とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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本編でハブられた彼らのお話。ご、豪華劇場版二本立てですよ……(震え声)




番外編
実は居た!脅威、手を組む魔族と科学の力!(劇場版DB オラの悟飯を返せ!世界で一番強い奴)


 ガーリックJrは焦っていた。

 

 

 かつて現在の神と共に、神の座を争いそして敗れた父……。彼はその遺志を継ぎ、子供の自分こそが今度こそ神になり替わり世界を掌握しようと予てより計画していたのだ。そのために今の神を殺し、神秘の秘宝ドラゴンボールによって永遠の命を手に入れようと画策していた。

 だが、半ば父の生まれ変わりのように復活してからというものことごとく運に見放されたまま現在に至っている。

 

「何故だ……! こんなはずでは無かった!」

「が、ガーリックJr様……我々の力が及ばず、誠に申し訳ありません……!」

「で、でもあんなに強いんだもの。あのオチビちゃんにだって勝てなかったのよ?」

「なんなんだよあいつら……」

 

 玉座のひじ掛けに握った拳を打ち付けて激昂するガーリックJrに、部下のジンジャー、ニッキー、サンショは心底申し訳なさそうに項垂れる。その彼らだが、体の所々に傷があるだけでなく疲労が色濃く顔ににじみ出ていた。

 

 

 

 

 

 

 計画はまずピッコロ大魔王を殺し、その片割れである天界に引きこもっている神を殺すところからスタートするはずだった。が、その初っ端から躓いたのだ。

 

 荒野で尻尾のある妙な子供と修行をしている所を襲ったはいいが、神経を研ぎ澄ましていたピッコロ大魔王はすぐに襲撃に気づき不意をつく間もなく迎撃されてしまった。しかも「フンッ、誰だか知らんが丁度いい。悟飯、一人でこいつらのうちどれかを相手して倒してみろ」などと言いだしたのだ。

 言われた子供はジンジャー達に怯え「む、無理だよう!」と涙目だったが、ぎろりとピッコロ大魔王に睨まれると嫌々ながら戦う意気込みを見せた。なめられていると感じたジンジャー達は当然怒ったが、結果は惨敗。

 ジンジャーとサンショはピッコロに敗れ、ニッキーは悟飯という名前の子供に負けたのだ。ピッコロ大魔王を相手にした2人はともかくニッキーは最初こそ押していたのだが、途中で子供が爆発的に凄まじい力を発揮……三人は仲良く吹き飛ばされて、お空の星になった。

 

 ボロボロになって帰って来た三人を見て、ガーリックJrは憤怒に身を染めつつも嫌な予感に焦燥感を覚えた。そしてそれはけして間違いでなかったと、その後彼らは知る事となった。

 

 とりあえずピッコロ大魔王は後回しにしてドラゴンボールを集めようと、山奥にある広大な畑に隣接した家を訪れた。すると「何だ貴様ら。俺は今機嫌が悪いんだ!」と言う尻尾のある長髪の男に返り討ちにされ、有名な占い師の住居だという宮殿のような場所を訪れれば、ティータイムを楽しんでいた女二人……老女と若い女の内若い女の方に「え、ドラゴンボール? そっか……そりゃあ私たち以外にも集めてる人っているんだよね。そういえばこの間見つけてからカメハウスに預けに行って無かったっけ。よし、じゃあ私に勝ったらドラゴンボールあげるよ」というセリフの後、自ら出向いたガーリックjr(本来の力を開放済み)を含めてボコボコにのされた後に丁重な手当てを施されて帰された。

 この時ガーリックjrは自らの技であるデッドゾーンでこの女を異空間に吸い込んでやろうかとも考えたが、あまりの実力差に「技で飲み込む前に殺される」と確信して引き下がらざるをえなかったのだ。情けないが、女は鬼のように強かった。

 

 その後「今は時では無いのだ」としばらく身を潜めていたら、今度は幸運なことが起こった。なんと、ピッコロ大魔王が死んで神も死んだのだ!

 

 どこの誰だか知らんがでかしたと、4人は舞い上がった。ならばあとはドラゴンボールだと、再び探すもドラゴンボールは見つからない。しかしそれはついこの間願いが叶えられたから石になっているためだと、そう思った。だから1年後にすぐに使用できるようにと、石の状態のドラゴンボールを探すためにわざわざ占い師のババァに大金を払って探そうとしたのだ。ちなみに5人の戦士と戦って勝てばタダらしいが、そこは以前鬼女が居た場所だったので4人は渋々金を払った。もしあの女が出て来たら絶対に勝てないと思ったからだ。

 

 

 しかし、ここで彼らは衝撃の事実を知る羽目になる。

 

 

 なんと神が死ぬとドラゴンボールも使えなくなると言うではないか!

