とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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★ドラゴンボール超17(最終話):エピローグ~未来への餞別

「お母さ~ん!」

 

 私は自宅のテラスで書きかけの日記の電源を一回切ると、呼ばれた方を見る。そこには現代空龍、エシャロット、龍成、叶恵、チビトランクス、悟天ちゃんを腕やら背中にぶら下げた未来空龍と未来トランクスの姿があった。私を呼んだのは未来空龍の方で、その表情は生き生きしている。前に来た時もそうだったけど、空龍は彼の世界に存在しない兄弟たちと遊ぶのが本当に楽しいようだ。

 ジュニアに関してもまったくあてにならないブロリーの代わりによく横から口を出しつつ面倒をみているようだし、もし空龍が親になる日が来たらきっといいお父さんになるだろうな。……しかたがないけど、それを見られないのが残念だ。

 

「お母さん、ブルマさんが準備できたから来なさいって!」

「はいよ~、今行くわ。チビたちはそのまま二人で連れてってくれる?」

「うん! よーし、思いっきり飛ぶからちゃんとつかまってるんだぞ!」

『はーい!』

「トランクスもよろしく」

「はい! では、先に行って待ってますね」

 

 元気に返事をした若人たちがカプセルコーポレーションに向かったのを見送って空を見上げていると、いつの間にかラディッツが横に立っていた。その背中には空龍たちにお土産で持たせる予定の、畑でとれた瑞々しい作物たちが背負われている。

 

「…………もうすぐお別れだねぇ……」

「そうだな。……寂しいか?」

「そりゃあね。でも、笑って見送ってやるのが一番でしょ。あの子たちもずっと明るく振る舞ってくれてるしさ」

 

 そうは言ってみたけど、でもやっぱり寂しい。だって未来空龍たちが今度未来へ帰ったら、多分平行世界のみんなと同じようにもう二度と会う事は出来ないのだ。今まで心のどこかで「会おうと思えばいつでも会えるだろう」と思っていただけに、そう考えると寂しくってたまらない。

 

 

 

 

 

 …………私たちと未来から来た青年達の別れは、もう間近に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界の捻じれを無事解消し現代に戻って来た私たちだったのだけど、そこには空龍、トランクス、ブロリー、ブロリージュニアの姿もあった。界王神様との約束を守るなら、タイムマシンの再度の使用は私たちが現代に帰るためだけにとどめるべきだった。しかしある理由によって、未来の3人は再び現代へとやってきた。

 界王神様とザマスさんは渋い顔をしていたけど、これで最後だからと主張する空龍とトランクスに折れた形である。ザマスに手こずってたとはいえ結局スーパードラゴンボールを集められなかった私たちの代わりに、スーパードラゴンボールを集めて捻じれの解消に役立てたのはあの子達だしね。それもあって強く出られなかったんだろう。これがビルス様だったら問答無用で却下していただろうけど、今回こっちの時空のビルス様には内密で事を進めたことが幸いした。……そう考えると、優しい気質の界王神様には感謝だな。おかげで最後の別れをする時間も出来た。

 

 

 

 

 ちなみに彼らが再び現代に来た理由だが、それはブロリーとジュニアに関してである。

 

 空龍によって未来へ連れて行かれたが、ブロリーはもともとこの時代の人間だ。で、彼の父であるパラガスはこちらで生活している。空龍としても今さらブロリーを現代に残していく気は無いようだが(「まだ更生させられてませんから」と握り拳を作って強く主張していた)、このままパラガスと和解しないまま親子と爺孫が二度と会えなくなってしまう事に関しては納得できなかったようだ。実際の両親である未来の私とラディッツを亡くしている彼にとって譲れない理由だったのだろう。それにあの子、ジュニアのことは凄く可愛がってるしな。前に来たときそこそこ懐いていたパラガスとこのままお別れさせたくなかったみたい。

 

 そんな理由で、現代に帰って来てから空龍とトランクスはブロリーの両腕をがっちり掴んで問答無用でパラガスのもとに連れて行った。そしてパラガスとブロリーの間にどんな会話があったのかは知らないが(むしろちゃんと会話出来たのか心配だが)、なんとパラガスはブロリーと共に未来へ行くことを選択したのだ。

 「世話になった」と頭を下げたパラガスの表情はどこかスッキリしていて、珍しくブロリーから離れたジュニアがパラガスの髭をきゃっきゃと嬉しそうに引っ張りながら「じーじ」と呼んでいた。そのジュニアをあやすパラガスの顔といったら、完全に孫馬鹿のおじいちゃんである。……店長のおかげってのが大きいんだろうけど、丸くなったなお前も。

