とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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その身に宿せ元気玉!スーパーナメック星人デンデ!

「か、カカロットの野郎! 説得どころかあれじゃ挑発したようなもんだ! あいつに任せたのが間違いだったぜ……!」

「あんたさっきは頑張れって言ってたじゃない」

「う、うるさい!」

 

 魔人ブウの奴が理性を手放してからは、その攻撃は規則性を失って酷く無秩序なものになった。けどその分見てるこっちはたまったもんじゃないぜ! さっきまででさえ、ベジータたちがバリアを張ってくれなきゃ戦いの余波で戦えないメンバーは危なかったんだ。それが今じゃ、どこで何が飛んでくるか更に分からなくなっちまってる!

 俺は腕の中で震えながらぎゅっとしがみ付いてくるマーロンを見下ろした。そして決意する。

 

「18号、マーロンを頼む」

「どうする気だい?」

「悟空の加勢に行くんだ! あいつ、俺たちに攻撃が及ぶようになってきてからさっきみたいに戦えてない。時間が経って体力も随分消耗しちまってる」

「あんたが行ってどうなるってんだい。それに、試合を邪魔したらあの神様が地球ごと私たちを破壊しちまうんだろ?」

「分かってる……分かってるさ! でも、何もしないのは嫌なんだ。……それにさ、女房と娘くらいちゃんと守れないとカッコ悪いだろ。頼む、戦わせてくれ」

「…………はぁ、普段は聞き分け良いくせにこういう時頑固だよね、あんた」

「…………ごめん」

「いいよ。行っといで。でも、死ぬんじゃないよ」

「ははっ、無茶言うなぁ」

 

 マーロンを18号にあずけて、道着の紐を締めて一歩踏み出す。すると、俺の両肩がそれぞれ別の手につかまれた。

 

「一緒に行くぜ、クリリン」

「ああ。格好つけるのもいいが、一人じゃ心もとないだろう」

「僕も行く!」

「ヤムチャさん、天さん、餃子……」

「クリリンさん、僕も行きます! 破壊神様の事はブウを倒した後で考えましょう」

「悟飯……」

「我々も行こう。ジース、ナッパ、ナッピ、ナップ、ナッペ、ナッポ、ラディッシュ! 新生ギニュー特戦隊の大仕事だ!」

「「はい!」」

「「「「「キキィー!」」」」」

「お前らまで……」

 

 そうだよな。この場には、こんな頼れる仲間がたくさんいるんだ!

 は、破壊神様は……そうだ、こちらには同じ神様である界王神様がいる。界王神様に頼んで、なんとか説得してもらおう! といかく今は悟空を助けるんだ!

 

「よーし、行く「貴様らは下がっていろ!!」

 

 な、なんだよ! 出鼻をくじくなよベジータ! せっかくおっかないのを我慢してやる気出したっていうのに……!

 けどベジータはそんな俺たちの事なんか気にせず、ちょっと見ないうちに背が伸びて雰囲気変わった界王神様(神様も変身とか出来るのかな?)に怒鳴るようにして話しかけた。

 

「おい、界王神!」

「は、はい!? なんでしょう!」

「お前も確か瞬間移動が出来たな。こいつらを連れて、どこか適当な星に逃げるんだ! ここは俺が残る」

「そいつが言う通りにした方がいいじゃろうのぉ。わしらが居たんじゃ邪魔だろうて」

 

 どうやらベジータは悟空に加勢するんじゃなくて、悟空が戦いにくくなってる原因である俺たちを避難させることを優先したようだ。た、たしかにそっちの方が早いよな……。っていうか、こいつが俺たちの心配? までしてくれるなんて思わなかったぜ。いや、ブルマさん達が居るからかもしれないけど。

 けど、ここでまた口をはさむ者がいた。

 