 「探してもいいが、このドラゴンボールをお創りになったお方は亡くなられた。だから1年経っても使うことは出来んぞ? それでもええのかい?」という魔法使いじみた格好の婆さんの言葉の衝撃といったらなかった。あまりにも道化じみた自分たちの計画に打ちひしがれたのだ。

 

 

 

 

 しかし彼らは諦めなかった。

 

 

 

 

 虎視眈々と世界征服の機会を狙いながら生活していると、ガーリック達は二人の科学者と知り合うことになる。その名はDrウィローとDrコーチン……50年ほど前、天才ながらその思想によって恐れられた狂気の科学者たちだった。

 

 話を聞くと、かつて異常天候によって永久凍土の下に研究所ごと封じられてしまったDrウィローを、つい最近Drコーチンがドラゴンボールを使い蘇らせたらしい。それを聞いて初めて何故かドラゴンボールが使用可能になっていることを知り再び打ちひしがれたのだが、ウィロー復活のために使用されたため再びドラゴンボールは使えなくなっている……ガーリックJrはとりあえずドラゴンボール復活の情報を得ただけでよしとし、不老不死は改めて手に入れればよいのだと自分を納得させた。

 そして何故彼らが自分たちに接触してきたのかと問えば、今はとにかく戦力が欲しいのだと力説された。それも、自分たちと同じく世界の掌握を狙っているのなら願ってもないと。

 

 お互いにお互いを利用する気満々であることは察していたが、情報を交換し合った彼らは硬く握手を(Drウィローは脳のみの存在のため無理だったが……)交わした。何故かと言えば、情報交換の際に話した互いの不運すぎる境遇があまりにも似ていたからだ。

 

 Drウィローは復活するなり、脳だけの存在である自身の新しい肉体として「世界一強い人間の体」を欲した。そこで武道の神と呼ばれた男、武天老師の肉体を求めたのだ。

 しかしいざ武天老師を攫いに行けば、その弟子だというハゲのチビに数だけであまり強くないバイオマンだけでなくコーチン自慢の凶暴戦士、キシーメ、エビフリャー、ミソカッツン全てが敗退するという有様に。しかもハゲは「ナメック星でのパワーアップが無かったら危なかったな……。でも、今の俺の敵じゃないぜ!」と言って、まだまだ余裕を残していたとのこと。

 その体たらくに最強サイボーグの体を持つウィロー自ら出向くことも考えたが、腐っても天才科学者……自分たちの古い認識に大きなずれが出ていると確信した彼は、スパイ衛星を作り情報収集から始めることに決めたのだ。その途中でガーリック達を見つけたらしい。

 

 そして手を組み、魔族の魔力と科学の力が合わされば今度こそ最強だ! 勝利が我らの手に! と期待を高めた彼らだったが……スパイ衛星のもたらした情報は彼らを深い絶望に突き落した。

 

 

 

 

 サイヤ人。フリーザ。人造人間。

 

 

 

 

 正直お腹一杯であった。全てにおいて勝てる要素が微塵も見つからなかった。

 

 しかも下手にフリーザ軍宇宙船の残骸からスカウターなるものを回収して改造を施してしまったが最後……数値化された戦闘力に、ガーリックJrとDrウィローは地に膝をついて打ちひしがれた。そしてガーリックJrは器用に絶望のポージングをとるデカい脳みそ搭載のデカいサイボーグが、自身の何倍も強い事を知ってそっと距離をとった。部下たちも「知性や品性が無い」と言って陰口をたたいていたキシーメ達(負けたが見逃されて生存)に愛想笑いをしていた。

 「力こそ正義」とは自分の方が強い時は素晴らしく魅力的な言葉であるが、逆の立場になるとこうも残酷なものかとガーリックJrが知った瞬間である。彼は一つ大人になったのだ。

 

 

 そしてなんとなくそのまま一緒に居ながら、ただでさえ勝てないのに来るべき新たな敵に備えてぐんぐん強くなる戦士達や、その後の人造人間との戦い、最強の人造人間セルとの戦いなどなど……とにかく見続けた。隙あらば、運が良ければ戦士の誰かを洗脳できないかと期待して。

 しかし洗脳はDrウィロー達の研究所に戦士をおびき寄せなければ不可能であり、そして無理やり連れてくる戦力があるくらいなら最初から悩んでなどいない……正直、彼らは行き詰っていた。

 

