とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ナメック星に迫る危機!放て魂の気功砲!

 俺たちの宇宙航行は途中まで順調だった。他の惑星で勇者と呼ばれた男、しかも大昔の人間であるタピオンに話を聞きながらの旅路はなかなか楽しいものだったしな。……まあ、セルと友人になったいきさつには驚いたが。まさかあのセルが人助けをするとはな……偶然や成り行きといった可能性もあるが、どちらにせよ驚きだ。

 地球に残してきた餃子たちが気がかりではあったが、あまり気を張りすぎて閉鎖空間でストレスをためても仕方がないと俺たちはたくさんの話をした。まあこれを言ったのはヤムチャなのだが……。ヤムチャは自分でも堅いと思う俺や俺と似た思考のネイル、真面目なタピオン、気さくだが気遣い屋でもあるクリリンと違ってこのメンバー内では適度なムードメーカーだった。普段別々に生活しているとこうして複数人で集まれる機会も少ないからな。素直に楽しい時間だったと思う。

 

 

 しかし順調だったのはナメック星到着前までだ。

 

 

 ナメック星にあと少しで到着するという時に、俺たちの宇宙船の目の前で星同士の衝突事故というとんでもないことが起きた。

 ひとつはまるでタコのような奇妙な形の星、もう片方は宇宙に欠片を散らしながら動いていたボロボロの丸い星だ。どうやらタコのような星はナメック星に近づいていたようなんだが、そこにボロの星が横から衝突したんだ。それによりタコの星は軌道を変えられどこかに飛んで行ったんだが、ボロの星はぶつかった衝撃でかなりダメージを受けたようだった。

 

 そして俺たちはその星から巨大な宇宙船が一隻、ナメック星に飛んでいくのを見た。おそらくあの星に住んでいた住人が脱出したのだろう。

 

 あまりにも大規模な事態に「ちょっと事情を話して、ナメック星人達にあの人たちを受け入れてもらうように口添えした方がいいですかね?」と提案したクリリンに誰も反対はしなかった。星同士の衝突事故など、あまりにも不憫だったからな。

 

 しかし宇宙船に乗っていた連中はろくなもんじゃなかった。

 

 なんとナメック星人達を脅し、妙な機械でナメック星を厚い雲で覆ったかと思うと「この星をスラッグ様の新・惑星クルーザーに改造する!」などと言いだしやがった。

 当然俺たちはナメック星人達を助けるために応戦したさ。

 

 敵の親玉はなんとナメック星人だった。新最長老のムーリ殿が「まさかスラッグか!?」と驚いていたが……奴は心優しいナメック星人と違って、かつてのピッコロ大魔王のように悪の心に満ちていた。あの野郎、ここが自分の故郷だと気づいても躊躇せず侵略しようとしやがった……!

 奴は強かったが、なんとか俺とクリリンで力を合わせて倒すことが出来た。しかしかなり老齢だったろうにあの強さ……万が一ドラゴンボールでも使われて、ピッコロ大魔王のように若返っていたらと思うとぞっとするぜ。

 他の奴らはヤムチャ、タピオン(素晴らしい剣技だった)、ネイルで対応していたが、あいつら太陽の光に弱かったらしい。妙な機械を破壊して雲が晴れると、ボスが倒されたのもあって尻尾を巻いて逃げていきやがった。

 

 これでようやくドラゴンボールについてナメック星人達と話せる。

 

 そう思ったんだが……次から次へと忙しない。今度はタコの星が戻って来てナメック星にくっつきやがった!

 しかもその星から出てきた敵は、スラッグなんて比じゃないほどのヤバい奴だった。初めは良かったんだ……機械の兵士たちだけなら、頑丈ではあったが中枢を破壊すれば簡単に倒せたからな。だがその後に出てきた「メタルクウラ」と名乗るフリーザそっくりの奴は俺たちではとても敵わない相手だった。それも一体じゃない、ぎらぎら目に痛い輝きを放つメタルクウラは数えるのも嫌になるほどの数で俺たちの前に立ちふさがった。

 

 成すすべなくやられた俺たちは、気づけばナメック星人達と一緒に宇宙船内に運ばれていた。

 

 ふざけた話し方をする機械によれば、なんでも俺たちはすりつぶされてエネルギーを搾り取られるらしい。「じょ、冗談じゃないぜ!」「嘘だろ!? ち、地球じゃ女房と娘が待ってるってのに、こんな死に方あんまりだ!」とヤムチャとクリリンが悲痛な叫びをあげるが、俺だって嫌だ。しかし冷静なネイルとタピオンがメタルクウラが周囲に見当たらないことを確認すると、すぐに見張りの機械を片付けて「何か助かる方法があるはずだ! とりあえず今は逃げて態勢を立て直そう」と提案してくれた。

 ネイルは言わずと知れたナメック星人の中でもきっての戦闘タイプであるし、かつては最長老の守り人を務めていた者。タピオンもしばらくナメック星で過ごしていたらしく、ナメック星人達の心象も良い。そのうえ決断力もあるから、この2人は先導役にもってこいだった。俺たちは仲間と動くことはあっても、こういう時大人数を指揮するのには慣れていないからな……正直頼もしかったぜ。