 ブロリー的にはジュニアを押し付けられる相手が来るなら、という理由でパラガスの同行を許したのかもしれない。でもジュニアをあやすパラガスと、その横で不機嫌そうに腕を組んでそっぽを向くブロリーという構図を見て、ようやくこの親子にもひとつの区切りがついたのだなと感じた。そもそもパラガスとブロリーの苦難はベジータ王……お父様が原因で始まったので、それを見てちょっとほっとしている自分がいる。勝手だけど、心の中で思うことくらい許してほしい。

 

 そういえばパラガスはどうやら未来で今度は自分の喫茶店を開くことにしたらしく、それを知った店長から餞別に色々もらったみたいだ。コーヒーに関連する器具やら書籍、壊れてはいないけど使わなくなったテーブルや椅子などの開店時に必要になりそうな家具……そして店長が大事にしていたバイオリンまで餞別に渡したところを見るに、店長にとってもパラガスがかけがえのない友人になっていたのだろう。パラガスはそんな大切なものは貰えないと遠慮してたけど、店長に無理やり押し付けられていた。「孫の子守歌に弾いてやれ」だってさ。どうやらパラガス、暇なときに店長にバイオリンを教えてもらっていたらしい。

 店長はパラガスとの別れに寂しそうだったけど、親子が並ぶ姿を見て珍しく目に涙をにじませて「よかったな」と繰り返していた。そして「息子と仲良くな。孫も可愛がってやれよ。……俺も、疎遠になってた子供に連絡をしてみようと思う。達者でな、パラガス」と笑ってパラガスの背を叩いたところで、ついにこらえきれなくなったのかパラガスは号泣しながら店長に抱き着いていた。

 

 ……私も、パラガスのパンケーキが食べられなくなるのはちょっと寂しいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 まあそんなわけで、空龍たちが現代に来た目的は果たされた。で、最後のお別れはしんみりしないでいっそ楽しく! とブルマが提案し、お別れパーティーが開かれることになったのだ。

 各自準備のためにいったん解散し、パーティーの準備が出来たのがついさっき。短時間で準備が整うとはさすがブルマ……。私も空龍に帰る前に食べてほしいものいくつか作って準備したけど、これはお土産でもたせればいいだろう。パオズ山で収穫した野菜もラディッツにさっき採ってきてもらったし、あと米と野菜の種や苗も……色々あるけど、全部収まっちゃうホイポイカプセル本当に便利だわ。あ、そういえば洗剤あまってたな。それも入れとこう。あとラディッツの古着だけどいい生地の服あるからそれと、このあいだまとめ買いした乾物も入れとこう。あと他に持たせられるものあったかな……。あ、冷凍にしといた常備菜も入れておこう。う~ん、他は思い出したらまた後で取りに来ればいいか。

 

 それにしてもパーティーとか久しぶりだな。店長もパラガスのために腕を振るうって言ってたし、ブウ子も選りすぐりのスイーツを持って来るって張り切ってたからご馳走の内容には色々期待出来そうだ。今回の件を知らない面々も呼ばれたから、そいつらはまず今回のややこしい事件にビックリするんだろうけど。

 

 

 とりあえず、私たちもカプセルコーポレーションに行くとするか。

 

 

「さ、私たちも行こうか」

「ああ。先に言っておくが、食いすぎるなよ?」

「………………」

「返事はどうした」

「やだ」

「はい、だろうが! お前が調子に乗って食うとエシャロットと叶恵が真似をする! クソッ、叶恵は最近まで普通だったのに、ついこの間から甘いものばかりに興味を持ち始めて……子供に悪影響だろう!」

「いいじゃん! いいじゃんこういう時くらい! 絶対美味しいものいっぱいあるのに腹八分目とか言ってられないに決まってるでしょ!」

「ならせめて糖分は控えろよ! エンプティーカロリーの見本みたいなのをいつもバクバクと……もっと栄養価をだな……」

 

 

