とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ドラゴンボール超13:全王様と一緒!

 現在私は土下座をしている。

 

 ついでにいうとビルス様も土下座をしている。

 

 

 

 

 もちろん向かい合って土下座しているわけではない。あのビルス様が人間ごときに土下座などするものか。私たちは現在冷や汗をびっしょりかきながら、ある同じ方向に頭を下げて額を地面にこすりつけていた。

 その先にあるものが何かって? ビルス様が頭を下げる方など、私が知る限りお一方しかいらっしゃらない。

 

 

「この星、夜空がとっても綺麗だねー」

「そうだろー? 昼間だって綺麗だぞ!」

「この料理もね、おいしいねー」

「こっちもうめぇぞ。そら、とってやるよ」

「わあ、ありがとう! ところで君たち、誰?」

「「オラ、孫悟空だ。よろしくな、全ちゃん(全王様)!」」

「全ちゃん? それってボクのこと? ボクをそんな風に呼ぶ人初めて。君っておもしろいんだねぇ」

 

 

 

 

 悟空の奴、全王様呼びやがったぁぁぁあああああああぁぁぁぁ!!!!

 

 しかも平行世界の悟空に至ってはそのフレンドリーな呼び方はなんだよ!!

 

 

 

 

 

 平行世界の悟空が何かごそごそ探してるのは視界の端に映ってたんだ。見逃すべきじゃなかった。「お、そうだ。ビルス様が頭の上がらねぇ相手っていうと……」とか言ってた時点で気づくべきだった。悟空お前、全王様に対する認識の度合いが私たちとちょっと違うなーとか思ってたけどいくらなんでもお前……! ちょっと、もっとこうさぁ、あるだろ!? 今さら何言っても遅いけど!!

 面識のないビルス様の更に上を連れてきやがったよ!!面識のない全王様ってなんだよ! 正直全王様の事よく知らないけど、ビルス様のこの恐縮する様子を見れば少なくともそのヤバさは分かるよ!! 待って。ちょっと待って。全王様って、たしかその気になれば宇宙ごと消せるとかウイス様が前に言ってなかったっけ!?

 うわ、うわぁぁぁ。悟空が普通に話しかけてる。隣の席座ってる。料理よそってあげてる。うわあぁぁぁぁぁぁ。

 

 私はごくごく小さい声でビルス様に話しかけた。

 

「ビルス様、もし今タイムマシンとかそういう話が全王様にばれたらどうなります?」

「消される。全王様のお怒りをかって宇宙ごと消される」

「ど、どどどどどどうしましょう」

「知るかぁ! というか、あいつは何で全王様を呼べたんだ!?」

「いや、過去で色々あったようで……! 多分気に入られたかなんかしてあの呼び出しボタンもらったんだと……」

「気に入られた!? 全王様に!? あ、ありえん……! あいつはいったい何なんだ!?」

「主人公です」

「訳の分からんことを言うな! と、とにかくあいつを早く全王様から離せ! 何だあの無礼な態度は!」

「無茶言わないでくださいよ! ほ、ほら。全王様今のところ機嫌損ねてないっぽいじゃないですか! 今邪魔したら逆にまずいですって!」

「じゃあただ見てろってのか!? ぐ、ぐうう……! この破壊神ともあろう者が胃痛で吐きそうだ……!」

「わ、私もです。お腹痛い……」

 

 以上の会話を小声で言い切るという器用なことをした私たちであるが、いくら私たちの胃が悲鳴を上げようとも事態は改善されない。恐ろしい事に現在地球の、否宇宙の今後を握っているのは悟空ただ一人……いや、二人か。いやもうどっちでもいいわ! とにかく悟空にかかっているのである。頼む、余計な事は言うなよ! 頼むから!!

 

 

「ねえ、ところでなんでボクを呼んだの?」

「え? え~っと……。ビルス様が全ちゃんに話があるんだってさ」

「!?」

 

 ちょ、おま、ここでビルス様に丸投げするの!? あのビルス様が目ん玉飛び出させただろうが! 流石に可哀そうになってくるわ!! ウイス様も「これは困りましたねぇ」なんてのほほんと言ってないでフォローを……すぐにフォローを……!!

 

「ビルス、ボクに話ってなぁに」

「あ、いえ、そのですね……!」

 

 多分今ビルス様頭の中真っ白だわ。分かる。痛いほどよくわかるその心境が。でも分かったところで何も出来ないんだけど……!

 

 

 

 しかし思いがけないところから救済の福音が響いた。福音と言うにはうさん臭い事この上ないけど。

 

 

 

「全王様。ビルス様は喉の調子が悪いようですので、私が変わりにご説明してもよろしいでしょうか?」

 

 そう言って恭しく胸に手を当てて頭を下げたのは、さっきまで動画撮影をしていたセルだった。これには場の全員がぎょっとする。

 

「君は?」

「セルと申します。別の世界で第七宇宙、南の銀河コナッツ星の神を務めさせていただいております。以後、お見知りおきを」

「別の世界って?」

「それを含めてご説明いたします。お耳を拝借してもよろしいでしょうか」

「いいよー」

 

 可愛らしい声で返答を受け取ったセルは、実に堂々たる話しっぷりで事の次第を説明し始めた。ちょ、ビルス様の代わりにって付き人のウイス様さえも差し置いて喋っていいのか。

 しかも野郎。

 

 

 

 

「まず、我々は過去から参りました」

 

『げぶぁッ』

 

 

 

 

 第一声が心臓に悪いんだよ!! ほぼ全員吐血しただろ!! いや、実際にはしてないけどそれくらいの勢いでむせたわ!!!!