 しかし相手も唯で逃がしてくれるはずがない。逃げているつもりが、いつの間にか奇妙な部屋に追い詰められてしまった。

 

『フンッ、どうやら妙な羽虫が数匹まぎれているようだな。目障りだ。ひと思いにここでまとめて殺してやろう』

 

 そう言ったのは、上下をコードのようなもので固定され機械部分がむき出しになっているメタルクウラの頭部だった。他の個体とは明らかに違う様相にこいつが親玉かと検討を付ける。そしてその周りをズラリとメタルクウラが囲んだ。

 クッ、ここまでか……! だが、このままタダでは死なん!

 

「おい、今から一か八か新気功砲で壁に穴をあける! もし外に通じたらそこから逃げるんだ!」

「ッ! 天津飯、まさかお前……!」

「穴をあけた後は俺が足止めをする! フッ、何処まで出来るか分からんがな……」

「ならば俺も残る。仮にも勇者と呼ばれた者が、一人を見捨てて逃げるなんて無様な真似は出来んさ」

「お、俺だって! 天さんだけ残して逃げられっかよ!」

「に、逃げられるかもわからんしな……。だったら全員で挑んで、少しでも抗ってやろうぜ!」

「馬鹿者! 俺たち全員死んだら希望が潰えるだけだ。逃げて、ドラゴンボールを集めるんだ!」

 

 話している間にもメタルクウラがゆっくり迫ってくる。話している暇はない!

 

 

 

「新気巧砲!!」

 

 

 

 俺が放った気功砲の進化形、新気功砲は俺の期待に応えてくれたようだ。壁に数メートルを貫く穴が開き、外の景色が見える。

 

「行け!」

「でも!」

「くどい! …………だが、ひとつ頼めるか。もし無事に地球に帰れたら、ランチに愛していたと……そう伝えてくれ」

 

 餃子なら伝えずとも俺の気持ちを汲んでくれるだろう。だがずっと俺を一途に想い続けてくれていたランチには、結局ひとことも想いを伝えられなかった。死を目前にして未練がましいな……我ながら女々しくて笑えてくるぜ。

 だが前に進み出た俺の隣でカチャっと金属音がした。見れは剣を構えるタピオンが鋭い眼光でメタルクウラを睨みつけている。

 

「断る。そんなもの自分で伝えろ!」

「タピオン……」

「この中では俺が一番弱いから頼りないかもしれんが、俺もこれで頑固なんだ。共に戦わせてもらうぞ!」

「ッ、馬鹿野郎!」

 

 言いながらも、俺たちは前に踏み込んだ。こうなればやれるとこまでやるまで! 俺に付き合った事、あの世で後悔しても遅いからな!

 

 

「「はああああああああ!!!!」」

 

 

『馬鹿め』

 

 突っ込む俺たちの前にメタルクウラの一体が瞬時に現れる。な、速い! 

 

 とっさに新気功法の構えを取るが間に合わん。

 格好つけておきながらこの様とは情けない……! だが、せめて気功砲のエネルギーを弾けさせて自爆くらいはしてやるぞ! 俺の魂すべてを賭けてやる!!

 

 

 

 そう思った時だった。

 

 

 

 

「やれやれ、タピオン。君は少し目を離すとすぐ死にかけるな」

 

 

 

 

 ザンっとメタルクウラの体が数体まとめて真っ二つになった。そして俺たちの前に立つ、緑色の人影。

 タピオンが信じられないというように、しかし喜色を滲ませてその者の名を叫んだ。

 

 

 

「セル!」

 

 

 そう、そこに居たのは紛れもなくあのセルだったのだ! 自爆して死んだと聞いていたのに何故このナメック星に!?

 

 

 

「この相手とは私も多少因縁があるのでね。ここは譲ってもらおうか」

『貴様はセル……!』

「やあ、久しぶりだなクウラ。しばらく見ないうちに随分いい趣味になったじゃないか」

『ククク……あの屈辱、忘れはせんぞ! ……いずれ貴様を探し出して始末する予定だったのだ。丁度いい。ここで今すぐ殺してやろう!』

 

 クウラが叫ぶなり、真っ二つになったはずのメタルクウラが体から無数の触手を出して体を繋げ復活する。クソッ、あんなことまで出来るのか! だがセルは余裕の表情を崩さず「チッチッチッ」と言いながら人差し指を立てて左右にふる。

 

「ナンセンスだな。貴様ごときいくら束になってかかってこようと、今の私には勝てんよ。かつての私にすら手も足も出なかったのだからな」

『黙れ! その余裕がいつまで続くかな?』

「無論、最後まで」

 

 

 それからはあっという間だった。

 

 

 

