セルとの激闘から6年経ち、僕は16歳になっていた。今日からお母さんの勧めで、サタンシティの高校へ通うことになっている。
6年間平和だったけど、いろいろあった。みんなして色んな所に行ったりお母さんたちが冗談半分で企画した合同結婚式が実現したり。お母さんたち綺麗だったな。そういえば3つ投げられたブーケはランチさん、プーアルさん、ウーロンさんの手に渡ったけどあの後どうなったのかな?
色々あったその中でも、一番大きかったのは弟たちが増えたことだろう。
初めは従兄弟の空龍が弟分だったけど、この僕に実の弟悟天が産まれたんだ! 僕もお父さんにそっくりな方だけど、悟天はもっと似ている。瓜二つと言ってもいい。
空龍、悟天と遊ぶために大きくなったこっちのトランクスくんもよく遊びに来るようになったから、トランクスくんも今では弟みたいなものだ。3人ともそれぞれがそれぞれにやんちゃだから色々手を焼かされるけど、毎日にぎやかで楽しい。
あと、空梨おばさんの所に双子が生まれた時は驚いたなぁ。
双子のエシャロットと龍成は最初こそ空梨おばさんやラディッツおじさんにべったりで年長組の輪には入らなかったけど、段々と慣れてきたのか気づけば一緒に遊んでいた。この子たちも両親にそっくりで、小さいおばさんと小さいおじさんが居るみたいで見ていると面白い。
朝はみんなで畑仕事をして、ご飯を食べる。午前中僕は勉強して、弟たちは元気に外で遊んでいることが多い。
お昼はたまにお母さんにお弁当を作ってもらって、湖や滝まで行って食べたりもする。みんな水遊びが大好きだ。虫取りしたり動物達と遊ぶのも楽しいし、お土産に山菜や木の実、キノコを持って帰るとお母さんが喜んでくれる。
午後はお父さんが修業に行かず家に居れば「よーし、戦いごっこすっぞ!」とはりきってチビたちに戦い方を教えたりもする。勉強の息抜きに僕も時々参加するけど「悟飯、おめぇもっと修業しねぇとなまっちまうぞ?」と言われてしまうので、ちょっとだけばつが悪い。これ、今は神様の神殿にデンデ、ネイルさん、ポポさんと一緒に住んでいるピッコロさんにも遊びに行った時よく言われるんだよなぁ。でも僕は戦う必要が無いならそれが一番だと思うし、そうなると強くなるための理由付けがちょっと足りない。勉強楽しいし……う、うん。でも、情けなく思われるのは嫌だからもうちょっと頑張ろうかな?
午後僕たちが何かしてる間、お母さんと空梨おばさんはおしゃべりしながら農作物の加工をしたり、夕飯の用意をしたり何かしら2人でやっている。
お互い新しく子供が産まれてから協力して子育てしてきたからか、昔よりもっと仲良くなった気がする。本当の姉妹みたいだ。
空梨おばさんは昔は占いのお仕事などで忙しかったみたいだけど、ここ数年は占いババさんのところに行く以外は昼間ほぼうちに居る。実家だし、居心地がいいんだそうだ。たまにお父さんの修業につきあわされるのだけは嫌みたいだけど、何だかんだ言ってつきあってるあたりおばさんはお父さんに弱いと思う。
おばさんは楽しいことが大好きなので、僕も昔からよく遊んでもらってるしたまに面白い事を企画してくれたり教えてくれるから一緒に居て楽しい。その分すごく子供っぽくて困らせられることも多いけど。この間「北極の氷でかき氷作ろうぜ!」なんて言って連れてかれた時にはビックリした。
そういえばその時はちょっと目を離したすきに、チビたちがはしゃいでエネルギー波で誰が一番大きな氷山を溶かせるか競い合っててひやひやしたなぁ。溶けた氷の中からまさか生きた恐竜が出てくるとは思わなかったけど、そんなことよりあれで海面上昇が進んでしまったんじゃと考える方が怖い。あと、「玉乗りとかし込むんだ!」と言い張って連れ帰ろうとしたチビたちをなだめるのには苦労した。おばさん……信頼してくれるのは嬉しいけど、チビたちの面倒を僕に丸投げして巨大かき氷作るのに夢中とか今度はやめてください……。