 あ、あいついきなり一番言っちゃいけないことを……! 何考えてるの!? 馬鹿なの!?

 

 全王様って表情が分かりにくいけど、今ちょっとぴくっと動いたぞ。あ、オワタ。宇宙オワタ……。

 

「過去? あのね、時間の移動は駄目だよって禁止してるの。君も神なら知ってるんじゃないの?」

「存じております。ですが、この度は世界のためにどうしても必要なことだったのです」

「ふうん……続けて?」

「ありがとうございます。というのも、現在世界は奇妙な偶然をもって捻じれてしまっているのです」

「うん、そうだね。なんか変な感じはしてたんだー。ボクの世界とは別の世界が近くに居るね」

「流石は全王様、お気づきでしたか。……先ほど我々は過去から来たと申し上げましたが、正確にはその別の世界の過去から参りました。何故かと言えば、この世界同士の捻じれを正すために必要であると判断したからです。そして捻じれを正す準備が整いましたので、今まで宇宙を治める全王様に無断で行っていた行為にお詫び申し上げたく、こうして捻じれを正す前にビルス様と我々で宴席を用意してお待ちしておりました。本来我々から出向かなければならないところをご足労頂いたことには大変申し訳なく思っているのですが、そこに居る孫悟空は過去にて全王様と友好を結んだ人間です。証拠に全王様をお呼びできる秘宝を賜っておりました。どうやら全王様に早く会いたいあまりにその秘宝を使用してしまったみたいですね。これに関しては真に我々の監督不行き届きです。申し訳ありません」

 

 ベラベラとよくしゃべるなと思いつつ、場の主導権は今や完全にセルが握っていた。もうここまで来たらこいつに賭けるしかないだろう。そしてセルがその後全王様に説明した内容であるが、簡単にまとめるとこうである。

 

 

・世界は世界Aと世界Bの過去と未来で絡まって捻じれてしまっていた。それを治すためにはスーパードラゴンボールの力が必要不可欠であり、事態を把握していた世界Aの過去メンバーが使用可能なスーパードラゴンボールがある未来まで来る必要があった。

・しかしタイミングの悪い事に、一人の神(ザマス)が時空を行き来し悪事を働いていたので、それを倒す必要が出てきた。

・無事に件の神を倒したので、世界の捻じれを解消する準備が整った。そしてそれに必要なスーパードラゴンボールを集めるためにこの世界の破壊神ビルスに助力を願ったが、彼の助言でこのような重大な事柄を全王様にお伝えしないまま解決しては失礼だ、報告して筋を通してから解決するべきだということになった。そしてお詫びのための宴席を整えたのち、全王様にお伺いを立てるため出向くはずがその前に先走った孫悟空が全王様を呼んでしまった。

 

 

 …………こんな感じである。かなり端折っている上に無茶があるし主にビルス様のくだりで嘘が混じっているが、セルの堂々たる話しっぷりがいかにもそれが真実であるという信憑性をもたせていた。

 特にポイントなのが、時間移動の禁忌をそれを上回る危機のためにやむを得なく実行したという点に重点を置いて話していた事だ。更に言うとすでに倒した神(ザマス)の罪を事細かに話し若干話を盛ることによって、分かりやすい悪役を際立たせ相対的に私たちの罪を軽く済ませようという思惑まで感じられた。そして話の中にビルス様を盛り込むことで、彼の”破壊”という手段によって捻じれを解消する方法を封じようというのだろう。全王様にあれだけ真実味をおびた話を聞かせた後で「その話は嘘だ」と言えば、嘘をつかれたという事実だけで全王様が機嫌を損ねる可能性がある。そうなれば真実がどうあれビルス様ともども宇宙はパーンとなくなるという……………………うん、ビルス様、この話を真実と認めるほか無いわ。でもって一緒に誤魔化すしかないわ。

 

 

 

 ヤッタネ! 未来ビルス様が共犯者になったよ! 

