とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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魔人ブウの復活!

 地球に来る前に休憩で寄ったナメック星とかいう星だけど、今考えても大収穫だったね。まずはセルだけどあいつは頭が良くてそれなりに強そうだし、しかも魔術も使えて品もあるというなかなか使い勝手の良い下僕だ。あと大本命、兄弟の体に封印したヒルデガーンなんかは確保しといて本当によかったと思うよ! 解放した今、その強さを見て改めて思うね。

 ま、まあちょっと強すぎかな~って気もするけど、僕とブウの玉はバリアで守ってるし、いざとなればもう一度封印すればいいからね。封印の器になる人間とセットで手に入れられたのはラッキーだった。

 

「はああ!」

 

 後から来た金髪の奴がエネルギー波を打ち込むけど、ヒルデガーンは煙のように消えてそれを回避する。いつの間にか隣に戻って来ていたダーブラがゴクリと息をのんで感想を言った。

 

「凄まじいですな……あのヒルデガーンという怪物は」

「おや、お前の目から見てもそう思うかい?」

「ええ。悔しいですが、私ではあれに勝てないでしょう。パワーはもちろんあの煙のように消える能力……巨体を弱点としないところが厄介です」

 

 ふんふん、そうだよね~。やっぱり僕は最高の拾い物をしたらしい。さてと。じゃあ後はブウにエネルギーが溜まるのを待ちながら、あいつらがあくせく戦ってるのを高みの見物といこうかな!

 

 界王神のやつはさっきダーブラが戦ってる時僕に攻撃しようとしてきたけど、スポポビッチをやった時みたいにミノシアを爆発させて殺しちゃうよ~と脅したら何も出来なくなったみたいだ。後で殺すまで気にしなくていいかな。ふっふっふ、今からどんな風に殺してやろうか考えるのも楽しいなぁ!

 それにしても甘いよね~。生き残った界王神があいつでこれまたラッキーだったよ。なんたって、あいつが一番未熟だったみたいだからね。

 パパが残した記録を見た限り、他の界王神なら宇宙のためにって子供一人の命くらい切り捨てられただろうにさ! 甘さと優しさをはき違えてる中途半端な奴って見てて滑稽だよね。ああ可笑しいったらないよまったく! あはははは!

 

 

「さあ、ヒルデガーン! 封じられていて鬱憤が溜まってるだろ? ガンガンいっちゃえ~!」

 

 こうして安全圏から観戦するのは最高にいい気分だ!

 けど、そんな僕の気分に水を差すように金髪のロン毛が怒鳴ってきた。さっきまでダーブラを追い詰めていた2人の片割れだ。

 

「そう好きにさせると思うなゲスがぁッ!! 悟飯、俺が奴の攻撃を誘う。お前は空龍とその瞬間を狙って攻撃しろ!」

「え、でもそれじゃあラディッツおじさんが……!」

「奴は攻撃の瞬間だけ実体化するようだ。誰かが囮にならねばならんだろう! さっき攻撃をまともに受けてしまってな……悔しいが、今この中じゃ俺が一番戦闘力で劣る。お前と空龍でやるんだ!」

「……ッ、はい!」

「で、でもそうしたらお父さんはどうなるの!? もうボロボロなのにこれ以上攻撃を正面から受けたら……」

 

 へぇ、あいつら親戚と親子か。なかなか感動的な三文芝居じゃない? そういえばあのムカツクチビを庇ってロン毛がさっきヒルデガーンの攻撃を一番初めに受けてたねぇ。虫の息なのによくやるよ。

 

「気にするな、父さんはそれくらいじゃ死なんさ。なんたってベジータおじさんの攻撃を毎日のように受けて生きてるんだぞ? 強さじゃ敵わんかもしれんが、しぶとさ、頑丈さなら任せておけ」

「お父さん……」

「おじさん、すみません……! やるぞ、空龍!」

「はい!」

 

「ダーブラ」

「はい」

 

 奴らの会話を聞いて隣のダーブラに目配せすると、心得たようにダーブラが頷いた。ふふふっ、セルも有能だけど僕の考えてることに関して察しがいいのはやっぱりダーブラかな。僕がやりたいことがわかったみたいだね。

 

 やつらはヒルデガーンを中心に三方向に分かれて、ロン毛はヒルデガーンの正面に回る。標的を見つけたヒルデガーンがその長く強靭な尾でロン毛を狙うけど、それは回避するロン毛。チッ、すばしっこいなぁ。

 そして続いて振り払うように上から下に振り下ろされたヒルデガーンの腕だけど、ロン毛はそれを受け止め……受け止めた!? な、なんて奴だい。絶対ハエみたいに地面に叩き付けられると思ってたのに!

