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今日も今日とて弟共に付き合わされてビルス様のうちで修行していたら、なんかビルス様の兄弟のシャンパ様ってのが来た。あれ、ここまでの流れだとこの世界ドラゴンボール超の時間軸だから、シャンパ様が登場する前にフリーザ様復活イベントなかったっけ?
って思ってたんだけど…………なんか混ざった。
え、何ぞこれ。
修業の辛さで考えるのが面倒になってたのと、ちょっと前に界王神様を通じてザマスの事をどうにかできないかってごっちゃごちゃやってて疲れたから、正直フリーザ様の事は地球サイドに丸投げしてたんだよね。
だって悟飯ちゃんセルのせいで(おかげとは言いたくない)修業を現在も継続的に行ってるからアルティメットのままで強いし、妙に
というか、映画でもたしかフリーザ様復活っていったい何だったん? くらいの扱いだった気がするしな。強いて言うなら映画とその後の続編であるドラゴンボール超の販促のために歴代悪役キャラでも有名で人気が高いフリーザ様によるキャッチーさを利用しつつ、悟空たちの新しい変身であるスーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人(最近長いからってブルーに改名された)お披露目のためご出演頂いた、的な。
……でも現時点で考えると、もう悟空たちとっくにブルーになれるし、その後も更に修行してる。よく考えなくても多分絶対勝てるっていうか、控えめに言ってヌルゲーだろ。なんかセルもビルス様の時に呼ばなかったからか、フリーザ様とは自分が戦ってやってもいい的な上から目線だけど凄いやる気出してるし。
もしフリーザ様が地球ごと破壊しようとしても、そこんとこは戦闘力が低下しても抜け目が無さそうなブウ子が気を配ってくれるだろう。ブウ子ならきっと地球が破壊されても生き残るし宇宙でも過ごせるだろうけど、地球の娯楽を手放すとは思えないからな。
いや本当、復活のFのフリーザ様って私が覚えていないブラック編の後にまた活躍があるならともかく、映画の時点は「う~ん、ご苦労様です!」って感じの印象だった。だってフリーザ様ですら逆らえない大物であるビルス様やウイス様が登場してる時に出て来てもなぁっていう……。
物語的に約束された敗北だとしても、あの映画は妙にフリーザ様可哀想だったなってのだけ覚えてる。
まあかといって、可哀想だからって生かす選択肢は微塵もないわけだけど。
多分ギニュー隊長達はフリーザ様復活したら絶対向こうにつくからそんな忠誠心マックスな彼らには悪いけど、フリーザ様は絶対になあなあで仲間っぽくなるタイプじゃないからなぁ……。なんかブウとかセルとかいつの間にか馴染んでるけど、フリーザ様は無理だわ。もし万が一和解しても絶対背後を安心できない。そんな方だよフリーザ様。
でも、そんなわけだから心配はしてなかったわけよ。ブウみたいに吸収能力があるわけじゃないし、今の戦力なら勝てる勝てる~よゆーよゆーってなもんで。
だけどなんで第六宇宙の試合に参加することになってるんスかフリーザ様。予想外の仲間フラグでしたよ!?
シャンパ様がビルス様の所に来た後、色々あって美味しいものがたくさんある地球の所有権を巡って破壊神兄弟が勝負することになった。その内容っていうのが、互いの宇宙……ビルス様の第七宇宙とシャンパ様の第六宇宙から人間の戦士を出し合い、格闘試合をするっていうもの。私の原作知識で言えば、第六宇宙対抗戦編の始まりである。
それで地球に戻って試合の選手を決めようってことになったんだけど……いやビルス様達はブルマに美味しい物たかりにきただけっぽいけど…とにかく戻ったわけだ。
そしたらなんか黄金色になってブチ切れてるフリーザ様がいらしたわけで。
ビルス様にぽんって肩を叩かれて「お前、参加な」「は?」ってやり取りしてたのは、何かもう……。もう部下じゃないんだけど、おいたわしやとか言いたくなった。悪のカリスマフリーザ様。宇宙の帝王フリーザ様。来る時期はなんでか遅くて第六宇宙編とかぶってしまったフリーザ様。…………非常に言葉に困る。なんか、死んだままのが良かったんじゃないかなフリーザ様。まさかパワーアップして復讐しに来たら破壊神にリユースされるとか本人も思ってなかっただろ。
とにかく、フリーザ様がビルス様の一言によってメンバー追加が決定した。
しかし同時に、私たちはとんでもない爆弾を抱えたとも言える。
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フリーザは深く沈む意識の中で思考を続けていた。
少し前、孫悟空らに復讐するために生まれて初めてのトレーニングを一年もかけて行い、満を持して地球に訪れた。しかし間が悪い事に、なんとあの破壊神ビルスがその場に現れたのだ。
しかし現れただけなら、フリーザにとってはどうと言う事は無かった。何故なら相手は神。孫悟空達と何やら多少の交流があったようだが、だからといって人間を善意で助けようというタイプでもないことをフリーザは知っていたからだ。少し下手に出たうえで勝負に口を出さないという言質さえとれば、フリーザはビルスと共に現れた孫悟空、ベジータ、ハーベストと戦う事が出来たのである。
