「思えば遠くまで来たもんだな、ヤムチャ」
「ああ、天下一武道会が懐かしいぜ」
俺とヤムチャは軽口を叩きながらも、目の前の相手に集中していた。
ピッコロはあの後デンデというナメック星人の子供が回復してくれたおかげで再びフリーザと戦うことになったが、明らかに向こうが変身してから劣勢だ。さっきまであれほどピッコロが優勢だったというのに、フリーザ……恐ろしいやつだぜ。
多少でも助けられるよう加勢しに行きたいが、その前に俺たちにはやらねばならんことがある。ピッコロとフリーザの戦いに横やりを入れてくれやがった、この緑と赤いのを倒さねばな!
「フン、無駄口を利いている場合か? 貴様たちが誰だか知らんが、あのナメック星人の仲間ということは俺たちの敵、というわけだ。生かしてはおかんぞ!」
「それはこっちのセリフだ! いつまで偉そうな口を利いてられるかな?」
赤いのとヤムチャがにらみ合うが、俺の注意は緑の奴に向いていた。こいつはさっき、一瞬とはいえピッコロの動きを止めやがった。しかも見た感じだと餃子と同じ超能力使い。……厄介だぜ。出来れば先に倒してしまいたいな。
「なんだ、お前。生意気そうな目で睨みやがって。このグルド様に敵うとでも思っているのか? ……ほっほう。戦闘力8000とは、なかなかやるじゃないか」
緑のチビが操作している妙な機械は、たしか強さを数値化出来るものだったか。サイヤ人も使っていたな。
俺もヤムチャも最長老様に解放していただいた気を体に馴染ませるために、未だ力を抑えた状態だ。奴の様子を見るに今のままの状態だと奴より下のようだが、見たところ俺たちの力が劣るとは思えない。これは油断しているうちに叩いてしまった方が良いかもしれない。
「いや、まてグルド。こいつらベジータたちの仲間でもあるんだろう? なら、さっきみたいにいきなり戦闘力が上がるかもしれん」
チッ、赤い奴め余計なことを。それにベジータの野郎と仲間扱いされるとは心外にもほどがあるぜ!
「そ、そうだなジース、気をつけよう……ところで、おニューのポージングはどうする?」
「む!? むう……そうだな。いつもスペシャルファイティングポーズはギニュー隊長がお決めになっていたしな……」
「おい、天津飯。今のうちに倒してしまってもいいんじゃないか?」
「待て、ああいうふざけた野郎が意外と強かったりするんだ」
俺だって出来ればさっさと倒したいが、相手は宇宙人。警戒されてしまったようだしどんな奥の手があるか分からん今、慎重になった方がいいだろう。しかし決めるときは一気だ! そのタイミングは逃さん!
「……よければ、私も加えてもらおうか」
「あ、あんたは!」
声をかけてきたのはデンデと一緒に残ってもらっていたネイルというナメック星人だ。ピッコロとそっくりだが、ひどく落ち着いた雰囲気を持っている。その秘められた力も相当なものだろう。
「もう大丈夫なのか?」
「怪我はデンデのおかげで問題ない。早くこの者どもを倒して、同胞の加勢に行ってやりたいのは私も同じだ」
「そうか。心強いぜ」
「お前はさっきの死にぞこないのナメック星人じゃないか! フリーザ様に散々いたぶられた様子だったのにまだ懲りないのか! はっはっは! 雑魚が束になって涙ぐましいなぁ。どれ、戦闘力は…………!?」
「どうしたグルド?」
「じ、10万……だとぉ!?」
「んな!?」
じゅ、10万とは……!先ほど気を抑えた状態とはいえ俺は8000と言われていた。それを考えるとかなりの数値だ。
「あいつらが驚いてるってことはかなり強いってことだよな? じゃあ、心置きなく行かせてもらおうか! こんなところで油を売ってる暇はない!」
「ああ!」
ヤムチャと俺も気を開放する。
「せ、戦闘力が変化した!?」
「やはりか! だ、だが待て! 長髪が5万9000、ハゲが6万1000!? 馬鹿な!」
「せぁッ!!」
先手必勝だ! 俺は緑の奴目がけて攻撃を繰り出した。
「狼牙風風拳!!」
ヤムチャも最初からトップスピードだ。早々に敵を捉え、その狼のごとき猛威を振るう技で圧倒する。
だが、俺が攻撃したチビはいつの間にか消えていた。
「な!?」
「横だ!」
「くっ!」
ネイルの声にとっさに防御すれば、あらぬ方向から気弾が撃ち込まれた。
「今、一瞬で場所を移動したように見えた。気を付けろ、奇妙な術を使うようだ!」
そう言いながらもネイルも攻撃したが、再びチビは姿を消す。しかも今度はヤムチャが相手をしてた赤いのまで消えやがっただと!
「ぷ、ぷはぁ! ち、畜生! こんなの勝てるわけないぜ!」
「た、助かったぞグルド……!」
奴ら、あんな遠いところに!
「馬鹿野郎! タダで助けたんじゃないぞ。これを見ろ!」
「な、これは!」
何やら緑のが懐から何かを取り出した。何かの武器か!?
「行くぞヤムチャ!」
「ああ!」
変なことをされてはかなわん。そう思い、奴らに接近する。
「言うまでも無く分かるな!? 今のままじゃ死ぬだけだ! 今を生き抜けば後でどうにか戻れる!」
「だ、だが!」
「素の戦闘力はお前のが強いんだぞ!? 俺が代わってどうする!!」
「く、くそーーーー!! チェーンジ!!」
「な、なんだあの光は!?」
思わずブレーキをかける。緑のが取り出した何かと赤いのが光ったと思うと、その後には特に変わったところのない2人。
「なんだ、ハッタリか」
「待つんだ。あれは……」
「フッフッフ……お手柄だジースにグルド。待っていろ、あとでチェンジを繰り返して必ず元の体に戻してやるからな」
「ギニュー隊長! あ、あなただけが頼りです! ジースの体では心もとないでしょうが……!」
「カエルのままでは腹の虫も収まらなかったところだ! それに比べれば、存分に暴れられる分頑張らせてもらおう!」
「なんか……赤いのの雰囲気が変わったか?」
「ああ、どことなく大物感が出たような……」
「気を付けろ! あの者……元の体にいずれ戻すと言っていた。奴の手の中にカエルが居る。あれの中にいた、おそらくは相手と自分の体を入れ替える能力を持ったものと入れ替わったのだ!!」
「な、なんだって!?」
ネイルの言葉に驚かされる。耳がいい上に凄い勘だな。何故そんなことが分かるんだ。
「何故わかるかと言いたそうだな。潜在能力を引き出していただいてから、妙に勘が鋭くなったのだ。おそらく戦闘タイプ以外の私の中のナメック星人としての力が引き出されたのだろう」
「そうか、あんたも最長老様に……」
あの方には感謝してもしきれんな。
ともあれ、相手が先ほどより油断ならない相手に変わった事は分かった。気を引き締めてかかるぞ!!
「体を取り替える能力に気を付けろ!」
「ああ!」
「忠告感謝する!!」
さあ、今度こそ仕留めてやる! 覚悟しろ!!
カットしてもよかったのですが、パワーアップネイルさんを加えた強化ヤムチャと強化天津飯相手にジースとグルトが少しでも粘れる気がしなくてギニュー隊長にジースへログインしてもらいました。ちゃんとカエルと入れ替わってるところを見て回収していたグルドは部下の鏡。
ちなみにパワーインフレ激しすぎて強くしすぎなのか弱いのか強化具合の判断基準がもうわけわかめだぜ!