 

 

「い、今だ!!」

「はい! かーめーはーめー…………」

「僕も! かーめーかーめー…………」

 

「「波!!」」

 

 

 そして残り2人が青白いエネルギー波を放った。それはヒルデガーンに直撃し、魔人はその巨体を広い荒野に沈める。まあ、あれくらいじゃ死なないだろうけど……ちょろちょろと動いて目障りだね。ムカつくなぁ。

 

 

 

 

 でも、まあいっか。ひひひっ、だってあいつらが油断した隙に……。

 

 

 

 

 

「がっ、は!」

「クククッ、私の存在を忘れてもらっては困るな。先ほどのお返しだ」

 

「お、お父さぁぁあああああん!!」

「ラディッツおじさん!? く、ダーブラ貴様ぁ!!」

 

 

 ダーブラの腕がロン毛の胸を貫いていた。

 

 

「はっはあ! ひゃーはははッ! いい気味だよザマぁ見ろー! よくやったねダーブラ!」

「魔閃光!」

「ダブルサンデー!!」

「わあ!?」

 

 気分よく高笑いしてたら大きい金髪が僕に、チビの金髪がダーブラに攻撃してきた。僕はバリアで防いだしダーブラも避けていたけど、どこまでも気に入らないなぁ……! せっかくいい気分だったのに!

 

「悟飯お兄ちゃん、仙豆、仙豆は無いの!? お、お父さんを早く治さないと!」

「ッ、く、空龍……仙豆は失った命はもう戻せないんだ。おじさんは、もう……」

「そんな、そんな嘘だ……! お父さん、お父さん目を開けてよ! 大丈夫って、死なないって言ったじゃないか! お父さんが嘘ついたことなんてなかったよね!? 嫌だ、嫌だよぉ……! うわああああああーーーー!!」

 

 あいつらはロン毛を回収したみたいだけど、ずいぶん精神的にダメージを受けたみたいだね。ま、心臓をつぶさせたから即死だろうなぁ! これで邪魔者が一匹減ったよ! チビも親を殺されて戦意喪失したみたいだし一石二鳥ってね!

 お、しかもそうこうしてるうちにヒルデガーンが起き上がってる。いいぞ! そのまま2匹とも殺してしまえ!

 

「バビディ!」

「え? ぎゃ!」

「バビディ様!!」

 

 けどヒルデガーンの殺戮ショーに夢中だった僕は、背後に迫っていた気配に気づかなかった。こ、この……! タピオンめ、気絶したと思ったら僕たちの隙を狙ってたな!? 既の所でバリアを張ったけど、背中に傷がついたじゃないか!

 すぐにダーブラが駆けつけてタピオンを蹴り飛ばしたけど、許さない……許さないよ! 色々と大目に見てればずいぶんとつけあがったもんだね!

 

「ダーブラ、こいつら石にしちゃって! 器として使うなら生身だろうが石だろうが関係ないからね!」

「かしこまりました」

「兄さん、逃げッ」

「ミノシア!!」

 

 先に石になったのは弟の方だった。兄を庇ったみたいだけど、結局一緒なんだよね。ああ、情がある奴らって総じて馬鹿ばっかだよ。楽しいったらない! あの絶望の表情がたまんないね!

 そして兄の方も石になったころ……タイミングよくブウの玉に変化が生じた。

 

「! 見なよダーブラ、ブウ復活のエネルギーが溜まったよ!」

「ほう、素晴らしい」

 

 

 金髪はヒルデガーンに忙しいみたいだし、これでゆっくり復活を目にすることが……。

 

「バビディ!」

「な、界王神!?」

 

 どいつもこいつも影が薄いな! 他に気を取られてたのもあるけど、近づいてるのがまるでわからなかったよ!