「だったら私が連れて行こうか? これは神の御前試合。破壊神と同じく神であるお前たちが居なくなってはまずいだろう」

「え!? ま、まあ、そうですが……」

「え、セル……助かるけど、お前は戦わないのか?」

「興味はあるがね。私はあくまで孫悟飯と孫悟空を打ち負かすために修行をしてきたのだ。この戦いが終わって、更に強くなった孫悟空と戦う方が面白い。あと勘違いしてもらっては困るが、私は別に貴様らの仲間になったわけでは無いのだよ。我が友人タピオンとミノシアが居たから成り行きでこの場に居るだけさ。逃がす手助けをしてやるだけ破格の優しさだと思ってほしいね」

 

 そう言ったセルが戦う悟空と、そして近くに居た悟飯を見てニヤリと笑う。そ、そうか……。こいつ何だかんだで助けてくれたりしたから勘違いしてたけど、悟空たちと戦う事諦めてなかったんだな。でも今の言い方だと当然悟空が勝つもんだと思っているあたり、なんだかなぁ……。

 どうにも、こいつがもう悪い奴には思えなくなっちまってる自分が居る。今も何だかんだで手を貸してくれてるし。

 

「じゃあ、頼むよ。でも最後まで見届けたいし、やっぱり俺は残る。自分の身くらい守れるからな」

 

 そう言うと、じゃあ俺も俺もと言い出す奴が多くて結局ベジータに「貴様ら全員邪魔だ! さっさと行きやがれ!」と怒鳴られてほぼ全員退避することになった。そうやって俺たちが話してる間もずっとバリアやら気弾で守ってくれてたもんだから、なんかごめんって思った。あと、ピッコロも気づけば攻撃を弾いてくれてた。いや、ホントにごめんな……。

 18号には「締まらないねぇ」と笑われちまったよ。とほほ。

 

 

 

 で、界王神界にはベジータと悟飯、ラディッツが残った。あと、見届け役として界王神様。老界王神様は俺たちと一緒に別の星……ナメック星に避難してきている。今は占いババ様みたいな水晶玉で界王神界を映し出してくれていた。

 ベジータと悟飯は俺たちなんかよりずっと強いし、ラディッツに関しちゃ空梨さんのことが心配だろうから残って当然だけど、最後まで「自分も残る!」と大騒ぎしてたチビどもに引っ付かれて大変そうだったな。

 

 今は4人でけん制しながらブウを抑えてるけど(破壊神様はとりあえず様子見してくれてるみたいで安心した)、ブルマさんが渡したミクロバンドを使って体内に侵入する隙はなかなか生まれなさそうだ。くっそぉ……! 空梨さんさえ助けられたらすぐに倒せるはずなのに……!

 

 避難してきたけど、こっちにはまだポルンガの願いが一個と、未使用の地球のドラゴンボールがある。どうにかこれを使って解決できないもんか……。試しにポルンガに空梨さんをブウから引きはがしてくれって聞いてみたけど、やっぱりブウの力が強すぎて干渉できないから無理だって言われた。力の強いナメック星のドラゴンボールでそれじゃあ地球のじゃもっと無理だよなぁ……。

 

 

 

 

 

 …………………いや、待てよ?

 

 

 

 

 

「なあデンデ。神龍が叶えられない願いって具体的に線引きはどこなんだ?」

「線引き……ですか? ええと、基本的に僕……製造者の力を大きく超えるものに対しての願いですね」

「じゃあさ、もしも、もしもだぜ? デンデがパワーアップしたらどうなるんだ?」

「何? どういうことだクリリン。詳しく話せ」

 

 ピッコロに促されて、俺も頭の中でひとつひとつ整理しながら話す。

 

「ようは、デンデがブウ以上の力を手に入れられたらさ。神龍の願いもパワーアップして空梨さん助けられるんじゃないか?」

「何を言うかと思えば……絵に描いた餅だな。たとえ俺とデンデが同化したとしても、ブウの力は超えられんぞ」

「ま、待ってくれよ! ここで終わりじゃないんだ。えっと、あのさ……。ずっと前に、それこそベジータ達と戦った時だ。その時俺、悟空から元気玉を託されたんだ。あの時の漲るみたいなパワー忘れもしない……。だから、もし元気玉を作って、それをデンデの体にちょっとの間にでも留められたら、それって一時的に凄く強くなったってことにならないか? ほ、ほら。スーパーサイヤ人ゴッドみたいにさ! 一人じゃダメでも、他からエネルギーをもらうんだ!」