 …………その後、ラディッツの小言が続いて出かけるのが30分ほど遅れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと行くのが遅れたら、私たちが到着したころには全員そろっていた。うちの子達に孫一家、ブルマ一家(家主はブルマ親子なのでベジータ一家とは言えない)、クリリンくん一家、ピッコロさん含めた天界組、カリン様にヤジロベー、新ギニュー特戦隊、マーくんもといサタンとブウ、ベエにブウ子。餃子師範、亀仙人様、ウミガメ、ヤムチャくんとプーアル、ウーロン、天津飯にランチさん、界王神様、老界王神様、キビトさん、ザマスさん、ゴワスさん、ピラフ一味も居るしセルもちゃっかり混じってる。あ、界王様もいるじゃん。後で叶恵の修業頼みに行こうかな。

 本当に呼べるだけ呼んだみたいだな……。今更だけど神様や人外も混ざってる凄い面子な上に、総勢何人になるんだろう? ま、賑やかなのはいいこった。

 

 

 それぞれ事情を聞いた後らしく空龍や未来トランクスに別れの挨拶をしていたが、ブルマが「しんみりしたお別れは後よ後! 今は思いっきり楽しんでちょうだい!」と号令をかけてパーティーが始まったので場は明るい雰囲気に満たされた。期待した通りご馳走もたくさんあるし、もちろん私もありがたく頂戴する。

 で、ラディッツに散々小言を言われたので出来るだけ上品に慎ましやかに食べるようにしてたんだけど……ブロリーが肉にかぶりついている悟空に声をかけたことで思わず塊を喉に詰まらせそうになった。現代空龍が慌てて背中を叩いてくれたので事なきを得たけど、食べてたのが餅入り巾着だっただけに一瞬危なかった……。こんなことで死んだら死んでも死にきれん。

 いやそれよりも! ちょ、おま、ブロリー。今まで大人しくしてたのにどうした!? ……いや、ブロリーが悟空に対して要求することといったら一つか。でも分かっててもさ、まず話しかけるってコミュニケーションが取れるようになったっていう衝撃がね……? しかも相手悟空だし。空龍、お前まだ更生させられてないって言ってたけど立派なもんだよ。あのブロリーが話しかけるってアクションを起こしただけでもびっくりだよこっちは。

 

 で、ブロリーと悟空だけど……。

 

「カカロットぉ……俺と戦え!!」

「? ほはほ?」

「お父さん、ちゃんと噛んで飲み込んでから喋ってください。パンちゃんの前でお行儀の悪い事はしないでくださいね」

 

 育メン悟飯ちゃんの隙の無いつっこみでとりあえず肉を飲み込んだ悟空は、ブロリーの要求に目を輝かせて答えた。

 

「なんだブロリー、おめぇオラと戦いてぇのか? おうっ、いいぞ。やろうぜ! 前はみんなで力あわせねーと勝てなかったからな……。オラとしても望むところだ! 今度はオラ一人で勝ってやっからな!」

「チィっ、相変わらず気にくわん奴だ……。貴様の声は聴くだけで耳障りなんだ! 頭がむしゃくしゃしてしょうがない! ……ククッ、せいぜい後悔しながら地に這いつくばるんだな……!」

「ひ、ひでぇ言われようだなぁ。オラ、おめぇに何かしたっけ?」

「存在そのものが目障りだ」

「そう言われたってよぉ……めえったな。まっ、いっか! とりあえず戦おうぜ!」

「ちょ、ちょっとちょっと待ちなさいよ! せっかくの楽しいパーティーに何やろうとしてんのよあんたたちは!」

「いや、でもさブルマ。これでお別れなんだし、せっかくだししがらみは無くしといた方がスッキリするんじゃない?」

「空梨まで何言ってんの! こいつらが暴れたらせっかくのパーティー会場が滅茶苦茶になっちゃうでしょ!?」

 

 怒り心頭のブルマだったけど、しかしブロリーVS悟空の波紋は思いがけず広がりを見せてしまった。

 

 

 

 まずベジータ。

 

「待てカカロット! 俺もそいつには借りを返さねばならん。それに未来での戦いは雑魚相手で消化不良だったしイライラしていたところだ。俺に戦わせろ!」

「え、そりゃねえよベジータ! オラだって戦いたい! それにブロリーはオラと戦いたいんだもんな? な?」

「面倒だ。貴様らごとき、束になってかかってこようが変わらん!」

「ほう? ずいぶんな自信だな。だが貴様程度俺一人で十分だ!」

「だから戦うのはオラだって!」

 

 ブロリーとの対戦権を巡って悟空とベジータが言いあいを始めたら、そこに未来トランクスが挙手しながら控えめに提案する。

 

「あの、よかったら父さんは俺と手合わせしてくれませんか? これでも随分強くなったんですよ! 帰る前に父さんに俺の実力を見てもらいたいんです!」

 

