ボクは天さんとヤムチャとデンデを見送った後、遠くで感じる戦いを気で感じることしか出来なくてもやもやとした気持ちを抱えていた。
弟子である空梨に触発されて新しい超能力を覚えて、それがこの星に来てからとても役に立った。それは嬉しい。でも、肝心のこんな時……みんなが戦ってる時に僕だけ戦えないのが悔しかった。わかってる、ボクは戦いに関してはみんなに比べてとっても弱い。でも、それでも悔しい。
「ブルマ、ボク、やっぱり行きたい!」
「ちょ、ちょっと! あんた天津飯に休んでろって言われたじゃない。テレポーテーションって疲れるんでしょ? いざという時が来るかもしれないし、今は体力を温存しといた方がいいわよ!」
ブルマにそう言われて、ホントはそうした方がいいってわかってるから余計に落ち込んだ。けど、ブルマは何か考え始める。
「ねえ、じゃあちょっと付き合ってよ。これでフリーザって奴を倒したらこの星から脱出しないといけないでしょ? その時のために、宇宙船を確保しておくのよ!」
「ええ!? ど、どうやって!?」
「ふっふ~ん。よく考えてみなさいよ。フリーザたちだって、別の星から来たのよ? だから宇宙船を持ってるはずじゃない! それを頂いちゃおうってこと!」
「な、なるほど」
「今の人数だと孫君の乗ってきた宇宙船じゃ手狭かもしれないし、宇宙人の宇宙船にも興味あるしね!」
そう言うと、ブルマはホイポイカプセルからエアカーを取り出した。
「空は見つかったら危険そうだし、これで行くわよ」
「場所は分かるの?」
「多分だけど、一度ドラゴンボールが5個集まってた場所があるの。それがきっとフリーザの宇宙船よ!」
「だったらボクが連れてく。一度空梨と行ったことがあるから」
「はあ!? あ、あんたたち一体何やってんのよ……」
「それは空梨に聞いてよ……」
あの時は本当に生きた心地がしなかった。サイヤ人である空梨にとっては昔の知り合いらしいけど、それでもあのフリーザやその側近と普通に話せてた空梨の神経は凄く太いと思う。
「2人分のテレポーテーションだったらそんなに負担じゃないよ」
「そう? じゃあお願いするわね!」
そうして僕たちはフリーザの宇宙船へ向かった。
「誰も居ないわね……っていうか、派手に壊れてるじゃない! これで飛べるのかしら?」
宇宙船に着くと、それには大きな穴が開いていた。ブルマの言う通りとても飛べそうにない。
「脱出用の小型船らしき物も無し……ってことは、乗ってたやつらきっとみ~んな逃げちゃったのね。自分たちのボスが本気を出して怖くなったのかしら。根性ないわねぇ」
「ねえ、それならどうするの?」
「しょうがないから部品だけもらってきましょ! ふっふっふ、実は最長老様に潜在能力を引き出してもらってから今まで以上に頭が冴えわたっちゃってね! 今なら壊れた宇宙船を修理できる気がするわ!」
「そうなの!? 凄い!」
そうと決まればと、必要な部品を集めて今度はこの星に降り立った場所へと移動した。
でもブルマが修理を始める中、ボクは妙な胸騒ぎを感じていた。何か、とんでもないことが起きてしまうような。
「ブルマ、やっぱりボク一度みんなのことを見てくる!」
「ええ~!? もう、しかたがないわね。不安なんだから早く帰ってきてよ?」
「うん!」
ありがとうブルマ!