「なっ」

「は、ははは……。俺自分でも何言ってるか半分わかんないんだけどさ。無理かな? やっぱし……」

「いや、待て。おいポルンガ! もし強力なエネルギーを集めたら、それを一人の存在に……このデンデに与えることは可能か!?」

 

 ピッコロがナメック語で残り一つの願いを待って待機していたポルンガに話しかけた。するとポルンガはしばらく考え込んだが、鉤爪のついた指で器用にオッケーサインを作ってくれた。

 

『可能だ。だが、そのエネルギーが消えてしまえばもとにもどってしまうが、それでもいいのか?』

「! じゃあ!」

「ええと、つまりどういうことですか!?」

 

 いきなり自分に重要な役割がふられそうになって困惑するデンデの手を思わず両手でつかむ。

 

「だから、お前が空梨さんを助けるんだよ!」

「そうだ。お前がパワーアップし、一時的に地球のドラゴンボールの叶えられる願いの上限をあげるのだ。スーパーナメック星人になれ! デンデ!」

「えええええ~~~~!?」

 

 

 

 

 

 そんなわけで、急きょ元気玉を作ることになった。でもブウを超える強力なパワーの持って来どころがこれしか思いつかなかったんだけど……問題は、それを完璧に作れるのが悟空しか居ないってことなんだよな。ちょっとの間界王星で修行してたヤムチャさんや天さん、ピッコロでさえ習得出来なかったらしいし……。

 さて次はどうすればいいか? そう悩んでいたら、なんとセルが界王様を連れてきやがった!

 

「な、なんじゃなんじゃいきなり! いや、事情は分かっておるが心の準備というものがじゃな……! あ、か、界王神様。お初にお目にかかります。私、北の界王です」

「15代も前のじゃがな。まあ、そうかしこまらんでもええよ」

「それはそれは、お気遣いいただきどうもありがとうございます」

「挨拶はいいからさっさと元気玉を作るんだ!」

「なんじゃと~! ピンチに駆けつけてやったのだから、もうちょっと敬わんかい!」

「でも急いでるんです! 界王様、早く元気玉を!」

「わ、わかったわかった、そう急かすな。え~、では、ゴホン。元祖元気玉を見せてやるわい! ふふんっ、いつまでも開発者のわしが使えんのもカッコ悪いからな。ひそかに練習していた甲斐があったというもんじゃ。……それにしても、まさか元気玉がこんな風に使われる日が来ようとはなぁ」

 

 界王様はぶつぶつ言いながらもすぐに元気玉の準備に入ってくれた。当然俺たちはすぐに手をあげてありったけの力を界王様に送る。こんだけ凄い奴らの気が集まるんだ! 絶対にブウの力を越えられるはずだ!

 けどふらふらになるまで元気をもってかれたってのに、界王様は難しい声を出す。

 

「むむむ……! 凄まじいパワーじゃが、これでもブウを超える力を与えるには足りんぞ~」

「う、うっそだろぉ!? って、あ、セル! お前手をあげてないじゃないか!」

「だから言ったろう? 私は貴様らの仲間になった覚えはないと。せいぜい自分たちの力で何処まで出来るかやってみるんだな。私はそれを見物させてもらう」

「セル……」

「セルお兄ちゃん……」

「………………。タピオン、ミノシア。いくら君たちの頼みでも聞けんよ。もともとそいつらと私は敵同士なんだ」

「「……………………」」

 

 勇者兄弟が眉尻を下げてセルを見つめる。すると、あのセルが居心地悪そうに視線をそらした。

 

「………………。わかった、わかった。ではアドバイスだけしてやろう。どうだ? 地球の存亡がかかっているんだ。たまには地球の人間どもにも責任をとらせてやるってのは」

 

 セルの発案に界王様がすぐに地球の人たちに声を届けられるようにしてくれた。元気玉を作るのも大変だっていうのに、本当に頭が下がる。

 