 

 

 ……………………………………………………究極神セル、恐ろしいセミである。

 

 

 

「そうなの。ボクの知らないところで色々あったみたいだね。たしかに、後で聞かされたらちょっとムカツクね」

「!!」

「でもね、なんだか楽しい場所に呼んでくれたからね、今回のことは怒らないであげる。でも特別だよ? ご苦労だったね、ビルス」

「は、ははぁ!! ありがたきお言葉!!」

 

 ビルス様が地面に額をこすりつけるどころか、勢い余ってクレーターを生み出しながら頭を地面に打ち付けた。横目で見られた相手が焼き切れるぐらいの憤怒の視線でセルを睨みつけていたけど、セルといえばどこ吹く風で優雅な佇まいである。あの余裕は何処から生まれてくるんだ。

 し、しかしこれで時間移動うんぬんの話は不問に処されたという解釈でいいのかな……? だとすれば私たちの胃痛と引き換えに、セルは大金星をつかみ取ったことになる。それに関しては悔しいが認めざるを得ない。あの野郎、でかしたが美味しい所を全部持っていきやがった……。

 

「あ、そういえば界王神様……」

 

 ふと気になって背後を見れば、やや干からびた界王神様が地面に倒れ伏しており(彼を中心におそらく汗で出来た水たまりが見えた)、ザマスさんにいたっては「お前は事の重さを理解して行動したのかいや私もしていたかもしれないんだがしかしお前本当に事の発端となった自覚をもっと理解して反省をだな」みたいなことをブツブツ言いながら緑色の肌を青ざめさせて自分の腹をドスドスと一心不乱に殴っていた。え、ザマスさんもしかして腹の中の合体ザマスと会話できるんですか。あれかな、念話かな。たしかにさっき「罪を犯した私とも長い年月をかけて語り合うつもりです」とか言ってたけど実際に話せるんだ? いやでもだとしてもヤメテ!? 痛いのはあのアンチクショウじゃなくてあなたのお腹ですからヤメテ!?

 

 私と同じくそれに気づいたトランクスがザマスさんを止めに駆け寄ったが、そんな外野の気持ちなど知らずに全王様は悟空に興味津々といった様子で話しかけていた。

 

「ねえねえ、悟空くん」

「お? 何だ、全王様」

「オラの事は悟空でいいぞ」

「そう? じゃあもう一人の悟空もボクのこと全ちゃんって呼んでいいよ」

「おう! じゃあオラも全ちゃんって呼ぶな! それで全ちゃん、どうしたんだ?」

「君たちって別の世界? 過去? の、ボクと仲良しなんだよね」

「ああ、ついこの間友達になったんだ!」

「へ~、お友達なんだ」

「オラは第六宇宙との試合の後は会ってねぇな~」

「第六宇宙との試合って?」

「それがさぁ、ビルス様とシャンパ様が……」

 

 どうやら全王様は別の世界とはいえ自分と仲良くなったらしい悟空に興味を持ったようだ。

 気さくに話すダブル悟空を見てビルス様はセルに怒りの視線を向けるどころではなくなったようだ。再びアワアワとその様子を見守っている。……私? 私やブルマ、ブウ子、悟飯ちゃん、ラディッツ、ベジータはもう諦めの境地よ。悟空だし、もうしょうがないかなって。ビルス様も早く現実逃h……悟りの境地にいらっしゃるといい。楽になりますよ。

 

 ところでウイス様、貴方という方も器の大きな方ですね。さりげなくご馳走のパック詰めをセルに頼んでるんですけど。持ち帰る気ですか。ビルス様はいいんですか。

 

 

 

 そしてそんな喜びからの緊張からのグダグダ感に、全員が途方もない疲労感に見舞われている時だった。

 突如として空が暗くなり、次の瞬間弾けるように美しかった夜空に更なる星のさんざめきが加わった。怒涛のように天の川をひっくり返したような星のパノラマが押し寄せ、次いで七色のオーロラが天を覆う。何事かと見上げれば、星と七色のカーテンに彩られた夜空を飛翔する巨大な金色の翼が眼前を埋め尽くした。そして神秘的に輝く赤い眼……。こ、これは!

 

赤眼の金龍(レッドアイズゴールデンドラゴン)……じゃねぇ!! スーパー神龍!?」

「いったいどういうことだ!? まだスーパードラゴンボールは集めていないぞ!」

 

 ベジータの疑問はもっともだったが、それはすぐに解消された。

 

 

 

「お母さーーーーーーーーーーーん!!」

「! 空龍!?」

「皆さん、ご無事でしたか!」

「トランクス!」

「チッ」

「ブロ……ッ、お、ちょっと待て」

 

 空からずいぶん久しぶりに見た気がする未来空龍と、こっちの未来トランクスとは違う未来トランクス、ブロリーが下りてきたのを見て、彼らがスーパードラゴンボールを使ったのだという事は理解した。が、3人と一緒に現れた……というか、ブロリーの息子であるブロリージュニア(ブロリーが名前を付けないのでみんなジュニアと呼んでいる)がきゃっきゃと嬉しそうにつかんでいるブツにツッコミを入れざるを得ない。そしてバッと背後を振り返れば、そのブツを見て「私はやはり界王神にはふさわしくないのでは……」と死んだ魚のような目になっているザマスさん。…………うん、ごめん。どうフォローしていいのか分からない。

 

 しかし、ここはみんなを代表して言わせてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

「ブロリー、お前のジュニアが掴んでる緑色のボロ雑巾どうしたよ」

「倒した」

 

 

 

 

 そろそろお家に帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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