 それに便乗して未来空龍まで。

 

「じゃあ僕はお父さん、お母さんと手合わせしたい! これでお別れは寂しいけど、せめて強くなったところを見せて、安心させてから未来に帰りたいんだ」

 

 そしたら現代空龍、エシャロット、龍成まで参加してきた。

 

「あ、それなら僕は未来の僕と戦ってみたいなぁ! 自分自身と戦える機会なんて多分もうないし」

「ズルイ! 空兄ちゃんいつも戦いごっこ面倒くさがるくせにー! エシャもやるもん! 」

「えっ、じゃ、じゃあ僕も! これでもう会えないんでしょ? だったら、未来のお兄ちゃんに戦い方見てもらいたいな」

 

 子供組が参戦したことでチビトランクスと悟天ちゃんも抜け駆けさせまいと声を張り上げる。

 

「あ、ズリーズリー! 俺だって未来の俺と戦ってみたい!」

「僕もー! へへっ、僕たちだってこっそり特訓してたんだもんね! 前より強くなってるよ!」

「なー!」

「ねー!」

 

 次々と参加表明の声が上がり、空気にあてられたのか悟飯ちゃんとラディッツまでそわそわしている。……かくいう私も、珍しくちょっとやる気出てるんだけどね。未来トランクスは悟飯ちゃんとも手合わせしたいみたいだし、空龍は私とラディッツをご指名だ。未来へ帰る大切な存在に「安心させるために強くなった自分を見てほしい」と言われて、応えないなんて選択肢は無い。

 しかし、この空気に便乗する輩はまだ終わりでは無かった。

 

「待て、なら私も参加させたまえ。未来では相当なボランティアをしてやったと思わないか? その褒美としては安いものだろう。相手は孫悟空でもベジータでも空龍でもトランクスでもブロリーでも構わんぞ」

「え~、何々? なんだか楽しそうなことになってきたわね。ねえねえ! わたしはか弱いから無理だけど、ブウちゃん参加したら? きっと楽しいわよ!」

「ん? そうか~? じゃあ俺も遊ぶ! 誰が戦ってくれるんだ?」

「お前らも!? ちょっと、流石にこれじゃ収集つかなくない?」

 

 セルが主張したら面白半分のブウ子がブウを焚きつけ、ブウも乗り気に。戦うのはいいけど、希望者が多すぎてまとまりがつかない。

 

 

 

 しかし、そこに鶴の一声。

 

 

 

「じゃあトーナメントでもするかい?」

『……………………』

 

 

 

 しばしの沈黙の後。

 

 

 

『ビルス様!?』

 

 

 

 

 そう。いつから居たのか分からないが、ウイス様と一緒に両手に料理がたっぷり乗った皿を携えたビルス様がパーティー会場に現れたのだ。

 これに焦ったのは「ビルス様にはバレるまでは内緒にしてようね☆」で方針を決めていた私たちである。それを分かってか、ビルス様は意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「驚いてるみたいだけど、君たち神をなめすぎじゃないかい? 事情はぜ~んぶ知ってるよ。……僕に内緒でずいぶん色々していたみたいだね」

「え、え~とですね、ビルス様、これには深い事情が……!」

「ん?」

「すみませんでした」

 

 とりあえず謝った。もう土下座だろうが五体投地だろうが慣れたものである。プライド? そんなものお母様の腹の中に置いてきたわ。

 けど冷や汗をかく私とは裏腹に、悟空はビルス様にいつもの調子で気さくに話しかけていた。

 

「なんだよビルス様、知ってたんなら声かけてくれたらいいのによ~」

「僕に内緒にしていたのは君たちだろう? で、何か申し開きはあるかな。世界の破滅に関わり、禁忌である時間の移動も何度もしている。世界の捻じれとやらが解消された今、お前たちを破壊しても何の問題もないんだけどね」

「え~? もう全部解決したんだ。そうかてぇこと言わねぇでくれって。な? でも、もし破壊するっちゅーんならオラが相手になっぞ!」

「……………………お前には本当に神を敬うという気持ちを感じられんな。というか、そこのデカいのと戦うと言ってた口で僕とも戦うって? どれだけ戦いが好きなんだ。流石に呆れるぞ」

「へへっ。でもよビルス様、今回は最初から破壊する気なんてないんだろ?」

「なっ」

「ビルス様とまた戦いてぇってのは本音だけどさ、今日は一緒にうめぇもん食って楽しもうぜ!」

 