 地球の人たちに呼びかける役目は神様であるデンデに託された。

 ちなみにこの突貫工事の作戦は老界王神様を通じて界王神様に伝えられ、そこから悟空たちにも伝わった。「クリリン、ナイスだ! よく思いついたな!」って悟空は言ってくれたけど、俺は発案しただけでここに居るいろんな人たちの協力が無いと無理だったんだぜ? 今だってデンデの呼びかけに「怪しい声だ」って疑ってかかる人間に対してミスターサタンが名乗りを上げてくれた。「き、貴様らいい加減にしろーー! さっさと協力しないかーー! この、ミスターサタン様の頼みも聞けんというのかーーーっ!! そ、それと、この方は私と共に戦ってくれている本物の神様だぞ!」と言ってくれたんだ。

 さっき悟空がデンデに続いて地球の皆に声をかけてくれた時も元気は集まったけど、今度はその比じゃない。ビーデルさんが恥ずかしそうに頭を抱えてたけど、あんたの父ちゃん凄いぜ! おかげで凄い大きな元気玉が出来た!

 

「す、凄まじいのぅ……! わしも、こんな大きな元気玉見るの初めてじゃわい」

「界王様、どうです? これならいけますか!?」

「ああ、十分じゃ! 今の地球の神、デンデと言ったかな?」

「は、はい!」

「この元気玉は地球全ての元気が集まっておる。凄まじい力をその身に宿すのは恐ろしくもあるじゃろう。じゃが、この元気はおぬしが慈しむ地上の子らの元気じゃ。もともと元気玉は心の清らかなものに害はない。心を静め、しかと受け取るのじゃぞ」

「……っ! はい!」

 

 デンデも気合十分だ! よーし、あとは……。

 

「ネイルさん、ポルンガに願いを!」

「了解した」

 

 ポルンガが帰ってしまわないようにずっと留めてくれていたネイルさんがにやりと笑ってばっと手を上にあげて言う。

 

 

 

『ポルンガよ!! 我らが同胞、そして地球の神であるデンデに、界王様が作った元気玉の力を宿したまえ!!』

 

 

 

 ポルンガの目が赤く光る。

 

 

 

 

『承知した』

 

 

 

 

 

 同時にこちらも叫ぶ。神龍を呼び出すのはドラゴンボールを持っていたブルマさんだ。

 

 

 

「出でよ神龍! そして願いを叶えたまえーー!!」

 

 

 

 ポルンガ出現のためもとから暗かったナメック星の空に、黄金の光が立ち上る。そしてそれは雲を縫い、やがて緑色の鱗へ変わる。

 壮観だな……! ポルンガは最後の願いを叶えたからすぐに居なくなっちゃったけど、一瞬とはいえナメック星と地球の神龍が同時に揃う光景なんて……! きっと一生に一回だろうな。こんなの見れるの。みんなも俺と同じく口をあけて空の龍に魅入られている。

 

『どんな願いも三つだけ叶えてやろう。さあ、願いを言うがいい』

 

 その言葉に元気玉のパワーを得て青白い気でその身を包んだデンデが願う。

 ……今さらだし本物なんだからこんな風に言うのも変だって思うんだけどさ。でも、その姿があんまりにも神々しいからついこう呟いちまったよ。「神様みたいだ」って。

 

 

 

「魔人ブウに吸収された孫空梨さんを、ブウの体から助け出して!」

 

 

 

 誰かの喉がゴクリと鳴った。俺だったかもしれないし、全員だったかもしれない。

 そしてみんなが見守る中、神龍はこう答えてくれたんだ。

 

 

 

 

『今ならば容易い事だ。承知した。その願い…………叶えよう』

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

 

 界王様の声も、ナメック星での出来事もみ~んな聞こえてた。だから神龍が願いを叶えてくれたってわかった時には、もうオラ叫んでた。それがベジータと同じタイミングでってんだから笑っちまうよな。

 

 

 

 

 

 

 

「「帰ってこい! 姉ちゃん(姉上)!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 魔人ブウの体から離れる一つの影。その見慣れた姿に、思わず拳を握った。

 

 

「サンキュー、ドラゴンボール……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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