でも、そうやって困らせられることもあれば気遣ってくれることも多いのがおばさんである。自惚れでなく、基本的におばさんは昔から僕には甘い。こう考えるとおばさんって僕たち一家全員に弱いというか甘いんだなって思う。
この間勉強の息抜きにってくれた漫画とか面白かったな。狐を殺してしまって、その狐に呪われた主人公が呪いを解くために生き物の命を助けていくという話だ。その主人公は悪者の悪い心だけを取り出す力をもっていて、僕にもこんな力があったらなとちょっぴり羨ましかった。
夜は仕事のあるラディッツおじさんを除いて、空梨おばさん一家も交えて夕食を食べることが多い。その日あったことや、僕の場合は今日勉強したことなど話題に出してワイワイ話すにぎやかな食卓だ。
毎日が平和で、凄く幸せだ。
もう悪い奴があらわれなければいいんだけどなぁ……。
そんなことを思い出しながら筋斗雲に乗っていると、気づけば町はずれまで来ていた。降りてから急いで学校に向かおうとしたんだけど、その途中でなんと銀行強盗に遭遇。これで何か事件に遭遇するのは高校の手続きに来た2回と合わせて3回目か……せっかく平和になったのに、しょうがないな、まったく。
でも事件を解決したらしたで、行った先の高校でスーパーサイヤ人に変身した僕が「金色の戦士」として話題になっていて焦った。ふ、普通に生活するって難しいんだな……。
ブルマさんに相談してその問題は解決したけど、もっと細かいことに気を付けないといけないなって1日過ごして痛感した。ミスターサタンの娘だっていうビーデルさんには怪しまれて後をつけられるし、町って疲れる。
でも結局なんだかんだで見過ごせなくて、正義の味方グレートサイヤマンとなって僕は悪い奴をこらしめた。
ちょっと不謹慎だけど、正義の味方って格好いいし「正体がばれちゃいけない!」っていうスリルもあって楽しかったりも……い、いや! 悪い奴がいるのは良い事なんかじゃないけど! ただ、変身するとちょっとその気になってしまうんだよね。だってブルマさんが作ってくれた変身スーツが格好いいから、つい。それにちょっと前までラディッツおじさんが賞金稼ぎのためとはいえ同じように悪い奴をこらしめて捕まえたりしてたのも見てたから、どこかでそういうヒーロー像に憧れはあったのかもしれない。うん、悪い事じゃないし、町が平和になるのはいいことだよね!
でも、僕は正体不明のヒーローを貫くにはちょっとまぬけすぎたかもしれない。あっさりビーデルさんに正体を見破られてしまったのだ。
そして正体をばらさないことを条件に、一か月後の天下一武道会へ出場するように条件を突き付けられた。目立ちたくない僕にとって、正反対の要求である。でもばらされたらもっと困るし、僕はその条件を受け入れた。
で、さらなる急展開はその後からだ。
そのことをみんなに話したら「お! 天下一武道会か~! なっつかしいなぁ。よし! オラも参加すっぞ!」とお父さん。「面白い。カカロットと貴様が出るなら俺も出る。あの時は大きな力の差があったが今はどうかな? 今こそサイヤ人の王の力を見せてやるぜ!」とベジータさん。「賞金が出るのか? なら出場しろクリリン! 私も出る!」「そ、そうだな。天下一武道会か……懐かしいし、出てみるか」と18号さんとクリリンさん。「そうか、それは面白そうだな。よし、俺も出てみるか。ククッ、この天下のピッコロ大魔王様がいつまでも下位にくすぶってなどいないというところを見せてやろう」とピッコロさん。「そんな大会があるのか? しかも奴ら全員出るのか……よし、今まで鍛えた実力を試すチャンスだ。俺も出る」とラディッツおじさん。
面白がったブルマさんからヤムチャさんに、空梨おばさんから天津飯さんと餃子さんに連絡がいって、気づけば昔の仲間がそろい踏みという状態に!
こ、これは気合を入れないとまずそうだぞ……! 僕だって出来れば優勝したいんだ!