むしろ一年の修業期間を経たフリーザは、ともすれば自分が下手に出るしかなかったこの破壊神という忌々しい存在にすら勝てるのでは、と思っていた。だから最初「第六宇宙との試合にお前も参加しろ」などと言われた時は、激昂のままにビルスとも事を構えようとしたのだ。
……今思えば頭に血がのぼって早計にすぎる事をしようとしていたが、幸い"部下"のお陰でそれは免れた。
(破壊の力……。厄介ですねぇ。神が持ちうる権能、ですか……)
フリーザに馴れ馴れしく声をかけてきたビルスに、なんとあろうことか、あの猫を破壊神だと知らないフリーザ軍の部下が攻撃をしかけたのだ。たしか、シサミとか言ったか。フリーザが復活した時に片付けたタゴマとかいう男と共にソルベがドドリアとザーボンくらいの実力はあると言っていた者だが、その程度の力しか持ちえないのに破壊神に挑むとは馬鹿の極みである。……おそらくスカウターに表示されない神の戦闘力を見て、侮ったのだろう。
しかもその攻撃の余波で、ベジータの妻だとかいう女が手に持っていたガラスの器に入っていた食べ物が吹き飛びおじゃんになった。それが決定打だ。
……その後の事は、まさに一瞬である。
『ふぅん……。君の部下は、ずいぶん躾がなっていないようだね』
フリーザの乗ってきた宇宙船に手を向けてのビルスの一言。「破壊」を口にしたビルスの前で、宇宙船と周囲に居た千人の部下はもろともに塵となり果てたのだ。
派手な爆発も光もなく、ただ無残なまでにこの世に存在することを拒否された。光る砂粒のようになって消えていったフリーザ軍を見たフリーザは変身による全能感など一瞬で吹き飛び、珍しく冷や汗を流した。そんなフリーザに残された選択は多くない……否、一つ。
破壊神の茶番につきあい、憎き怨敵たちと手を取り合い仲間になる、というものだった。
それを了承した後にビルスに叩かれた肩とは逆の方にポンっと手を置き「フリーザ様、どんまい」などと声をかけてきたハーベストに、フリーザはなおいっそう「戦えるようになったらまず真っ先にこの女から殺そう」と決意を新たにした。
そう。こんなことで復讐を諦めるフリーザではない。
要はこの茶番さえ乗り切れば、あとは破壊神にとってフリーザと孫悟空達が戦おうがどうしようが知った事ではないはずだ。一応確認をとったが、試合の後は好きにしろと言われている。
むしろこれは逆にフリーザにとってチャンスでもある。何故ならその第六宇宙との試合とやらで、孫悟空達の実力を把握することが出来る可能性があるからだ。トレーニングを重ね今まで以上の力を手に入れたフリーザであるが、だからこそ分かった。……孫悟空達の底上げされた、秘められし実力を。
当然、負ける気はない。しかしわざわざ戦う前にその力を披露してくれるなら、喜んで仲間になってやろう。そして実力が丸裸になった後で、じっくり蹂躙してやればよい。
だが実力を計られるのは、フリーザもまた同じである。
(この私の本気を引き出せる選手がその第六宇宙とやらに居るとは思えませんが、せっかく身に着けた力を一番向けたい奴らの仲間として使ってやるなど屈辱でしかない……! せいぜいあいつらの実力を計りつつ、私は楽をさせてもらいましょうか)
そして試合が終わった後。全力をもって、復讐を完遂させてみせる。
つまりこの第六宇宙の試合にて、正確に
そして奇しくもこの時同時にハーベストこと孫空梨もまた、フリーザと同じ事を考えていた。……それは実際にゴールデンフリーザとなったフリーザを目の当たりにし、その修業期間を一年と知ったがゆえに。
そうこれは、互いに相手の実力を探り、弱点を見つけ、試合後の
仮に今のフリーザと孫悟空たちの実力が近い場合、相手の戦い方、持久力、隠し玉。それらの情報という名の得点を先により多く得た方が勝つ。戦闘力やセンスが拮抗している場合、勝敗を分けるのは観察力と情報なのだ。
しかしそうなると、戦う場合は破壊神にバレない程度に手を抜かなくてはならない。敵にみすみす情報を与えてやる必要などないのだから。フリーザにとって地球の所有権など心底どうでもいいので、余計にそう思う。
が、どんなにくだらなくても試合を主宰するのは破壊神。手を抜いた場合、その時点で怨敵と戦う前にこの世から存在を消される可能性がある。
(これは、力加減が試されますね……)
手を抜きつつ全力で。
それが互いに課せられた、第六宇宙対抗戦裏ルール(非公式)であった。
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「と、いうわけで。今回は出来るだけ積極的に舐めプの方向で」
「え~! せっかくの試合なのに、そりゃねぇよ姉ちゃん!」
「フンッ、馬鹿馬鹿しい。たとえフリーザがどれだけ強くなっていようが、それを上回ればいいだけの事だ」
「ああお前らがそう言うのは分かってたよチクショウ!!」
今回の試合後に待ち受けるだろうフリーザ様との戦いを思って提示した案は、主戦力二人に却下された。
ああ、そうだろうと思ったよ……! むしろ第六宇宙にも時間操るヤベー奴居たはずだから、舐めプで勝とうって方が無理だ。今の悟空ならどうかわからないけど、いくら修行しててもこいつら実戦の中で成長するふしがあるからな……。フリーザ様が原作より長い修業期間をとってヤベーくらいパワーアップしていたら、むしろ第六宇宙との試合の中での成長が必要な場合も……ああ、もうめんどくさいな!!