 界王神のやつは僕とダーブラでなく、ブウの玉を狙って付き人と一緒に攻撃してきた。ふんっ、見ているだけの観客に成り下がった臆病者が頑張ったじゃない? 一か八かでブウの玉を破壊しにかかったか。でもそんなへぼ攻撃じゃどうにもならないよ~だ!

 

「クッ、やはり駄目か……! 地球の方々があんなに頑張ってくださっているのに私は……があっ!?」

「界王神様! ぐあ!?」

 

 間抜けにもこちらの間合いに飛び込んできた2人はすぐにダーブラに地に沈められた。弱いね~! こんなのが界王神なんて笑っちゃうよ! 出しゃばって来たくせに結局何にも出来てないじゃないのさ。

 

「ダーブラ、こいつらは殺しちゃ駄目だよ。後で僕が直々に痛めつけてやるんだぁ」

「ええ、存分にお楽しみください」

「ひゃははっ、今日はいい日だね! さ~て、その前にブウの復活だよ! やっと見られるんだ! どんな奴だろうねぇ、パパが作った凄い魔人は!!」

 

 

 ブウの玉から勢いよく煙が噴き出している。そして玉が割れ…………あ、あれ!? 中身が居ない!?

 でもそれは杞憂だった。玉から噴き出た煙がやがて上空で収束し、そして一つの人影を形作っていく!

 

 

 

 

 

 

「ブゥーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 やった! ついに魔人ブウの復活だー!…………っと言いたいところだけど、本当にこいつ強いのかな……? な、なんかヒルデガーンを見た後だから余計にイメージが……。

 ピンクのデブ。端的に表すなら魔人ブウの容貌はそんな感じだ。

 

 ちらっと倒れている界王神の奴を見る。

 

「う、うう……! 駄目だった……あの恐ろしい魔人が復活してしまった……! こ、殺される。みんな……」

 

 よーし! 魔人ブウを見たことがあるあいつが怖がってるってことはとにかく強いんだよね! 見た目なんて強ければ些細な問題さ!

 ブウは最初なめた態度だったけど、封印の呪文でまた封印しちゃうぞと脅せば素直にへこへこ頭を下げてきた。うんうん、それでいいのさ!

 

「さあ魔人ブウよ、今日から僕がお前の主人だ! 早速実力を見たいところだね……ヒルデガーンをいったん戻して、あいつらを倒してもらおうかな!」

 

 こうして絶好調な気分のまま、それを実行しようした時だった。

 

 

 

「タピオン……ミノシア……?」

「おや、セル戻ったのかい。上の奴は殺せたの?」

 

 声が聞こえたから上を見れば、少し薄汚れたセルが浮いてこちらを見ていた。

 邪魔者がまた一人減ったのかと喜んだけど、セルを追うように上のステージからあいつらの仲間のこれまた金髪の目つき悪いのが追って来て思わず舌打ちした。うん? でもなんか今までの奴と雰囲気が違うなぁ。無駄にロン毛なのはさっき死んだ奴と一緒だけど目つきがもっと悪い。眉毛もないし。

 

「なんだ、ちゃんと倒してないじゃない! まあいっか……あいつにもブウの力試しの相手になってもらおっかな!」

 

 けどセルは答えず黙ったままだ。おかしいな……いつもなら「申し訳ございません。ですが、流石バビディ様。その寛大な御心に感謝いたします」くらい言ってくるのに。

 何だぁ? 何か様子が……。

 

 

 

 

 

「孫悟空、決着はまた後だ。お前と戦う前にやるべきことが出来た」

 

 

 そう口にしたセルの瞳には僕に従う色は無く、ただただ冷たい炎のような熱が揺らめいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回の界王神&キビトのATB(あいつらたいした棒立ちだぜ)に盛大なツッコミが入ったのでバビディに頑張ってフォローしてもらいました。か、界王神様達だって何もしなかったわけじゃないんだぜ……!

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