 宣言通り最後まで余裕を崩すことなくセルはメタルクウラを叩き伏せ、最終的に頭部のみだったクウラが機械の繊維で体を作り出し襲ってきたがそれもなんなくねじ伏せた。そしてセルはそのクウラの頭部から何やら小さな機械のチップのようなものを引き出すと、そのまま破壊。すると周囲全ての機械が自壊を始めたのだ。

 俺たちはナメック星人達を連れてなんとか気功砲であけた穴から脱出すると、ナメック星から離れ壊れながら宙に去っていく機械の星を見送った。

 

 

 

 

「なあ……今回、本当に助かったな」

「ああ……そうだな」

「けどさ……頼むから、誰かあれに突っ込んでくれないか?」

「……………」

「おい、頼むよ。目をそらすなよ。なあ、クリリン。あれのこと聞いてくれよ……」

「い、嫌ですよ……。そんなに気になるんだったらヤムチャさん聞けばいいじゃないですか」

「え、ええ~……俺にはちょっと無理かなぁって……」

 

 

 セルに助けられ、俺たちは命拾いした。だがセルがここに居る事、セルがクウラを圧倒的な力で倒したこと。その全ての事実をもってしても敵わない、奴が現れてから俺たちの視線と意識をいやがおうにも引き付けるものがあった。

 

 ヤムチャはしばらくうんうん唸っていたが、とうとう我慢できなくなったのかやけくそのように叫んだ。

 

 

 

 

 

「何で昆虫みたいな羽の上に更に天使みたいな羽が生えてんだよ!!!!!!」

 

 

 

 

 

「セル、その翼は?」

「これか? クククッ、どうやら私の品格が表に現れてしまったようでね。実は精霊になったのだが、その際に生えてきたのだよ」

 

 

 

 

 言いたいことは色々あるが、とりあえず普通に聞いたタピオンは凄い奴だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空さんと界王神様に連れてこられた場所は、恐ろしく神聖な空気に満ちた場所だった。おそらくだけど、ここは界王神界なのだろう。

 

 界王神様から地球がブウによって消滅させられたと聞いて、膝から力が抜けてしまった。僕が神として守るべき星が消えてしまった……。ああ、どうしてこんなことに!

 でも慌てて支えてくれたポポさんと、今まで僕が抱えていた仔犬が心配そうに寄り添ってくれたことで少しだけ気を取り直した。

 そうだ、落ち込んでいる場合じゃない! 幸い地球のドラゴンボールはブルマさんが持ってくれていたし、クリリンさんたちもナメック星に向かってくれている。地球を元に戻して、人々を蘇らせることも十分可能だ。

 

 

 けど、僕たちに落ち着く暇は与えられないらしい。

 

 

 

「逃げろ、サタン!」

「ブウさん!?」

 

 大きな声に反応してそちらを見れば、何故か居るもとの太った魔人ブウが男の人を突き飛ばしていた。そしてそのすぐあと、太ったブウの体が突如出現した魔人ブウに食いつかれる。随分小さくなっているけど、おそらくそうだ。理性の面影も無くなってしまったようだけど、太ったブウに食いつく様子はかなり必死に見える。

 

「な、魔人ブウ!? 何故ここの界王神界に!」

「い、今のテレポーテーションだ! 僕のと同じ! で、でも宇宙を越えるなんて出来るわけ……!」

「出来が違う、のよ……! 目の前で一回見せてもらえば十分だわ……! ふふふふふふふっ、よくもやってくれたわね……! ぎりぎり残ってた意識でデブを追うのには苦労したわ……!」

 

 半分以上を食らいつくされたところで、なんとかエネルギー波で太ったブウが魔人ブウを引きはがした! けど魔人ブウはまた変容し、若干その体を大きくすると先ほどと違って理性のある声を絞り出した。だけど顔中に筋が浮かび、何かをこらえるようにしてる姿はかなり苦しそうだ。

 

 

「そこの太ったブウはわたしの理性の要。残りも全部取り戻させてもらうわよ!」

「ぶ、ブウさんに近づくな!」

 

 太ったブウの前にさっきの男の人が立ちふさがる。そして更にその前に悟空さんが無言で立ちふさがった。

 魔人ブウはそれを忌々しそうに見ていたが、ふと界王神様を見つけるとニヤリと顔を不気味な笑みに歪めた。それに思わず悪寒が走る。

 

 

「か、界王神様! お逃げください!」

 

 

 とっさに叫んだけど、遅かった。ブウは今までの標的を捨てて界王神様に襲い掛かったんだ!

 

 

 

「あはははははははははは!! いいわ、また全部吸収すればいいんだもの! だけどあなたは駄目! 死になさい、破壊神もろとも!! そうすればわたしを害するものは居なくなる!!」

 

 思わずブウの腕が界王神様の胸を貫く光景を幻視する。

 しかし、それが現実になることはなかった。

 

 

 

「誰を死なすって?」

 

 ブウのピンク色の腕をつかむ、紫色の腕。界王神様の前に立つその人は黄色い目を細めてこう言った。

 

 

 

 

「破壊しちゃうよ?」

 

「破壊神、ビルス……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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