とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

16 / 135
★11ページ目 戦いの終結~そうだ、ナメック星へ行こう

▽月○日 続き

 

 ラディッツが死んだ。……え?

 

 ………………え!?

 

 

 

 

 

 

 

○月■日

 

 

 最近リアルタイムで日記を書き込むことが多い。もう見ないで指先だけで打ち込める。

 昨日の『ベジータたちがやって来た!』事件も自分を落ち着かせるためにほぼ無意識でポケットの中で打ち続けていたが、衝撃の事態に途中で打つのをやめてしまった。そのため今日、昨日の日記の続きを書こうと思う。

 

 昨日、我ながら頭に血が上っていた。それと過去の栄光にすがっていたようだ。修業もし直したし、ベジータごとき倒せると本気で思っていた私はドラゴンボール全42巻読み直してこいや。

 結果は惨敗。

 まあ、あれだ。いわばここってベジータの悪役時代のハイライトじゃん? 優しいお姉さまは花を持たせてやったんだよ。………………冗談はさておきマジで書くと、途中まではエネルギー波などの力のごり押しで戦いは拮抗していたのだが、本格的な接近戦に持ち込まれてからが酷かった。フェイントに次ぐフェイントにことごとくついていけず、最後は血だるまの出来上がりである。大きな攻撃を何一つ食らっていないというのに、虫の息だった私がカス虫すぎて笑えない。

 1年前にラディッツを生き返らせた仙豆だが、成功したのは結局あの一粒。回復の手段を持ち合わせない私は、無様に敗北を喫しベジータに引きずられる羽目になった。(※ちなみにベジータに馬鹿にされていた腹の脂肪はこの戦いできれいさっぱり消えて私はくびれを取り戻している。ここ重要だから書いておく。あの野郎、このカーヴィーな腰を見てみろってんだよクソッタレ。最近メディアでティーンエイジャーに見えるアラサー美魔女占い師枠で呼ばれるが、スイーツ大食いイベントで95kgにまで体重増加した後の翌日の取材で元の体形に戻っているのを見られてからガチの魔女枠で呼ばれることが多くなった。解せぬ)

 

 しかし、ここまではいい。

 ベジータはどうやら私を持って帰ってこき使うつもりらしく、殺す気は無かったようだ。だからあとは痛いのを我慢して、悟空が勝つのを待てばよかった。痛いのを我慢して。痛いのを、我慢して。くっそやっぱり腹立つあの愚弟。

 

 

 だが、そんな私を待っていた現実は連れてきていないはずのラディッツの死だった。

 他のメンバーも知らないうちに何人か殺されていたのだけど、なぜラディッツまで居るのか分からなかった。しかも、付き合いの長い天津飯の死体を見た時と同じくらいショックを受けている自分に驚いている。悟空の時は薄情ながらそこまで動揺しなかったのに、これは体が弱って心までそれにつられていたからだろうか。

 生き残った悟飯ちゃんとクリリンに聞けば、悟飯ちゃんたちを助けてくれたらしい。しかも、共闘の結果あのナッパを倒したんだとか。ナッパは悟空が倒すものとばかり思っていたので、驚きを隠せない。

 嫌々私に従ってると思っていたし、下手したら連れてくればベジータ側に寝返るかもと考えていた。なのに、いったいいつ心境に変化があったのだろう。一緒に暮らしていたのに気づけなかったことに一抹の寂しさを覚えている。……悟空以外に初めて一緒に住んだ人間だし、それなりに愛着がわいていたのだろうか。

 

 悟空とベジータの戦いは、覚えていないがおおむね原作通りに進んだのだと思う。悟空が勝ち、ベジータはボロ雑巾になって帰っていった。ざまぁ見やがれ。

 と言っても、元気玉やクリリン、ヤジロベーのファインプレーに悟飯ちゃんの大猿化という様々な要因が重なった結果なので、悟空はこの勝利に安心はしても納得はまったくしていなかった。(「ねーちゃんが先に戦って弱らせてくれてたしな」と言われた時はすっと目をそらした)まあ、そうでなければわざわざベジータを逃がすなんて真似しなかっただろうしね……サイヤ人の脳筋遺伝子が怖い。

 ちなみに地べたにはいつくばっていたので(全身ぼこぼこにされて立てなかった)ベジータの大猿化ボールは見なくて済んだが、途中のベジータ猿と悟飯ちゃん猿の大暴れで瓦礫に埋もれて死にかけた。助けてくれた餃子師範に感謝である。