でも、ヤバい。多分よく考えなくても今のフリーザ様ヤバい。見た感じだけでもヤベーって思った。
たった数か月真面目に修業しただけで神の域に達した悟空たちと渡り合えるんだぞ? それを一年ってなんだよ。どんだけ強くなってんだ。
本当ならこんな面倒くさいことになる前にさくっと倒してもらいたかったとこだけど、果たして今のフリーザ様がそれを許してくれただろうか……って考えると、今のフリーザ様の実力を見れるかもしれない試合はむしろ歓迎すべきか…………いやいやいやもうわっかんねーわこれ。
「…………まあ、そう心配する必要もないだろう。何故ならフリーザはこの究極神セルが相手をしてやるからだ」
「ええ!? いや、フリーザはオラと戦いたがってんだろ? オラが戦うって!」
「ずるいぞカカロット! 自分だけ美味しい役目を得ようとしてもそうはいかん。俺が戦う」
「いや悟空もベジータも、そいつ人間枠に入れなくて妙にフリーザ様の相手を張り切ってるんだからそっとしておいてやれよ……。実際倒してくれるかもしれないし」
「でも姉ちゃん、オラだってフリーザと戦いてぇぞ! あいつ、見た感じすっごく強くなってるだろ? 第六宇宙との試合も楽しみだけど、オラワクワクしちまってよ~」
「贅沢を言うな孫悟空! お前たちは存分に第六宇宙との試合を楽しむがいい。私が出られない、第六宇宙との試合を」
「セルの奴、根に持ってるわねぇ……」
呆れたように言うブルマに同意して、私も頷く。
第七宇宙のメンバーに選ばれたのは悟空、ベジータ、フリーザ様、私。そしてビルス様が推薦してきたモナカ、という人物だ。
いやこれだけ戦力揃ってんのに何で私と本来は悟空とベジータに発破をかけるための一般人モナカがINしてんだよ……。
最初他のメンバーはともかく何故私が、と思って他を推薦したのだが、セルは本人が言っている通り究極「神」枠なのでウイスさんに「一応人間同士での戦いとなっていますからねぇ。あなたを出してしまうとルール違反になってしまうんですよ」と言われて却下され、悟飯ちゃんはどうしても外せない学会があるからと辞退。「参加できないのは残念ですけど、おばさん達なら負けませんよ!」といい笑顔で言ってくれた甥っ子の信頼が重い。
子供たちは置いておいて(一部からすごいブーイングされたけど)ピッコロさんやラディッツ……ブウ子じゃない方のブウも押したのだが、結局ビルス様に「一年も僕の星で修行しておいて、まさかこんな大事な場面で戦わないとか言わないよな?」と睨まれて参加が決まってしまった。
けどまあ、実は今回そこらへんどうでもいい。だって確実に私まで出番回ってこないからな! 悟空、ベジータ、フリーザ様の壁が厚すぎて私超安心。モナカ氏とまったり試合観戦してるわ。
聞けば勝負の内容は勝ち抜き戦だから、……フリーザ様を先鋒にして、そのまま最後まで突き進んでくれたら理想なんだけど。そうすればフリーザ様の実力がちょっとは分かるかもしれないし。
でも予想出来る。そんなことしたら絶対に文句を言う奴らが確実に二名いる事を。……一番手は悟空かベジータが自分からだって争うんだろうな……。でもそうなるとフリーザ様の実力が……う~ん……。
「ま、難しい事は後にして今はお祭りを楽しみましょうよ! 屋台もでるんでしょ? 別宇宙のスイーツが楽しみだわ~!」
そう言ってまとめたのはブウ子。
……まあ、そうだよな。とりあえずフリーザ様の事は後回しにしつつ、あわよくばフリーザ軍みたくビルス様の怒りをかってさくっと破壊されてくれることを願おう。そうでなかったら地球さんが破壊される可能性を排除するために、フリーザ様との戦いは試合後の舞台を使わせてもらえたらラッキー……いや駄目だ。なんか試合が行われる星には何かあった気がする。最悪ブウ戦でも壊れなかった界王神界貸してもらえばいいか。
まあ、あれだ。色々考えてみたけど、いくらフリーザ様が強くても思う事は変わらなかった。
「フリーザ様、どんまい!」
本作は映画の流れとテレビアニメの流れをミックスしているので、実はゴタマさん退場済み。
そして第六宇宙編はお祭り的な雰囲気が魅力だと思っているので、多分フリーザ様が頑張ってもゆる~く進むかと。