 相変わらずの悟空のマイペースさに、緊張していた場の空気がだんだん緩んでいく。ああ、もう。本当にこいつには敵わないな。

 

「ふふっ、ビルス様。もう驚かすのはやめにして、悟空さんの言う通り美味しいものを食べましょう。ほら、出来上がったお料理の他にもその場で作ってくれる品もあるようですよ? う~ん、この出来立て感がたまりませんねぇ」

「だが破壊神としても威厳をだな……」

「だってビルス様、全部お見通しなんておっしゃってましたけど……ゴワス様達が事情を説明しに来なければ、知らなかった事じゃないですか。知らないままだったら破壊以前の問題ですし、今回の件では威厳なんて持ち出せませんよ」

「ウイス! お前な、それを言うな!」

 

 ウイス様の言葉にぱっと界王神様チームを見れば、界王神様とザマスさんは苦笑いを浮かべ、ゴワス様と老界王神様は吹き出すのをこらえるように体を震わせていた。キビトさんは赤い肌なのに青ざめて頭をかかえている。

 どういうことだろうと聞けば、なんでも後で事情を知られて私たちが責められないようにと、神様たちがビルス様に事情を説明してくれていたようなのだ。私たちを咎めないようにと、かなりビルス様に頼み込んでくれたらしい。もとはといえばすでに分岐した世界とはいえ自分たちが原因であると主に第10宇宙のお二方が頑張ってくれたようだけど……それにしたって、ビルス様を納得させるのには苦労しただろうに。私もいざばれたら界王神様に頑張ってもらおうとは思ってたけど、まさか先回りでフォローしてくださるとは……。

 

「……まあ、今回は第10宇宙と第7宇宙の界王神の顔を立てて見逃してあげましょう。で? 君たち戦うの? 戦わないの?」

「戦うに決まってるさ!」

「じゃあせっかくだし、どれだけ強くなったか見せてもらおうか。全王様主催の格闘大会がいつ開催されるか分からないし、僕としても戦力を把握しておきたいんだよね」

「神の御前試合再び、という感じですねぇ。よければ私がバリアを作りますよ。それなら地球でも思い切り戦えるでしょう?」

 

 ビルス様とウイス様の提案に悟空がぱっと顔を輝かせる。

 

「え、本当かウイスさん!」

「ほほっ、特別ですよ。それで、戦いの順番はどうします? ビルス様が言ったようにトーナメント形式にして勝ち抜き戦にするのでしたら、クジを作らないといけませんねぇ」

「待て! 俺はカカロットをぶちのめしたいんだ。トーナメントなどかったるい事をやってられるか!」

「うん? 君ずいぶんと生意気な口をきくじゃないか」

「まあまあビルス様、ブロリーはこういう奴なんだ。ブロリーもちょっと落ち着けって。オラはもちろんおめぇと戦うつもりだけどよ、なんか面白くなってきたじゃねーか! ここにいる強ぇ奴らと思いっきり戦えるんだぞ? それぞれ戦いてぇ奴とはまた後で改めてってのも出来っし、折角だしトーナメント形式もやろうぜ! 天下一武道会みてーで面白れぇや!」

 

 ブロリーがビルス様につっかかって(一回別世界のビルス様に負けてるくせに懲りない奴である)一瞬ひやりとしたけど、悟空が間に入るとビルス様は毒気を抜かれたようにため息をついた。まあ、あんなきらっきらした目でワクワクとした表情されちゃあな……。

 

 

 

 それにしても、ここにきても戦いか。まったくどいつもこいつも物好きな。

 

 

 

「まっ、でも……たまにはこういうのもいいか」

「……珍しいな。戦いに対して怠惰な貴様がそんな風に言うとは」

 

 思わずつぶやけば、耳ざとく聞いていたらしいベジータがそう述べた。

 

「自分でもそう思うけどね……。でもこういうお祭り騒ぎな雰囲気だったら嫌いじゃないし、折角だしお別れは派手にやってやろうかなって」

「フンッ、だったらせいぜい気張るんだな。貴様ごとき、俺と当たれば派手な戦いになる前に瞬殺だ」

「言ったな? 私だって子供たちの手前、格好悪い姿を見せる気はないんでね。全力で叩き潰してやるよ」

「ほうっ、面白い。やれるものならやってみろ!!」

 