 

 ともかく、これで漫画におけるサイヤ人編は終わったのだ。

 

 

 

 

 

Ω月▽日

 

 

 病院から退院してから1日目。家に帰ってからの感想。

 足りない。なんか足りない。

 

 朝起きても朝食が出来てないし、私を起こす声もしない。洗濯物は一人分だし、テレビを見ていてもくだらない感想を言う相手がいない。畑仕事はいつも通りだったけど、最近忙しくてよく見れなかったはずの野菜が瑞々しく育っていて何とも言えない気分になる。悟空のお見舞いに行ってもぼーっとしていると言われる。料理しても食べる量は変わらないのに何故か倍作ってしまった。気分転換にスイーツを買い込んで食べていても、店一軒分のショーケース内を買い占めたスイーツを食べてるってのに制止の声が無いことに違和感を覚える。その翌日の朝、町内会の草取りだったので参加したら「あれ、今日はラディッツくんじゃないんだねぇ」と言われて変な笑いが出た。

 

 なんか、あれだ。ナメック星には怪我の後遺症で~とか言って行かないですんだはずなのに、喜ぶどころか心のもやが晴れない。むしろ何か焦燥感すら覚えている。昨日今日、奥歯に何か挟まったようで気分がとてもすぐれなかった。一日に一回も楽しいと思えることが無いのがこんなに苦痛だとは知らなかった。

 

 そういえば、あの悟空に珍しく気遣われた。あの悟空に。「兄ちゃんのこと、残念だったな。でも悟飯たちを助けてくれたんだ。ナメック星のドラゴンボールか地球のドラゴンボールできっと生き返らせるさ。そしたら3人きょうでぇだな! 皆で畑やったら、今よりもっとたくさん作れるぞ!」だってさ。え、いつの間にラディッツ仲間にカウントされてたん? と、いつもならつっこむだろうに、その時はつい普通に頷いてしまった。

 

 なんだ。私も年取ったな。一人暮らしが寂しいだけか。

 ちくしょう、あの馬鹿。畑に居れば死なないですんだってのに……。無茶しやがって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※月Й日

 

 

 ナメック星に行くことにした。

 

 我ながら昨日のセンチメンタルな独白が気持ち悪いが、まああれが理由で。ラディッツはこの1年、強制的にとはいえよく私に仕えてくれた。それに対して王族として、臣下の忠義には応えねばなるまい。的な。そんな感じで。

 

 などと格好いいこと言ってみるが、内心かなり焦っている。うろ覚えの漫画知識をこの時ほど恨めしく思ったことは無い。

 

 ナメック星のドラゴンボールが3回願い事を叶えてくれるというのは覚えている。それと、地球限定かナメック星共通ルールか忘れたけどっていうかこれが肝心なんだけど、死者蘇生は1年以内に死んだ者、という縛りがあったはずだ。あったよね? くっそ細かいルールとか覚えてねぇよ。つまり4回の願い事の中にラディッツを滑りこませないと、あいつ完璧に死ぬ。もちろん天津飯、ピッコロさん、ヤムチャを優先させるが、そこは「地球でサイヤ人に殺された者を生き返らせる」でひとくくりに出来るだろう。だけど話を聞けば、ラディッツの直接の死因は悟飯ちゃんの魔閃光だ。サイヤ人に殺された中には入らない。

 ナメック星でフリーザ様とぶつかることを考えると、内容的にはこのへんまったく覚えていないがメタ的に考えれば願いに余裕はないだろう。つまりラディッツを生き返らせてやるためには、私が直接ナメック星についていって立ち回り願いの調整をするしかない。これなんて無理ゲー?

 

 おそらくこれは私が漫画という流れの中に、初めて自分から入る行為。

 まったくあの二十日大根野郎。生き返ったらこの借りはたっぷり返してもらうからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地球のDBを使うつもりなら色々巻き込むけど「▽月○日に地球で死んだ人を生き返らせて」と願ってナッパさんだけ倒せばいいんじゃないかな(浅いマジレス


カミヤマクロさんから主人公のイメージイラストを頂きました!小説書いてると神龍に願わなくてもこんないいことあるんですね・・・!

【挿絵表示】


【挿絵表示】

ちゃんとサイヤ人してるサイヤ人可愛い主人公に作者歓喜。カミヤマクロさん、本当にありがとうございました!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。