とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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10ページ目 2人のサイヤ人襲来!~三つ子の魂百まで

Ё月●日

 

 1年前、私はたしかに雲隠れすると誓った。そしてその通り雲隠れしに秘境へ行くはずだった。ついでにいい温泉のある秘境の宿まで取って悠々とベジータがボコられて帰るまで優雅に松茸でもむさぼり食っていようと思った。

 

 なのに。

 

「空梨、一緒に頑張ろうね! ボクも頑張って修業した!」

「修業の仕上げに餃子がお前と超能力の訓練をしたいと言い出してな。突然ですまんが訪ねさせてもらった」

 

 1年が経つ前に、そう言って訪ねてきた餃子師範と天津飯。

 私の答え? そんなもの弟子として決まっているじゃないか。

 

「ええ、喜んで! 一緒に超能力をもっと極めましょう師範!」

 

 

 

 まだ1か月以上時間あるしちょっとなら大丈夫だと高をくくった私は、翌日後悔することになる。(翌日追記

 

 

 

 

 

▽月○日

 

 

 今日かよ!

 

 ベジータとナッパがやってきた。今日かよ!!

 ちょ、まだ1年経つまで一か月以上あるんだけど。こんな時間前行動いらねーんだよ紳士か!

 

 強い気を感じる! と餃子師範と天津飯が気づいたとき、私はまだ彼らと居た。そのあと多分ナッパの挨拶による爆風が遠くのこの地まで届いたのだが、私はそれどころじゃなくいかにスマートにこの場を離れるかについて考えていた。だってこのまま一緒に居たら「よし!行くぞ。1年の修業の成果を見せてやる!」みたいになって私まで行く流れになりそうだもの。わかるもの。

 そのため私はこの時のために用意しておいたラディッツを迎えに行くという名目でそのままフェードアウトしようとした。ちなみにラディッツだが、今はパオズ山で葉物野菜の収穫を行っているはずである。

 しかしここで予想の範疇を超える出来事が起こる。

 

「よし、頼むぞ餃子! おそらくサイヤ人は気が一番強い者の所へ向かっている。そこへ行ってくれ!」

「わかったよ天さん、まかせて! 一番強い気だから……多分ピッコロだね! 行くよ!」

 

 そんな会話がされたと思ったら気づいたら目の前に緑色のナイスガイと甥っ子がいた。

 

 言葉をなくす私に、餃子師範はつい最近テレポーテーションを習得したのだと教えてくれた。サイヤ人がどこに現れてもすぐに行けるように模索した結果だとか。私が重力(念力)操作という新技を身に着けたと聞いた時から、師範も新たな可能性を探したらしい。

 凄い、すごいよ師範。でも今のタイミングで言わないでほしかったし教える前から巻き込んで移動しないでほしかったかな!?

 

 小さい頃からずっと遊んだり面倒見ていたため、悟飯ちゃんはすぐに私に気づいて駆け寄ってきてくれた。でもね、その目でおばちゃんを見ないでくれるかな? ん? 「空梨おばさんも一緒に戦ってくれるんですね!」とかキラキラした目で私を見るんじゃない。一緒にどころか甥っ子が戦うのを承知しながら秘境で温泉で松茸しようとしていた伯母を見るんじゃない……! 純粋な目の輝きに心が焼きただれるだろう。私は私が一番だけど、罪悪感や良心が無いわけじゃないんだぞ。それとピッコロさんは「あのサイヤ人はどうした」って目で私を見ないで。ラディッツ連れてくるどころか逃げる間も無かったんや。

 とかなんとか思いつつ唸ってたらクリリンが来て、そして間をおかずにベジータとナッパがやってきた。サイヤ人の気に師範たちが気づいてからこの間、約10分未満である。逃げる暇など無かった。

 しかし私はあきらめん、あきらめんぞぉ……!

 

 ベジータに姉だと気づかれたら絶対に面倒くさくなるため、私は他人のサイヤ人のフリをしようと思ったのだ。何しろ最後に会ったのが私が7歳でベジータが5歳の時。いくらなんでも成長しているので、面影があっても早々には気づかれまい。

 

 イメージ的には「王子! 王子じゃないですか! まさか自力で惑星ベジータから脱出を!? いやーまさか生き残りのサイヤ人が王子だったなんて!」みたいなノリで始めつつ、他人のフリを強調しつつ世間話で間をもたせるのだ。

 理想は悟空がやってくるまで持たせたいところだが、さすがにそれは難しい。ので、誤魔化しきれなくなってメンバーが増えて戦闘が始まったら初っ端にやられたふりをして隅に転がされる。そしてみんなが戦闘に夢中になっているすきに、気弾の爆風で吹き飛ばされたふりをして自然に戦線から離脱するのである!

