神になれる器を持っておいでだ!」と言って彼に考え直すように訴えたが、しばらく己自身について考え直す時間が欲しいのだとザマスは首を横に振った。どうやら未来のザマスの件は、彼に随分なショックを与えたようである。

 

 

 

 

 

 彼は最後に叶恵の頭を撫でると、儚げな笑みを残して第10宇宙へと帰っていった。

 

 その後ろ姿を見た私は、漠然ともう私達の世界線では悟空ブラックも闇落ちしたザマスも現れないのだと感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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