 最近は「ワシより凄い科学者、普通におった。なにあのセルってやつとか。ドクターゲロって誰だよ」などと言ってウィローがキャラ崩壊をおこし、その後は頭脳だけが取り柄のはずの男が「ガーリックさんや、ワシの肉体はまだなのぉ。ほれ、世界一強いやつじゃ……うん? 違うのぉ。そうじゃ、これが言いたかたんじゃ。ガーリックさんや、わしのご飯はまだかの? わしゃぁういろうが大好きなんじゃ。買って来てはくれんかね」などと言って若干ボケ始める始末。とりあえず飲めるか食べれるかも知らないが、ういろうなる菓子と茶を与えて放置している。

 助手のコーチンはとある研究所の求人用紙を見て「『最新のバイオ工学であなたも素敵なバイオ戦士を作りませんか! ご連絡はジャガー・バッタ男爵まで』……か。わしもそろそろ歳だし、せっかく蘇らせたDrウィローはこんなだし……安定した就職先を探して趣味のバイオテクノロジーに生きるのも有りかのぉ……」などとつぶやいている。狂気の科学者とはなんだったのかと、柄にもなく突っ込んだガーリックJr。そしてそれを「ガーリックJr様、がんばっ!」と見守る部下達……ぐだぐだである。

 

 ちなみにドラゴンボールであるが、セルが倒された後に集めようと動き出したら弱いが妙に運がよく小賢しい3人組と、文句なしに強いジンジャーにちょっと似た緑の化け物とカエル2匹の奇妙な3人(?)組に邪魔されて思うようにいかず、もう不老不死とかいいかな! どうせ長生きしてもあいつらには勝てそうにないし! ケッ! という気分になったガーリックJrはドラゴンボールを諦めた。

 

 

 

 

 

 

 そしてある日、仕切り直しとばかりに彼は提案した。

 

 

 

 

 

「正面から世界掌握などもはや不可能。だが、諦める必要などない!! ならば裏から世界を牛耳るのみよ!」

「さっすがガーリックJr様! 諦めを知らない不屈のお方!」

「ああ、俺たちはお仕えする相手を間違えてはいなかった!」

「キャー! 素敵だわ! それで、その方法は!?」

 

 羨望のまなざしをむけてくる部下を見て、ガーリックJrは口を開く。

 

「……食だ」

「………………は?」

「食を制してこそ世界を制するのだ! お前たち、見ていなかったのか? あの鬼女が怯えていた破壊神を名乗る猫もどきが食事でもてなされて上機嫌で帰ったところを!」

「そ、そういえば!」

「そうか、いくら強い奴でも食の魔力の前には敵わないのね……! よく考えればサイヤ人のやつらも食べるのが大好きで大喰らいだわ!」

「そこに目をつけるとは流石は我らが主! スパイ衛星では飽き足らず、目ぼしい奴らの私生活を盗聴器と監視カメラでばっちり見ていたかいがありましたね!」

 

 彼らは気づかない。自分たちの方向性も妙な方向へ向かっていることに。

 

「早速ガーリックライスをメインメニューにすえてチェーン展開を開始する。他のメニューに希望はあるか?」

「じゃあ生姜焼きを……」

「うな重を……」

「レジ横に口直しののど飴なんてどうかしら」

 

 そこで、そっと横から主張する者たちが居た。

 

「エビフライを……」

「味噌カツを……」

「きし麺を……」

 

 Drコーチンの凶暴戦士達である。どうやら長い時間をガーリック達と過ごすことで、若干の知性が育まれたらしい。

 

「いいだろう。ククク……! いずれ全世界を我々の店で染めてくれる……! 神よ、気づいた時にはもう遅いぞ。人間どもが我々の店のメニュー無くしては生きられぬ世に塗り替えてくれる! 人間どもよ、高カロリー、高脂肪、高血圧で苦しみもがき死に絶えるがよい!! そしてもがきながらも逃れられぬ美食の魔力によって社長であるこのガーリックJrが崇め奉られた時、真の絶望が始まるのだ!」

 

 もはや自分が言っているセリフの意味を深く考えることもなく、ガーリックJrは野望に燃えた。

 そう、Drウィロー達だけでなく……彼らも疲れてしまったのだ。自分たちを置き去りに加速するパワーインフレに。この意味不明の世界征服計画も、己を保つための自己防衛本能と言ってもよい。

 

 

 

 

 

 

 

 ファミリーレストランチェーン「スパイシーガーリック」、好評営業中!

 

 その後、彼らはレストランチェーンの王座に君臨する。

 

 

 

 

 

 

 




コーチン「食材はわしが丹精込めてバイオテクノロジーで作りました」

オラの悟飯を返せ「俺のサブタイトルが欠片もかすってない件」
世界で一番強い奴「もはや誰だか分からない件」

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