ちなみに空梨おばさんは参加しないみたいだ。 真顔で「いや、もうお前らについてけねーから」と言われた。同じようなことは神殿で誘ったネイルさんにも言われたな、そういえば。まあ彼は神様であるデンデの護衛を務めている人だから、世俗の大会に出るのは控えたって面もあるのかな。
う~ん、でもおばさんってよくお父さんの修業に付き合わされてるし強いと思うんだけどな。いや、この強豪がそろう中でお母さんが期待する賞金のことを考えるとライバルが減るのは嬉しいんだけど。お父さんが「えー! 姉ちゃん出ねぇのか!?」と残念がっていたから実力がちょっと気になる。おばさんがまともに闘ってるところを見たことが無いから興味あるんだよね。今度お父さんと修業してるところ見学しにいこうかな?
あ、それとチビたち。悟天とトランクスくんは天下一武道会の話を聞くと自分も出る! と大張り切りだった。この2人、ちゃんと戦うところは見たことないけどお父さんや、トランクスくんは家だとベジータさんにも修業をつけてもらってるみたいだから油断できない。でも張り切ったのはこの2人だけで、空龍は誘われてたけど「え~、僕はいいよ。お母さんたちと見てるから2人とも頑張って」と面倒くさそうに断っていた。
空龍は才能はずば抜けてるんだけど、戦いは嫌いみたいなんだよね。それよりもモノづくりが好きみたいで、よく「大人になったらカプセルコーポレーションで働くんだ!」と楽しそうに話している。学者になりたい僕と通じるものがある気がして、ひそかに応援中だ。今度勉強をみてあげよう。
双子に関してはエシャロットの方は「エシャも出る!」と大興奮だったけど、龍成が止めてた。
空梨おばさんに聞いたところエシャロットの方がサイヤ人らしい好戦的な性格で戦闘の才能もあるけど、冷静に相手との実力や距離を測る感受性は龍成の方が優れているという事。龍成は優しい子だから、妹が僕たちと闘って怪我するのが嫌だったんだろう。あの子はちゃんと自分たちと僕たちの実力差を分かっている。けして弱いわけじゃないんだけどね。多分、あの子たちが悟天やトランクスレベルと闘うのはまだ早い。悟天とトランクスもそのあたりちゃんとわかってるのか、対決ごっこの時はちゃんと手加減してる。今のところエシャロットと龍成は将来に期待かな。
そんなわけで色々あったけど、今度の天下一武道会はお祭り騒ぎになりそうだ!
そんな中、ビーデルさんに気のコントロールと武空術を教えることになった。
彼女は正直お父さんであるミスターサタンさんより強いし才能もあるようで、すぐにコツをつかんできた。修業に充てる時間が削られたのはキツイけど、ちょっと強気できつめの性格なもののビーデルさんとてもひたむきで真っすぐに修業に取り組む人だから好感が持てた。どんどん僕が教えたことを吸収する様子を見て、教える喜びっていうのがちょっと分かった気がする。強豪ぞろいの中で彼女がどこまで戦えるか分からないけど、頑張ってほしい。
そういえばビーデルさん、最初の頃は僕の家に来るたびに驚いてて忙しかったな。
お父さんが前々回天下一武道会優勝者だってこととか、サイバイマン達のこととか。サイバイマンたちは僕たちの大切な家族だけど、普通の反応ってあんなひっくりかえるようなものなんだな……旅先でのナッパくんが今さらながらちょっと心配になった。いじめられてないといいけど。
でもビーデルさんはうちに通ったのはたった10日だったけど、最後のあたりでは僕たち家族と打ち解けていた。空梨おばさんは「あれは悟ったとか諦めたとかいうんだよ」と言っていたけど……仲良くなれてよかったと思う。単純に仲良くなれるのは嬉しいし、僕は世間知らずなところが多いみたいだからビーデルさんさえ良ければこれから色々教えてもらおう! うん、それがいい。
でもみんな、恥かしいからビーデルさんに初めて会うたびにそれぞれ僕の彼女かって聞くのはやめてよ!
回想という割に半分は現在のことな件。