そう言って一番感じやすかったのが空梨の気(天さんも見つけやすいけど、空梨のが大きい気で分かりやすい)だったからそれを目がけて移動した。
そうしたらいきなり死にかけた空梨が居て心臓が止まるかと思った。すぐ空梨を連れて天さんのいる場所に移動した。
「よくやった餃子! いいタイミングで来てくれた!」
そこには天さんの他にはヤムチャとデンデ、それとピッコロそっくりなナメック星人が居た。空を見れば、フリーザに対峙しているのは悟空にベジータ、悟飯、クリリン、ピッコロ。みんなぼろぼろだけど、なんだか今までよりずっと強い気を感じる。
「どうして空梨はこんなにボロボロなの!?」
「今までもちこたえられたのはこいつのおかげなんだ。誰か殺されそうになるたび、自分の体を盾に庇ってくれてな……」
話を聞けば、天さんたちはフリーザの部下を倒したまでは良かったけどその後の戦いには割って入れなかったみたい。だからせめてと、傷ついた仲間を空梨がかばった隙に助けてデンデに治してもらうなどサポートに徹していたんだとか。
「無茶しすぎだよ……」
「まったくだ。こんな女の子に助けられて自分は何もできないなんて、自分が恥ずかしいぜ」
「同感だ」
ヤムチャの言葉に天さんが頷く。そっか、空梨頑張ってたんだ……。
「今度は俺たちが頑張る番だな」
「行くか?」
「もちろんだ! あのフリーザって奴も消耗してるはずだ。恐ろしくないと言えば嘘になるが、隙を作る手伝いくらい出来るだろう」
「私も行こう」
「いや、ネイルさんはデンデを守ってやってくれ。回復してくれるこいつはこの戦いの要だ。強いあんたが守っていた方がいい」
「そうか……了解した」
そう言うと、ヤムチャと天さんも戦いに参加するべく空へ舞い上がっていった。
けど、悪い予感は空梨の事だけじゃなかったんだ。本当の悪夢はそれからだった。
皆強くなった。けどその攻撃が逆にフリーザの怒りを買ってしまい、守りのなくなった皆は次々とやられてしまったんだ。かろうじて戦えているのは悟空とベジータ。けど、それももう危うい。デンデに回復してもらおうにも、攻撃が激しすぎてとても近づけるようなものじゃなかったんだ。
途中でみんなの協力のもと、悟空が元気玉を作ってフリーザにぶつけた。けどそれが決定的だった。倒したと思ったフリーザが生きていたんだ!!
「さ、流石のオレも今のは死ぬかと思った……このフリーザ様が死にかけたんだぞ……」
「逃げろ、おめえたち! 皆を連れてこの星から離れろ!!」
「な、なに言ってんだ……! 空梨さんだけじゃなく、お前まで盾になって俺たちを逃がそうっていうのかよ。そんなこと……」
「邪魔だと言っているんだ! この戦いはサイヤ人だけで決着をつける! 雑魚は消えろ!」
「ベジータの言う通りだ。みんな揃って死にたくねぇだろ! 頼むから逃げてくれ!」
「貴様らを許すと思うか? 一匹残らず生かしては帰さんぞ。ダメージは食らっても、貴様らごとき片付けるのはわけはないぞ!! 手始めに、さっき手柄をあげたオレの部下を殺したそこの雑魚どもからだ!」
そう言ったフリーザは、手のひらを倒れていた天さんとヤムチャに向けた。まさか、そんな!!
「天さーああああああああああん!!!!」
「天津飯! ヤムチャ! や、やめろフリーザ!!」
フリーザが笑うと、天さんとヤムチャは念力で天高く持ち上げられてから爆発した。
「そんな、そんな! せっかく生き返ったのに! も、もう2度は生き返れないのに!!」
涙が止まらない。もう、駄目だ。みんな死んじゃう。
「ゆ……ゆ……許さんぞ。よ、よくも……よくも……!!!!」
その時、悟空に変化が現れた。
髪がざわついて立ち上がり、その色が金色へと染まる。
「なあ!? か、カカロットが……! 変化しただと!?」
ベジータの言葉にみんなの視線が悟空に集まった。
「頼む、オレの理性が残っているうちにみんな逃げてくれ。こいつは俺が倒す!!」
「な、なにを……」
「オレの事はかまうな! 後から必ずオレも地球にもどる!」
悟空はキッとフリーザを見上げた。
「オレは怒ったぞーーーーー!!!!! フリーザーーーーーーーッ!!!!!」