 珍しく好戦的になっている自分を自覚しながら赤い気を纏えば、対抗するようにベジータは青い気を纏う。だけど昔と違って、互いに罵り合っても私もベジータも笑ってるんだから変なもんだ。まあお互い小憎たらしいニヤリ笑いだけどな。

 

「お、いいぞいいぞー! サイヤ人同士の試合か! 見ごたえありそうだ!」

「ああ、興味あるな」

「楽しみだね! 空梨も頑張れー!」

「ブウとセルも参戦するみたいだぜ! こりゃあ誰が勝ち抜くかわかんねーな」

「もう、しかたがないわねぇ……。でも、これはこれでお祭りよね。いいわ、派手にやっちゃって! トランクスー! ベジーター! 頑張るのよー!」

「悟飯ちゃんも頑張るだぞ! 悟天ちゃんは怪我しねぇようになー! 悟空さはほどほどにするだぞー!」

「キャー! ブウちゃん頑張って~! もし勝ち残ったら今度デートしてあげちゃう!」

「ははっ、まったくこの人たちは……。あ、そうだ。ザマス殿は参加しないのですか?」

「ふふっ、では折角だ。私も参加させてもらおうか。合体した体の調子も試してみたい」

「おお! ザマスの戦いっぷりが見れるのか。これは録画して是非神TUBEに……」

「おやめくださいゴワス様!?」

「クククッ、ずいぶんと面白い内容になりそうだ。俺は今回のんびり観戦させてもらおうか。悟飯、パンもビーデルも見ているんだ。情けない姿をさらすんじゃないぞ!」

「そうよー悟飯くん! パンちゃんに格好いい姿見せてあげてね!」

「ううむ、これは我慢できん! 新生ギニュー特戦隊よ、折角の祭りだ! 我々も参戦するぞ!」

「あ、俺はパスで……」

「何故だジース!?」

「私は参加を希望します」

「流石だナッパ!」

「ええ、お前らも参加するの? じゃ、じゃあ俺も記念に参加しようかな……マーロンにいいとこ見せたいし」

「やめときな。あの面子じゃ恥をかくのがおちだよ」

「そ、そりゃないぜ18号~」

「ほっほ、賑やかじゃのー」

 

 外野も騒がしくなってきたな。みんな一斉に喋るもんだから誰が何喋ってるか分かったもんじゃない。でも総じてみんな乗り気みたいで、早くも観戦席を用意してくつろいでる。

 

 

「じゃあ、あの子たちが未来に帰っても一生忘れられない試合にしてやろっか」

 

 ばしっと手のひらに拳を叩きつければ、私と同じようにそれぞれ闘志を燃やす。

 お別れのしんみりした空気は何処へやら、場の空気は活力満天の熱気に満ちていた。

 

 

 

 

 

 さあ、始めようか!

 

 

 

 

 

「私たちの戦いはこれからだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある姉サイヤ人の日記、ドラゴンボール超未来トランクス編 完!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ:もしかしたらあったかもしれないIF】

 

 

「ねえねえ、おかあさん」

「どうしたの? 叶恵」

「こんどね、お話してなかよくなったおともだちがあそびに来たいんだって~」

「お話って、もしかしてテレパシーで知り合った宇宙のお友達?」

「うんー! ねえ、おうちに泊めてもいーい?」

「……まあ、宇宙人が何人来ようが今さらか。いいよ」

「わーい! でもね~、まだそのおともだち赤ちゃんなのー。あと、やることがあるんだって。それがおわったらかなえとあそびたいんだって!」

「そうなの? じゃあその子が来るのはまだ先になりそうだね。名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

「ベビーちゃんっていうのよー」

「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある姉サイヤ人の日記 完!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続かないよ!


ドラゴンボール超、未来トランクス編にお付き合いいただきありがとうございました!色々至らないところも多かったと思いますが、とりあえずこの中編を書ききれて満足です。最後まで読んでくださった皆さんに感謝!



___2/13追記



【挿絵表示】

86さんからまたもや素敵イラストを頂きました!完結してからも恵んでくださるとかなんというお慈悲……!ありがとうございます!
ベビーに乗っ取られた主人公を描いていただきました。なんだか凄く強そう。むっちむちの太ももがたまらなく好きだと豪語する私は変態でしょうか。でも好きだ……!

ところで、感想欄といいこちらのイラストといい、IFとはいえベビーをちょろっと出しただけで実にナチュラルに主人公が乗っ取られる予想がされている件。ブウの事を顧みるに否定できないぜ……!

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