 ここでみそなのが世間話をしつつあくまで地球側の味方である主張をすることだ。ちょちょっとやられたふりをすればあとはとばっちりを受けないようにして寝ている簡単なお仕事なので、わざわざ向こうに寝返る芝居などする必要はない。もしそれをしたらそっちの方が後々面倒だ。窮地においても保身を怠らない自分の冷静さには我ながら惚れ惚れするね!

 とかかんとか、ここまでほぼ10秒。

 

 しかし私のこの作戦は、意を決して空に浮かぶベジータを見た瞬間水泡に帰した。

 

「ぶふッっ!!」

 

 真顔で噴出した。だって想像はしてたけどあいつ、ベジータ変わってねーんだもん! 幼少時の面影どころかまんますぎて笑うわ! いや成長してないわけじゃないけど! 悟空も似たようなもんだけどこっちは青年になったな、いい男になったなって雰囲気なのに! ベジータおま、今たしか30歳じゃん? でも成長したなって言いづらいその絶妙な生意気面! こんなん笑うわ!!

「つーか前髪何処行ったしワロス」

「貴様ハーベストか!」

「なんでわかったし」

 以上、身ばれまでの会話の数である。1ターンでばれたってどういう事だ。

 

 

 すぐに味方のはずの皆から視線を集めた私は、誤魔化しきれないと悟って「あいつ私の弟なんで」とすぐに暴露した。「え、じゃあボクのおじさん?」って気づいた悟飯ちゃんは偉いね頭の回転が速いねでも違うんだよ。「いや、あいつが実弟で悟空とは一緒に育っただけの義兄弟ね。だから悟飯ちゃんとあいつとの間に血の繋がりはないよ。だからあのおじさんの髪型を見て将来を心配しなくていいんだよ?」と安心させるために言ったら、なぜかまだろくに話していないベジータがブチ切れた。おい、ナッパ。「あのベジータをキレさせる煽り……まさか、本当にハーベスト王女。生きてやがったのか」じゃないよ。何でお前までそんなことで王女認定するんだよ。あと気づいたなら「ご無事で何よりです」の一言でも言ってきたまえよ、ん? 王女だよ私は。この時点で私は再び「どうにでもな~れ」思考になりつつあった。

 

 けど、煽ったって言ってもあいつの方だって酷い。どうして地球に居るかとかの追及の前に「貴様の事だ。軟弱な星に来たのをいいことに毎日ぐーたらのうのうと過ごしていたんだろう。その弱り切った戦闘力と間抜け面を見ればわかるぜ!」とか言ってきてさ、久しぶりに会ったのに未だ私の事をニートみたいに! 「は? のうのうと過ごしてないし、超働いてるし。お前はあれだろ、相変わらず頭脳を必要としないぶち壊すだけの簡単なお仕事やってんだろ。脳筋お疲れ、私はもっと生産的なお仕事やってるから。比べられるとかマジ困るわ~私の方が超有意義な生活してるわ~」と返すと、ナッパがベジータの横から一歩離れた。どうした、口数が少ないけど。もっと会話に入ってきてもいいんだよ?

 私に負けじと頑張ろうっていうのか、ベジータもさらに言葉を重ねてくる。昔から私に口で勝ったことないくせに生意気な! どうせたいしたこt「フンっ、貴様にサイヤ人としての誇りがないことが改めて分かったぜ。無様だな。なんだ? その腹は。醜く肥え太って、こんなのが身内とは、恥ずかしさで死ねるなら俺は何万回も死んでるぜ。はーっはっは!」言うなよ。言うなよぉぉぉ!! だって! スイーツフェスが一昨日あって! スイーツ好きのプチブレイク中の恋愛占い師ってことでゲストで呼ばれて! 大食いイベントでいくらでも食べていいですよ、むしろ食べてくれた方がイベント的に盛り上がるんで遠慮しないで食べちゃってくださいってスタッフの人に言われたから!! しかも昨日は餃子師匠との超能力の修業だったから体動かしてないし! 本当なら1日でこんな脂肪抹消できるんだよ! お前らが早く来るから悪いんだ私は悪くない!!

 

 で、最終的にどうなったかって。

 

 

「「殺す」」

 

 

 罵詈雑言を互いに言いつくして最終的にいろいろふっ飛ばして姉弟喧嘩になった。

 

 

 

 あれ?

 

 

 

 

(日記は次のページに続いている)

 

 

 

 


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